【完結】婚約破棄された私が惨めだと笑われている?馬鹿にされているのは本当に私ですか?

なか

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1話

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大勢の貴族達が会食を行っている会場
広い部屋の中では気品のある人々がにこやかな笑顔で話していたが
その雰囲気を壊すような叫び声が上がる

「ソフィア!!ソフィアはいるか!?」

怒声のような声が響き渡り
周囲の視線が声の主に集まる

大声で叫んでいたのはここアウリス国のキュベレイ公爵家の子息

デイモンド・キュベレイであった
粗雑な振る舞いで、辺りを見回して叫ぶ

他にも貴族達は大勢いたが、咎める者はいなかった
それはこの集まりがデイモンドの20歳となった祝いの場であり
主催で今回のパーティーの主役でもあるデイモンドに注意は出来ないからだ


「どこにいる!ソフィア!!」

デイモンドが叫んでいると
一人の令嬢がゆっくりと歩み寄る

「こちらにおりますよ、デイモンド様」

彼女はソフィア・クラリス

クラリス男爵家の令嬢であり
叫んでいたデイモンドの婚約者でもあった


「遅い!!俺が呼んだらすぐにこい!」

デイモンドは歩み寄るソフィアを𠮟咤したと思った瞬間
手を振りかざし、ほほを叩いた

バシンと音が鳴り、ソフィアのほほが痛ましい程に赤くなる



「っ!!」

「よせ……今は耐えろ」

何人かの男性貴族達が動いたが
それを止めるように近くにいた者が小声で制止する
何故かデイモンドを止める者はいなかった
何かを期待するように視線が集まる


ソフィアはほほを触りながらデイモンドを見つめる

「すいません…デイモンド様…ですが各貴族家の方々にご挨拶をしておりまして」

「言い訳はいい!!使えん奴だな」

「はい………………ご用はなんでしょうか?」

「あぁ、お前は俺がここ2年間の間、学問を学ぶために他国に留学していたのは知っているな?」

「ええ、もちろんです…その間は私が貴方様の公務をしておりましたので…それがどうかしましたか?」

「単刀直入に言おう、俺はその留学で本当に愛すべき人をみつけたのだ!!こい!ロミエ!!」

デイモンドが呼ぶと、会場の扉が開き
まるで他の貴族達に見せつけるかのように煌びやか宝石で貪欲な程にアクセサリーを身につけた女性がデイモンドに抱きついた

「デイモンドぉ、私待ちくたびれちゃったわ~」

「あぁ、すまないなロミエ、お詫びにソフィアに見せつけてやろうか」

甘えるような声で話すロミエと呼ばれた女性は
デイモンドと口付けを交わした


「ぶっ!!!」「おい!!………た、たえろって…」

なにやらコソコソと笑い声が上がったが
デイモンド達には気づかれていなかった


「それで、一体どのようなご用なのでしょうか?」

このような状況でも冷静に
ソフィアはデイモンドの伝えたい言葉を待つ
すこし呆れたような表情を受かべてはいたが

「ああ、見てわかるだろう?俺はこれからロミエと結婚する!」

デイモンドはニヤリと笑い
ソフィアを指さして宣言した



「お前とは婚約破棄させてもらう!!!」


高らかに、他の貴族達の前で宣言したデイモンド
周囲はこの修羅場に凍りつくと思いきや



「ぶ!!あっはははは!!」「こ、これは!!傑作だ!!」

「最高です!デイモンド様!!」「あはは!ま、まって息ができない!」

「お幸せに!あはは!!」「よく言った!!くくく!」


他の貴族達はデイモンドの予想とは裏腹に大きな笑い声を上げていた

そして件のソフィアは赤くなったほほをさすりながら

「はぁ…」と

諦めたようなため息をついたのであった









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