【完結】旦那様の愛人の子供は、私の愛し子です

なか

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結婚後2/3

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 数日後、私とアウルムはロイへと話かける。

「ロイ、今日はね。ちょっとカレン達と二階で遊んでられる?」

「ん? おかあさんとおとうさんは?」

「ごめんな、ロイ……ちょっとだけ二人で話をするんだ。待っていられるか?」

「……うん! おとうさん。おかあさんをちゃんと守ってね!」

「あぁ、ロイみたいに……ちゃんと守ってみせるよ」

 こんな時だけど、ロイとアウルムが私を守ろうと親子として話をする事が少し嬉しい。
 こんなに頼もしい二人がいるなら、安心だ。

「じゃぁ、カレン達と遊んでくるね!」

 カレンや他の使用人達に出てもらい、私とアウルムは視線を合わせる。

「すまない、エレツィア……まさか、ここまで来るとは。俺がしっかりと縁を切っておくべきだった」

「ううん。アウルムのせいじゃないよ。でも……お腹の子を守るため……」

「あぁ、今日でしっかりと分からせよう。ウィンソン家には後悔してもらわなくてはな」

 共に笑みを浮かべて、私達は肩を並べる。
 その仕草に、少し笑ってしまう。

「なんだか、懐かしい……ジェレドの時以来ね」

「俺達には慣れたものだな。しっかりとやってやろうか」

「はい」

 二人で待つのは、今度はアウルムの過去の因縁。
 ウィンソン家には一通の手紙を送っていた。

 屋敷への招待と、一千万ギルを渡すという手紙。
 それに釣られて、アウルムの母であるエリザベートはこれまた豪奢な馬車に乗って屋敷を訪れた。

「招待ありがとう、アウルム。エレツィアさんも、こちらの意志が分かっていただけたようで良かったわ。お腹の子の安全がお金で買えるなら安いものよね?」

 ニタニタと笑い、私達を見つめるエリザベートへと私は微笑む。

「ふ……ふふ」

「?」

「あはは」

「な、なに笑っているのよ」

「分かっていませんね。貴方に渡すお金なんてありません。むしろその逆、貴方にはこちらへの賠償金をお支払いしてもらおうと思っております」

「は?」

 エリザベートは首を傾げて、嘲笑の視線を向けた。

「いきなり何を言っているの? 私がお金を出す? 馬鹿な事を言わないで」

「いえ、先ずは先日……私の屋敷を汚した清掃代を請求します」

「は!? あれは、貴方の子共が……」

「不法侵入したのは誰でしょうか?」

「っ」

「他にも貴方、出て行く際に庭の花を踏んで荒らしておりましたよね。原状復帰のためのお金と、迷惑料……そうですね、合わせて一千万ギルでどうでしょうか」

「ふざけないで! 払う訳が!」

 声を荒げたエリザベートだったけど、その瞬間にアウルムが彼女の肩を掴む。

「母上、いや……もう違うのか。貴方には言っておく事があります」

「な……にを……離しなさい!」

「貴方は、俺が今まで渡した資金の全てを支払う義務があるのを分かっておりますか?」

 アウルムの一言に、エリザベートの顔が固まってしまう。
 困惑と、不意を突かれた表情を浮かべて私とアウルムを交互に見つめた。

「な……なにを言って……」

「俺がウィンソン家にいた頃に渡していたお金……あれら全て借用書を交わしていた事、忘れましたか?」

 私もアウルムから聞いていた話だけど。
 お金に厳しい彼は両親から催促される資金の全てに借用書を書かせていたと、両親は実の息子からまさか取り立てされるとは思っておらず、実際にアウルムも今まで催促をした事がなかった。だからこそ無警戒で内容も見ずにサインをしていたようで……

「今までの貸していた借金に加えて、延滞金、利息含めて……五億ギルの請求をさせてもらう」

「は!? だ、だってあれは……アウルム、貴方が息子だから請求されないと……」

「もう、息子ではない」

「あ……」

「俺達に何もしてこなければ、借金の請求などするつもりはなかったが……俺達の幸せを邪魔するなら、相応の対応をさせてもらう」

 膝を落とし、エリザベートは絶望の表情を見せた。
 当たり前だろう、警戒もせずにしっかりと借用書にサインをしている。言い逃れは出来ないのだから。

「あ……あの。許してアウルム……エレツィアさん。べ、別にそんなつもりはなかったのよ」

「残念ながら、私は『そんなつもりはないなん』て言い訳が、一番嫌いなので」

「払えないのなら、今貴方が住む屋敷は全てこちらで引き取らせてもらう。それでも足りぬだろうから、他国でしっかりと働き口は探しておこうか」

「あ……あぁぁ」

「私達の幸せを邪魔しようとした事、後悔してくださいね」

 その言葉がトドメとなり、エリザベートは項垂れて動かなくなった。
 その後、おかしな気を起こさぬようにアウルムの雇う私兵が監視の意味も込めて屋敷に連れ帰ったようで……とりあえずは安心だろう。
 生活のためとはいえ、実の母への制裁。それが気になってアウルムへと思わず尋ねてしまう。

「大丈夫でしたか……?」

「あぁ……元から、両親は俺の金しか興味がなかった二人だからな。それに……俺はもう守りたい家族がいるからな」

 私の肩を抱き、そう呟くアウルムとそっとキスをする。
 すると、廊下から走る音と共にロイがやって来て、私達へと抱きついた。

「おとうさん、おかあさんまもってくれてありがとう!」

「ロイ……いや、俺でなく……ロイが守ってくれたからエレツィアは無事だったんだ。ありがとう」

「ありがとうね、ロイ」

 私とアウルムが抱きしめると、ロイは少し照れながら……私達の頬にキスをした。

「ねぇ、ロイ……いいお兄ちゃんになれるかな」

「うん、立派なお兄ちゃんだよ」

「やった!」

 喜ぶロイを見つめながら、私とアウルムは笑う。
 優しいこの子の親でいられる事が、嬉しくて……



   ◇◇◇


 トラブルこそあったが、私の出産は順調に進み。
 ロイの……妹が産まれてきてくれた。
 
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