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「行きましょうか…モネ」

「う、うん!行こうデイジー」

 私は少し緊張したモネと共に寮から出て学園へと向かう道を歩く、私が結った髪型を彼女は崩さないように風が吹けば手で抑えている、「大丈夫よ」と言っても折角結ってもらったから大事にしたいと言った彼女に嬉しい気持ちで微笑む。


 清々しく、気分が良くなる程の日差しを受けてモネと共に歩く学園までの並木道で風に吹かれて心地よい自然の香りを感じながら私は考える。
 私はとある計画を練っている、それは私を王妃から捨てたランドルフ王子さえも巻き込む計画である……それには人が多く必要であった、それも打算的に考えれば爵位の高い人間と仲良くするのが好ましい。
 正直に言うと、計画を思えばモネとは仲良くなる必要はなかった……だがそれはあくまでも打算的に考えた場合だ、私の計画と関係なく友達になりたいと素直に思った、助けたいと思った……私は自分が思うほどに冷酷な思考は出来ていないのだろう。

「いい天気だねデイジー……昨日の課題は終わってる?」

「っ……ええ、そうね終わってるわ」

 無言で考え事をしていたせいか、モネは気を遣って話題を振ってくれたので慌てて答える。

「デイジー、舞踏会には参加する予定なの?」

「舞踏会……そういえばもう少しで開催でしたね」

 モネに言われて思い出す、舞踏会とは学園主催で参加自由のレクリエーション大会であり、生徒達がダンスをして交流を深める会、確か一か月後程に開催されるはず。

「モネは出たいの?」

「………う、うん…今までは出てなかったけど…デイジーとなら出たいな」

 素直に頷くモネにそう言われては私も参加を拒否する理由も特にない、ちょうど計画もある、そういった祭事には参加しておいた方が都合がいいかもしれない。

「では参加しましょうかモネ、2人で」

「い!いいの!?嬉しい!……今までエリザにも参加しようって言ったけど彼女は行きたがらなかったから……」

 エリザの気持ちも少しだけ分かるかもしれない、学園の祭事という事は王子や公爵家の方々も参加する可能性がある……懇親会のように参加が半強制的でもなければわざわざ自分が肩身の狭い祭事に参加する理由もない。

「でも、今年はあの子も祭事に来ると思いますよ?」

「なんでわかるの?」

「ふふ、勘です」

 私が笑いながらそう言うと、モネはプクリと頬を膨らまして「言ってよ!」と明るく言ってくる…そんなやり取りに久しく感じていなかった楽しさを懐かしみながら、共に学園へとモネと共に歩みを進めた。




   ◇◇◇



ランドルフside

 
「噓だろ………なんで………」

 俺は先程見てしまった光景に思わず呟いてしまう、いじめられるかと思っていたデイジーが誰か知らない学友と共に並木道を歩き、楽しそうに談笑していたのだ。

「くそっ……なんでだ」

 完全に目論見が外れた事に苛立ちを隠せず、通りにいる学園生達にわざと肩をぶつけていく、何か言い返そうと俺を見ては固まって下を向く者達を見て少しではあるが溜飲が下がる。
 俺の知っているデイジーであればいじめられて孤立し、やがて憔悴して勝手に退学にでもなると思っていた、そうすれば俺が何もせずとも王妃の資格を失って王家の尊厳も守れると思ったのに、結果を見れば先日デイジーを責めていた2人の内、1人と仲良くしているではないか………

 俺が彼女の本当の性格を知らなかった?嫌、俺は学園でもデイジーを隠れて監視していた事もある、彼女の性格は俺に対しても表裏がなかった、という事は……懇親会のあの日、別人のように思えたがきっかけを与えた事で吹っ切れたという事か?


「ど…どうする?考えろ………俺」

 今更に焦ってしまう、勝手に退学になると思っていた安心感からデイジーを退学に追い込む手段を何も考えていなかった、どんな時もあの公爵家の麗しいローザを考えていたのだ。
 性格も変わって、行動も予想もつかなくなっているデイジーに今更ながら恐怖を感じた。

「くそ!くそ!……俺の知っているデイジーじゃないなら、考えも分からない……もしかして奴が考えているのは………ふ、復讐……捨てた俺に怨みを抱えているのでは?」


 血の気が引いて青ざめてしまった、この恐怖を振り払うためにも…俺は……

 俺は彼女の人生を潰してでも、退学に追い込まないといけない…改めて決意を固めた俺はようやく彼女を退学に追い込むための手段を考える事にした。





































   ◇◇◇

デイジーside


 ふふ、ずいぶんと焦っていますね……。
 モネとは私から仲良くなりたいと思いましたが思わず副産物です。

「どうかしたの?デイジー」

「いえ、少し羽虫が飛んでいる気がしたのです…」

「暖かくなってきたもんね」

 私はチラリと後ろを見ながらランドルフを確認する、昔から監視………いやストーカー癖があるのは知っていたけど、あの頃は愛されていると思い込んでいたけど、今は素直に気持ち悪いと思う。
 あれで隠れて見ている気なのだろうか?人混みに紛れているけど人々の視線はごまかせない

 生徒達の隙間から青ざめている姿に思わず微笑む……ランドルフの思惑は手に取るように分かる、正妃候補を捨てた事で王家に生まれる不信感を逃れるために私を退学させ、王妃としての資格を失わせるためだろう。
 今の状況でもルドウィン家から責を問い、諸侯貴族達に王家への不信感を持たせる事は容易にできただろうが…それでは足りない…私は一回目の人生で捨てられて自死を選ぶまで追い込まれた。


 あなたにも…相応の報いを…ランドルフ。





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