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9話
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私が暮らすカリヨン王国は、東西南とを大国に挟まれている。
だが、唯一……北の地だけは人が未踏となっている魔物の生息域に面していた。
厄介な事に、魔物は人間の生息域へもその爪を向ける事がある。
王国は魔物の侵入を拒むため、防衛の任を与える辺境伯という爵位を設けた。
辺境伯は北の国境に防壁を設け、今も国の守護盾としての役目を全うしている。
「いつ見ても……大きい壁ね……」
眼前に見える、見上げる程の高さの壁。
それが平行して国境に伸びており、先が見えぬ程だ。
「これ、おっきの? ナーちゃん」
「ルウにとっては、当たり前の光景だから驚きはないのね」
私の指を握っている学友––ルウの平然とした様子に……これが当たり前である生活の緊迫が伝わる。
王国内地ではまず見られない光景だ。
少し視線を向ければ兵士が居る場所など……内地にあるはずない。
「ナーちゃん、がっこ来てくれてよかった。ルウ……あんまり友達いなかったから」
ルウは六歳程の男の子で、辺境伯領の学び舎で初めてできた学友だ。
五日前に高等部として入学した私に、王国内地について興味を持つこの子と友達になれた。
「私も良かったよ。ルウが辺境伯領に私を受け入れてくれて、学級に馴染めたもの」
この辺境伯領は魔物の生息域に面している事もあり子供が少ない。
それも、十年以上前は学び舎もなかったらしい。
だから、子供が産まれたなら内地に移り住むのが通例であり。
辺境伯領に暮らす人口が減少し、兵士の数も年々減っていた。
しかし現辺境伯当主がその状況に一手を打ち……子供達の未来となる施設への投資を始めたのだ。
学び舎の創設は、その一つ。
とはいえ……
「流石に、学生が十人は少ないわね……」
教室に入れば、机が少ない状況に思わず言葉が漏れる。
状況は改善傾向とはいえ、やはり子供の数は急に爆増はしないのは当然だ。
この学区の生徒は、私を含めて十人。
それも初等部と中等部が入り混じっているが、高等部の私のみだ。
そんな人数だから、学ぶ教室も一緒の場所である。
「ナーちゃん……おうとの学園? って、そんなに多いの?」
「ええ、ルウ。外にいる兵士さんぐらい多くいるのよ」
「え! ルウ! 行ってみたいなぁ!」
興味津々のルウと話合っていると……
学び舎に通っている子供達が、次々と教室にやってきた。
「ナっちゃん、おはよー!」
「おはよう。皆」
「今日、お母さんに三つ編み教えてもらったの。ナっちゃんの髪にしていい?」
「じゃあ頼もうかなぁ」
ルウが私とよく話してくれるおかげか、他の生徒達にも受け入れてもらっている。
ナーちゃん、ナっちゃんと呼んでくれるのだ。
二十三歳にして学び舎に通う私を受け入れてくれる子供の順応力には感謝しかない。
「おや、もう全員揃ってるな」
「おはようございます。モーセ講師」
「おはよ~」
私とルウが挨拶したのは、この学び舎の講師であるモーセさんだ。
白髪が混じった髪に、長年伸ばした長いヒゲ。
そのヒゲを、座っているルウや子供達が手を伸ばして三つ編みに結んでいても、気にせずのほほんとしている方だ。
とはいえ、この王国内で博士号を持っている方らしく。
どうしてこの学び舎に所属しているのか、疑問が多い人でもある。
「それにしてもナターリア嬢がいると授業に張りがあるのう。初等、中等部の算術の指導は簡単すぎて飽きていたから良かったわい」
「私こそ、途中入学なのに快く受け入れてくださって嬉しいです……」
「生徒の数は、これでも年々増えているんじゃが……如何せん、女の子が生まれた家庭は流石に引っ越していくから」
「そうなのですね」
「なのに女性でありながら、二十を超えて通うとはナターリアさんは酔狂で立派じゃよ」
いつもの世間話を終えて、モーセさんが授業を始める。
初等部、中等部の授業の際は、私は自習。
時間毎に、授業は交代して進行していく。
学ぶ機会が失われていた多くの知識の数々は……本当に楽しい時間だ。
特に歴史は面白くて、この国が数回も王家が入れ替わっているなど初めて知った。
今日もあっという間に時間が過ぎ、残り一限だ。
「さて、今日は初等部の子らに……魔物について少し教えようか」
ふと、私もあまり知らぬ魔物についての授業に耳を傾ける。
「まず、魔物とは多種多様な生物を総称して呼んでいるだけで……本来には個別に種族名があるのは知っているな」
「はーい」
「他に動物が数多くいるが、魔物と名が付くのは総じて……人間を捕食対象としており、人間を殺せる力を持つ生物に限定されている」
「モーセおじちゃん、どうして魔物は人をおそうために、こっちにくるの?」
「講師と呼びんさい」
ルウの言葉を苦笑交じりに諌めながら、モーセさんは言葉を続けた。
「人を住む領域を家に例えると分かりやすいかの。ルウ、お主の家に虫はいるか?」
「うーん、たまにいて……お父さんが追い払うよ」
「虫たちにとって人の領域は餌の宝庫、危険を冒しても侵入したいはず。それと同じじゃよ」
言われて、確かにと納得する。
魔物にとって餌となる人間が多く居る地域ならば、襲いかかるのも納得がいく。
そこに悪意などなく、純粋な食欲で人の元へ訪れるのだ。
「人と虫の生息圏が交わらぬのと同じく、人と魔物も同様に相容れないものだ……」
「そうなんだ……」
「さて、今日の授業はこれで終わりじゃ。皆……また明日な」
時計を見て呟いたモーセさんに、私たちはそれぞれ感謝の言葉を告げた。
ルウが私の隣に立って手を引く。
「いっしょかえろ! ナーちゃん」
「ええ、帰りましょう。ルウ」
「そうだ、ナターリア嬢。一か月後にはお主に魔法学を受けてもらうが……その前に魔力調査のため、髪の毛を一本もらえるか?」
学園では受けられなかった魔法学。
その前に得意な魔法を調べるため、魔力の検査が必要らしい。
言われるまま、髪の毛を一本抜いてモーセさんに渡す。
「魔法学が始まる前には、魔力の質が分かるじゃろう。楽しみに待っているといい」
「はい、お待ちしてますね。モーセさん」
別れを告げて、学び舎を出る。
帰り道、ルウが行きたい場所で寄り道をした。
芋虫を持って走ってくるルウから逃げたりしながら家に着く。
すると幾人かの兵士が待っていた。
「あ、お父さんだ!」
「お、ルウ! 今日もナターリアさんに送ってもらったのか?」
兵士の一人は、ルウのお父さんだ。
嬉しそうにルウを抱っこして、私と会釈を交わす。
私も何度か話した仲だ。
「いつもありがとうな、ナターリアさん」
「いえ、私もルウ君と一緒にいれて楽しいです。ですが……今日は他に兵士さんも連れて、どうかしたのですか」
「実は、以前にもらった手袋があるだろ? ……あれ、仲間の分も作ってくれるかな?」
ここに来たばかりの頃、ルウのお父さんに荷物整理を手伝ってもらった。
そのお礼にと、礼金と共に私の作った手袋をあげていたのを思い出す。
危険な兵士という職だから、無事であって欲しいと祈って作った品だ。
「あれ付けてから、手も凍えないし……なんか剣の握りもいいし絶好調でな。それ知った同僚が欲しがってるんだ。頼めるか? もちろん金は払うよ」
その願いは、私にとってはとても嬉しい提案だ。
「ええ、もちろん。生活費も稼がないといけないので、ぜひ作らせてください!」
「助かるよ! ありがとな」
生活費の方も、当分は心配せずともいいだろう。
そう思いながら、引き受けた。
………………
でもこの時の私は、知る由も無かった。
生活費のためにと気軽に引き受けた、この仕事。
なんの変哲もない、ただの手袋の……はずだったのだ。
でもこれが、辺境伯領の平和を築き上げる一つの重要な選択だったとは……
だが、唯一……北の地だけは人が未踏となっている魔物の生息域に面していた。
厄介な事に、魔物は人間の生息域へもその爪を向ける事がある。
王国は魔物の侵入を拒むため、防衛の任を与える辺境伯という爵位を設けた。
辺境伯は北の国境に防壁を設け、今も国の守護盾としての役目を全うしている。
「いつ見ても……大きい壁ね……」
眼前に見える、見上げる程の高さの壁。
それが平行して国境に伸びており、先が見えぬ程だ。
「これ、おっきの? ナーちゃん」
「ルウにとっては、当たり前の光景だから驚きはないのね」
私の指を握っている学友––ルウの平然とした様子に……これが当たり前である生活の緊迫が伝わる。
王国内地ではまず見られない光景だ。
少し視線を向ければ兵士が居る場所など……内地にあるはずない。
「ナーちゃん、がっこ来てくれてよかった。ルウ……あんまり友達いなかったから」
ルウは六歳程の男の子で、辺境伯領の学び舎で初めてできた学友だ。
五日前に高等部として入学した私に、王国内地について興味を持つこの子と友達になれた。
「私も良かったよ。ルウが辺境伯領に私を受け入れてくれて、学級に馴染めたもの」
この辺境伯領は魔物の生息域に面している事もあり子供が少ない。
それも、十年以上前は学び舎もなかったらしい。
だから、子供が産まれたなら内地に移り住むのが通例であり。
辺境伯領に暮らす人口が減少し、兵士の数も年々減っていた。
しかし現辺境伯当主がその状況に一手を打ち……子供達の未来となる施設への投資を始めたのだ。
学び舎の創設は、その一つ。
とはいえ……
「流石に、学生が十人は少ないわね……」
教室に入れば、机が少ない状況に思わず言葉が漏れる。
状況は改善傾向とはいえ、やはり子供の数は急に爆増はしないのは当然だ。
この学区の生徒は、私を含めて十人。
それも初等部と中等部が入り混じっているが、高等部の私のみだ。
そんな人数だから、学ぶ教室も一緒の場所である。
「ナーちゃん……おうとの学園? って、そんなに多いの?」
「ええ、ルウ。外にいる兵士さんぐらい多くいるのよ」
「え! ルウ! 行ってみたいなぁ!」
興味津々のルウと話合っていると……
学び舎に通っている子供達が、次々と教室にやってきた。
「ナっちゃん、おはよー!」
「おはよう。皆」
「今日、お母さんに三つ編み教えてもらったの。ナっちゃんの髪にしていい?」
「じゃあ頼もうかなぁ」
ルウが私とよく話してくれるおかげか、他の生徒達にも受け入れてもらっている。
ナーちゃん、ナっちゃんと呼んでくれるのだ。
二十三歳にして学び舎に通う私を受け入れてくれる子供の順応力には感謝しかない。
「おや、もう全員揃ってるな」
「おはようございます。モーセ講師」
「おはよ~」
私とルウが挨拶したのは、この学び舎の講師であるモーセさんだ。
白髪が混じった髪に、長年伸ばした長いヒゲ。
そのヒゲを、座っているルウや子供達が手を伸ばして三つ編みに結んでいても、気にせずのほほんとしている方だ。
とはいえ、この王国内で博士号を持っている方らしく。
どうしてこの学び舎に所属しているのか、疑問が多い人でもある。
「それにしてもナターリア嬢がいると授業に張りがあるのう。初等、中等部の算術の指導は簡単すぎて飽きていたから良かったわい」
「私こそ、途中入学なのに快く受け入れてくださって嬉しいです……」
「生徒の数は、これでも年々増えているんじゃが……如何せん、女の子が生まれた家庭は流石に引っ越していくから」
「そうなのですね」
「なのに女性でありながら、二十を超えて通うとはナターリアさんは酔狂で立派じゃよ」
いつもの世間話を終えて、モーセさんが授業を始める。
初等部、中等部の授業の際は、私は自習。
時間毎に、授業は交代して進行していく。
学ぶ機会が失われていた多くの知識の数々は……本当に楽しい時間だ。
特に歴史は面白くて、この国が数回も王家が入れ替わっているなど初めて知った。
今日もあっという間に時間が過ぎ、残り一限だ。
「さて、今日は初等部の子らに……魔物について少し教えようか」
ふと、私もあまり知らぬ魔物についての授業に耳を傾ける。
「まず、魔物とは多種多様な生物を総称して呼んでいるだけで……本来には個別に種族名があるのは知っているな」
「はーい」
「他に動物が数多くいるが、魔物と名が付くのは総じて……人間を捕食対象としており、人間を殺せる力を持つ生物に限定されている」
「モーセおじちゃん、どうして魔物は人をおそうために、こっちにくるの?」
「講師と呼びんさい」
ルウの言葉を苦笑交じりに諌めながら、モーセさんは言葉を続けた。
「人を住む領域を家に例えると分かりやすいかの。ルウ、お主の家に虫はいるか?」
「うーん、たまにいて……お父さんが追い払うよ」
「虫たちにとって人の領域は餌の宝庫、危険を冒しても侵入したいはず。それと同じじゃよ」
言われて、確かにと納得する。
魔物にとって餌となる人間が多く居る地域ならば、襲いかかるのも納得がいく。
そこに悪意などなく、純粋な食欲で人の元へ訪れるのだ。
「人と虫の生息圏が交わらぬのと同じく、人と魔物も同様に相容れないものだ……」
「そうなんだ……」
「さて、今日の授業はこれで終わりじゃ。皆……また明日な」
時計を見て呟いたモーセさんに、私たちはそれぞれ感謝の言葉を告げた。
ルウが私の隣に立って手を引く。
「いっしょかえろ! ナーちゃん」
「ええ、帰りましょう。ルウ」
「そうだ、ナターリア嬢。一か月後にはお主に魔法学を受けてもらうが……その前に魔力調査のため、髪の毛を一本もらえるか?」
学園では受けられなかった魔法学。
その前に得意な魔法を調べるため、魔力の検査が必要らしい。
言われるまま、髪の毛を一本抜いてモーセさんに渡す。
「魔法学が始まる前には、魔力の質が分かるじゃろう。楽しみに待っているといい」
「はい、お待ちしてますね。モーセさん」
別れを告げて、学び舎を出る。
帰り道、ルウが行きたい場所で寄り道をした。
芋虫を持って走ってくるルウから逃げたりしながら家に着く。
すると幾人かの兵士が待っていた。
「あ、お父さんだ!」
「お、ルウ! 今日もナターリアさんに送ってもらったのか?」
兵士の一人は、ルウのお父さんだ。
嬉しそうにルウを抱っこして、私と会釈を交わす。
私も何度か話した仲だ。
「いつもありがとうな、ナターリアさん」
「いえ、私もルウ君と一緒にいれて楽しいです。ですが……今日は他に兵士さんも連れて、どうかしたのですか」
「実は、以前にもらった手袋があるだろ? ……あれ、仲間の分も作ってくれるかな?」
ここに来たばかりの頃、ルウのお父さんに荷物整理を手伝ってもらった。
そのお礼にと、礼金と共に私の作った手袋をあげていたのを思い出す。
危険な兵士という職だから、無事であって欲しいと祈って作った品だ。
「あれ付けてから、手も凍えないし……なんか剣の握りもいいし絶好調でな。それ知った同僚が欲しがってるんだ。頼めるか? もちろん金は払うよ」
その願いは、私にとってはとても嬉しい提案だ。
「ええ、もちろん。生活費も稼がないといけないので、ぜひ作らせてください!」
「助かるよ! ありがとな」
生活費の方も、当分は心配せずともいいだろう。
そう思いながら、引き受けた。
………………
でもこの時の私は、知る由も無かった。
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