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「本当に良かったの?デイジー」
「何がですか?モネ」
学園への登校中に心配したように話しかけるモネに返事をする、彼女は慌てたように言葉を続けた。
「アイザック様の事だよ!相手は公爵様だよ!もし恨みを買ったら」
「大丈夫です」
まぁ、怨みを買うだろうがそれが狙いでもあるのだから問題はない、私は彼に一切の魅力を感じない…確かにアイザックは眉目秀麗でこの国でも1、2を争う美男子ではあるが、前世の記憶が全力で彼を否定する、なぜなら…。
「デイジー!昨日の件はどういうつもりだ!!」
「ひ!デイジー……あ、アイザック様だよ!」
モネは私の後ろに隠れ、こちらに歩み寄るアイザックから隠れてしまう、無理もない…昨日とは違って余裕もなっく青筋を立てて迫る様は公爵家の見目麗しい令息とはかけ離れているからだ。
「おはようございます、アイザック」
「お、おはようではない!昨日はなぜ来なかった!?」
「気づいておりませんか?私は一度も行くとは明言しておりませんよ」
「な!………公爵家の俺に誘われて、拒否など許されるはずが……」
「それです」
「は!?」
私の突然の言葉にアイザックは間抜けに口を開いて戸惑っている、私は微笑みながらアイザックの胸元の襟を掴み引き寄せて周囲に聞こえないように囁く。
「私はその傲慢な考えが………大嫌いなのですよ」
「っ!!」
「貴方の言葉と態度で分かります、女性を本気で愛した事がないと」
「そ、そんな事は!俺は確かに君に惹かれて!」
「いえ、虚言です…今まで顔もろくに合わせていないのに惹かれているなど信用できません…視線や動作を見ていれば分かります、分かりやすく女性に魅入られるように意識して…大方…私の何かを探るために声をかけたのでしょう?」
「………………な、なぜ分かった」
「あら?正解でしたか?」
「!!………くそっ!」
分かりやすいブラフに引っかかってくれて助かった、大方裏で手を引いているとすればランドルフだろう…想像はつく、故に腹立たしい…。
「それで?虚言だと認めた貴方の愛の囁きなど信じられないと証明できましたが…言い訳はございますか?」
「………………」
「誰かを本気で愛したことがない貴方に私はなびくことはありません…他者を認めぬような傲慢な考えを持っていれば尚更です」
「ち、違う…俺は…」
「認めてください、愛も知らぬつまらぬ男だと…ね?」
「っ!?」
私の言葉にうなだれてしまうアイザックの襟を離してモネに微笑み「行きましょう」と声をかける。
「い、いいの?」
「ええ、言ったでしょう?大丈夫だと」
動揺しながらも付いてくるモネと共に何事もなかったようにアイザックから離れて登校を続けながら私は前世の………一回目の人生を思い出す。
私がなぜアイザックに惹かれていないのか、それには理由がある…………1回目の人生で私と一度誘って再び捨てたのは他でもないアイザックだったからだ、今回の件で理由も分かった…裏でランドルフが手を引いて唆したのだろう。
それでも、それでも一回目の人生の私が彼に傷つけられた事は事実だ…今回も誘いに乗っていれば同じような目に合っていた事は容易に想像できる。
だからこそ彼からのアクションを待っていたのだ、彼に否を突きつける事ができる機会を、もう一度目のような人生とならないために。
「デイジー…嬉しそうだね」
「………えぇ、少しだけ気分が晴れているわ」
一回目の人生では傷つけられ、再び同じ目に合いそうなった事に意趣返し出来た事に多少なりとも心はスッキリと本日の晴天のように晴れやかだ。
心地よく今日は勉学に励むことができそうだ。
––––そう思っていた私の手を後ろから再び追いかけてきたアイザックが掴んだ。
「ひ!!」
「まだ何か用ですか?アイザック」
再び隠れてしまったモネの前に立ちながら、私は彼から視線を外さずに問いかける。
「ひ、一つ聞きたい」
「………手短に」
アイザックは少し言いよどみながらも私だけに聞こえるように呟く。
「君が………色々な男性と遊んでいると聞いた……真実か?」
その質問に、私は頬を緩ませながら手短に答える。
「そう思いますか?」
「………………いや、愚門だったな…すまない」
「それに勘違いしているようなので教えてあげます」
私はアイザックだけに聞こえる囁きで真実を告げる。
「ランドルフとはもう婚約関係でもないので…騙されてますよ、貴方は」
「っ!!」
明らかに驚愕し、言葉を失って再び立ちつくしたアイザックを置いてモネの手を引く
「さぁ遅刻してしまいます、急ぎましょう」
「う、うん!」
早足で駆ける私達の背中を見つめる視線を感じながら、私は振り返る事はなかった……これで意趣返しは終わった、二度と彼が私に関わる事もないだろうと確信して。
◇◇◇
アイザックside
––––認めてください、愛も知らぬつまらぬ男だと。
彼女が言った言葉が何度も俺の頭の中を反復し、心が締め付けられるように痛んだ……それと同時に沸き起こる気持ち……今は一刻も早く彼女の誤解を解きたかった。
「違うんだデイジー……俺は、本当は君に……」
虚しく呟いた言葉の先は出てこなかった、自分のしようとしていた酷い行為を思えばとても言えない言葉だったから。
「何がですか?モネ」
学園への登校中に心配したように話しかけるモネに返事をする、彼女は慌てたように言葉を続けた。
「アイザック様の事だよ!相手は公爵様だよ!もし恨みを買ったら」
「大丈夫です」
まぁ、怨みを買うだろうがそれが狙いでもあるのだから問題はない、私は彼に一切の魅力を感じない…確かにアイザックは眉目秀麗でこの国でも1、2を争う美男子ではあるが、前世の記憶が全力で彼を否定する、なぜなら…。
「デイジー!昨日の件はどういうつもりだ!!」
「ひ!デイジー……あ、アイザック様だよ!」
モネは私の後ろに隠れ、こちらに歩み寄るアイザックから隠れてしまう、無理もない…昨日とは違って余裕もなっく青筋を立てて迫る様は公爵家の見目麗しい令息とはかけ離れているからだ。
「おはようございます、アイザック」
「お、おはようではない!昨日はなぜ来なかった!?」
「気づいておりませんか?私は一度も行くとは明言しておりませんよ」
「な!………公爵家の俺に誘われて、拒否など許されるはずが……」
「それです」
「は!?」
私の突然の言葉にアイザックは間抜けに口を開いて戸惑っている、私は微笑みながらアイザックの胸元の襟を掴み引き寄せて周囲に聞こえないように囁く。
「私はその傲慢な考えが………大嫌いなのですよ」
「っ!!」
「貴方の言葉と態度で分かります、女性を本気で愛した事がないと」
「そ、そんな事は!俺は確かに君に惹かれて!」
「いえ、虚言です…今まで顔もろくに合わせていないのに惹かれているなど信用できません…視線や動作を見ていれば分かります、分かりやすく女性に魅入られるように意識して…大方…私の何かを探るために声をかけたのでしょう?」
「………………な、なぜ分かった」
「あら?正解でしたか?」
「!!………くそっ!」
分かりやすいブラフに引っかかってくれて助かった、大方裏で手を引いているとすればランドルフだろう…想像はつく、故に腹立たしい…。
「それで?虚言だと認めた貴方の愛の囁きなど信じられないと証明できましたが…言い訳はございますか?」
「………………」
「誰かを本気で愛したことがない貴方に私はなびくことはありません…他者を認めぬような傲慢な考えを持っていれば尚更です」
「ち、違う…俺は…」
「認めてください、愛も知らぬつまらぬ男だと…ね?」
「っ!?」
私の言葉にうなだれてしまうアイザックの襟を離してモネに微笑み「行きましょう」と声をかける。
「い、いいの?」
「ええ、言ったでしょう?大丈夫だと」
動揺しながらも付いてくるモネと共に何事もなかったようにアイザックから離れて登校を続けながら私は前世の………一回目の人生を思い出す。
私がなぜアイザックに惹かれていないのか、それには理由がある…………1回目の人生で私と一度誘って再び捨てたのは他でもないアイザックだったからだ、今回の件で理由も分かった…裏でランドルフが手を引いて唆したのだろう。
それでも、それでも一回目の人生の私が彼に傷つけられた事は事実だ…今回も誘いに乗っていれば同じような目に合っていた事は容易に想像できる。
だからこそ彼からのアクションを待っていたのだ、彼に否を突きつける事ができる機会を、もう一度目のような人生とならないために。
「デイジー…嬉しそうだね」
「………えぇ、少しだけ気分が晴れているわ」
一回目の人生では傷つけられ、再び同じ目に合いそうなった事に意趣返し出来た事に多少なりとも心はスッキリと本日の晴天のように晴れやかだ。
心地よく今日は勉学に励むことができそうだ。
––––そう思っていた私の手を後ろから再び追いかけてきたアイザックが掴んだ。
「ひ!!」
「まだ何か用ですか?アイザック」
再び隠れてしまったモネの前に立ちながら、私は彼から視線を外さずに問いかける。
「ひ、一つ聞きたい」
「………手短に」
アイザックは少し言いよどみながらも私だけに聞こえるように呟く。
「君が………色々な男性と遊んでいると聞いた……真実か?」
その質問に、私は頬を緩ませながら手短に答える。
「そう思いますか?」
「………………いや、愚門だったな…すまない」
「それに勘違いしているようなので教えてあげます」
私はアイザックだけに聞こえる囁きで真実を告げる。
「ランドルフとはもう婚約関係でもないので…騙されてますよ、貴方は」
「っ!!」
明らかに驚愕し、言葉を失って再び立ちつくしたアイザックを置いてモネの手を引く
「さぁ遅刻してしまいます、急ぎましょう」
「う、うん!」
早足で駆ける私達の背中を見つめる視線を感じながら、私は振り返る事はなかった……これで意趣返しは終わった、二度と彼が私に関わる事もないだろうと確信して。
◇◇◇
アイザックside
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彼女が言った言葉が何度も俺の頭の中を反復し、心が締め付けられるように痛んだ……それと同時に沸き起こる気持ち……今は一刻も早く彼女の誤解を解きたかった。
「違うんだデイジー……俺は、本当は君に……」
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