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結婚後3/3
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「にぃにぃ、まって」
「シア! おいで!」
野原を駆けていたシアを受け止めたのは、すっかりお兄ちゃんとなったロイだ。
妹のシアが産まれて二年。ロイは今年で八歳となり、すっかりシアを抱っこできる程に成長している。
「ロイ、シア……あまり遠くに行ったら駄目よ!」
「うん! わかったよ、お母さん!」
「おかたん……シア、にぃにと一緒!」
野原を走り回る二人へ注意すれば、ロイはお兄ちゃんとして答えていた。
抱っこされたシアはロイと一緒だから大丈夫だというように笑っている。
まだまだ可愛らしい二人に思わず笑みがこぼれてしまう。
しかし……二人していきなり野原に行きたいと言い出し、暫く離れていて欲しいなんて言うから何をしているのかと思えば、二人は咲いている花の近くで何やらコソコソとしている。
「シア、今日はなにをするか分かってるよね」
「うん、にぃにと……あつめるの」
「なにしてるの? 二人とも」
「なんでもない! シアは僕が見ているからお母さんはゆっくりしてて!」
「しあ、だいじょうぶだよ!」
ロイとシアはお互いが笑い合ってなにやらしている。私が見ると「あっちむいて!」と言ってくる。
仕方なく、付き添ってくれた使用人のカレンにロイ達を見てもらう事にした。
「なにしているんだろ」
気にはなりつつも、いつでも駆け寄れる位置でゆっくりとさせてもらう。
耳元ではロイとシアの笑い合う声が聞こえてきて、兄妹の仲の良さに微笑んでしまう。
本当に……ロイはいいお兄ちゃんだ。
さわやかな風が頬を撫で、流れる時間を楽しんでいると私へと話しかける人物がやって来る。
「エレツィア、お待たせ」
「アウルム……」
仕事の終わったアウルムがやって来てくれた。
休んでいた私の隣に彼が座った時だった。
私達の背に、小さな影が飛びつく。
「お母さん! お父さん!」
「これ、しあとにぃにぃからのおくりもの!」
にこやかに笑いながら二人がくれたのは、花冠だった。
不出来ながらも、可愛らしく作られた花冠が私とアウルムの頭に置かれる。
ロイとシアへと振り返れば、二人も付けたまま私達へと抱きつくのだ。
「うれしい?」
「しあもつくったんだよ!」
微笑みを浮かべる二人に聞かれれば、答えることなど決まっている。
私とアウルムはお互いに笑いながら、ロイとシアを抱きしめた。
「嬉しいよ……私達の愛しい子」
「あぁ……俺もだ……俺達はロイとシアの両親になれて良かった」
「しあも、うれしい~」
にこやかに、抱き合っていると。
ロイは私とアウルム……そしてシアを見つめながら微笑んだ。
屈託のない笑顔で、私達へと言ってくれたのだ。
「僕もね、お母さんとお父さんに出会えて……シアのお兄ちゃんになれて本当に良かった!」
愛しい我が子と、愛しい家族。
諦めていたはずの幸せは、ずっと私の近くで……
今日も、笑ってくれるのだ。
「シア! おいで!」
野原を駆けていたシアを受け止めたのは、すっかりお兄ちゃんとなったロイだ。
妹のシアが産まれて二年。ロイは今年で八歳となり、すっかりシアを抱っこできる程に成長している。
「ロイ、シア……あまり遠くに行ったら駄目よ!」
「うん! わかったよ、お母さん!」
「おかたん……シア、にぃにと一緒!」
野原を走り回る二人へ注意すれば、ロイはお兄ちゃんとして答えていた。
抱っこされたシアはロイと一緒だから大丈夫だというように笑っている。
まだまだ可愛らしい二人に思わず笑みがこぼれてしまう。
しかし……二人していきなり野原に行きたいと言い出し、暫く離れていて欲しいなんて言うから何をしているのかと思えば、二人は咲いている花の近くで何やらコソコソとしている。
「シア、今日はなにをするか分かってるよね」
「うん、にぃにと……あつめるの」
「なにしてるの? 二人とも」
「なんでもない! シアは僕が見ているからお母さんはゆっくりしてて!」
「しあ、だいじょうぶだよ!」
ロイとシアはお互いが笑い合ってなにやらしている。私が見ると「あっちむいて!」と言ってくる。
仕方なく、付き添ってくれた使用人のカレンにロイ達を見てもらう事にした。
「なにしているんだろ」
気にはなりつつも、いつでも駆け寄れる位置でゆっくりとさせてもらう。
耳元ではロイとシアの笑い合う声が聞こえてきて、兄妹の仲の良さに微笑んでしまう。
本当に……ロイはいいお兄ちゃんだ。
さわやかな風が頬を撫で、流れる時間を楽しんでいると私へと話しかける人物がやって来る。
「エレツィア、お待たせ」
「アウルム……」
仕事の終わったアウルムがやって来てくれた。
休んでいた私の隣に彼が座った時だった。
私達の背に、小さな影が飛びつく。
「お母さん! お父さん!」
「これ、しあとにぃにぃからのおくりもの!」
にこやかに笑いながら二人がくれたのは、花冠だった。
不出来ながらも、可愛らしく作られた花冠が私とアウルムの頭に置かれる。
ロイとシアへと振り返れば、二人も付けたまま私達へと抱きつくのだ。
「うれしい?」
「しあもつくったんだよ!」
微笑みを浮かべる二人に聞かれれば、答えることなど決まっている。
私とアウルムはお互いに笑いながら、ロイとシアを抱きしめた。
「嬉しいよ……私達の愛しい子」
「あぁ……俺もだ……俺達はロイとシアの両親になれて良かった」
「しあも、うれしい~」
にこやかに、抱き合っていると。
ロイは私とアウルム……そしてシアを見つめながら微笑んだ。
屈託のない笑顔で、私達へと言ってくれたのだ。
「僕もね、お母さんとお父さんに出会えて……シアのお兄ちゃんになれて本当に良かった!」
愛しい我が子と、愛しい家族。
諦めていたはずの幸せは、ずっと私の近くで……
今日も、笑ってくれるのだ。
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京丸様
ご感想ありがとうございます(*´罒`*)
完読していただけて嬉しいです!!
そして、私の作品に惹かれてくださる理由も教えて下さり光栄です(≧∇≦)
確かに、私はなるべく綺麗事では終わらないようには気をつけております( ⌯᷄௰⌯᷅ )
悪いことを悪いと言うだけで解決する物語なんて、ありませんよね(∩∀<`。)
綺麗事では無いけど、しっかり言うべきとこは言うのが私も好きな主人公なのかもです(ㅅ´꒳` )
今作も憎まれ役が、どこか憎めない奴になる。
主人公も含め、なるべく全員が成長できるような作品を描くのが目標です(◦ˉ ˘ ˉ◦)
楽しんでくださって本当に嬉しいです!!
ありがとうございます😊
京丸様
ご感想ありがとうございます🌼*・
こちらも読んでくださっているのですね(◦ˉ ˘ ˉ◦)
私の作品は序盤は重たいですよね💦
本作は特に主人公が苦労する作品です(≧∇≦)
ざまあ物ではありますが、旦那へと一矢報いる方法は確かに他と違うかもです(∩∀<`。)
今作の旦那様は本当に嫌われる要素もりもりですので、お気をつけて読んでください(*´罒`*)
ありがとうございます😊
にゃあん様🐱
本作を見つけて下さってありがとうございます😊
一泊二日で読んで下さったのですね!
一気読みして楽しんでくださるなんて、とても嬉しいです✨✨
おっしゃる通り、ロイによって周囲は成長して、問題に立ち向かえるようになっていきました💐*·̩͙𓈒𓂂𓏸
子供の成長と共に、大人も共に成長しているのかもしれませんね(*´艸`)
弟も出来たらもっと楽しそうですね🍀*゜
じぃじもきっと喜んでくれるはずです(,, -᷅ ̫ -᷄ ,,)
こちらこそ、本作を見つけてくださり。
また、読んで下さってありがとうございます!!(>ω<///)💕