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13 王子と王妃
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コーデリアが、国王に?
ダニエルは王城の一室にて、呆然としたまま、座り込んでいた。
その時、部屋をノックする音が聞こえ、扉が開く。
そこには、母親である王妃が鬼気迫る顔をして立っていた。
「母上。・・・。」
呆然とすると、王妃はダニエルの元へと歩みより、その体を抱き締めた。
「大丈夫ですよ。私が必ずや貴方を国王にしてあげますからね。」
「な、何を言っているのですか。父上は、私を、王の器ではないと、おっしゃった。」
絶望の縁に立たされたダニエルの声は弱々しい。
王妃はダニエルの両頬に手を添えると優しい声で言った。
「大丈夫。コーデリアを殺してしまえばいいのです。」
ダニエルの目が見開かれ、そして、希望を宿すと頷いた。
「そ、そうですね。なんだ、そうか。」
「えぇ。大丈夫です。我が手の者に頼んで。」
ガタン・・・
「?!」
「?!」
物音に二人がビクリとした時、扉が開き国王が姿を現した。
二人は先程の話を聞かれたのではと顔を青くした。
国王は二人の前のソファへと腰かけると静かに言った。
「道を示そう。」
扉の前には騎士が立ち、王の後ろには宰相が控えている。
「王妃は離宮にて余生を過ごせ。もし謀反を企てるのであれば即刻首をはねる。」
「ひっ!」
王妃の顔はさらに青ざめる。
「王子よ。北の辺境伯にお前の年の頃に合った娘がいる。そこへと婿入りの話がある。辺境伯は武人であり、お前を鍛え直してくれるだろう。」
北の辺境伯と言えば、鬼の武人と呼ばれる人であり、そこへ婿入りするとなれば今のように生ぬるい環境で無くなるのは当たり前である。
王子は震えるのを押さえながら言った。
「そ、そんな。私は、王子ですよ?」
「あぁ。そうだ。ダニエルよ。お前は王子であった。だが、それも今日まで。」
「ち、父上!」
「王妃に教育を一任していたことが仇となった。ダニエルよ。だが、お前とて我が子。辺境伯の元にて王族とは何なのか、今一度考えるがいい。謀反を起こせば即刻首をはねる。その事は肝に命じておけ。」
王子はその場で顔を青ざめさせたまま俯き、国王は部屋を後にする。
国王の執務室に戻ると、小さく息を吐いてから椅子に座り、額に手を当てる。
「王妃、王子共に監視をつけろ。謀反の兆しあれば即刻処罰する。よいな。」
宰相はその言葉に頷き、家来に指示をする。
国王はメイドによって手際よく入れられたお茶を飲む。
「コーデリアの住まいを移し、公務にこれより同行させることを増やす。その手はずを整えよ。」
一人の側近がそれについては一任され、部屋を後にした。
宰相は項垂れた様子の国王に言った。
「英断と思われます。」
「あれは王妃に似すぎていた。遅かれ早かれ元々王の器ではなかった。」
「はい。辺境伯には以前より書状を送って知らせておりますので、ダニエル様の一件もすぐに受け入れられると思われます。」
「あぁ。」
国王はそう小さく頷くと、それ以上何も言わず、執務を進めていく。
その姿を宰相は見つめながら、国王の唯一の我儘を思い出していた。
コーデリアの母を一目見て、この王としてしか才のない男が生まれて初めて感情を見せた。
それももう、過去のこと。
「では失礼いたします。」
今回の一件にて、次期王が決まった。
民のために、宰相は事の後始末をつけていくのであった。
ダニエルは王城の一室にて、呆然としたまま、座り込んでいた。
その時、部屋をノックする音が聞こえ、扉が開く。
そこには、母親である王妃が鬼気迫る顔をして立っていた。
「母上。・・・。」
呆然とすると、王妃はダニエルの元へと歩みより、その体を抱き締めた。
「大丈夫ですよ。私が必ずや貴方を国王にしてあげますからね。」
「な、何を言っているのですか。父上は、私を、王の器ではないと、おっしゃった。」
絶望の縁に立たされたダニエルの声は弱々しい。
王妃はダニエルの両頬に手を添えると優しい声で言った。
「大丈夫。コーデリアを殺してしまえばいいのです。」
ダニエルの目が見開かれ、そして、希望を宿すと頷いた。
「そ、そうですね。なんだ、そうか。」
「えぇ。大丈夫です。我が手の者に頼んで。」
ガタン・・・
「?!」
「?!」
物音に二人がビクリとした時、扉が開き国王が姿を現した。
二人は先程の話を聞かれたのではと顔を青くした。
国王は二人の前のソファへと腰かけると静かに言った。
「道を示そう。」
扉の前には騎士が立ち、王の後ろには宰相が控えている。
「王妃は離宮にて余生を過ごせ。もし謀反を企てるのであれば即刻首をはねる。」
「ひっ!」
王妃の顔はさらに青ざめる。
「王子よ。北の辺境伯にお前の年の頃に合った娘がいる。そこへと婿入りの話がある。辺境伯は武人であり、お前を鍛え直してくれるだろう。」
北の辺境伯と言えば、鬼の武人と呼ばれる人であり、そこへ婿入りするとなれば今のように生ぬるい環境で無くなるのは当たり前である。
王子は震えるのを押さえながら言った。
「そ、そんな。私は、王子ですよ?」
「あぁ。そうだ。ダニエルよ。お前は王子であった。だが、それも今日まで。」
「ち、父上!」
「王妃に教育を一任していたことが仇となった。ダニエルよ。だが、お前とて我が子。辺境伯の元にて王族とは何なのか、今一度考えるがいい。謀反を起こせば即刻首をはねる。その事は肝に命じておけ。」
王子はその場で顔を青ざめさせたまま俯き、国王は部屋を後にする。
国王の執務室に戻ると、小さく息を吐いてから椅子に座り、額に手を当てる。
「王妃、王子共に監視をつけろ。謀反の兆しあれば即刻処罰する。よいな。」
宰相はその言葉に頷き、家来に指示をする。
国王はメイドによって手際よく入れられたお茶を飲む。
「コーデリアの住まいを移し、公務にこれより同行させることを増やす。その手はずを整えよ。」
一人の側近がそれについては一任され、部屋を後にした。
宰相は項垂れた様子の国王に言った。
「英断と思われます。」
「あれは王妃に似すぎていた。遅かれ早かれ元々王の器ではなかった。」
「はい。辺境伯には以前より書状を送って知らせておりますので、ダニエル様の一件もすぐに受け入れられると思われます。」
「あぁ。」
国王はそう小さく頷くと、それ以上何も言わず、執務を進めていく。
その姿を宰相は見つめながら、国王の唯一の我儘を思い出していた。
コーデリアの母を一目見て、この王としてしか才のない男が生まれて初めて感情を見せた。
それももう、過去のこと。
「では失礼いたします。」
今回の一件にて、次期王が決まった。
民のために、宰相は事の後始末をつけていくのであった。
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