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おじいちゃんとロイ1/2
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待ってくださった方、ありがとうございます!
番外編を投稿していきます。
・ロイとエレツィア父が仲良くなるお話。
↓
・ロイとエレツィア。そしてアウルムのその後。
↓
・五年後、ロイとジェレド
~再会~
以上の順で進めていきます。
毎日は投稿できないかもしれませんが、気楽にお待ちくださると嬉しいです。
今回はエレツィアとロイが、実家であるカルヴァート家へと戻った時の時間軸です。
エレツィアのお父さんが、ロイのおじーちゃんとなるお話。
◇◇◇
カルヴァート子爵家当主・オスヴァルド視点。
私は、認めてはいない。
エレツィアが連れて来ていたロイという子供、フローレンス家との親権関係は決着がついたようだが。
あのフローレンス家が簡単に引き下がる可能性は低い、貴族家同士のトラブルを抱える訳にはいかない。
それ故、私は今回の事には不干渉を徹底する事にした。
エレツィア達に屋敷は貸すが、それ以上の干渉はしない。
「ということだ、エレツィア……分かったな。子供にもよく言っておいてくれ」
「はい、分かりました」
エレツィアは意外にもあっさりと受け入れた。
もう少し、父に対して不満や不平を申すかと思えば……
いや、大人になったと言うべきなのだろうか。
「……」
なんにせよ。
カルヴァート家は大きな貴族家ではないのだ、トラブルを抱える訳にはいかない。
そう思いつつ、私は外で使用人達と遊ぶ子供を見つめる。
まだ五歳のロイという少年は……私と話し終えたエレツィアが来たのを見て、満面の笑みで抱きついていた。
……
◇◇◇
「すまない、水を用意してくれないか?」
「承知いたしました、旦那様」
執事へと指示をしつつ、書斎で執務に励む。
机の上に置かれた人物画は、今は亡き妻の絵だ。娘達が幼い頃に妻は亡くなってしまった。
残された私は、二人の娘を守るためにこのカルヴァート家の影響力を高める事に注力してきた。
だが……娘達ともう少し語り合う時間を設けるべきだったと今更ながら思っている。
娘達に対し、世間話もできず……何を話せばいいのかも分からないなど。父失格だ。
「……」
キィ……
ふと、扉が軋む音が聞こえて視線を上げれば執務室の扉が開いていた。
だがそこには誰もいない。
「?」
執事が閉めるのを忘れて開けていたのか?
不思議に思いつつ、立ち上がって扉を閉めて再び執務机に戻り座る。
……が。
「っな!」
思わず、驚きで立ち上がってしまう。
執務机の下に、少年が身を隠すように座っていたのだ。
銀色の髪がふわりと揺れ、深紅の瞳が喜色を帯びてにこりと微笑んでいる。
「ろいね、いまかくれんぼしてるの。だからいわないでね」
「は? なにを言って」
「おじーちゃんの部屋なら、見つからないもん」
「お、おじ……私の事か?」
「うん! おかあさんがそう言ってたの」
「……」
なぜか、この坊にそう呼ばれると胸が弾むのを感じる。
しかし……今はかくれんぼなどに協力してやる気はな……
「お父様、ロイを見ませんでしたか?」
ちょうどいい所に、エレツィアが執務室へとやって来た。
キョロキョロと見渡し、この坊を探しているようだ。
「あの坊なら……」
「おじーちゃん、おねがい……」
「……」
机の下、小声で頼み込む坊に見つめられる。
ふざけるな、私は執務中だ……子供の遊びに付き合う気は。
「おじーちゃん……」
「…………エレツィア、あの坊は来ておらん。他を探せ」
「そ……うですか。わかりました」
納得したエレツィアは、部屋の外へと出ていく。
それを確認したのか、坊はノソノソと机の下から出てきた。
「ありがとう、おじーちゃん」
「別にいい。仕事があるんだ、早く出ていきなさい」
「おじーちゃん、お礼にこれあげる。ロイの宝物!」
「は?」
「じゃあね! ロイ、きょうはあうるむが来るまでかくれるんだ!」
坊はなぜか私の手にどんぐりを渡して、そのまま出て行ってしまう。
宝物?
これが?
……
「……くだらん」
呟き、机の上にどんぐりを置いて再び仕事へと戻る。
少しして、水を持ってきてくれた執事がそのどんぐりへと視線を向けた。
「おや、窓から入ってきたのですか? よければ処分しておきますか?」
事情を知らぬため、そう言ったのであろう。
処理に困っていた所だ、処分させるか。
『おじーちゃん』
……
「……」
「旦那様?」
「いい、置いておけ」
「え、しかし……」
「たからもの、らしいからな」
なぜだろうな。
くだらん物なのに、私にはそれが捨てられなかった。
番外編を投稿していきます。
・ロイとエレツィア父が仲良くなるお話。
↓
・ロイとエレツィア。そしてアウルムのその後。
↓
・五年後、ロイとジェレド
~再会~
以上の順で進めていきます。
毎日は投稿できないかもしれませんが、気楽にお待ちくださると嬉しいです。
今回はエレツィアとロイが、実家であるカルヴァート家へと戻った時の時間軸です。
エレツィアのお父さんが、ロイのおじーちゃんとなるお話。
◇◇◇
カルヴァート子爵家当主・オスヴァルド視点。
私は、認めてはいない。
エレツィアが連れて来ていたロイという子供、フローレンス家との親権関係は決着がついたようだが。
あのフローレンス家が簡単に引き下がる可能性は低い、貴族家同士のトラブルを抱える訳にはいかない。
それ故、私は今回の事には不干渉を徹底する事にした。
エレツィア達に屋敷は貸すが、それ以上の干渉はしない。
「ということだ、エレツィア……分かったな。子供にもよく言っておいてくれ」
「はい、分かりました」
エレツィアは意外にもあっさりと受け入れた。
もう少し、父に対して不満や不平を申すかと思えば……
いや、大人になったと言うべきなのだろうか。
「……」
なんにせよ。
カルヴァート家は大きな貴族家ではないのだ、トラブルを抱える訳にはいかない。
そう思いつつ、私は外で使用人達と遊ぶ子供を見つめる。
まだ五歳のロイという少年は……私と話し終えたエレツィアが来たのを見て、満面の笑みで抱きついていた。
……
◇◇◇
「すまない、水を用意してくれないか?」
「承知いたしました、旦那様」
執事へと指示をしつつ、書斎で執務に励む。
机の上に置かれた人物画は、今は亡き妻の絵だ。娘達が幼い頃に妻は亡くなってしまった。
残された私は、二人の娘を守るためにこのカルヴァート家の影響力を高める事に注力してきた。
だが……娘達ともう少し語り合う時間を設けるべきだったと今更ながら思っている。
娘達に対し、世間話もできず……何を話せばいいのかも分からないなど。父失格だ。
「……」
キィ……
ふと、扉が軋む音が聞こえて視線を上げれば執務室の扉が開いていた。
だがそこには誰もいない。
「?」
執事が閉めるのを忘れて開けていたのか?
不思議に思いつつ、立ち上がって扉を閉めて再び執務机に戻り座る。
……が。
「っな!」
思わず、驚きで立ち上がってしまう。
執務机の下に、少年が身を隠すように座っていたのだ。
銀色の髪がふわりと揺れ、深紅の瞳が喜色を帯びてにこりと微笑んでいる。
「ろいね、いまかくれんぼしてるの。だからいわないでね」
「は? なにを言って」
「おじーちゃんの部屋なら、見つからないもん」
「お、おじ……私の事か?」
「うん! おかあさんがそう言ってたの」
「……」
なぜか、この坊にそう呼ばれると胸が弾むのを感じる。
しかし……今はかくれんぼなどに協力してやる気はな……
「お父様、ロイを見ませんでしたか?」
ちょうどいい所に、エレツィアが執務室へとやって来た。
キョロキョロと見渡し、この坊を探しているようだ。
「あの坊なら……」
「おじーちゃん、おねがい……」
「……」
机の下、小声で頼み込む坊に見つめられる。
ふざけるな、私は執務中だ……子供の遊びに付き合う気は。
「おじーちゃん……」
「…………エレツィア、あの坊は来ておらん。他を探せ」
「そ……うですか。わかりました」
納得したエレツィアは、部屋の外へと出ていく。
それを確認したのか、坊はノソノソと机の下から出てきた。
「ありがとう、おじーちゃん」
「別にいい。仕事があるんだ、早く出ていきなさい」
「おじーちゃん、お礼にこれあげる。ロイの宝物!」
「は?」
「じゃあね! ロイ、きょうはあうるむが来るまでかくれるんだ!」
坊はなぜか私の手にどんぐりを渡して、そのまま出て行ってしまう。
宝物?
これが?
……
「……くだらん」
呟き、机の上にどんぐりを置いて再び仕事へと戻る。
少しして、水を持ってきてくれた執事がそのどんぐりへと視線を向けた。
「おや、窓から入ってきたのですか? よければ処分しておきますか?」
事情を知らぬため、そう言ったのであろう。
処理に困っていた所だ、処分させるか。
『おじーちゃん』
……
「……」
「旦那様?」
「いい、置いておけ」
「え、しかし……」
「たからもの、らしいからな」
なぜだろうな。
くだらん物なのに、私にはそれが捨てられなかった。
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