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ランドルフside
「儂が何故……お前を呼び戻したのか分かっているな?ランドルフよ」
「はい、父上……」
舞踏会での一件によって謹慎を受けてしまった俺は一度学園の寮から抜け出して王城へと戻っていた、現王で俺の父上からの呼び出し、その足取りは重たかったが逆らう訳にはいかずにここへとやって来た。
「学園での一件はすでに聞いている、デイジーを退学、もしくは評判を落とすために講師を巻き込んだとな……」
「はい、しかし失敗してしまいました」
「ふむ……」
王座に座っている父上は背もたれに体重を預けて深く息を吐いた、話を聞かれないように配下の者達は全てこの王座の間から出ている、二人きりの空間で気まずい時間が流れた。
父上の言いたい事は分かっていた、ずさんでお粗末な計画の結果がこの始末であり何を言われても仕方がないと思っている。
しかし、こうして沈黙の中で𠮟責を待っているのは辛いものだ。
「ランドルフよ…お前に言っておかねばならぬ事が……」
「今回の失敗…全ては俺の失態です、すみません父上」
𠮟責が飛んでくる前に先行して謝罪の言葉を告げた、しかし父上は意外そうな表情をして首を傾げた。
「何を言っているランドルフよ?」
「え?」
「儂は責めるつもりはない、むしろ良くやっているではないか!!」
予想もしていなかった言葉に驚いていると父上は言葉を続けた。
「誰かを利用して計画を考えたのはお前なのだろう?そうやって思案する事は良い事だ、お前はデイジーを退学に追い込むという事に集中すれば良い、そうすればお前の王として道は安泰なのだ、遠慮はせずにこのままで良い」
「な……俺は失敗をしてしまったのですよ、学園での評判も悪くなってしまった…」
「そんなもの王となってしまえば些事な事だ…名声などいくらでも後から持ち直せる、お前が優先すべきなのは王として踏み出した瞬間に汚名が付かないようにすればいい、学園での評判などは気にするな、デイジーを捨ててしまった事による諸侯貴族への評判を考える事が最優先だろう」
「父上…俺は浅はかでした、いつまでも自分の失敗を引きずって過ごしていく所でした、ありがとうございます」
「良い良い、いいか?ランドルフよ、お前は王子なのだ…このファルムンド王国を背負って立つ男、皆がお前を好いているのだぞ、王子であるお前にな」
「はい、父上」
「学園でのつまらぬ者達の価値など気にするな、大局を見据えて今は王となった時の不安要素を潰す事を優先せよ、分かったな!!」
俺は父上のありがたい言葉に頷き、取り戻した自信とやる気を胸に王座の間を出ていく、だが去り際に父上は声をかけて呼び止めた。
「良いか?ランドルフよ、情など甘い考えは捨てるのだ、方法によってはデイジーの生死など気にする必要などない、そんなつまらぬ事は気にする必要はない、他に愛する女性もいるのだからな…どんな手でも使え……我が愛する息子よ、お前が王となった時こそが父の喜びなのだ…頼んだぞ」
父の言葉に俺は動揺しながらも頷く。
言う通りだ、今はローザを愛している俺にとってデイジーは過去の女性であり、生きているか死んでいるかなどは気にする必要なんてない、今後の人生のためにの情は捨てるべき…そうそのはずだ…。
「分かりました父上、任せてください」
「うむ…やり遂げるのだぞ、愛する息子よ」
俺は取り戻した自信を胸に王座の間を出ていく、父上の期待も背負っているのだ…今度こそは失敗はできない、情も捨てて物事に当たろう、例えデイジーがどうなっても。
どんな手を使ってでも、俺はやり遂げる。
◇◇◇
ドーマスside
「バカ息子が……」
誰もいなくなった王座の間でただ1人で呟く、誰にも聞かせない本心の言葉だ。
元より息子であるランドルフにはデイジーとの婚約を破棄した時から呆れていた、なんと馬鹿な息子なのだろうかと……一時の性欲に支配されて後先も考えずに行動をするなど考えられない。
若さ故の過ちなのだとは分かってはいるが、儂が王位を退いた後も安泰な生活を送るためにはランドルフにはしっかりとしてもらう必要がある。
不安要素を残してはいけないのだ、王が愚かな所を見せてしまえば家臣は離れてしまう、ワシ自身も自分の過ちや失敗の数々を漏れないように潰してきた。
ランドルフには今からでもそういった非情なやり方を学んでおかねばならん。
儂の父上は賢王と呼ばれる程に民や貴族達からの信頼を得ていたが、息子である儂も同じとは限らん…期待だけを受けて結果を残せない事は辛い事…だからこそランドルフには今のうちから王としての処世術を考えて生きていかねばならない。
「直接に介入できたら楽なのだがな……」
辛い事に学園へ深く介入する事は王である儂にも許されていない、それも全てあの学園の理事長であるアメリア・ラインズのせいだ、東の国とも深い交友関係を持っており諸侯貴族への影響力も高いラインズ公爵家との衝突は避けたい。
だからこそ、ランドルフだけが頼りなのだ……先ほども厳しく𠮟責したい気持ちを抑えて偽りの褒め言葉を並べた、𠮟責をして萎縮してしまって行動も出来なくなっては面倒だ。
多少は危うくても行動の出来る方が良い、動けないだけの馬鹿息子を応援する気はないのだから。
ランドルフよ、儂の期待を裏切るでないぞ。
「儂が何故……お前を呼び戻したのか分かっているな?ランドルフよ」
「はい、父上……」
舞踏会での一件によって謹慎を受けてしまった俺は一度学園の寮から抜け出して王城へと戻っていた、現王で俺の父上からの呼び出し、その足取りは重たかったが逆らう訳にはいかずにここへとやって来た。
「学園での一件はすでに聞いている、デイジーを退学、もしくは評判を落とすために講師を巻き込んだとな……」
「はい、しかし失敗してしまいました」
「ふむ……」
王座に座っている父上は背もたれに体重を預けて深く息を吐いた、話を聞かれないように配下の者達は全てこの王座の間から出ている、二人きりの空間で気まずい時間が流れた。
父上の言いたい事は分かっていた、ずさんでお粗末な計画の結果がこの始末であり何を言われても仕方がないと思っている。
しかし、こうして沈黙の中で𠮟責を待っているのは辛いものだ。
「ランドルフよ…お前に言っておかねばならぬ事が……」
「今回の失敗…全ては俺の失態です、すみません父上」
𠮟責が飛んでくる前に先行して謝罪の言葉を告げた、しかし父上は意外そうな表情をして首を傾げた。
「何を言っているランドルフよ?」
「え?」
「儂は責めるつもりはない、むしろ良くやっているではないか!!」
予想もしていなかった言葉に驚いていると父上は言葉を続けた。
「誰かを利用して計画を考えたのはお前なのだろう?そうやって思案する事は良い事だ、お前はデイジーを退学に追い込むという事に集中すれば良い、そうすればお前の王として道は安泰なのだ、遠慮はせずにこのままで良い」
「な……俺は失敗をしてしまったのですよ、学園での評判も悪くなってしまった…」
「そんなもの王となってしまえば些事な事だ…名声などいくらでも後から持ち直せる、お前が優先すべきなのは王として踏み出した瞬間に汚名が付かないようにすればいい、学園での評判などは気にするな、デイジーを捨ててしまった事による諸侯貴族への評判を考える事が最優先だろう」
「父上…俺は浅はかでした、いつまでも自分の失敗を引きずって過ごしていく所でした、ありがとうございます」
「良い良い、いいか?ランドルフよ、お前は王子なのだ…このファルムンド王国を背負って立つ男、皆がお前を好いているのだぞ、王子であるお前にな」
「はい、父上」
「学園でのつまらぬ者達の価値など気にするな、大局を見据えて今は王となった時の不安要素を潰す事を優先せよ、分かったな!!」
俺は父上のありがたい言葉に頷き、取り戻した自信とやる気を胸に王座の間を出ていく、だが去り際に父上は声をかけて呼び止めた。
「良いか?ランドルフよ、情など甘い考えは捨てるのだ、方法によってはデイジーの生死など気にする必要などない、そんなつまらぬ事は気にする必要はない、他に愛する女性もいるのだからな…どんな手でも使え……我が愛する息子よ、お前が王となった時こそが父の喜びなのだ…頼んだぞ」
父の言葉に俺は動揺しながらも頷く。
言う通りだ、今はローザを愛している俺にとってデイジーは過去の女性であり、生きているか死んでいるかなどは気にする必要なんてない、今後の人生のためにの情は捨てるべき…そうそのはずだ…。
「分かりました父上、任せてください」
「うむ…やり遂げるのだぞ、愛する息子よ」
俺は取り戻した自信を胸に王座の間を出ていく、父上の期待も背負っているのだ…今度こそは失敗はできない、情も捨てて物事に当たろう、例えデイジーがどうなっても。
どんな手を使ってでも、俺はやり遂げる。
◇◇◇
ドーマスside
「バカ息子が……」
誰もいなくなった王座の間でただ1人で呟く、誰にも聞かせない本心の言葉だ。
元より息子であるランドルフにはデイジーとの婚約を破棄した時から呆れていた、なんと馬鹿な息子なのだろうかと……一時の性欲に支配されて後先も考えずに行動をするなど考えられない。
若さ故の過ちなのだとは分かってはいるが、儂が王位を退いた後も安泰な生活を送るためにはランドルフにはしっかりとしてもらう必要がある。
不安要素を残してはいけないのだ、王が愚かな所を見せてしまえば家臣は離れてしまう、ワシ自身も自分の過ちや失敗の数々を漏れないように潰してきた。
ランドルフには今からでもそういった非情なやり方を学んでおかねばならん。
儂の父上は賢王と呼ばれる程に民や貴族達からの信頼を得ていたが、息子である儂も同じとは限らん…期待だけを受けて結果を残せない事は辛い事…だからこそランドルフには今のうちから王としての処世術を考えて生きていかねばならない。
「直接に介入できたら楽なのだがな……」
辛い事に学園へ深く介入する事は王である儂にも許されていない、それも全てあの学園の理事長であるアメリア・ラインズのせいだ、東の国とも深い交友関係を持っており諸侯貴族への影響力も高いラインズ公爵家との衝突は避けたい。
だからこそ、ランドルフだけが頼りなのだ……先ほども厳しく𠮟責したい気持ちを抑えて偽りの褒め言葉を並べた、𠮟責をして萎縮してしまって行動も出来なくなっては面倒だ。
多少は危うくても行動の出来る方が良い、動けないだけの馬鹿息子を応援する気はないのだから。
ランドルフよ、儂の期待を裏切るでないぞ。
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