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しおりを挟むローザside
私はアメリア学園長に再び頭を下げる、本心から謝罪をしたかったからだ、この学園で私利私欲のために死人が出るかもしれない事件を引き起こしてしまった、もし何かが間違えていれば大惨事だっただろう。
「本当に申し訳ありません、アメリア学園長」
「……正直に言って、貴方達がやったという証拠はあと少しで集まる所だったの……このまま何も言わないようであれば事前通告もなく学園からは退学処分を言い渡す予定だった」
アメリア学園長は呟きながらも私の肩に手を置いて言葉を続ける。
「本気で後悔して、貴方が自分から罪を償うと言うのであれば、私がする事は突き放す事ではなく……貴方の居場所になってあげる事が教育者の勤めです、罪を償ったら、学園にいつでも戻ってきなさい……席は空けておくから」
「ア、アメリア学園長……本当に……本当にごめんなさい…ごめんなさい…」
「私の方こそ…謝罪します、教育者として悩む貴方に気付いてあげるべきだった…見つけてあげられずに、ごめんなさい…」
「学園長……う………うぅ……」
あぁ、後悔ばかりだ……私はいい人達に迷惑をかけてばかりだ、デイジーやその友達達、マキナにアメリア学園長…前世に囚われて迷惑ばかりかけて反省ばかりで、それでも救いをくれたデイジーやアメリア学園長に心の底から謝罪と感謝を伝えたかった。
「お話を聞きたい所だけど、この件に関しては私ではなくて然るべき立場の者達が事実を聞き取りに来るはずよ、だから貴方は一度オルレアン公爵家に戻っていなさい…申し訳ないけど見張りは付けさせてもらうわ」
「いえ、何から何まで……お世話になりました、アメリア学園長」
私とアメリア学園長は学園の外まで歩いていく、言っていた通りに私の見張り兼、オルレアン公爵家への送迎のために講師達が馬車を停めてくれていた。
仕方がない事だとはいえ、やはり足が震える…オルレアン公爵家に帰れば父と母に何を言われるだろうか、愛されている自覚はあった、それを裏切った娘を再び愛してくれるとは思えない、これからはずっと1人なんだ。
そう思って……いた。
「な!!おい!!なにをしている!」
「止まらないか!!」
制止を呼びかける声、大声で叫ぶ喧騒の中をくぐり抜けて私の前に馬が止まった。
「お迎えに上がりました、ローザ様」
あぁ……私は貴方に嫌われていると思っていた。
酷い事を頼んで、貴方の優しさや感情につけこんで人生を奪ったようなものなのに…それでも、貴方は。
「マ、マキナ………」
「まだ、恩は返し切れておりませんよローザ様」
微笑んだマキナは私の手を引き、腰元まで手を伸ばして引き上げる。
馬に乗せられ、マキナの前へ…強くに握られた手は頼もしくて優しくて、どうして気付けなかったのだろうか…目を向ければ私の幸せはきっと近くにあったはずなのに。
「待たんか!」
講師の怒声、アメリア学園長はそれを手で制するとマキナと私を交互に見る。
「マキナ、貴方とローザとの関係は?」
「アメリア学園長……僕はこの学園に偽りの身分で入学しておりました、実際にはローザ様に養われている孤児であり家族はいません…処罰はいくらでも受けます、どうか今だけはローザ様をオルレアン公爵家へ送り届ける事を許可ください」
「……………」
「どうか……お願いします」
頭を下げたマキナにアメリア学園長は小さく頷いた。
「分かりました、ただし条件があるわ……………マキナ、貴方はこの学園を退学とします」
「そんな!!アメリア学園長!!」
叫んだ私をマキナは抑え、表情を変えずに頷いた、元から覚悟を決めていたのだろう……この学園での楽しい日々を捨ててでも私と一緒にいてくれる道を選んでくれたのだ。
「元より覚悟は決めています」
マキナの返事にアメリア学園長は小さく笑った。
「話は最後まで聞きなさい、ローザが今回の件を反省したと貴方が判断すれば2人で学園に戻ってもう一度入学してきなさい、待っているから……」
優しく微笑んで言ってくれたアメリア学園長に、私とマキナは何も言えなかった……ただただ感謝の気持ちを伝えるために頭を下げる、言葉では言い表せない感謝を伝えたくて。
「ふふ、まっていますよ……では、行きなさい」
アメリア学園長は手を振って踵を返し、振り返る事はなく再び学園へと向かっていく…マキナはそれを見ながらゆっくりと馬を走らせた。
優しい風が私の頬を撫でて、馬が歩いていく振動と共にマキナへと身体を預けて道を行く。
私は何も言えなかった、申し訳ない気持ちと今までの言動の後ろめたさから喉が詰まって話せない、どうしようもない人間だと自己否定しているとマキナが口を開いた。
「僕は…ローザ様がいなければ今ここにいなかった」
「マキナ…」
「命を救われました、貴方がいなければ学園での日々や経験は僕の人生にはありません…だから、感謝しているんです、どうかお気になさらずに」
そんな事を言われても…貴方の優しさに甘えてしまうだけだ、それでは変われない、私は優しい貴方や沢山の人々に迷惑をかけた、それを気にしないで生きていく事はできない。
「ごめんなさい…マキナ」
「………いつか、笑えます…これで終わりではありませんから」
この気持ちは忘れてはいけない、後悔も吐きたくなるような自己嫌悪も全てを背負って生きていかねばならないのだろう、それが私の贖罪であり、生き方だ。
その生き方の中で折り合いを付ければ、マキナの言う通りに……。
「本当に…笑えるかな…」
ぽろぽろと零れ落ちていく涙、マキナはそっと拭ってくれながら微笑んで答えた。
「ええ、僕はいつでも貴方の味方ですから…笑えるまで泣いても構いませんよ、僕は常に隣にいますから」
あぁ……ごめんなさい…マキナ………貴方の優しさに甘えてしまう私をどうか許してください、これからは強く生きてみせます、貴方が恩を返すに相応しい人物になってみせるから、今だけは甘えさせて。
彼の胸に顔を当てながら、私は子供のように泣き続けた、優しく撫でてくれる彼に甘えながら。
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