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番外編・ルウさんぽ
ルウとの日々・1
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学び舎の窓から外を見れば、しんしんと降り始めた雪が地面を濡らす。
季節は冬に入り、寒さで鉛筆を握る手がかじかむだろう。
とはいえ、モーセさんが魔法で教室を暖めてくれているので支障はないけど。
「それじゃあ、今日の授業はおわりじゃ。皆……気を付けて帰るようにな」
「モーセ講師、ありがとうございました」
「モーセおじいちゃん! ありがと」
「ルウ坊。講師と呼ばんか……二人とも寒いから、あまり外で長く遊ばんようにな~」
モーセさんの気遣いに礼を告げて。
いつも通り私は、ルウと帰り支度を始める。
暖かな場所から外に出れば、一転した寒さで身が震えた。
「うー。さむい~ ナーちゃん……さむいよ」
小さく震えながら、私の手を握っているルウ。
その手をとり……用意していたある物を渡した。
「ルウのためにね、これ……つくってきたの」
「っ……ルウに?」
私が作って来たのは、モコモコの手袋。
寒くないように、ルウのサイズで編んでいたのが今日完成したのだ。
魔力を込め、寒さを和らげる能力付きでもある。
「これ着けてみて、あったかいよ」
「やた! これ……ルウのだ。やた! ありがと!」
心から嬉しそうに笑うルウは、手袋を着けて自分のほっぺに当てる。
可愛らしく「えへへ」と言って、今度は私の頬にも手を当てた。
「これで、ナーちゃんもぽかぽかにしてあげる~」
「本当にぽかぽかだ。ルウの手、あったかいね」
「えへへ、ありがとナーちゃん。だいすき」
喜んでくれて良かった。
寒くなって風邪を引かないよう、これなら大丈夫だろう。
「じゃあルウ、帰ろうか」
「うん! おてて……あ」
ふと、手を伸ばしたルウが自らの手を見て立ち止まる。
手袋をジッと見つめ、少しだけしょげていた。
「どうしたの? ルウ」
「ナーちゃんと、おててつなぎたい」
「え……手袋じゃだめなの?」
「……これ、おててじゃない」
確かに手袋で繋ぐのはいつもと違うと感じる。
私も同感ではあった。
しかし、手袋を外すと寒さで手が痛くなってしまうだろう。
どうしようかと、迷っていた時だった。
ルウは手袋を片方外して、私の着けていた手袋へと……その小さな手を入れた。
「これなら、おててつなげて。あったかい!」
「ルウ、天才だ……確かにこれなら二人ともあったかいね」
「ナーちゃんの手ね。ルウがぽかぽかにしてあげる。ぎゅってにぎるの!」
手袋の中で、ルウの小さな指が私の手を握る。
体温が高めのこの子の手は、手袋以上にぽかぽかを感じる事ができた。
「ルウね、こっちがいい。遊ぶときはナーちゃんのてぶくろ着けるから」
「ふふ、じゃあ冬はこうして通学しようか」
「うん! ルウがナーちゃんのおててぽかぽかしてあげる!」
「ありがとね。じゃあ……帰ろうか」
そうして、いつも以上に温かな通学路。
私達二人は歩きながら、今日もゆったりと二人の時間を過ごした。
◇◇◇
その後、ルウと家まで送り届けた後。
私が帰路についていると、リカルドが傍へとやって来た。
「リカルド、迎えに来てくれたの」
「手……繋ごう」
「え?」
言われるがままに手を出せば、彼は手袋を外して。
私の手を握って、自らのコートのポケットに入れた。
とても暖かく、触れる素肌にいつもより緊張してしまう。
「あ……あの」
「こうしたい……駄目か?」
「もしかして、ルウと一緒にいたところ……見てたのですか?」
問いかければ、彼は頬を朱に染めてコクリと頷く。
そして、ポケットの中で私の手をギュッと握った。
「羨ましかった」
素直すぎる彼の言葉に、思わず頬笑みながら。
私も強く彼の手を握る。
「では、冬はこうして歩きましょうか」
「……ずっとこうがいい」
「ふふ。そうですね」
リカルドの手、その温もりに包まれると。
心はもう寒さなど忘れて、充実感でいっぱいであった。
季節は冬に入り、寒さで鉛筆を握る手がかじかむだろう。
とはいえ、モーセさんが魔法で教室を暖めてくれているので支障はないけど。
「それじゃあ、今日の授業はおわりじゃ。皆……気を付けて帰るようにな」
「モーセ講師、ありがとうございました」
「モーセおじいちゃん! ありがと」
「ルウ坊。講師と呼ばんか……二人とも寒いから、あまり外で長く遊ばんようにな~」
モーセさんの気遣いに礼を告げて。
いつも通り私は、ルウと帰り支度を始める。
暖かな場所から外に出れば、一転した寒さで身が震えた。
「うー。さむい~ ナーちゃん……さむいよ」
小さく震えながら、私の手を握っているルウ。
その手をとり……用意していたある物を渡した。
「ルウのためにね、これ……つくってきたの」
「っ……ルウに?」
私が作って来たのは、モコモコの手袋。
寒くないように、ルウのサイズで編んでいたのが今日完成したのだ。
魔力を込め、寒さを和らげる能力付きでもある。
「これ着けてみて、あったかいよ」
「やた! これ……ルウのだ。やた! ありがと!」
心から嬉しそうに笑うルウは、手袋を着けて自分のほっぺに当てる。
可愛らしく「えへへ」と言って、今度は私の頬にも手を当てた。
「これで、ナーちゃんもぽかぽかにしてあげる~」
「本当にぽかぽかだ。ルウの手、あったかいね」
「えへへ、ありがとナーちゃん。だいすき」
喜んでくれて良かった。
寒くなって風邪を引かないよう、これなら大丈夫だろう。
「じゃあルウ、帰ろうか」
「うん! おてて……あ」
ふと、手を伸ばしたルウが自らの手を見て立ち止まる。
手袋をジッと見つめ、少しだけしょげていた。
「どうしたの? ルウ」
「ナーちゃんと、おててつなぎたい」
「え……手袋じゃだめなの?」
「……これ、おててじゃない」
確かに手袋で繋ぐのはいつもと違うと感じる。
私も同感ではあった。
しかし、手袋を外すと寒さで手が痛くなってしまうだろう。
どうしようかと、迷っていた時だった。
ルウは手袋を片方外して、私の着けていた手袋へと……その小さな手を入れた。
「これなら、おててつなげて。あったかい!」
「ルウ、天才だ……確かにこれなら二人ともあったかいね」
「ナーちゃんの手ね。ルウがぽかぽかにしてあげる。ぎゅってにぎるの!」
手袋の中で、ルウの小さな指が私の手を握る。
体温が高めのこの子の手は、手袋以上にぽかぽかを感じる事ができた。
「ルウね、こっちがいい。遊ぶときはナーちゃんのてぶくろ着けるから」
「ふふ、じゃあ冬はこうして通学しようか」
「うん! ルウがナーちゃんのおててぽかぽかしてあげる!」
「ありがとね。じゃあ……帰ろうか」
そうして、いつも以上に温かな通学路。
私達二人は歩きながら、今日もゆったりと二人の時間を過ごした。
◇◇◇
その後、ルウと家まで送り届けた後。
私が帰路についていると、リカルドが傍へとやって来た。
「リカルド、迎えに来てくれたの」
「手……繋ごう」
「え?」
言われるがままに手を出せば、彼は手袋を外して。
私の手を握って、自らのコートのポケットに入れた。
とても暖かく、触れる素肌にいつもより緊張してしまう。
「あ……あの」
「こうしたい……駄目か?」
「もしかして、ルウと一緒にいたところ……見てたのですか?」
問いかければ、彼は頬を朱に染めてコクリと頷く。
そして、ポケットの中で私の手をギュッと握った。
「羨ましかった」
素直すぎる彼の言葉に、思わず頬笑みながら。
私も強く彼の手を握る。
「では、冬はこうして歩きましょうか」
「……ずっとこうがいい」
「ふふ。そうですね」
リカルドの手、その温もりに包まれると。
心はもう寒さなど忘れて、充実感でいっぱいであった。
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