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後日談①
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「先ほど、クラティア国より宣戦布告がありました…我がギリシア王国と戦を仕掛けると」
「くっ…現クラティア国王はなにを考えているのだ…」
兵士の報告を受けてオスカー王は頭を抱えて悩みこむ
前ギリシア王国の国王が退位してオスカー様は新たな王として戴冠式を受けたばかりだ、そんな彼に舞い込んだ災難は大きかった
周辺国家の中で最も軍国主義とされるクラティア王国がギリシア王国の農地を狙って宣戦布告したのだ
戦争など多数の犠牲を生むだけで何も残らない、オスカー王は対話を求めたが返ってきた返事は先ほどの報告だ
「オスカー様、大丈夫ですか?」
私は頭を抱えるオスカー様に駆け寄る
彼にかかる負担や責務は誰にもわからないかもしれない、だが私は寄り添う事はできるはず…
「あぁ。ルナ、何も心配することはない…安心するんだ」
あなたはそう言って、笑って私の頭を撫でる、私を心配させないように
その気持ちに嬉しさを感じるがそれと同時に自身の無力さに嫌気が起こる
「よ、よろしいでしょうか…オスカー王…実はクラティア王から一つ伝言があります」
報告していた兵士は汗を流しながら話す
まるで言いたくないことのように
「どうした、何かあれば報告を」
オスカー様に言われ、兵士は顔を上げて報告した
「クラティア王はこの戦を止めたくば現ギリシア国王と王妃を連れてくるようにと…護衛も、数人しか連れていくことは許さないと…」
周囲がざわつく
当たり前だ、国王と王妃…国を代表する二人が宣戦布告を仕掛けた国に出向くなど有り得ない
更には数人の護衛のみなど…
だが、私はオスカー様の手を握った
「ルナ、君はいいのかい?」
「はい、私はオスカー様と一緒ならば…どこだろうとついていきます」
「ありがとう…民を守ろう…ルナ」
こうして異例の事態ではあるが
ギリシア王国の国王と王妃がたった数人の護衛を連れて敵国のクラティア王国へと向かった
無謀だと思うものもいた、だがクラティア王国の軍事力は圧倒的で抵抗すれば大勢が死ぬ
降伏しても属国となれば民がどのような扱いになるかも分からない
民を救う為にも一筋の希望を胸に二人はクラティア王国へと向かった
国王と話せば友好の道もあるかもしれないと
だが
「よくきたなぁ…俺は宰相のオルガル・モアネスだ…噂に聞いた通りの美麗な夫婦だ」
クラティア国で出迎えたのは宰相のオルガル
ぼってりとしたお腹をかきながらオスカー様をちらりと見た後、私を見てニヤニヤと笑う
見たことのある眼だ…
その言葉遣いはとても一国の王を迎える態度ではなく、下に見るように嘲る
「ギリシア王国の国王、オスカー・ギリシアです」
「同じく王妃のルナ・ギリシアと申します」
「あぁ自己紹介はいい!!そんなものは意味がないからな、さっさと来い!」
乱雑にドアを開けて宰相は手で招く
失礼な態度に腹が立つがオスカー様も耐えているのだ、私が取り乱す訳にはいかない…
暫く歩いた後に王座の間に辿り着く
現クラティア王はこの国を大きく栄えさせた素晴らしい王だと聞く、話さえ出来れば解決策はあるはず…
王座の間への扉が開き、中へと入る
王座に座るクラティア王を見て、オスカー様と私は言葉を失った
その場にいたのは弱々しく、言葉も出せぬほど衰弱した王だった
周りの兵士達もニヤニヤと笑ってこちらを見つめている
「なんだ、クラティア王に何が起こったのですか!?」
オスカー様の戸惑う声をかき消すように
宰相のオルガルは高らかに笑った
「王の周りを俺の私兵で固めて、王は俺としか話さないと周りの貴族に広めたんだ!簡単だったよ、俺がこの国を事実上乗っ取るのはな」
オルガルはそう言って王座にずかずかと上がってクラティア王の髪を掴み引き上げる
「あ…うぅ……」
「クラティア王には少しずつ毒を飲んで頂いた!こうして衰弱すればもう言葉も、叫ぶこともできまい!!助けを呼ぶこともな!ははははは!!!」
「なんて…ひどいことを」
私の呟きにオスカー様は頷きながら私を抱き寄せた
周りの兵士が武器を手に近づいてきたためだ
「なにが目的で私達を呼んだのだ…オルガルよ」
「ふはは…なんてことはない…せっかく強い国を手に入れたのだ、俺には趣味があって…それを叶えたくてな」
オルガルが私を見つめる瞳がギラギラといやらしく光る
「愛する男女の男の前で女をなぶるのが趣味なんだ…ましてや各国に響く美貌の二人…こんなに興奮することはないぃぃ!!」
よだれを垂らしながらオルガルはそう叫んだ
見たことのある眼…私はこの眼を知っている
かつて欲に囚われて身を滅ぼし、国外に追放された
アルベルト王子と同じ…嫌な瞳
「くっ…現クラティア国王はなにを考えているのだ…」
兵士の報告を受けてオスカー王は頭を抱えて悩みこむ
前ギリシア王国の国王が退位してオスカー様は新たな王として戴冠式を受けたばかりだ、そんな彼に舞い込んだ災難は大きかった
周辺国家の中で最も軍国主義とされるクラティア王国がギリシア王国の農地を狙って宣戦布告したのだ
戦争など多数の犠牲を生むだけで何も残らない、オスカー王は対話を求めたが返ってきた返事は先ほどの報告だ
「オスカー様、大丈夫ですか?」
私は頭を抱えるオスカー様に駆け寄る
彼にかかる負担や責務は誰にもわからないかもしれない、だが私は寄り添う事はできるはず…
「あぁ。ルナ、何も心配することはない…安心するんだ」
あなたはそう言って、笑って私の頭を撫でる、私を心配させないように
その気持ちに嬉しさを感じるがそれと同時に自身の無力さに嫌気が起こる
「よ、よろしいでしょうか…オスカー王…実はクラティア王から一つ伝言があります」
報告していた兵士は汗を流しながら話す
まるで言いたくないことのように
「どうした、何かあれば報告を」
オスカー様に言われ、兵士は顔を上げて報告した
「クラティア王はこの戦を止めたくば現ギリシア国王と王妃を連れてくるようにと…護衛も、数人しか連れていくことは許さないと…」
周囲がざわつく
当たり前だ、国王と王妃…国を代表する二人が宣戦布告を仕掛けた国に出向くなど有り得ない
更には数人の護衛のみなど…
だが、私はオスカー様の手を握った
「ルナ、君はいいのかい?」
「はい、私はオスカー様と一緒ならば…どこだろうとついていきます」
「ありがとう…民を守ろう…ルナ」
こうして異例の事態ではあるが
ギリシア王国の国王と王妃がたった数人の護衛を連れて敵国のクラティア王国へと向かった
無謀だと思うものもいた、だがクラティア王国の軍事力は圧倒的で抵抗すれば大勢が死ぬ
降伏しても属国となれば民がどのような扱いになるかも分からない
民を救う為にも一筋の希望を胸に二人はクラティア王国へと向かった
国王と話せば友好の道もあるかもしれないと
だが
「よくきたなぁ…俺は宰相のオルガル・モアネスだ…噂に聞いた通りの美麗な夫婦だ」
クラティア国で出迎えたのは宰相のオルガル
ぼってりとしたお腹をかきながらオスカー様をちらりと見た後、私を見てニヤニヤと笑う
見たことのある眼だ…
その言葉遣いはとても一国の王を迎える態度ではなく、下に見るように嘲る
「ギリシア王国の国王、オスカー・ギリシアです」
「同じく王妃のルナ・ギリシアと申します」
「あぁ自己紹介はいい!!そんなものは意味がないからな、さっさと来い!」
乱雑にドアを開けて宰相は手で招く
失礼な態度に腹が立つがオスカー様も耐えているのだ、私が取り乱す訳にはいかない…
暫く歩いた後に王座の間に辿り着く
現クラティア王はこの国を大きく栄えさせた素晴らしい王だと聞く、話さえ出来れば解決策はあるはず…
王座の間への扉が開き、中へと入る
王座に座るクラティア王を見て、オスカー様と私は言葉を失った
その場にいたのは弱々しく、言葉も出せぬほど衰弱した王だった
周りの兵士達もニヤニヤと笑ってこちらを見つめている
「なんだ、クラティア王に何が起こったのですか!?」
オスカー様の戸惑う声をかき消すように
宰相のオルガルは高らかに笑った
「王の周りを俺の私兵で固めて、王は俺としか話さないと周りの貴族に広めたんだ!簡単だったよ、俺がこの国を事実上乗っ取るのはな」
オルガルはそう言って王座にずかずかと上がってクラティア王の髪を掴み引き上げる
「あ…うぅ……」
「クラティア王には少しずつ毒を飲んで頂いた!こうして衰弱すればもう言葉も、叫ぶこともできまい!!助けを呼ぶこともな!ははははは!!!」
「なんて…ひどいことを」
私の呟きにオスカー様は頷きながら私を抱き寄せた
周りの兵士が武器を手に近づいてきたためだ
「なにが目的で私達を呼んだのだ…オルガルよ」
「ふはは…なんてことはない…せっかく強い国を手に入れたのだ、俺には趣味があって…それを叶えたくてな」
オルガルが私を見つめる瞳がギラギラといやらしく光る
「愛する男女の男の前で女をなぶるのが趣味なんだ…ましてや各国に響く美貌の二人…こんなに興奮することはないぃぃ!!」
よだれを垂らしながらオルガルはそう叫んだ
見たことのある眼…私はこの眼を知っている
かつて欲に囚われて身を滅ぼし、国外に追放された
アルベルト王子と同じ…嫌な瞳
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