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7話
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王宮を出たヴィオラは、準備していた迎えの馬車に乗る。
走り出した馬車の中、ふと誰も居ない場所を見て呟いた。
「さっきのを見て、信じてくれましたか。ハース」
ヴィオラの問いかけの瞬間、馬車の車内。
彼女の対面の椅子に、一人の少年が揺らぎ現れた。
「……透明魔法も、貴方の前でも意味ないですね」
透明魔法を使っていた少年、ハースは、中性的な顔立ちに頬笑みを浮かべる。
彼は齢十三で、王宮に仕える宮廷魔法士だ。
魔法とは修練の年月だけではなく、才能による成長も大きい。
彼は後者により抜擢され、さらに努力も重ねている、希代の魔法士でもある。
「さっきまでの事を見ていたなら、私の話も信じてくれますね」
「王宮で貴方の行動を見れば……時間の逆行という話も信じざるを得ませんね。まだ動揺はしてるけど」
ハースが自らの黒髪に振れ、その紅の瞳が好奇心に満ちていくのをヴィオラは感じた。
「ぜひ研究したいです……興味が尽きないですよ、これは……」
「ふふ、貴方はいつも変わらなくて助かるわ」
ヴィオラにとって、ハースは信頼できる相手だ。
彼は損得でなく、魔法への興味という一貫した思考を持っている。
それに彼女の魔法だって、千回以上のやり直しの中で幾度もハースに教わったのものだ。
彼は前世で読んだ物語でも、ヴィオラを責める登場人物ではなかった。
だから信用できる。
「時間逆行についてや、前世の記憶というのも。魔法研究者としても興味が尽きませんよ!」
ヴィオラは今回、ハースに時間逆行の理由を調べてもらうため全てを明かした。
今までは信じてもらえなかったが、今回は王宮での一連の行動で信憑性を持たせた。
おかげで、彼の推測は広がっていく。
「しかしヴィオラ様の話通りなら……時間逆行には一つ不可解な事があります」
「不可解?」
「お話では、一度目は物語通りだったのですよね? 仮説通りなら一度目の時間逆行は起こらぬはず」
「確かにそうね。でもこれは説明できぬ事象では?」
どんな物語にもある、ご都合的な運命。
説明できぬ不可解な力というもの……とヴィオラは納得していた。
しかしハースの見解は違う。
「僕は神の思し召しや奇跡なんて類は信用しません。どんな超常事象であろうと森羅万象必ず理由があるはずです」
「なら、貴方の見解を聞かせて」
「そもそも、前世での物語通りだという運命を歩ませるのは……誰かの作為を感じませんか?」
それにはヴィオラも同意であった。
時間は戻るが、進むべき運命は同じでなくてはならない。
誰かの決めた道しか許さぬような時間逆行に、謎は確かにある。
「この作為的な謎と、一度目は運命通りであったという点を重ねれば……ある仮説が成り立ちます。それは一度目の貴方の死後に、この時間逆行を誰かが魔法で行った可能性です」
「魔法で……そんな事ができるの?」
「確定ではありませんが、こんな現象に説明ができるのは魔法のみですから」
確かに、それなら一度目に運命通りであったのにも関わらず、時間が戻った事の謎も解ける。
誰かが……この時間逆行を行った可能性がある。
その事実は、ヴィオラにとっても新しい発見であった。
「まぁ、今は答えは出ませんから。僕の方で時間逆行は調べておきます」
「ええ……助かるわ。ハース」
「いえ、でもこれで貴方に着いて行っていい成果ぐらいは示せましたか?」
あどけなく、年相応の笑みを見せるハース。
ヴィオラも釣られて、頬笑んで答えた。
「もちろんよ。王宮魔法士の職を捨ててまで着いて来てくれて、感謝します」
「騎士団長の父に、ヴィオラ様の罪は有り得ないと聞かされました。貴方の無実を証明出来れば、父のためにもなりますから」
年相応……かと思えば、ちゃんと天才と呼ばれる知恵も持つ。
そんな王宮魔法士––ハースをヴィオラが引き抜いたのには、策略の意図も当然あった。
王宮内に自らを脅かす素質がある者は、魔法の天才ハースのみ。
それを引き抜いた今、もはや憂いはない。
王家にとって、彼が居なくなる影響は多大な損失ではあるだろうが……構う必要などない。
「でも、これで良かったのですか。ヴィオラ様」
「良かった……とは?」
廃妃も終えて、全てが順調に進んで満足げなヴィオラへと、ハースが問いかけを漏らす。
「一度目で酷い事をされて、今回も切り抜けたとはいえ……結果としては不名誉を被らされてます。あんな程度の仕返しじゃなく、僕ならもっと……」
「ふふ……ハース。誰もこの程度で終わりなんて言っておりませんよ」
「え?」
「まずは、今の私の惨状を見てください」
ハースの問いかけに答えるため……ヴィオラは馬車の車窓を開く。
王都を駆ける馬車には、ヴィオラの生家の紋章が刻まれる。
それを王都の民達は鋭く、怒りを込めた瞳で見つめ……時には罵声を浴びせてもきた。
無傷での廃妃とはいえ、評判は最悪な状況だ。
「私は半生を賭けて培ってきた王妃の信頼を、リアを害した不名誉で潰された。この運命のせいで居場所を全て奪われたの」
昨夜の廃妃宣言の後、リアを王妃にしたい貴族達が王都に情報を流したのだ。
そのせいで、ヴィオラは聖女を傷つけた女性として、嫌悪の的となっている。
「居場所を奪われて……このまま終わる? いえ、私を嵌めた貴族達を野放しにしたまま……終わる訳にはいかない」
「な……なにをする気ですか。ヴィオラ様」
「決めたの、どうせ立ち向かうと決めたなら、奪われたもの全て取り返してみせると」
ヴィオラは車窓から視線を離して、窓から入る風に銀糸の髪をなびかせながら。
凛と伸ばした背、真っ直ぐな瞳を向ける。
そしてこのやり直しの末、彼女の目的でもある終着点を明かした。
「私は、リアや貴族達の不正を明かし……ルークが間違いを犯したと証明する」
「ヴィオラ様……」
「でもね、そこで終わる気は無い。廃妃されたとはいえ……このまま腐敗した王政を野放しにしないわ」
「終わる気は無い?」
「全て奪われてこの国を追われる身にされたなら、彼らから全て奪い返して私の国にしてしまえばいい」
その言葉に、ルークの目は大きく見開く。
目の前に座る女性の言葉が、嘘ではないと分かった。
「千回以上も気の狂いそうなやり直しをしたのは……そのためのノウハウと計画を手に入れるため」
言葉の重み、その覚悟の大きさにハースは息を呑む。
普通なら、廃妃された末に女王まで登り詰めるなど……到底不可能な話だ。
でも、千回以上もやり直した彼女なら、有言実行出来るとハースには思えた。
「一度目の人生、私は全て奪われて尊厳を凌辱された。あんな屈辱は二度と思い出したくない……だから完璧な勝利を掴み取ってみせる」
そう、ただ運命を受け入れた末にやり返す程度で終わらない。
完璧な勝利の元、この運命づけられた悲劇すら凌駕してみせるとヴィオラは誓う。
「と、いう訳で王家には徹底的に落ちてもらうわ。そのための手段も数多くある」
「……僕が貴方の事を甘く見ていたようですね。最後まで戦い抜く気なんですね」
「ええ、逃げて終わりは私のハッピーエンドではない。ここまでやり直したなら、揺るがぬ完璧な幸せを掴み取ってみせる」
優秀なハースも引き込み、ヴィオラは千回以上の繰り返しの末に新たな門出を歩みだす。
一度目の人生では、悲運に終えていた廃妃という末路。
だが今は、不安など一切なく彼女は進んでいく。
ヴィオラの、本当の人生の幕開けが始まった。
走り出した馬車の中、ふと誰も居ない場所を見て呟いた。
「さっきのを見て、信じてくれましたか。ハース」
ヴィオラの問いかけの瞬間、馬車の車内。
彼女の対面の椅子に、一人の少年が揺らぎ現れた。
「……透明魔法も、貴方の前でも意味ないですね」
透明魔法を使っていた少年、ハースは、中性的な顔立ちに頬笑みを浮かべる。
彼は齢十三で、王宮に仕える宮廷魔法士だ。
魔法とは修練の年月だけではなく、才能による成長も大きい。
彼は後者により抜擢され、さらに努力も重ねている、希代の魔法士でもある。
「さっきまでの事を見ていたなら、私の話も信じてくれますね」
「王宮で貴方の行動を見れば……時間の逆行という話も信じざるを得ませんね。まだ動揺はしてるけど」
ハースが自らの黒髪に振れ、その紅の瞳が好奇心に満ちていくのをヴィオラは感じた。
「ぜひ研究したいです……興味が尽きないですよ、これは……」
「ふふ、貴方はいつも変わらなくて助かるわ」
ヴィオラにとって、ハースは信頼できる相手だ。
彼は損得でなく、魔法への興味という一貫した思考を持っている。
それに彼女の魔法だって、千回以上のやり直しの中で幾度もハースに教わったのものだ。
彼は前世で読んだ物語でも、ヴィオラを責める登場人物ではなかった。
だから信用できる。
「時間逆行についてや、前世の記憶というのも。魔法研究者としても興味が尽きませんよ!」
ヴィオラは今回、ハースに時間逆行の理由を調べてもらうため全てを明かした。
今までは信じてもらえなかったが、今回は王宮での一連の行動で信憑性を持たせた。
おかげで、彼の推測は広がっていく。
「しかしヴィオラ様の話通りなら……時間逆行には一つ不可解な事があります」
「不可解?」
「お話では、一度目は物語通りだったのですよね? 仮説通りなら一度目の時間逆行は起こらぬはず」
「確かにそうね。でもこれは説明できぬ事象では?」
どんな物語にもある、ご都合的な運命。
説明できぬ不可解な力というもの……とヴィオラは納得していた。
しかしハースの見解は違う。
「僕は神の思し召しや奇跡なんて類は信用しません。どんな超常事象であろうと森羅万象必ず理由があるはずです」
「なら、貴方の見解を聞かせて」
「そもそも、前世での物語通りだという運命を歩ませるのは……誰かの作為を感じませんか?」
それにはヴィオラも同意であった。
時間は戻るが、進むべき運命は同じでなくてはならない。
誰かの決めた道しか許さぬような時間逆行に、謎は確かにある。
「この作為的な謎と、一度目は運命通りであったという点を重ねれば……ある仮説が成り立ちます。それは一度目の貴方の死後に、この時間逆行を誰かが魔法で行った可能性です」
「魔法で……そんな事ができるの?」
「確定ではありませんが、こんな現象に説明ができるのは魔法のみですから」
確かに、それなら一度目に運命通りであったのにも関わらず、時間が戻った事の謎も解ける。
誰かが……この時間逆行を行った可能性がある。
その事実は、ヴィオラにとっても新しい発見であった。
「まぁ、今は答えは出ませんから。僕の方で時間逆行は調べておきます」
「ええ……助かるわ。ハース」
「いえ、でもこれで貴方に着いて行っていい成果ぐらいは示せましたか?」
あどけなく、年相応の笑みを見せるハース。
ヴィオラも釣られて、頬笑んで答えた。
「もちろんよ。王宮魔法士の職を捨ててまで着いて来てくれて、感謝します」
「騎士団長の父に、ヴィオラ様の罪は有り得ないと聞かされました。貴方の無実を証明出来れば、父のためにもなりますから」
年相応……かと思えば、ちゃんと天才と呼ばれる知恵も持つ。
そんな王宮魔法士––ハースをヴィオラが引き抜いたのには、策略の意図も当然あった。
王宮内に自らを脅かす素質がある者は、魔法の天才ハースのみ。
それを引き抜いた今、もはや憂いはない。
王家にとって、彼が居なくなる影響は多大な損失ではあるだろうが……構う必要などない。
「でも、これで良かったのですか。ヴィオラ様」
「良かった……とは?」
廃妃も終えて、全てが順調に進んで満足げなヴィオラへと、ハースが問いかけを漏らす。
「一度目で酷い事をされて、今回も切り抜けたとはいえ……結果としては不名誉を被らされてます。あんな程度の仕返しじゃなく、僕ならもっと……」
「ふふ……ハース。誰もこの程度で終わりなんて言っておりませんよ」
「え?」
「まずは、今の私の惨状を見てください」
ハースの問いかけに答えるため……ヴィオラは馬車の車窓を開く。
王都を駆ける馬車には、ヴィオラの生家の紋章が刻まれる。
それを王都の民達は鋭く、怒りを込めた瞳で見つめ……時には罵声を浴びせてもきた。
無傷での廃妃とはいえ、評判は最悪な状況だ。
「私は半生を賭けて培ってきた王妃の信頼を、リアを害した不名誉で潰された。この運命のせいで居場所を全て奪われたの」
昨夜の廃妃宣言の後、リアを王妃にしたい貴族達が王都に情報を流したのだ。
そのせいで、ヴィオラは聖女を傷つけた女性として、嫌悪の的となっている。
「居場所を奪われて……このまま終わる? いえ、私を嵌めた貴族達を野放しにしたまま……終わる訳にはいかない」
「な……なにをする気ですか。ヴィオラ様」
「決めたの、どうせ立ち向かうと決めたなら、奪われたもの全て取り返してみせると」
ヴィオラは車窓から視線を離して、窓から入る風に銀糸の髪をなびかせながら。
凛と伸ばした背、真っ直ぐな瞳を向ける。
そしてこのやり直しの末、彼女の目的でもある終着点を明かした。
「私は、リアや貴族達の不正を明かし……ルークが間違いを犯したと証明する」
「ヴィオラ様……」
「でもね、そこで終わる気は無い。廃妃されたとはいえ……このまま腐敗した王政を野放しにしないわ」
「終わる気は無い?」
「全て奪われてこの国を追われる身にされたなら、彼らから全て奪い返して私の国にしてしまえばいい」
その言葉に、ルークの目は大きく見開く。
目の前に座る女性の言葉が、嘘ではないと分かった。
「千回以上も気の狂いそうなやり直しをしたのは……そのためのノウハウと計画を手に入れるため」
言葉の重み、その覚悟の大きさにハースは息を呑む。
普通なら、廃妃された末に女王まで登り詰めるなど……到底不可能な話だ。
でも、千回以上もやり直した彼女なら、有言実行出来るとハースには思えた。
「一度目の人生、私は全て奪われて尊厳を凌辱された。あんな屈辱は二度と思い出したくない……だから完璧な勝利を掴み取ってみせる」
そう、ただ運命を受け入れた末にやり返す程度で終わらない。
完璧な勝利の元、この運命づけられた悲劇すら凌駕してみせるとヴィオラは誓う。
「と、いう訳で王家には徹底的に落ちてもらうわ。そのための手段も数多くある」
「……僕が貴方の事を甘く見ていたようですね。最後まで戦い抜く気なんですね」
「ええ、逃げて終わりは私のハッピーエンドではない。ここまでやり直したなら、揺るがぬ完璧な幸せを掴み取ってみせる」
優秀なハースも引き込み、ヴィオラは千回以上の繰り返しの末に新たな門出を歩みだす。
一度目の人生では、悲運に終えていた廃妃という末路。
だが今は、不安など一切なく彼女は進んでいく。
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