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6話ーその夜ー
しおりを挟む村が炎で燃えている
泣き叫んで、逃げ回る村の人々は抵抗もできずにつかまっていく
野盗達は村の人々を一か所に集めた
老若男女問わずに全員をだ
「へへ、こりゃいい稼ぎになりそうだ、それに…若い女も何人かいるな」
「お頭、好きにしてもいいですか?」
「あぁ、だがまずは俺が先だ!おい若い女を全員連れてこい!!」
野盗達は手頃な女性を数人、乱暴に髪を引っ張って頭の前に連れていく
「た、助けてください…お願いします」
「あぁ。助けてやる…けどそのためには何をすべきかわかるよな!?」
お頭はおもむろに服を脱ぎだす
それを見ていた野盗達も女性へと手を伸ばしていく
「やめろ!!ヘレンをはなせ!!」
若い男性が抵抗しようと前に出るが、止められ、殴りつけられる
「いや…あなた!」
ヘレンと呼ばれた女性の髪を野党のお頭は乱暴に引き上げ叫ぶ
「残念だったな、お前らの助けはこねぇ!!取引で騎士団は動かねぇんだよ!」
「っ!!」
女性が涙を流した時に
それは現れた
「へぇ…それ、詳しく教えてくれない?」
突然、聞きなれない声が響く
野盗達が見回すと近づいてくる黒い面を付けた女性
それも武器も持っていない丸腰でだ
「おい、連れてこい」
「へい」
お頭の指示によって数人の野盗達が黒い面の女性の周りを囲む
が
「ぁぁぁ!!いでぇ!!いでぇよ!!!」
「あがぁあ!!」
彼女に近づいた野盗達は股関から血を流し、苦しみながら倒れ伏す
どこから持ち出したのか、女性は両手で小さなナイフを回しながらつぶやく
「私達は反逆者、悪を罰するために生きるもの」
「お、おい!!お前ら!!そいつを殺せ!」
事態を重く見た野盗達は武器を構えて襲い掛かる
だが、そこからは地獄であった
「♪~」
まるで、散歩をするように悠々と歩く女性に誰も触れられない
皆が身体を切られて、うめき声を上げながら倒れていく
「な…なんだ…お前は…」
既に目の前まで迫る黒い面の女性に野党のお頭はおびえたように後ずさる
「言ったでしょ、私達は…反逆者だって」
刹那、目にも捉えられない速度でお頭は血を流した
股間を切り取られ、もう私欲を吐き出すことは不可能にされたのだ
「あがぁ…あぁ………………」
女性は彼の頭を掴み、引き上げる
「さぁ…さっきの話を聞かせなさい?抵抗すればわかるよね?」
野盗達は後悔した
この国にあるうわさ、それは影
悪を滅する影がこの国には住んでいると、迷信だと思ったそれが目の前にいる存在だったと
今気づいたのだった
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
野盗達から話を聞きだした後は痛みで悶えている全員を縛り
村人達の前に放っておいた
どうするか。それは彼らが決める事だ…私の仕事はここまでだ
そして私は少し急ぎ足で彼の元へ向かう
王城の屋根の上で腰掛ける
少し風が吹き、私の髪をなびかせる
窓は…空いていない
流石に会えないかな?
そう思った時、窓が空いた
ルーク様が顔を覗かせてこちらを見て少し笑う
「来てくれだんだね?ルビー」
ニコリと笑うその顔に鼓動が早くなるが
私は彼の異変に気付いた、彼の口元は腫れていたのだ
誰かに殴られたように
「どうしたの……これ」
そっと、彼の口元をなでる
「これは、転んだんだ…朝に」
「うそね、正直に話して」
「……君は鋭いね…殴られたんだ、兄のヘンリーに」
「なぜですか」
「……僕は、国の政治について学んでいたんだ、病弱でも知恵があれば民を導ける、けどヘンリーはその知識を自分のものにするために僕に罪をかぶせ脅してきた…」
「罪をかぶせるとは?」
「この国に野盗達を侵入させ、破壊と略奪を行わせた…そして騎士団長と結託して介入できないようにし…それを命じたのは全て僕だと罪を擦り付けると……それが嫌なら、ヘンリーの傀儡として一生働けと…」
「クズね…心底……見逃してたわ……」
思わず呟いた言葉にルーク様も頷く
「彼はクズだ……けどそれを止めることもできない僕も同じさ……悪魔と呼ばれ、貴族から信用されていない僕がいくら助けを求めても誰も…見向きもしない」
彼は言葉を続けた
「今も…僕は民が苦しんでいるというのに…こうして嘆くことしかできない…」
「それは違います…その殴られた跡はあなたが抵抗した証拠」
「だけど……民は野盗達に今も苦しんで…」
「それは大丈夫、これはその野盗達の返り血ですから」
「へ?」
あっけに取られたように口を開けるルーク様に思わずくすりと笑う
「ルーク様、私は反逆者…この国の影に住まう者です…そしてあなたがもし巨悪に立ち向かうなら…私は刃となり貴方と共に協力しましょう」
私はルーク様の手を握る
暖かな感触が伝わり、彼もそれに答えるように握り返す
「君は、本当に強い人だね…ますます好きになるよ」
その言葉に、私の鼓動は大きくなる
耐え切れない感情が、気持ちが、私を動かした
「ん…」
「…」
面をすこしずらし、ルーク様に口付けを行う
窓から顔をだす彼と、屋根に座る私は長く…けど短くも感じる時間
お互いの気持ちを確かめ合う
「私も、あなたが好きになりましたよ…ルーク様」
「ルビー…君は…」
私は口だけ見せていたが、再び面を付けて立ち上がる
「次に私の姿を見ても…好きでいてください……約束ですよ…」
「も、もちろん…君を嫌いにはならないよ…」
「明日、再びヘンリー様の元へ向かって下さい…そして立ち向かうのです…いいですか」
「あぁ…分かった、僕はもう逃げないよ」
その言葉を聞いて私はうなずき
屋根を降りていく
降りた先の暗闇の中で黒い面を外した
顔が赤い…心臓が爆発しそうだ…初めてキスなんてした
好きって気持ちを初めてしった…
「お前が惚れるなんてな」
いつの間にか、傍に煙草をくわえたハイド兄様がそう呟いた
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「あぁ、そうだな…いままで隠してきたみたいだがもう逃がさねぇ、お前の惚れた王子様の為にも頑張らねぇとな」
「うるさいです、お兄様」
私達は明日の準備に取りかかる
尻尾を掴んだのだ、ヘンリー王子には然るべき報いを
レブル家はそのために生きている
ヘンリー王子は愚行を犯した、彼はこの国で悪事を働いてしまった
最強のレブル家が暗躍する国で
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