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エリザside
「………………」
なにを間違っていたのだろうか、友達選び?友達の作り方?……いやきっと答えはもっと単純だ、答えを知っていて、私は気づかない振りをして意地を張り続ける。
舞踏会に1人で参加して、踊る相手もおらず…しかも順番は最悪なことに一番目のグループだった。
「くすくす、エリザさん……舞踏会に1人ですって」
「恥ずかしいですね、友人さえいないなんて……」
「あら、聞こえてしまいますわよ…だってあの方は孤独なのですから」
意図的に私に聞かせている嫌味に、言い返す言葉も思い浮かばない、皮肉なことにかつて私がデイジーにした行いは、巡り廻って私に返ってきている。
因果応報、でも私にはデイジーのように毅然と悪意に立ち向かえる覚悟や意志なんてない…伯爵家令嬢として集めていた支持も、孤独となっては侮蔑の対象のようだ。
「………」
「お兄様はあの眉目秀麗なガーランド講師だけど、妹のエリザ様がご学友もいない方だと心配になりますわよね」
「ええ、本当に…ガーランド講師はきっと手を焼いて面倒に思っておりますわよ…」
悔しかった、涙が出そうになり潤んだ瞳を唇を強く噛んで堪える。
彼女達は私と同じ伯爵家や男爵家の令嬢達であり、モネと友達だった頃は学友だったはず…けど彼女達とうまく関係を築けていたのはモネのフォローあっての事だったと別れてから気づいた。
今更、友達の作り方なんて分からない…孤独になって陰口を叩かれて、彼女達の言う通り、私はきっとガーランド兄様の足を引っ張って迷惑をかけているだけ、こんな私なんて…。
いっそ、いなくなってしまえば…。
いたたまれない気持ちになり、舞踏会の会場から逃げ出そうと、歩み始めた瞬間に私の手を誰かが引いた。
振り返った先にいたのは、今は最も会いたくないのに、会えて嬉しいと思ってしまうモネだった、こんな情けない姿を見られたくない、なのに手を握るモネを振り解こうとする力は意思に反して弱々しく、助けを求めているかのようにその場にとどまってしまう。
「離して…」
「嫌です」
「離してよ!なに!?今更、馬鹿にしてきたの?貴方が居なくなって私は孤独になって……笑ってるんでしょ?いい気味だと思ってるんでしょ?」
違う、こんな事を言いたいんじゃない……私がモネに言うべき事はたった一つなのに、その言葉が素直に吐き出せない。
私の気持ちを汲み取るように、モネは握る手に力を込め引き寄せる。
「逃げないでエリザ、私としっかりと話して」
「な、なによ……何をしに来たのよ!?デイジーと一緒にいなさいよ!それで貴方は満足だったじゃない!」
違う、なんで…なんでたった一言が言えないの?
私の言葉は心の奥底にある本心とは別にモネを引き離すような言葉を並べていく。
「いつも楽しそうにあいつと一緒で、孤独な私を…笑ってるんでしょ?今もこうやって笑いに来たんでしょ!?」
私の言葉にモネは首を横に振って否定する。
「違うよ、私は約束していたから…貴方の所に来たの」
「は?」
「約束したじゃない、高等部一年生の頃に三年生になったら舞踏会に出たいねって…」
モネの言葉に、遠い過去の記憶が甦る、かつて高等部一年生だった私達は舞踏会に出る緊張感に堪えられずに不参加を選んだ、そして決めたのだ…三年生となって学園最後の年は友達として2人で参加しようと、たった一回だけ交わした些細な約束、だけどモネはずっと覚えてくれていた。
こんな、酷いことをした私に彼女は約束を果たすために来てくれたのだ…友達として…。
こぼれた涙をもう止める事はできなかった、大粒の涙が頬をこぼれていく、みっともなくて情けない私を、最後まで気に掛けてくれたのは、あれだけ酷いことをしたモネだった。
それが堪らなく嬉しかった。
「ご、ごめんねモネ……ずっと酷いことをして、貴方の優しさに甘えて…友達として最低な事をしていたわ」
あれだけ喉につかえたように出てこなかった言葉が、今は驚く程にするりと言えた、素直な私の本心が謝罪の言葉となってモネに伝わる。
拭っても止まらぬ涙と共に、彼女に必死に許しを請うように泣いて泣いて、謝った。
「ごめん、ごめんねモネ…私、最悪だったよね………ごめん」
私の謝罪の言葉にモネは黙って手を振り上げた、殴られても平手を受けても仕方ない事をしていたと思う、だから受け入れるように目を瞑ると、ピンっとデコピンがおでこに当てられて瞳を開く。
モネはかつて過ごした友達としての想い出のように、私に笑いかけて呟いた。
「これで許すよ、絶交は終わりだね…行こうエリザ、友達として最高のダンスを見せて…狙うは優秀賞だよ!」
今までの軋轢や、しがらみを全て忘れ捨てて、再び友達として手を引いてくれたモネに私は同じく笑いながら言葉を出す。
「そうね、私が絶対にモネを優秀賞に……いえ、違うわね…一緒に最高の踊りを見せましょうモネ」
「うん!」
先程まで孤独だった私の手を引いてくれるモネに、私は最悪な事を言って、最低な行為をしていた……でもそれを笑って許してくれた彼女に、二度と同じ轍は踏まない、一生かけて謝罪しよう。
私が最高の友達だったと…モネに思ってもらえるように…。
舞踏会の会場に手を繋いで踊る私達は、一瞬も笑顔を絶やす事はなかった。
「………………」
なにを間違っていたのだろうか、友達選び?友達の作り方?……いやきっと答えはもっと単純だ、答えを知っていて、私は気づかない振りをして意地を張り続ける。
舞踏会に1人で参加して、踊る相手もおらず…しかも順番は最悪なことに一番目のグループだった。
「くすくす、エリザさん……舞踏会に1人ですって」
「恥ずかしいですね、友人さえいないなんて……」
「あら、聞こえてしまいますわよ…だってあの方は孤独なのですから」
意図的に私に聞かせている嫌味に、言い返す言葉も思い浮かばない、皮肉なことにかつて私がデイジーにした行いは、巡り廻って私に返ってきている。
因果応報、でも私にはデイジーのように毅然と悪意に立ち向かえる覚悟や意志なんてない…伯爵家令嬢として集めていた支持も、孤独となっては侮蔑の対象のようだ。
「………」
「お兄様はあの眉目秀麗なガーランド講師だけど、妹のエリザ様がご学友もいない方だと心配になりますわよね」
「ええ、本当に…ガーランド講師はきっと手を焼いて面倒に思っておりますわよ…」
悔しかった、涙が出そうになり潤んだ瞳を唇を強く噛んで堪える。
彼女達は私と同じ伯爵家や男爵家の令嬢達であり、モネと友達だった頃は学友だったはず…けど彼女達とうまく関係を築けていたのはモネのフォローあっての事だったと別れてから気づいた。
今更、友達の作り方なんて分からない…孤独になって陰口を叩かれて、彼女達の言う通り、私はきっとガーランド兄様の足を引っ張って迷惑をかけているだけ、こんな私なんて…。
いっそ、いなくなってしまえば…。
いたたまれない気持ちになり、舞踏会の会場から逃げ出そうと、歩み始めた瞬間に私の手を誰かが引いた。
振り返った先にいたのは、今は最も会いたくないのに、会えて嬉しいと思ってしまうモネだった、こんな情けない姿を見られたくない、なのに手を握るモネを振り解こうとする力は意思に反して弱々しく、助けを求めているかのようにその場にとどまってしまう。
「離して…」
「嫌です」
「離してよ!なに!?今更、馬鹿にしてきたの?貴方が居なくなって私は孤独になって……笑ってるんでしょ?いい気味だと思ってるんでしょ?」
違う、こんな事を言いたいんじゃない……私がモネに言うべき事はたった一つなのに、その言葉が素直に吐き出せない。
私の気持ちを汲み取るように、モネは握る手に力を込め引き寄せる。
「逃げないでエリザ、私としっかりと話して」
「な、なによ……何をしに来たのよ!?デイジーと一緒にいなさいよ!それで貴方は満足だったじゃない!」
違う、なんで…なんでたった一言が言えないの?
私の言葉は心の奥底にある本心とは別にモネを引き離すような言葉を並べていく。
「いつも楽しそうにあいつと一緒で、孤独な私を…笑ってるんでしょ?今もこうやって笑いに来たんでしょ!?」
私の言葉にモネは首を横に振って否定する。
「違うよ、私は約束していたから…貴方の所に来たの」
「は?」
「約束したじゃない、高等部一年生の頃に三年生になったら舞踏会に出たいねって…」
モネの言葉に、遠い過去の記憶が甦る、かつて高等部一年生だった私達は舞踏会に出る緊張感に堪えられずに不参加を選んだ、そして決めたのだ…三年生となって学園最後の年は友達として2人で参加しようと、たった一回だけ交わした些細な約束、だけどモネはずっと覚えてくれていた。
こんな、酷いことをした私に彼女は約束を果たすために来てくれたのだ…友達として…。
こぼれた涙をもう止める事はできなかった、大粒の涙が頬をこぼれていく、みっともなくて情けない私を、最後まで気に掛けてくれたのは、あれだけ酷いことをしたモネだった。
それが堪らなく嬉しかった。
「ご、ごめんねモネ……ずっと酷いことをして、貴方の優しさに甘えて…友達として最低な事をしていたわ」
あれだけ喉につかえたように出てこなかった言葉が、今は驚く程にするりと言えた、素直な私の本心が謝罪の言葉となってモネに伝わる。
拭っても止まらぬ涙と共に、彼女に必死に許しを請うように泣いて泣いて、謝った。
「ごめん、ごめんねモネ…私、最悪だったよね………ごめん」
私の謝罪の言葉にモネは黙って手を振り上げた、殴られても平手を受けても仕方ない事をしていたと思う、だから受け入れるように目を瞑ると、ピンっとデコピンがおでこに当てられて瞳を開く。
モネはかつて過ごした友達としての想い出のように、私に笑いかけて呟いた。
「これで許すよ、絶交は終わりだね…行こうエリザ、友達として最高のダンスを見せて…狙うは優秀賞だよ!」
今までの軋轢や、しがらみを全て忘れ捨てて、再び友達として手を引いてくれたモネに私は同じく笑いながら言葉を出す。
「そうね、私が絶対にモネを優秀賞に……いえ、違うわね…一緒に最高の踊りを見せましょうモネ」
「うん!」
先程まで孤独だった私の手を引いてくれるモネに、私は最悪な事を言って、最低な行為をしていた……でもそれを笑って許してくれた彼女に、二度と同じ轍は踏まない、一生かけて謝罪しよう。
私が最高の友達だったと…モネに思ってもらえるように…。
舞踏会の会場に手を繋いで踊る私達は、一瞬も笑顔を絶やす事はなかった。
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