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ローザside
「今帰りました…レースはどうですか?」
周りの声援の中で私はモネとエリザのいる所に戻りながら尋ねると、興奮した様子のエリザが私の肩を掴んだ。
「やっと帰ってきた!!今凄く、いい所よ!」
同じく興奮した様子で珍しく声を上げて応援しているモネも頷き、私が座る箇所をあけてくれる。
「見て、デイジー…もうこっちまで来てる!」
私達のいるゴール付近に近づいて来ている先頭馬はランドルフであった、しかし馬を見ればその速度は着実に失速している、その後ろにも名前は知らないが騎手がいたが同じく失速気味。
だが、さらにその騎手の後ろにはアイザック、マキナの順で馬を走らせている、そしてゴール間際であるにも関わらずに着実に速度が上がっていく2人を見れば…どちらかが先頭争いをするのは必然的だ。
アイザックとマキナはお互いの馬のスタミナをよく知っており、最後の一直線の勢いに賭けているのだ。
「頑張って!!」
「いきなさい!!」
モネとエリザが柄にもなく熱狂しているのもよく分かる、手に汗握るような逆転劇なのだ……アイザックもマキナも他を圧倒するように速度を上げていく、最早ランドルフでさえ敵として眼中にないのだろう。
アイザックとマキナはお互いが意識するように競い合って速くなる。
「頑張れ!!2人とも!!」
私も思わず声を出して応援する、少しでも彼らの力になれば良いと思い喉が焼けるような大声で叫ぶ。
会場の熱気は最高潮に達し、視線は完全にアイザックとマキナの2人に集中していた時に…それは起こった。
「え……………」
起こった目の前の光景に私は思わず放心する、それは周囲も同じであった。
誰もが予想出来なかった事が起こったのだから。
◇◇◇
マキナside
それは…あまりにも突然の出来事であった…僕の目の前を走っていたのはアイザックさん、そして名前も知らぬ騎手の方であった。
あと少しで追い抜き、後にランドルフ王子でさえ追い抜く速度で僕たちの馬は走っていた…しかしアイザックさんの前を走っていた騎手の馬が突然、前脚を上げて嘶いたのだ。
突然、あまりに突然の出来事に騎手は咄嗟に対応が出来なかったのか…手綱から手を離して落馬してしまう。
僕らも含めて後方には多くの走る馬がいる、落馬して地面に落ちれば蹄に踏まれて怪我…最悪は死亡してしまうかもしれない。
冷や汗が流れた、僕の思考はその突飛な出来事に対応できずに思考が止まってしまう…落ちていく騎手がゆっくりと見え、時間がゆっくりと流れるように感じた。
だが、そんなゆっくりと進んでいるような時間の中で唯一、速く動いた人物がいた、手を素早く伸ばした彼は落ちていた騎手を掴んで、片手で引き上げたのだ。
「うぉぉ!!!!」
片手で手綱を握り、騎手を引き上げたのはアイザックさんであり、雄叫びのような声を出して騎手を自身の馬に乗せる、当然ながら2人分の体重となってしまった事によってアイザックさんの乗っている馬は大きく失速していくが騎手は確実に助かっただろう。
状況を見る事しかできなかった僕がアイザックさんの隣を通り過ぎた時に、彼と目が合った。
「マキナ!!」
「っ!!はい!!」
頼まれた事を理解は出来た、咄嗟に前を向くと騎手を落としてしまった馬は制御を失っており、荒れ狂うように観客席へと向かっていく…馬を見れば興奮している事が分かった。
幾らレースで走っていたと言ってもあれ程興奮はしないだろう、まるで発情期のように暴れ走っている…いや、僕が今まで見た発情期でも最も酷いものだ。
このままあの馬を放置すれば怪我人も出てしまう、僕は真っ先に暴れている馬へと向かい手綱を引いた。
ムチを打って、無理に走らせる……ごめんよ、君が限界なのは感じている、だけどあと少しだけ頑張って。
「ごめん、頑張ってくれ!」
呟いた言葉に僕の馬は答えるようにその脚の回転が速くなっていく、観客席へと向かっていく暴れ馬までもう少しだ、手綱を引いて止めなければならない。
「届けぇぇ!!」
必死に手を伸ばた瞬間、僕の視界にはとある光景が見えた。
馬が真っ先に向かっていく先にはデイジー達がいた、このままいけば馬に踏まれて大怪我であることは確実だ…それに完全に興奮しているこの暴れ馬が大人しく通り過ぎてくれる保証はない…最悪の想像が浮かんだ。
しかし、それ以上に衝撃的な光景が目の前にはあった。
デイジー達のさらに後方に見えたのは、口元を歪ませて笑うローザ様の姿だった。
誰も見ていない事をいいことに、いつもの天真爛漫な笑顔ではなく…悲劇を望んでいる笑顔が僕の視界には写った。
––––人生を賭けて、恩を返しなさい。
きっとこれは…ローザ様が仕組んだ事、それであれば僕の役目は計画の成功を手伝う事であり、そのためには伸ばした手を引かねばならない。
––––どんな結果であろうと私達はマキナの味方です。
––––期待していますよ、マキナ。
デイジーの言葉とローザ様の言葉が僕の頭を覆いつくし、互いの声が反響していく。
僕の人生はローザ様のためであり、恩を受けたローザ様を敬愛し、人生を捧げて恩を返すために生きてきた……それだけが僕の生きがいだ、それが実現できなければ僕には生きている意味がない。
でも、デイジーは僕に楽しいと思える日々をくれた、一緒にいたいと思える友も多くできた、何よりも逆境や恐怖に立ち向かえる勇気をくれた女性で…心が惹かれている事は僕が一番よく分かっている。
僕は…僕の選択は………。
––––貴方は私が言った相手を殺すだけでいい…………人生を賭けて恩を返すと言った、その覚悟を示しなさい。
ローザ様…僕は、貴方の。
「今帰りました…レースはどうですか?」
周りの声援の中で私はモネとエリザのいる所に戻りながら尋ねると、興奮した様子のエリザが私の肩を掴んだ。
「やっと帰ってきた!!今凄く、いい所よ!」
同じく興奮した様子で珍しく声を上げて応援しているモネも頷き、私が座る箇所をあけてくれる。
「見て、デイジー…もうこっちまで来てる!」
私達のいるゴール付近に近づいて来ている先頭馬はランドルフであった、しかし馬を見ればその速度は着実に失速している、その後ろにも名前は知らないが騎手がいたが同じく失速気味。
だが、さらにその騎手の後ろにはアイザック、マキナの順で馬を走らせている、そしてゴール間際であるにも関わらずに着実に速度が上がっていく2人を見れば…どちらかが先頭争いをするのは必然的だ。
アイザックとマキナはお互いの馬のスタミナをよく知っており、最後の一直線の勢いに賭けているのだ。
「頑張って!!」
「いきなさい!!」
モネとエリザが柄にもなく熱狂しているのもよく分かる、手に汗握るような逆転劇なのだ……アイザックもマキナも他を圧倒するように速度を上げていく、最早ランドルフでさえ敵として眼中にないのだろう。
アイザックとマキナはお互いが意識するように競い合って速くなる。
「頑張れ!!2人とも!!」
私も思わず声を出して応援する、少しでも彼らの力になれば良いと思い喉が焼けるような大声で叫ぶ。
会場の熱気は最高潮に達し、視線は完全にアイザックとマキナの2人に集中していた時に…それは起こった。
「え……………」
起こった目の前の光景に私は思わず放心する、それは周囲も同じであった。
誰もが予想出来なかった事が起こったのだから。
◇◇◇
マキナside
それは…あまりにも突然の出来事であった…僕の目の前を走っていたのはアイザックさん、そして名前も知らぬ騎手の方であった。
あと少しで追い抜き、後にランドルフ王子でさえ追い抜く速度で僕たちの馬は走っていた…しかしアイザックさんの前を走っていた騎手の馬が突然、前脚を上げて嘶いたのだ。
突然、あまりに突然の出来事に騎手は咄嗟に対応が出来なかったのか…手綱から手を離して落馬してしまう。
僕らも含めて後方には多くの走る馬がいる、落馬して地面に落ちれば蹄に踏まれて怪我…最悪は死亡してしまうかもしれない。
冷や汗が流れた、僕の思考はその突飛な出来事に対応できずに思考が止まってしまう…落ちていく騎手がゆっくりと見え、時間がゆっくりと流れるように感じた。
だが、そんなゆっくりと進んでいるような時間の中で唯一、速く動いた人物がいた、手を素早く伸ばした彼は落ちていた騎手を掴んで、片手で引き上げたのだ。
「うぉぉ!!!!」
片手で手綱を握り、騎手を引き上げたのはアイザックさんであり、雄叫びのような声を出して騎手を自身の馬に乗せる、当然ながら2人分の体重となってしまった事によってアイザックさんの乗っている馬は大きく失速していくが騎手は確実に助かっただろう。
状況を見る事しかできなかった僕がアイザックさんの隣を通り過ぎた時に、彼と目が合った。
「マキナ!!」
「っ!!はい!!」
頼まれた事を理解は出来た、咄嗟に前を向くと騎手を落としてしまった馬は制御を失っており、荒れ狂うように観客席へと向かっていく…馬を見れば興奮している事が分かった。
幾らレースで走っていたと言ってもあれ程興奮はしないだろう、まるで発情期のように暴れ走っている…いや、僕が今まで見た発情期でも最も酷いものだ。
このままあの馬を放置すれば怪我人も出てしまう、僕は真っ先に暴れている馬へと向かい手綱を引いた。
ムチを打って、無理に走らせる……ごめんよ、君が限界なのは感じている、だけどあと少しだけ頑張って。
「ごめん、頑張ってくれ!」
呟いた言葉に僕の馬は答えるようにその脚の回転が速くなっていく、観客席へと向かっていく暴れ馬までもう少しだ、手綱を引いて止めなければならない。
「届けぇぇ!!」
必死に手を伸ばた瞬間、僕の視界にはとある光景が見えた。
馬が真っ先に向かっていく先にはデイジー達がいた、このままいけば馬に踏まれて大怪我であることは確実だ…それに完全に興奮しているこの暴れ馬が大人しく通り過ぎてくれる保証はない…最悪の想像が浮かんだ。
しかし、それ以上に衝撃的な光景が目の前にはあった。
デイジー達のさらに後方に見えたのは、口元を歪ませて笑うローザ様の姿だった。
誰も見ていない事をいいことに、いつもの天真爛漫な笑顔ではなく…悲劇を望んでいる笑顔が僕の視界には写った。
––––人生を賭けて、恩を返しなさい。
きっとこれは…ローザ様が仕組んだ事、それであれば僕の役目は計画の成功を手伝う事であり、そのためには伸ばした手を引かねばならない。
––––どんな結果であろうと私達はマキナの味方です。
––––期待していますよ、マキナ。
デイジーの言葉とローザ様の言葉が僕の頭を覆いつくし、互いの声が反響していく。
僕の人生はローザ様のためであり、恩を受けたローザ様を敬愛し、人生を捧げて恩を返すために生きてきた……それだけが僕の生きがいだ、それが実現できなければ僕には生きている意味がない。
でも、デイジーは僕に楽しいと思える日々をくれた、一緒にいたいと思える友も多くできた、何よりも逆境や恐怖に立ち向かえる勇気をくれた女性で…心が惹かれている事は僕が一番よく分かっている。
僕は…僕の選択は………。
––––貴方は私が言った相手を殺すだけでいい…………人生を賭けて恩を返すと言った、その覚悟を示しなさい。
ローザ様…僕は、貴方の。
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