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「ちょっと大遅刻よ!!デイジー!」
「は、早く来てください!」
私とアイザックは思い出したかのように足早に卒業式へ向かっているとモネ達の声が聞こえる、なんとか間に合ったようだ…会場の扉の前で手を振っているモネとエリザが私達に声をかけてくれた。
しかし、卒業式はとっくに始まっていると思って諦めていたのに…なにかあったのだろうか?
「ちょっと……デイジー、後で遅れた理由はたっぷりと教えてもらうからね!」
「うんうん!!エリザの言う通りだよ、私達にはもう隠し事は必要ないよね」
エリザは私とアイザックを交互に見ながらいたずらっぽく笑い、モネは興味津々といった様子で私に詰め寄る。
赤面して紅潮している私とアイザックの様子を見て大方察したのだろう、友達には正直に話さないといけないと思う気持ちはあったが気恥ずかしい気持ちが先行し、慌てて私は話をそらした。
「話は必ず後でします……卒業式はとっくに始まっているかと思ってましたが……なにかありましたか?」
エリザは肩をすくめ、会場の扉を開いた。
「見た方が早いわよ、あれのせいで卒業式は一時中止……」
言葉と共に卒業式の会場に入っていくと、ざわついた生徒達の中心で叫んでいる人物がいた。
取り押さえようと近づいてきた講師達を振り解き、まるで子供のように暴れて叫んでおり、およそ同じ歳には思えない、まるで大きな子供だ。
「離せ!!!近寄るな!!俺は何も悪くない!貴様らのような下賤な者共には相応しくない王子なのだぞ!デイジー!!デイジー!!どこにいる!」
錯乱しているように叫ぶその人物を見て、私はため息を吐きながら前に進んでいく……どうしようもなくて情けない方だ、でも私が撒いた種でもある、しっかりとケジメをつけねばならない、これで正真正銘の最後にしよう。
長く、長く続いたこの日々に終止符を打たねばならない。
「ランドルフ……何をしているのですか」
呟いた言葉、ランドルフは顔を明るくさせて手を広げながら私の元へと近づいてくる。
「デイジー!!待っていたんだ、今まで確かに誤解させていた……やっと気付いたんだよ、俺が本当に愛すべきは俺のために尽くしてくれていたデイジーなんだって!君も俺が戻ってこいと言えば、戻ってきてくれるだろう?」
会場がどよめく、私とランドルフとの関係を知らない者が多いために仕方ないだろう、しかし少々……というよりも酷い勘違いをされているものだ。
「ランドルフ、私は…」
言い返そうと口を開いた所にアイザックが私を引き寄せて抱きしめた、自分の物だと主張するように睨みつけるアイザックは相変わらず怖い顔をしている、そんな彼の頬に手を伸ばして笑う。
「大丈夫、アイザック……私は戻らないから」
「知っている、だがこんな奴の元に君が戻ると思われている事が酷く不愉快だ」
アイザックの声にランドルフは過敏に反応して声を荒げて叫ぶ。
「こんな奴だと!?俺はこの国を背負って立つ王子だぞ!いずれ王になるのだ!デイジーもきっと俺の元へと帰ってくはずなんだ!」
必死に叫び、自分に言い聞かせているのだろう…彼の目は泳いでおり自分で言っている事もよく理解していないようだった。
「貴方が王になるのであれば!学園で過ごしてきた期間は何を学んでいたのですか!!」
突然、喧騒を静まり返すほどの鋭い声が聞こえた。
声の主はモネであり、その視線は鋭くランドルフを睨んでおり、佇まいはかつての弱弱しく怯えていた姿ではなく、背筋を伸ばして芯の通った美しい女性であった。
「ランドルフ王子、貴方に問いかけているのです!!何を学んでいたのですか!?貴方の父上である現王は平民に重税を強いており、その税率は下がる事なく未だに上がっております!苦しんでいる民のために貴方は何を学び、何をしてくれるのですか!!」
モネの言葉にランドルフは口をあわあわとさせて、必死に考えていた……だが逃げるように彼は叫ぶ。
「うるさい!!平民ごときが崇高な俺の事を疑うなど反逆罪もいいところだ!!処刑されたくなかったら黙っていろ!」
ランドルフの愚かな言葉に返事をしたのはモネではなく、彼女の隣に立っている親友であった。
その瞳には抑えようのない怒りがこもっており、エリザは勢いよく言葉を返す。
「崇高とはどの口が言っているのかしら?私のお兄様をたぶらかして愚行に付き合わせた王子様、言っておくけど私は貴方を王なんて認めてないわ、その器で良くも言えるわね?恥ずかしくないの?」
「な!!貴様!!貴様!!!」
悔しそうに叫んでいるランドルフは正に子供だ、何も言い返す言葉もなく、ただただ地団駄を踏んで大人に求めるように自分の考えを押し通そうとしている。
だけど、残念ながら彼はもうワガママを押し通せる程に若くはなく、自分の言った言葉や行った行為に責任を持たねばならない歳だ、誰も彼を擁護する者なんていない。
「デイジー!!考えてもみろ!!こんな平民、伯爵令嬢、馬鹿な公爵家のぼんくら息子を引き連れて一緒にいても何も得なんてしない!!俺と一緒になれば、王妃になれば大勢の民を従えて好きに生きれるのだぞ、俺の元へと戻ってこい!!デイジー!!」
彼の必死の叫び、私は大きく息を吸って……ランドルフを見ながら言葉を出す。
答えは決まっている、もう我慢しないで言いたいことを言おう、遠慮なく。
「ふざけないでください、貴方に受けた屈辱を私は…忘れません、二度と私の友達を馬鹿にしないで……私は彼らと過ごす日々の方が貴方と過ごすよりも万倍も幸せに思えます」
遠慮なく言った言葉、今までためこんでいた分を吐き出すことは清々しくて気持ちが良かった。
「何を言っている…デイジー!」
さぁ、本当に諦めてもらおう…このどうしようもない王子に。
「は、早く来てください!」
私とアイザックは思い出したかのように足早に卒業式へ向かっているとモネ達の声が聞こえる、なんとか間に合ったようだ…会場の扉の前で手を振っているモネとエリザが私達に声をかけてくれた。
しかし、卒業式はとっくに始まっていると思って諦めていたのに…なにかあったのだろうか?
「ちょっと……デイジー、後で遅れた理由はたっぷりと教えてもらうからね!」
「うんうん!!エリザの言う通りだよ、私達にはもう隠し事は必要ないよね」
エリザは私とアイザックを交互に見ながらいたずらっぽく笑い、モネは興味津々といった様子で私に詰め寄る。
赤面して紅潮している私とアイザックの様子を見て大方察したのだろう、友達には正直に話さないといけないと思う気持ちはあったが気恥ずかしい気持ちが先行し、慌てて私は話をそらした。
「話は必ず後でします……卒業式はとっくに始まっているかと思ってましたが……なにかありましたか?」
エリザは肩をすくめ、会場の扉を開いた。
「見た方が早いわよ、あれのせいで卒業式は一時中止……」
言葉と共に卒業式の会場に入っていくと、ざわついた生徒達の中心で叫んでいる人物がいた。
取り押さえようと近づいてきた講師達を振り解き、まるで子供のように暴れて叫んでおり、およそ同じ歳には思えない、まるで大きな子供だ。
「離せ!!!近寄るな!!俺は何も悪くない!貴様らのような下賤な者共には相応しくない王子なのだぞ!デイジー!!デイジー!!どこにいる!」
錯乱しているように叫ぶその人物を見て、私はため息を吐きながら前に進んでいく……どうしようもなくて情けない方だ、でも私が撒いた種でもある、しっかりとケジメをつけねばならない、これで正真正銘の最後にしよう。
長く、長く続いたこの日々に終止符を打たねばならない。
「ランドルフ……何をしているのですか」
呟いた言葉、ランドルフは顔を明るくさせて手を広げながら私の元へと近づいてくる。
「デイジー!!待っていたんだ、今まで確かに誤解させていた……やっと気付いたんだよ、俺が本当に愛すべきは俺のために尽くしてくれていたデイジーなんだって!君も俺が戻ってこいと言えば、戻ってきてくれるだろう?」
会場がどよめく、私とランドルフとの関係を知らない者が多いために仕方ないだろう、しかし少々……というよりも酷い勘違いをされているものだ。
「ランドルフ、私は…」
言い返そうと口を開いた所にアイザックが私を引き寄せて抱きしめた、自分の物だと主張するように睨みつけるアイザックは相変わらず怖い顔をしている、そんな彼の頬に手を伸ばして笑う。
「大丈夫、アイザック……私は戻らないから」
「知っている、だがこんな奴の元に君が戻ると思われている事が酷く不愉快だ」
アイザックの声にランドルフは過敏に反応して声を荒げて叫ぶ。
「こんな奴だと!?俺はこの国を背負って立つ王子だぞ!いずれ王になるのだ!デイジーもきっと俺の元へと帰ってくはずなんだ!」
必死に叫び、自分に言い聞かせているのだろう…彼の目は泳いでおり自分で言っている事もよく理解していないようだった。
「貴方が王になるのであれば!学園で過ごしてきた期間は何を学んでいたのですか!!」
突然、喧騒を静まり返すほどの鋭い声が聞こえた。
声の主はモネであり、その視線は鋭くランドルフを睨んでおり、佇まいはかつての弱弱しく怯えていた姿ではなく、背筋を伸ばして芯の通った美しい女性であった。
「ランドルフ王子、貴方に問いかけているのです!!何を学んでいたのですか!?貴方の父上である現王は平民に重税を強いており、その税率は下がる事なく未だに上がっております!苦しんでいる民のために貴方は何を学び、何をしてくれるのですか!!」
モネの言葉にランドルフは口をあわあわとさせて、必死に考えていた……だが逃げるように彼は叫ぶ。
「うるさい!!平民ごときが崇高な俺の事を疑うなど反逆罪もいいところだ!!処刑されたくなかったら黙っていろ!」
ランドルフの愚かな言葉に返事をしたのはモネではなく、彼女の隣に立っている親友であった。
その瞳には抑えようのない怒りがこもっており、エリザは勢いよく言葉を返す。
「崇高とはどの口が言っているのかしら?私のお兄様をたぶらかして愚行に付き合わせた王子様、言っておくけど私は貴方を王なんて認めてないわ、その器で良くも言えるわね?恥ずかしくないの?」
「な!!貴様!!貴様!!!」
悔しそうに叫んでいるランドルフは正に子供だ、何も言い返す言葉もなく、ただただ地団駄を踏んで大人に求めるように自分の考えを押し通そうとしている。
だけど、残念ながら彼はもうワガママを押し通せる程に若くはなく、自分の言った言葉や行った行為に責任を持たねばならない歳だ、誰も彼を擁護する者なんていない。
「デイジー!!考えてもみろ!!こんな平民、伯爵令嬢、馬鹿な公爵家のぼんくら息子を引き連れて一緒にいても何も得なんてしない!!俺と一緒になれば、王妃になれば大勢の民を従えて好きに生きれるのだぞ、俺の元へと戻ってこい!!デイジー!!」
彼の必死の叫び、私は大きく息を吸って……ランドルフを見ながら言葉を出す。
答えは決まっている、もう我慢しないで言いたいことを言おう、遠慮なく。
「ふざけないでください、貴方に受けた屈辱を私は…忘れません、二度と私の友達を馬鹿にしないで……私は彼らと過ごす日々の方が貴方と過ごすよりも万倍も幸せに思えます」
遠慮なく言った言葉、今までためこんでいた分を吐き出すことは清々しくて気持ちが良かった。
「何を言っている…デイジー!」
さぁ、本当に諦めてもらおう…このどうしようもない王子に。
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