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デイジーside
「いつから……いつから知っていたのですか?僕の事を」
マキナの質問は当然だろう、気になっていると思う…私も余裕ある笑みを浮かべてはいるが、実際には紙一重の奇跡であったのだ、マキナのとある失言がなければ分からなかっただろう。
私はゆっくりと答える。
「騎乗競技会、アイザックに乗馬の技術を教えてもらう際に分かりましたよ」
「どうして!?そんなに早くに…」
「マキナ、貴方が知っているはずのない情報をつい口にしてしまっていたのを覚えていますか?貴方は私が懇親会でランドルフに対して強気に言った事を知っていましたね?あの懇親会はモネのような招待された者以外は貴族達しか参加できなかったはずですよ?」
「っ!」
「さらに、私がランドルフに強く言っていた事を知っているのは私とランドルフ…そして近くにいたローザしかいない…可能性としてランドルフかローザと繋がっている…この失言によってモネ達を襲ったのが貴方なのだと推測していました」
「この…部屋は?」
「私がローザであれば、色々な問題を全て消すには私を殺して全てをうやむやにするのが最も簡単です、狙うなら私の命だと思ったのです…しかし大勢の生徒がいる校舎では私に危害は加えられません、だから狙うなら誰もが1人になる寮だろうと思い、貴方が騎乗競技会で迎えに来てくれた際には虚偽の部屋にいました…そして私を襲うのであれば今日しかないとも分かっていましたよ、卒業式の準備で寮長も出ており監視は緩いので」
「それに…」とマキナの答えを聞かずに言葉を続ける。
「この長い休みの間に貴方の事を調べさせてもらいました、平民出身だと言っていたのに学園の入学届けに書かれていた住所には貴方を知っている人は誰もいませんでしたね」
ここまで聞いたマキナは抵抗する気もないのか、膝をつき…俯きながら震える声で呟いた。
「なら……なぜ、なぜ僕にあれだけ優しくしてくれたのですか?そんなに早くに分かっていれば距離をとっておけば良かったはずです!」
当然の質問だろう、何故かと問われれば私の答えは決まっている…マキナ、貴方とは…。
「友達になれそうだと思ったからです、貴方に指示をしている者の思惑なんて関係ない………マキナ、貴方とは純粋に良い関係を築けると思ったの、だから言ったでしょう?私はどのような結果であろうと貴方の味方をすると」
「デイジー…さん…」
「貴方の苦悩は筆舌に尽くしがたいと思います、でも今の貴方を見れば分かります…武器も何も持っていない、私と話し合う選択を選んでくれたのですよね?だから私も誰も呼ばないでいます」
言い終えるとマキナは瞳から涙を流しながら、それでも嬉しそうに笑った…今まで私達と接してきていた時に抱えていた苦悩は私には分からないものだ、だけど全てを知ってもらえてマキナは肩の荷が降りたようににこやかな笑顔を見せた。
「敵わないですね、デイジーさんには…」
「私もギリギリでしたけどね」
「デイジーさんの言う通りです、僕はローザ様に恩があり、それを返すためにも貴方の命を狙っていた……でも気付いたんです、そんな事をしてもローザ様は救われる訳じゃない、こんな事が恩返しのはずがないと」
「マキナ、貴方の選択を聞かせてくれますか?」
と言っても答えは予想はできた、私も同じ事を考えていたから。
マキナは膝をついたまま、手を床につけるとそのまま頭を下げた。
「ローザ様を救ってください、あの人はずっと何かに囚われている…夢を追って現実をないがしろにして目的も問わずに暴走してます、虫のいいお願いだとは分かっています…でもローザ様には話し合う人が必要なんです!!間違いを止められる人が必要なんです!」
彼にとってこの場で私にこのお願いをするのはどれ程の覚悟が必要だろうか、殺人さえ犯しても良いと思える程の恩義のある相手、だが真に恩義を感じているからこそローザを裏切る選択を悩んで見つけたのだ。
間違っていると思ったからこそ、恩返しのためにローザを裏切った……例え、一生恨まれても良いと覚悟を決めて。
「頭を上げてください、マキナ」
だからこそ、私もそれに応えねばならない…他ならない友達の頼みなのだから。
「元より、私もローザともう一度話し合うためにこの場を利用させてもらっていたのです……貴方の願いもきっと叶えてみせますよマキナ」
答えを聞いた彼は安心したように涙を浮かべながら再度、頭を下げた。
何ができるか、ローザや状況を変えられる保証なんてないが、私はもう一度だけローザと話し合う事が出来たのなら……何か変えられるかもしれないと、確証のない自信があった。
なぜか?……。
それは、今までと同様に私はローザに感じてしまったのだ。
モネ、エリザ、アイザック、マキナ達に思った事と同じ事を前回に話した時に感じたのだ、そしてこの直感は当たっているのだろう。
ローザと友達になれるかもしれない………とね。
◇◇◇
ローザside
約束の時間となった、月夜は地面に落ち始めて夜明けへと時間は進んでいく、空き教室の机に座りながら私はマキナを待ち続けた。
階下から聞こえてくる足音にマキナが帰って来たのだと思った、これでデイジーは死んで…彼らを先導する者は消えてしまう、ようやく夢が叶うのだ。
そう、思っていたのに………。
「こんばんは、ローザ………お久しぶりです」
気の抜けた事を言いながら空き教室に入ってきたのは私が殺すことを指示したデイジー自身だった、にこやかに笑みを浮かべており、緊張感のない様子に私はあっけに取られてしまった。
この待ち合わせ場所にわざわざ来たという事は…全てを知っていて、マキナが私を裏切ったという事なのに、それを感じさえない程にデイジーは気楽に警戒さえせずに旧知の中に会うようにやって来たのだ。
「…なにをしに来たの?」
考えが追い付かずに尋ねた言葉、デイジーは相変わらずににこやかな笑顔を向けたまま簡潔に答えた。
「もう一度だけ、貴方と話し合いに来たのですよ……ローザ」
私が最も会いたくなくて、殺人を頼んだ人物だったはず……なのに生きていてくれて…私に会いに来てくれた事に安心してしまうのは気の迷いなのだろうか?
「いつから……いつから知っていたのですか?僕の事を」
マキナの質問は当然だろう、気になっていると思う…私も余裕ある笑みを浮かべてはいるが、実際には紙一重の奇跡であったのだ、マキナのとある失言がなければ分からなかっただろう。
私はゆっくりと答える。
「騎乗競技会、アイザックに乗馬の技術を教えてもらう際に分かりましたよ」
「どうして!?そんなに早くに…」
「マキナ、貴方が知っているはずのない情報をつい口にしてしまっていたのを覚えていますか?貴方は私が懇親会でランドルフに対して強気に言った事を知っていましたね?あの懇親会はモネのような招待された者以外は貴族達しか参加できなかったはずですよ?」
「っ!」
「さらに、私がランドルフに強く言っていた事を知っているのは私とランドルフ…そして近くにいたローザしかいない…可能性としてランドルフかローザと繋がっている…この失言によってモネ達を襲ったのが貴方なのだと推測していました」
「この…部屋は?」
「私がローザであれば、色々な問題を全て消すには私を殺して全てをうやむやにするのが最も簡単です、狙うなら私の命だと思ったのです…しかし大勢の生徒がいる校舎では私に危害は加えられません、だから狙うなら誰もが1人になる寮だろうと思い、貴方が騎乗競技会で迎えに来てくれた際には虚偽の部屋にいました…そして私を襲うのであれば今日しかないとも分かっていましたよ、卒業式の準備で寮長も出ており監視は緩いので」
「それに…」とマキナの答えを聞かずに言葉を続ける。
「この長い休みの間に貴方の事を調べさせてもらいました、平民出身だと言っていたのに学園の入学届けに書かれていた住所には貴方を知っている人は誰もいませんでしたね」
ここまで聞いたマキナは抵抗する気もないのか、膝をつき…俯きながら震える声で呟いた。
「なら……なぜ、なぜ僕にあれだけ優しくしてくれたのですか?そんなに早くに分かっていれば距離をとっておけば良かったはずです!」
当然の質問だろう、何故かと問われれば私の答えは決まっている…マキナ、貴方とは…。
「友達になれそうだと思ったからです、貴方に指示をしている者の思惑なんて関係ない………マキナ、貴方とは純粋に良い関係を築けると思ったの、だから言ったでしょう?私はどのような結果であろうと貴方の味方をすると」
「デイジー…さん…」
「貴方の苦悩は筆舌に尽くしがたいと思います、でも今の貴方を見れば分かります…武器も何も持っていない、私と話し合う選択を選んでくれたのですよね?だから私も誰も呼ばないでいます」
言い終えるとマキナは瞳から涙を流しながら、それでも嬉しそうに笑った…今まで私達と接してきていた時に抱えていた苦悩は私には分からないものだ、だけど全てを知ってもらえてマキナは肩の荷が降りたようににこやかな笑顔を見せた。
「敵わないですね、デイジーさんには…」
「私もギリギリでしたけどね」
「デイジーさんの言う通りです、僕はローザ様に恩があり、それを返すためにも貴方の命を狙っていた……でも気付いたんです、そんな事をしてもローザ様は救われる訳じゃない、こんな事が恩返しのはずがないと」
「マキナ、貴方の選択を聞かせてくれますか?」
と言っても答えは予想はできた、私も同じ事を考えていたから。
マキナは膝をついたまま、手を床につけるとそのまま頭を下げた。
「ローザ様を救ってください、あの人はずっと何かに囚われている…夢を追って現実をないがしろにして目的も問わずに暴走してます、虫のいいお願いだとは分かっています…でもローザ様には話し合う人が必要なんです!!間違いを止められる人が必要なんです!」
彼にとってこの場で私にこのお願いをするのはどれ程の覚悟が必要だろうか、殺人さえ犯しても良いと思える程の恩義のある相手、だが真に恩義を感じているからこそローザを裏切る選択を悩んで見つけたのだ。
間違っていると思ったからこそ、恩返しのためにローザを裏切った……例え、一生恨まれても良いと覚悟を決めて。
「頭を上げてください、マキナ」
だからこそ、私もそれに応えねばならない…他ならない友達の頼みなのだから。
「元より、私もローザともう一度話し合うためにこの場を利用させてもらっていたのです……貴方の願いもきっと叶えてみせますよマキナ」
答えを聞いた彼は安心したように涙を浮かべながら再度、頭を下げた。
何ができるか、ローザや状況を変えられる保証なんてないが、私はもう一度だけローザと話し合う事が出来たのなら……何か変えられるかもしれないと、確証のない自信があった。
なぜか?……。
それは、今までと同様に私はローザに感じてしまったのだ。
モネ、エリザ、アイザック、マキナ達に思った事と同じ事を前回に話した時に感じたのだ、そしてこの直感は当たっているのだろう。
ローザと友達になれるかもしれない………とね。
◇◇◇
ローザside
約束の時間となった、月夜は地面に落ち始めて夜明けへと時間は進んでいく、空き教室の机に座りながら私はマキナを待ち続けた。
階下から聞こえてくる足音にマキナが帰って来たのだと思った、これでデイジーは死んで…彼らを先導する者は消えてしまう、ようやく夢が叶うのだ。
そう、思っていたのに………。
「こんばんは、ローザ………お久しぶりです」
気の抜けた事を言いながら空き教室に入ってきたのは私が殺すことを指示したデイジー自身だった、にこやかに笑みを浮かべており、緊張感のない様子に私はあっけに取られてしまった。
この待ち合わせ場所にわざわざ来たという事は…全てを知っていて、マキナが私を裏切ったという事なのに、それを感じさえない程にデイジーは気楽に警戒さえせずに旧知の中に会うようにやって来たのだ。
「…なにをしに来たの?」
考えが追い付かずに尋ねた言葉、デイジーは相変わらずににこやかな笑顔を向けたまま簡潔に答えた。
「もう一度だけ、貴方と話し合いに来たのですよ……ローザ」
私が最も会いたくなくて、殺人を頼んだ人物だったはず……なのに生きていてくれて…私に会いに来てくれた事に安心してしまうのは気の迷いなのだろうか?
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