31 / 75
28
しおりを挟む
ローザside
「まずローザさん…貴方のお話は最初から違和感がありました」
モネは思い出すように、私に語りかける。
「ランドルフ様に振られたと言っていましたが、あの懇親会での様子はどちらかと言えばデイジーさんが振っていたように見えましたよ?」
「モネの言う通りね、私達なんて悪口を言っていたら言い負かされたんだから…振られて傷心したようにはどう考えても見えなかったわ」
「エリザ、あの後は顔真っ赤だったもんね」
「…!!わ、忘れなさいよ」
確かにあの懇親会で最後に見た彼女の姿に悲壮感はなく、振られたようには見えなかった…しかしそれはランドルフの前だけで見せた偽りの威勢だと思っていたのに…まさか長年愛していたランドルフ様に捨てられても挫けもしない女性だったなんて。
「それに、お金にがめついと言っていましたが…デイジーの装飾品などは女性として好きな物を身につけるプライドからです、目立ちたいだとかお金に興味があるとは思えません…私なんて装飾品のブローチを頂いた程ですから」
大事そうに胸元に留めているアメジストの宝石のブローチを握り締めるモネに、これ以上何を言っても聞く耳さえ持たない事は私でも分かった。
「ア、アイザック様はどうして嘘だとお思いですか?…貴方に近づいているのはマグノリア公爵家の爵位を見ているに違いありませんよ!」
「ふははは、そんな訳がなかろう!俺は一度言い寄って振られているのだぞ…笑い事ではないがな………だがいつか振り向かせてみせる!」
自分で言いながら傷ついたように俯いたアイザックを見て、エリザは小声でモネに話しかける。
「あの2人って………そういう関係?」
「うーーん…デイジーはどう思ってるか分からないけどね」
な…………学園でも1、2を争う美貌の持ち主と呼ばれているアイザックを振った?デイジーは何を考えているの?ランドルフ様への復讐が目的であればマグノリア公爵家以上の有力貴族はいないというのに……
いや、よくよく考えてみれば………デイジーは一切の動きを見せていないじゃない、私やランドルフ様が勝手に自滅しているような状況……考え過ぎたの?でも懇親会で見せたあの瞳には確かに燃えるような怒りを感じた、なにも考えていないはずない。
「それで、君の言っている事は嘘だと証明できただろうか?……俺からも話があるのだが」
言いかけたアイザックに私は近寄り、手を握り抱きつく…最終手段だ、この美貌で言い寄られて断る男はいない。
「お願いです、信じてくださいアイザック様……私はデイジーさんに脅された事もあるのです、どうして信じてくれないのですか?……アイザック様…お慕いしております、信じてください」
涙を潤ませて、抱きついて頭を彼の胸に摺り寄せて懇願する。これで落ちない男はいなかった…私はそれ程の美貌を身につけている事は理解している、そしてそれこそが今世で与えられた私の武器だ。
「お願いします、アイザック様…デイジーさんに騙されないで」
私は彼の耳元で甘い囁きを放つ、どんな意志の硬い男性であろうとこの甘美な囁きで私の味方になってくれた……アイザックも同様だ、私のほほに手を置いて笑いかけて…。
くれずに、彼は私の口元を手で抑える。
「俺の話を聞け、笑っていられるのも限界だ…貴様の言葉は腹立たしい、女性でなければ殴りつけてやりたいほどにな…」
な………なんで…。
「それ以上、俺が恋したデイジーを侮辱すれば口が開けないようにしてやる………二度とつまらぬ噓を吐くな、貴様の妄言など聞く価値すらない」
………こんなに美しい姿を手に入れたのに、もう前とは違うはずなのに……なんで、私の夢を邪魔するの?もう幸せにさせてよ、ずっと願った夢を叶えさせてくれてもいいじゃない。
どうして神様や運命は私をそこまで追い込むの?もう幸せになってもいいはずなのに…あれだけ苦しんだのに…
「聞いているのか?」
あぁ…もう…もういいよ、運命がそうやって私を追い詰めるのなら…私も罪悪感や遠慮なんてしない。
「もう、面倒だよ貴方達…………」
「なにを………っ!?」
私はすぅと息を吐いて、小さく呟いた。
「やって…」
「マキナ」
暗闇の中から飛び出してきた腕、彼らを抑えて首筋に強い衝撃を与えて気絶させていく、まずは突然の出来事に動揺していたアイザックから…次に叫びそうになったエリザ、モネを瞬きの間に気絶させ、仕事を終えて黒髪をかき上げて笑ったマキナに感心しながら彼に話しかける。
「もう、面倒になっちゃったし…覚悟は決めたわ、夢を叶えるためにこの世界で遠慮なんてしてられない…デイジーを殺しましょう…マキナ」
「………本当によろしいのですか?ローザ様」
「ええ、覚悟は決まったわ……だから貴方は私のために動きなさい…分かったわねマキナ」
私は闇夜に浮かぶ月を見ながら答えると、傍で膝をついたマキナは静かに「はい」と返事をする…アイザック達はいつも通りの処置をすればいい…彼らと話したのは愚策であったが、あやふやであった覚悟は決まった。
もう、前世のようにはいかない…幸せのために…。
念願の夢のために私は動き出さなければならない。
「デイジー、貴方に恨みはないけど私は今世では幸せにならないといけないの」
たとえ、悪役令嬢なんて呼ばれても。
「まずローザさん…貴方のお話は最初から違和感がありました」
モネは思い出すように、私に語りかける。
「ランドルフ様に振られたと言っていましたが、あの懇親会での様子はどちらかと言えばデイジーさんが振っていたように見えましたよ?」
「モネの言う通りね、私達なんて悪口を言っていたら言い負かされたんだから…振られて傷心したようにはどう考えても見えなかったわ」
「エリザ、あの後は顔真っ赤だったもんね」
「…!!わ、忘れなさいよ」
確かにあの懇親会で最後に見た彼女の姿に悲壮感はなく、振られたようには見えなかった…しかしそれはランドルフの前だけで見せた偽りの威勢だと思っていたのに…まさか長年愛していたランドルフ様に捨てられても挫けもしない女性だったなんて。
「それに、お金にがめついと言っていましたが…デイジーの装飾品などは女性として好きな物を身につけるプライドからです、目立ちたいだとかお金に興味があるとは思えません…私なんて装飾品のブローチを頂いた程ですから」
大事そうに胸元に留めているアメジストの宝石のブローチを握り締めるモネに、これ以上何を言っても聞く耳さえ持たない事は私でも分かった。
「ア、アイザック様はどうして嘘だとお思いですか?…貴方に近づいているのはマグノリア公爵家の爵位を見ているに違いありませんよ!」
「ふははは、そんな訳がなかろう!俺は一度言い寄って振られているのだぞ…笑い事ではないがな………だがいつか振り向かせてみせる!」
自分で言いながら傷ついたように俯いたアイザックを見て、エリザは小声でモネに話しかける。
「あの2人って………そういう関係?」
「うーーん…デイジーはどう思ってるか分からないけどね」
な…………学園でも1、2を争う美貌の持ち主と呼ばれているアイザックを振った?デイジーは何を考えているの?ランドルフ様への復讐が目的であればマグノリア公爵家以上の有力貴族はいないというのに……
いや、よくよく考えてみれば………デイジーは一切の動きを見せていないじゃない、私やランドルフ様が勝手に自滅しているような状況……考え過ぎたの?でも懇親会で見せたあの瞳には確かに燃えるような怒りを感じた、なにも考えていないはずない。
「それで、君の言っている事は嘘だと証明できただろうか?……俺からも話があるのだが」
言いかけたアイザックに私は近寄り、手を握り抱きつく…最終手段だ、この美貌で言い寄られて断る男はいない。
「お願いです、信じてくださいアイザック様……私はデイジーさんに脅された事もあるのです、どうして信じてくれないのですか?……アイザック様…お慕いしております、信じてください」
涙を潤ませて、抱きついて頭を彼の胸に摺り寄せて懇願する。これで落ちない男はいなかった…私はそれ程の美貌を身につけている事は理解している、そしてそれこそが今世で与えられた私の武器だ。
「お願いします、アイザック様…デイジーさんに騙されないで」
私は彼の耳元で甘い囁きを放つ、どんな意志の硬い男性であろうとこの甘美な囁きで私の味方になってくれた……アイザックも同様だ、私のほほに手を置いて笑いかけて…。
くれずに、彼は私の口元を手で抑える。
「俺の話を聞け、笑っていられるのも限界だ…貴様の言葉は腹立たしい、女性でなければ殴りつけてやりたいほどにな…」
な………なんで…。
「それ以上、俺が恋したデイジーを侮辱すれば口が開けないようにしてやる………二度とつまらぬ噓を吐くな、貴様の妄言など聞く価値すらない」
………こんなに美しい姿を手に入れたのに、もう前とは違うはずなのに……なんで、私の夢を邪魔するの?もう幸せにさせてよ、ずっと願った夢を叶えさせてくれてもいいじゃない。
どうして神様や運命は私をそこまで追い込むの?もう幸せになってもいいはずなのに…あれだけ苦しんだのに…
「聞いているのか?」
あぁ…もう…もういいよ、運命がそうやって私を追い詰めるのなら…私も罪悪感や遠慮なんてしない。
「もう、面倒だよ貴方達…………」
「なにを………っ!?」
私はすぅと息を吐いて、小さく呟いた。
「やって…」
「マキナ」
暗闇の中から飛び出してきた腕、彼らを抑えて首筋に強い衝撃を与えて気絶させていく、まずは突然の出来事に動揺していたアイザックから…次に叫びそうになったエリザ、モネを瞬きの間に気絶させ、仕事を終えて黒髪をかき上げて笑ったマキナに感心しながら彼に話しかける。
「もう、面倒になっちゃったし…覚悟は決めたわ、夢を叶えるためにこの世界で遠慮なんてしてられない…デイジーを殺しましょう…マキナ」
「………本当によろしいのですか?ローザ様」
「ええ、覚悟は決まったわ……だから貴方は私のために動きなさい…分かったわねマキナ」
私は闇夜に浮かぶ月を見ながら答えると、傍で膝をついたマキナは静かに「はい」と返事をする…アイザック達はいつも通りの処置をすればいい…彼らと話したのは愚策であったが、あやふやであった覚悟は決まった。
もう、前世のようにはいかない…幸せのために…。
念願の夢のために私は動き出さなければならない。
「デイジー、貴方に恨みはないけど私は今世では幸せにならないといけないの」
たとえ、悪役令嬢なんて呼ばれても。
224
お気に入りに追加
5,798
あなたにおすすめの小説
元侯爵令嬢は冷遇を満喫する
cyaru
恋愛
第三王子の不貞による婚約解消で王様に拝み倒され、渋々嫁いだ侯爵令嬢のエレイン。
しかし教会で結婚式を挙げた後、夫の口から開口一番に出た言葉は
「王命だから君を娶っただけだ。愛してもらえるとは思わないでくれ」
夫となったパトリックの側には長年の恋人であるリリシア。
自分もだけど、向こうだってわたくしの事は見たくも無いはず!っと早々の別居宣言。
お互いで交わす契約書にほっとするパトリックとエレイン。ほくそ笑む愛人リリシア。
本宅からは屋根すら見えない別邸に引きこもりお1人様生活を満喫する予定が・・。
※専門用語は出来るだけ注釈をつけますが、作者が専門用語だと思ってない専門用語がある場合があります
※作者都合のご都合主義です。
※リアルで似たようなものが出てくると思いますが気のせいです。
※架空のお話です。現実世界の話ではありません。
※爵位や言葉使いなど現実世界、他の作者さんの作品とは異なります(似てるモノ、同じものもあります)
※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。
旦那様、そんなに彼女が大切なら私は邸を出ていきます
おてんば松尾
恋愛
彼女は二十歳という若さで、領主の妻として領地と領民を守ってきた。二年後戦地から夫が戻ると、そこには見知らぬ女性の姿があった。連れ帰った親友の恋人とその子供の面倒を見続ける旦那様に、妻のソフィアはとうとう離婚届を突き付ける。
if 主人公の性格が変わります(元サヤ編になります)
※こちらの作品カクヨムにも掲載します
愛しき我が子に捧ぐ
夜瑠
恋愛
政略結婚だと分かっていた。他に愛する人が居ることも自分が正妻に選ばれたのは家格からだとも。
私だって貴方の愛なんて求めていなかった。
なのにこんな仕打ちないじゃない。
薬を盛って流産させるなんて。
もう二度と子供を望めないなんて。
胸糞注意⚠本編3話+番外編2話の計5話構成
そんなにその方が気になるなら、どうぞずっと一緒にいて下さい。私は二度とあなたとは関わりませんので……。
しげむろ ゆうき
恋愛
男爵令嬢と仲良くする婚約者に、何度注意しても聞いてくれない
そして、ある日、婚約者のある言葉を聞き、私はつい言ってしまうのだった
全五話
※ホラー無し
俺はお前ではなく、彼女を一生涯愛し護り続けると決めたんだ! そう仰られた元婚約者様へ。貴方が愛する人が、夜会で大問題を起こしたようですよ?
柚木ゆず
恋愛
※9月20日、本編完結いたしました。明日21日より番外編として、ジェラール親子とマリエット親子の、最後のざまぁに関するお話を投稿させていただきます。
お前の家ティレア家は、財の力で爵位を得た新興貴族だ! そんな歴史も品もない家に生まれた女が、名家に生まれた俺に相応しいはずがない! 俺はどうして気付かなかったんだ――。
婚約中に心変わりをされたクレランズ伯爵家のジェラール様は、沢山の暴言を口にしたあと、一方的に婚約の解消を宣言しました。
そうしてジェラール様はわたしのもとを去り、曰く『お前と違って貴族然とした女性』であり『気品溢れる女性』な方と新たに婚約を結ばれたのですが――
ジェラール様。貴方の婚約者であるマリエット様が、侯爵家主催の夜会で大問題を起こしてしまったみたいですよ?
「私も新婚旅行に一緒に行きたい」彼を溺愛する幼馴染がお願いしてきた。彼は喜ぶが二人は喧嘩になり別れを選択する。
window
恋愛
イリス公爵令嬢とハリー王子は、お互いに惹かれ合い相思相愛になる。
「私と結婚していただけますか?」とハリーはプロポーズし、イリスはそれを受け入れた。
関係者を招待した結婚披露パーティーが開かれて、会場でエレナというハリーの幼馴染の子爵令嬢と出会う。
「新婚旅行に私も一緒に行きたい」エレナは結婚した二人の間に図々しく踏み込んでくる。エレナの厚かましいお願いに、イリスは怒るより驚き呆れていた。
「僕は構わないよ。エレナも一緒に行こう」ハリーは信じられないことを言い出す。エレナが同行することに乗り気になり、花嫁のイリスの面目をつぶし感情を傷つける。
とんでもない男と結婚したことが分かったイリスは、言葉を失うほかなく立ち尽くしていた。
殿下には既に奥様がいらっしゃる様なので私は消える事にします
Karamimi
恋愛
公爵令嬢のアナスタシアは、毒を盛られて3年間眠り続けていた。そして3年後目を覚ますと、婚約者で王太子のルイスは親友のマルモットと結婚していた。さらに自分を毒殺した犯人は、家族以上に信頼していた、専属メイドのリーナだと聞かされる。
真実を知ったアナスタシアは、深いショックを受ける。追い打ちをかける様に、家族からは役立たずと罵られ、ルイスからは側室として迎える準備をしていると告げられた。
そして輿入れ前日、マルモットから恐ろしい真実を聞かされたアナスタシアは、生きる希望を失い、着の身着のまま屋敷から逃げ出したのだが…
7万文字くらいのお話です。
よろしくお願いいたしますm(__)m
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる