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しおりを挟むデイジーside
「な……なんて格好をしているのですか!?デイジー!」
歩いている私に向かって、近寄ってきた女生徒が声を上げる、見てみるとこの前の懇親会で私が𠮟責した令嬢達だった、私の姿を見て怒ったように近づいてくる。
学園で共に過ごしていたために名前は知っている、エリザとモネ…一際大きな声で詰め寄ってくるのは気の強そうなエリザだった。
「おはようございます…どうかしましたか?」
「どうかした!?私達は貴方の格好に怒っているのよ!」
「格好?………学園規定の制服であり校則を違反するような事はしていませんが?」
私の言葉に彼女達は動揺している、私がとぼけて言っているからだろう…もちろん私もこの学園で修学しているためによく分かっている、暗黙のルール……爵位や身分に応じて身だしなみは自重しなければならない……でも、二回目の人生だからこそ思う。
心底……くだらないルールだと、誰かに気を遣って自分を殺す、自分から誰かに従いにいくようなものだ…本当にくだらない。
「デイジー!貴方は私と同じ伯爵家よ!!相応しい身だしなみに気をつけるべきではなくて!?」
「……ですから、校則には一切違反しておりません…気に入らなければ講師をお呼びしますか?私が違反しているかどうか確認してもらうために」
「私が言っているのは校則じゃないわ!貴族の爵位に応じて身だしなみには暗黙のルールがあるのは貴方もよく分かっているでしょう!?」
私は鼻で笑い、髪をかき上げながら彼女達に答える。
「それは誰が作ったルールなのですか?…当然、守っている貴方達なら答えられますよね?」
「え………それは…………知らないわよ、モネ……貴方は!?」
「いや……私も知らないよ」
「そんな、顔も名前も知らない誰が作ったか言い出したかも分からないルールに縛り付けられて、頭を下げて…恥ずかしくないのですか?自分の意志を持っているのですか?」
「な………貴方ね!!公爵家の方、王族の方を見目よくするためにも私達は落ち着いた身だしなみにすべきですわ!」
「はぁ…」と思わずため息をこぼしながら、私はゆっくりと歩き出す……授業にも遅れてしまうためこれ以上、彼女達の相手を立ったまま続ける暇はない、そんな時間は無駄だ。
歩きながら、私は声を出す。
「貴方達には誇りがないのですね…女性としても貴族としても」
「はぁ!?何言ってるのよ!」
「着たい服を、身につけたい装飾品を身につける…それが私の女性としてのプライドです」
「で、でも…ルールが…」
彼女達を通り過ぎ、反論しようとどもっているエリザに振り返りながら私は言葉を続ける。
「私は誰が作ったかも分からないくだらないルールに尻尾を振って従う気はありません、私達は貴族としてやがて民の生活を預かるのです、無責任に尻尾を振って従う事は私の…いえ、ルドウィン家の矜持が許しません」
「………………」
「………」
「貴方も貴族として自覚を持ち、おかしな事には否を突き付けられるようになってください…共にこれから国を背負う事になるのだから」
私の言葉を聞いて、彼女達は何も言い返す言葉が出てこないのか……沈黙の後に吐き捨てるように言葉をだした。
「そんなの知らないわよ!!もういいわよ!話にならないわ」
足早に去っていったエリザを見送りながら、私はふと言葉を出す、それは残った1人の女性に向けて。
「モネ、貴方はどう思うのですか?」
「え!?………あ………えと」
放心し、呆けて残されてしまった彼女に声をかける、ブラウンの髪を乱雑にまとめず伸ばし、鼻頭にそばかすの目立つ令嬢だった。
「尻尾を振って生きることに…貴方の誇りは、本心はどう思っているのですか?」
彼女の瞳をまっすぐに見つめながら問いかける、彼女の茶色の瞳は戸惑い、目線を泳がせており、彼女自身も言葉を詰まらせてアタフタと慌てている。
「わ、わ…私は……………あの」
歯切れ悪く、言葉を出そうとしていたモネだったが……動揺しているのか言葉に詰まって黙ってしまう。
私は再び踵を返して教室へと向かい、後ろにいるモネに聞こえるように大きな声で呟いた。
「今度、素直になった貴方とまたお話させてください」
風の舞う中で、私の言葉を聞いたモネがどう思っていたのか……それは彼女にしか分からない事だ。
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