11 / 16
後日談ー終ー
しおりを挟む
「なぜ、アルベルト王子、あなたは…国外に追放されたはず」
「あぁ、戻る気はなかった…俺は死ぬ予定だったからな、何処か遠い場所で死ぬつもりだった、死に場所を求めた俺は各国を回って気づいたんだ………やはり俺に王の資格はなかった、愚かな者が王となれば結末は民を苦しめて破滅するのみだ」
「それに気づいて、一体どうする気なのですか」
「俺には罪しかない、彼女を傷つけた事も、兄に俺を断罪させてしまったのも全て俺の責任だ、幸せになる資格なんてない、だがそんな俺でも何かの役に立てるんじゃないかって」
「何かの役に………ですか?」
「…死に物狂いで力を得て思ったんだ…俺はこの世界に蔓延る愚者を、俺と同じ愚か者を止める…幸せになる資格のない俺はせめて幸せを作る人間になりたいんだ」
そう言ってアルベルトはローブからある物を取り出すとそれをマリアンヌへと投げた
「記録器…なぜこれを」
マリアンヌが受け取ったのは最近他国が開発したという魔法によって写真を記録できる魔法具
決して安くはない、高価な物でギリシア王国ではまだ一つもないはず
「これを渡したくて来たんだ…死に物狂いで人々を助けた時に手に入れた金で買った………彼女と兄の幸せを記録してやってくれ、幸せは思い出となり消えていく、だがそれがあればどんな時でも思い出せる………そして…その記録はきっと永遠に残るはずだから」
アルベルトはそう言って、再びフードを被り歩き出した
マリアンヌは魔法具を握りながら、呼び止める
「お待ちください、アルベルト様………」
アルベルトは歩みを止める
その背中はもう振り返らない意志を見せていた
彼の道は修羅の道だ
だからこそ伝えねばならない
「あなたは先ほど、幸せになる資格はないとおっしゃいました………ですがそれは違います、本来の貴方の罪は牢獄に死ぬまで囚われる事でした、ですが……ルナ様が国外追放に変えて下さったのです…それは追い出すためではありません!!貴方に、幸せになってほしいからです………生きていれば変わるものがあるはずですから…」
アルベルトはその言葉を聞いて目元を拭う
「そうか………そうだったか………俺はまた、救われていたのだな…」
涙の混じる声で肩を揺らしながら、彼は再び歩き出した
「幸せになって下さい、ルナ様のためにも」
マリアンヌの言葉を背中で受け取りながら、彼は呟く
「俺は反逆者を名乗る、どんな悪にも反逆して見せる………そしてこの罪にも…彼女の願いを叶えるためにもあがいてみせるさ」
彼は…その言葉を最後に風と共に姿を消した
跡も残さずに
「必ず………ですよ」
マリアンヌはそう呟いた
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「マリアンヌ、その傷はどうしたの!?」
「ご心配なさらないでください、ルナ様………木の枝に引っかかってしまって、それよりもオスカー様、ウィリアム様………そちらにお並び下さい」
私とオスカー様、そしてウィリアムはマリアンヌに言われた通りに並んだ
不思議に思ったが彼女の手に持つ物を見てオスカー様は何か気づいたのだろう
「記録器、誰かからいただいたのかい?」
オスカー様の問いにマリアンヌは頷いた
「ええ、レブル様より………私の知り合いです」
「そうか……いいものを頂いたな、感謝せねばな」
「ええ、ですので皆様の幸せな記録を撮ろうと思いまして」
オスカー様に聞くとそれは写真を撮る機械のようで
マリアンヌは私達の三人の幸せな姿を撮ろうとしたようだ
「マリアンヌ、こっちに来て」
「は、はい」
近づいてきたマリアンヌから私は記録器を取ると、そのまま頭上に掲げた
私とオスカー様、ウィリアム、そしてマリアンヌが写る位置に
「私達の幸せの中にマリアンヌも入っているのよ、だから一緒に…ね?」
「!!………………はい…嬉しいです」
「お父様!抱っこしてください!」
「あぁ!よっと…ウィリアム、あの機械をよく見て」
「さぁ撮りますね!!」
パシャリ
軽快な音と共に幸せの一ページが記録された
笑顔で映る彼ら
その記録は色あせずに増えていく、彼らの幸せを追うように
ウィリアムに妹ができた日や
笑顔で遊ぶ子供達の写真
そしてマリアンヌが結婚をした日
オスカー様と私が寄り添い、多数の民に惜しまれながら退位した日
それら全てが記録されていく
永遠に続く幸せを感じながら
二度と手放さないように
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ここまで読んでいただきありがとうございます
後日談はここで完結となります。
物語も此処で終わりの予定でしたが
最後にとある騎士が結婚するまでのお話を数話投稿予定です
良ければあと少しだけお付き合いください
「あぁ、戻る気はなかった…俺は死ぬ予定だったからな、何処か遠い場所で死ぬつもりだった、死に場所を求めた俺は各国を回って気づいたんだ………やはり俺に王の資格はなかった、愚かな者が王となれば結末は民を苦しめて破滅するのみだ」
「それに気づいて、一体どうする気なのですか」
「俺には罪しかない、彼女を傷つけた事も、兄に俺を断罪させてしまったのも全て俺の責任だ、幸せになる資格なんてない、だがそんな俺でも何かの役に立てるんじゃないかって」
「何かの役に………ですか?」
「…死に物狂いで力を得て思ったんだ…俺はこの世界に蔓延る愚者を、俺と同じ愚か者を止める…幸せになる資格のない俺はせめて幸せを作る人間になりたいんだ」
そう言ってアルベルトはローブからある物を取り出すとそれをマリアンヌへと投げた
「記録器…なぜこれを」
マリアンヌが受け取ったのは最近他国が開発したという魔法によって写真を記録できる魔法具
決して安くはない、高価な物でギリシア王国ではまだ一つもないはず
「これを渡したくて来たんだ…死に物狂いで人々を助けた時に手に入れた金で買った………彼女と兄の幸せを記録してやってくれ、幸せは思い出となり消えていく、だがそれがあればどんな時でも思い出せる………そして…その記録はきっと永遠に残るはずだから」
アルベルトはそう言って、再びフードを被り歩き出した
マリアンヌは魔法具を握りながら、呼び止める
「お待ちください、アルベルト様………」
アルベルトは歩みを止める
その背中はもう振り返らない意志を見せていた
彼の道は修羅の道だ
だからこそ伝えねばならない
「あなたは先ほど、幸せになる資格はないとおっしゃいました………ですがそれは違います、本来の貴方の罪は牢獄に死ぬまで囚われる事でした、ですが……ルナ様が国外追放に変えて下さったのです…それは追い出すためではありません!!貴方に、幸せになってほしいからです………生きていれば変わるものがあるはずですから…」
アルベルトはその言葉を聞いて目元を拭う
「そうか………そうだったか………俺はまた、救われていたのだな…」
涙の混じる声で肩を揺らしながら、彼は再び歩き出した
「幸せになって下さい、ルナ様のためにも」
マリアンヌの言葉を背中で受け取りながら、彼は呟く
「俺は反逆者を名乗る、どんな悪にも反逆して見せる………そしてこの罪にも…彼女の願いを叶えるためにもあがいてみせるさ」
彼は…その言葉を最後に風と共に姿を消した
跡も残さずに
「必ず………ですよ」
マリアンヌはそう呟いた
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「マリアンヌ、その傷はどうしたの!?」
「ご心配なさらないでください、ルナ様………木の枝に引っかかってしまって、それよりもオスカー様、ウィリアム様………そちらにお並び下さい」
私とオスカー様、そしてウィリアムはマリアンヌに言われた通りに並んだ
不思議に思ったが彼女の手に持つ物を見てオスカー様は何か気づいたのだろう
「記録器、誰かからいただいたのかい?」
オスカー様の問いにマリアンヌは頷いた
「ええ、レブル様より………私の知り合いです」
「そうか……いいものを頂いたな、感謝せねばな」
「ええ、ですので皆様の幸せな記録を撮ろうと思いまして」
オスカー様に聞くとそれは写真を撮る機械のようで
マリアンヌは私達の三人の幸せな姿を撮ろうとしたようだ
「マリアンヌ、こっちに来て」
「は、はい」
近づいてきたマリアンヌから私は記録器を取ると、そのまま頭上に掲げた
私とオスカー様、ウィリアム、そしてマリアンヌが写る位置に
「私達の幸せの中にマリアンヌも入っているのよ、だから一緒に…ね?」
「!!………………はい…嬉しいです」
「お父様!抱っこしてください!」
「あぁ!よっと…ウィリアム、あの機械をよく見て」
「さぁ撮りますね!!」
パシャリ
軽快な音と共に幸せの一ページが記録された
笑顔で映る彼ら
その記録は色あせずに増えていく、彼らの幸せを追うように
ウィリアムに妹ができた日や
笑顔で遊ぶ子供達の写真
そしてマリアンヌが結婚をした日
オスカー様と私が寄り添い、多数の民に惜しまれながら退位した日
それら全てが記録されていく
永遠に続く幸せを感じながら
二度と手放さないように
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ここまで読んでいただきありがとうございます
後日談はここで完結となります。
物語も此処で終わりの予定でしたが
最後にとある騎士が結婚するまでのお話を数話投稿予定です
良ければあと少しだけお付き合いください
362
お気に入りに追加
2,850
あなたにおすすめの小説
婚約破棄された令嬢のささやかな幸福
香木陽灯(旧:香木あかり)
恋愛
田舎の伯爵令嬢アリシア・ローデンには婚約者がいた。
しかし婚約者とアリシアの妹が不貞を働き、子を身ごもったのだという。
「結婚は家同士の繋がり。二人が結ばれるなら私は身を引きましょう。どうぞお幸せに」
婚約破棄されたアリシアは潔く身を引くことにした。
婚約破棄という烙印が押された以上、もう結婚は出来ない。
ならば一人で生きていくだけ。
アリシアは王都の外れにある小さな家を買い、そこで暮らし始める。
「あぁ、最高……ここなら一人で自由に暮らせるわ!」
初めての一人暮らしを満喫するアリシア。
趣味だった刺繍で生計が立てられるようになった頃……。
「アリシア、頼むから戻って来てくれ! 俺と結婚してくれ……!」
何故か元婚約者がやってきて頭を下げたのだ。
しかし丁重にお断りした翌日、
「お姉様、お願いだから戻ってきてください! あいつの相手はお姉様じゃなきゃ無理です……!」
妹までもがやってくる始末。
しかしアリシアは微笑んで首を横に振るばかり。
「私はもう結婚する気も家に戻る気もありませんの。どうぞお幸せに」
家族や婚約者は知らないことだったが、実はアリシアは幸せな生活を送っていたのだった。
離縁をさせて頂きます、なぜなら私は選ばれたので。
kanon
恋愛
「アリシア、お前はもうこの家に必要ない。ブライト家から追放する」
父からの予想外の言葉に、私は目を瞬かせる。
我が国でも名高いブライト伯爵家のだたっぴろい応接間。
用があると言われて足を踏み入れた途端に、父は私にそう言ったのだ。
困惑する私を楽しむように、姉のモンタナが薄ら笑いを浮かべる。
「あら、聞こえなかったのかしら? お父様は追放と言ったのよ。まさか追放の意味も知らないわけじゃないわよねぇ?」
今、目の前で娘が婚約破棄されていますが、夫が盛大にブチ切れているようです
シアノ
恋愛
「アンナレーナ・エリアルト公爵令嬢、僕は君との婚約を破棄する!」
卒業パーティーで王太子ソルタンからそう告げられたのは──わたくしの娘!?
娘のアンナレーナはとてもいい子で、婚約破棄されるような非などないはずだ。
しかし、ソルタンの意味ありげな視線が、何故かわたくしに向けられていて……。
婚約破棄されている令嬢のお母様視点。
サクッと読める短編です。細かいことは気にしない人向け。
過激なざまぁ描写はありません。因果応報レベルです。
幼馴染のために婚約者を追放した旦那様。しかしその後大変なことになっているようです
新野乃花(大舟)
恋愛
クライク侯爵は自身の婚約者として、一目ぼれしたエレーナの事を受け入れていた。しかしクライクはその後、自身の幼馴染であるシェリアの事ばかりを偏愛し、エレーナの事を冷遇し始める。そんな日々が繰り返されたのち、ついにクライクはエレーナのことを婚約破棄することを決める。もう戻れないところまで来てしまったクライクは、その後大きな後悔をすることとなるのだった…。
そんなに優しいメイドが恋しいなら、どうぞ彼女の元に行ってください。私は、弟達と幸せに暮らしますので。
木山楽斗
恋愛
アルムナ・メルスードは、レバデイン王国に暮らす公爵令嬢である。
彼女は、王国の第三王子であるスルーガと婚約していた。しかし、彼は自身に仕えているメイドに思いを寄せていた。
スルーガは、ことあるごとにメイドと比較して、アルムナを罵倒してくる。そんな日々に耐えられなくなったアルムナは、彼と婚約破棄することにした。
婚約破棄したアルムナは、義弟達の誰かと婚約することになった。新しい婚約者が見つからなかったため、身内と結ばれることになったのである。
父親の計らいで、選択権はアルムナに与えられた。こうして、アルムナは弟の内誰と婚約するか、悩むことになるのだった。
※下記の関連作品を読むと、より楽しめると思います。
もうあなた様の事は選びませんので
新野乃花(大舟)
恋愛
ロベルト男爵はエリクシアに対して思いを告げ、二人は婚約関係となった。しかし、ロベルトはその後幼馴染であるルアラの事ばかりを気にかけるようになり、エリクシアの事を放っておいてしまう。その後ルアラにたぶらかされる形でロベルトはエリクシアに婚約破棄を告げ、そのまま追放してしまう。…しかしそれから間もなくして、ロベルトはエリクシアに対して一通の手紙を送る。そこには、頼むから自分と復縁してほしい旨の言葉が記載されており…。
ここはあなたの家ではありません
風見ゆうみ
恋愛
「明日からミノスラード伯爵邸に住んでくれ」
婚約者にそう言われ、ミノスラード伯爵邸に行ってみたはいいものの、婚約者のケサス様は弟のランドリュー様に家督を譲渡し、子爵家の令嬢と駆け落ちしていた。
わたくしを家に呼んだのは、捨てられた令嬢として惨めな思いをさせるためだった。
実家から追い出されていたわたくしは、ランドリュー様の婚約者としてミノスラード伯爵邸で暮らし始める。
そんなある日、駆け落ちした令嬢と破局したケサス様から家に戻りたいと連絡があり――
そんな人を家に入れてあげる必要はないわよね?
※誤字脱字など見直しているつもりですが、やはりございます。申し訳ございません。教えていただけますと有り難いです。
皇太子から愛されない名ばかりの婚約者と蔑まれる公爵令嬢、いい加減面倒臭くなって皇太子から意図的に距離をとったらあっちから迫ってきた。なんで?
下菊みこと
恋愛
つれない婚約者と距離を置いたら、今度は縋られたお話。
主人公は、婚約者との関係に長年悩んでいた。そしてようやく諦めがついて距離を置く。彼女と婚約者のこれからはどうなっていくのだろうか。
小説家になろう様でも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる