5 / 14
5 さぁ、これからが本番です
しおりを挟む
コーデリアは静かにエドウィンの横に立つと言った。
「エドウィン様はおっしゃいました。王子であるお兄様と王妃であるお母様には逆らえないと。そうでございましょう?エドウィン様。」
エドウィンは頭を下げたまま何も言わずに無言を貫いている。
その様子を見れば、明白なことだ。
王家の命令に家臣は逆らえない。
「な!?・・・お前、まさか私が命じたとでも思っているのか?」
こてんと首を傾げて、コーデリアは尋ねる。
「違うのですか?」
「ふふ。違う。はぁ、コーデリア、現実を受け入れられないんだな。お前はそこにいるエドウィンに捨てられるのだ。先ほどの言葉を聞いたであろう。暴飲暴食をするお前など女として見れないと。」
にやにやとした笑みを浮かべるダニエルに、コーデリアは静かに言った。
「エドウィン様は、そのような事を本来おっしゃる方ではございません。それは、会場にいる皆様の方がよくわかっていることと思います。」
「なっ!?」
「それでも、あくまでもエドウィン様に命じてはいないとおっしゃるのですね?」
「あ、あぁ。証拠などないであろう?」
楽しそうなダニエルの様子を見てコーデリアはこの男はダメだなと内心で大きくため息をついた。
ダニエルが先ほどの時点で会話をやめていたならばまだ王太子としての道が残っていたかもしれないが、現時点ではどうだろうかと会場を見渡す。
視線を意識してみれば、ダニエルにではなく自分に視線が集まっているのが分かる。
なるほどと感じる。
すでに数名は覚悟を決めたようだが、まだ見定め中というところだろう。
「お兄様…これ以上の問答はここで行うべきではございません。国王陛下、下がる許可をいただいてもよろしいでしょうか。」
その言葉にダニエルは怒りでカッと顔を赤らめると言った。
「根も葉もない事を言って、ここを立ち去ろうと言うのか!」
「ここで問答する必要のない事だと言っております。」
「父上!この場で決着をつけさせていただきたい!」
拳を握りしめてそう言うダニエルに、国王は冷たい眼差しを向けると、息を吐き、そして言った。
「黙れ。この騒動の中心であるダニエル、コーデリア、エドウィンの三名は下がる事を命じる。」
「なっ!?何故ですか父上!私は今回の進行役です!この場を離れるわけにはいきません!」
「ダニエル。下がれ。」
威圧的な言葉に、ダニエルは唇を噛むと、無作法にもカツカツと足音を音を立ててその場を後にした。
コーデリアは、会場に向き直ると言った。
「舞踏会を楽しんでいらっしゃる皆様には大変見苦しい場をお見せしてしまいました。先に下がらせていただきますが、どうか、舞踏会を最後まで楽しんでくださいませ。進行役は、そちらに控えておりますものが滞りなく行いますのでご心配なく。では、失礼いたします。」
その言葉は、こうなる事を予想し代理の進行役は事前に準備をしてあったと言うことにもつながり、会場にいた数名がほうっと息をついた。
コーデリアは美しく礼をしその場に背を向け、エドウィンもその後に続く。
その様子からエドウィンがどちら側についているのか、見ている者は分かるであろう。
国王はその背を見送りながら、息をつき、これからの事を思案した。
事の発端はエドウィンの婚約破棄による行動だが、あの様子だとコーデリアと結託した上でのことであろう。恐らくはダニエルと王妃によって仕掛けられたコーデリアを貶めるための罠。それを逆手に取ったという事か。
会場を見れば、有力な貴族らの顔に今回の件についての驚きはなく、恐らくこれもエドウィンによって仕掛けられている。
ダニエルの指示によって逆らえず婚約破棄粗動を行った哀れなエドウィン。そう何も知らない令嬢らは噂をすることになるであろう。
だが、だからといって今回の一件を起こしたのはエドウィン。婚約破棄を宣言した以上、コーデリアとの婚約は今後の展開次第では難しいだろう。
それでも、コーデリアとエドウィンはこの道を選んだか。
国王は額を指でこつこつと叩きながら、にやりと笑った。
「エドウィン様はおっしゃいました。王子であるお兄様と王妃であるお母様には逆らえないと。そうでございましょう?エドウィン様。」
エドウィンは頭を下げたまま何も言わずに無言を貫いている。
その様子を見れば、明白なことだ。
王家の命令に家臣は逆らえない。
「な!?・・・お前、まさか私が命じたとでも思っているのか?」
こてんと首を傾げて、コーデリアは尋ねる。
「違うのですか?」
「ふふ。違う。はぁ、コーデリア、現実を受け入れられないんだな。お前はそこにいるエドウィンに捨てられるのだ。先ほどの言葉を聞いたであろう。暴飲暴食をするお前など女として見れないと。」
にやにやとした笑みを浮かべるダニエルに、コーデリアは静かに言った。
「エドウィン様は、そのような事を本来おっしゃる方ではございません。それは、会場にいる皆様の方がよくわかっていることと思います。」
「なっ!?」
「それでも、あくまでもエドウィン様に命じてはいないとおっしゃるのですね?」
「あ、あぁ。証拠などないであろう?」
楽しそうなダニエルの様子を見てコーデリアはこの男はダメだなと内心で大きくため息をついた。
ダニエルが先ほどの時点で会話をやめていたならばまだ王太子としての道が残っていたかもしれないが、現時点ではどうだろうかと会場を見渡す。
視線を意識してみれば、ダニエルにではなく自分に視線が集まっているのが分かる。
なるほどと感じる。
すでに数名は覚悟を決めたようだが、まだ見定め中というところだろう。
「お兄様…これ以上の問答はここで行うべきではございません。国王陛下、下がる許可をいただいてもよろしいでしょうか。」
その言葉にダニエルは怒りでカッと顔を赤らめると言った。
「根も葉もない事を言って、ここを立ち去ろうと言うのか!」
「ここで問答する必要のない事だと言っております。」
「父上!この場で決着をつけさせていただきたい!」
拳を握りしめてそう言うダニエルに、国王は冷たい眼差しを向けると、息を吐き、そして言った。
「黙れ。この騒動の中心であるダニエル、コーデリア、エドウィンの三名は下がる事を命じる。」
「なっ!?何故ですか父上!私は今回の進行役です!この場を離れるわけにはいきません!」
「ダニエル。下がれ。」
威圧的な言葉に、ダニエルは唇を噛むと、無作法にもカツカツと足音を音を立ててその場を後にした。
コーデリアは、会場に向き直ると言った。
「舞踏会を楽しんでいらっしゃる皆様には大変見苦しい場をお見せしてしまいました。先に下がらせていただきますが、どうか、舞踏会を最後まで楽しんでくださいませ。進行役は、そちらに控えておりますものが滞りなく行いますのでご心配なく。では、失礼いたします。」
その言葉は、こうなる事を予想し代理の進行役は事前に準備をしてあったと言うことにもつながり、会場にいた数名がほうっと息をついた。
コーデリアは美しく礼をしその場に背を向け、エドウィンもその後に続く。
その様子からエドウィンがどちら側についているのか、見ている者は分かるであろう。
国王はその背を見送りながら、息をつき、これからの事を思案した。
事の発端はエドウィンの婚約破棄による行動だが、あの様子だとコーデリアと結託した上でのことであろう。恐らくはダニエルと王妃によって仕掛けられたコーデリアを貶めるための罠。それを逆手に取ったという事か。
会場を見れば、有力な貴族らの顔に今回の件についての驚きはなく、恐らくこれもエドウィンによって仕掛けられている。
ダニエルの指示によって逆らえず婚約破棄粗動を行った哀れなエドウィン。そう何も知らない令嬢らは噂をすることになるであろう。
だが、だからといって今回の一件を起こしたのはエドウィン。婚約破棄を宣言した以上、コーデリアとの婚約は今後の展開次第では難しいだろう。
それでも、コーデリアとエドウィンはこの道を選んだか。
国王は額を指でこつこつと叩きながら、にやりと笑った。
23
お気に入りに追加
2,673
あなたにおすすめの小説

お姉さまが家を出て行き、婚約者を譲られました
さこの
恋愛
姉は優しく美しい。姉の名前はアリシア私の名前はフェリシア
姉の婚約者は第三王子
お茶会をすると一緒に来てと言われる
アリシアは何かとフェリシアと第三王子を二人にしたがる
ある日姉が父に言った。
アリシアでもフェリシアでも婚約者がクリスタル伯爵家の娘ならどちらでも良いですよね?
バカな事を言うなと怒る父、次の日に姉が家を、出た

【完結】悪役令嬢だったみたいなので婚約から回避してみた
21時完結
恋愛
春風に彩られた王国で、名門貴族ロゼリア家の娘ナタリアは、ある日見た悪夢によって人生が一変する。夢の中、彼女は「悪役令嬢」として婚約を破棄され、王国から追放される未来を目撃する。それを避けるため、彼女は最愛の王太子アレクサンダーから距離を置き、自らを守ろうとするが、彼の深い愛と執着が彼女の運命を変えていく。

【完結】白い結婚なのでさっさとこの家から出ていきます~私の人生本番は離婚から。しっかり稼ぎたいと思います~
Na20
恋愛
ヴァイオレットは十歳の時に両親を事故で亡くしたショックで前世を思い出した。次期マクスター伯爵であったヴァイオレットだが、まだ十歳ということで父の弟である叔父がヴァイオレットが十八歳になるまでの代理として爵位を継ぐことになる。しかし叔父はヴァイオレットが十七歳の時に縁談を取り付け家から追い出してしまう。その縁談の相手は平民の恋人がいる侯爵家の嫡男だった。
「俺はお前を愛することはない!」
初夜にそう宣言した旦那様にヴァイオレットは思った。
(この家も長くはもたないわね)
貴族同士の結婚は簡単には離婚することができない。だけど離婚できる方法はもちろんある。それが三年の白い結婚だ。
ヴァイオレットは結婚初日に白い結婚でさっさと離婚し、この家から出ていくと決めたのだった。
6話と7話の間が抜けてしまいました…
7*として投稿しましたのでよろしければご覧ください!
【完結】「私は善意に殺された」
まほりろ
恋愛
筆頭公爵家の娘である私が、母親は身分が低い王太子殿下の後ろ盾になるため、彼の婚約者になるのは自然な流れだった。
誰もが私が王太子妃になると信じて疑わなかった。
私も殿下と婚約してから一度も、彼との結婚を疑ったことはない。
だが殿下が病に倒れ、その治療のため異世界から聖女が召喚され二人が愛し合ったことで……全ての運命が狂い出す。
どなたにも悪意はなかった……私が不運な星の下に生まれた……ただそれだけ。
※無断転載を禁止します。
※朗読動画の無断配信も禁止します。
※他サイトにも投稿中。
※表紙素材はあぐりりんこ様よりお借りしております。
「Copyright(C)2022-九頭竜坂まほろん」
※小説家になろうにて2022年11月19日昼、日間異世界恋愛ランキング38位、総合59位まで上がった作品です!
婚約破棄されましたが、帝国皇女なので元婚約者は投獄します
けんゆう
ファンタジー
「お前のような下級貴族の養女など、もう不要だ!」
五年間、婚約者として尽くしてきたフィリップに、冷たく告げられたソフィア。
他の貴族たちからも嘲笑と罵倒を浴び、社交界から追放されかける。
だが、彼らは知らなかった――。
ソフィアは、ただの下級貴族の養女ではない。
そんな彼女の元に届いたのは、隣国からお兄様が、貿易利権を手土産にやってくる知らせ。
「フィリップ様、あなたが何を捨てたのかーー思い知らせて差し上げますわ!」
逆襲を決意し、華麗に着飾ってパーティーに乗り込んだソフィア。
「妹を侮辱しただと? 極刑にすべきはお前たちだ!」
ブチギレるお兄様。
貴族たちは青ざめ、王国は崩壊寸前!?
「ざまぁ」どころか 国家存亡の危機 に!?
果たしてソフィアはお兄様の暴走を止め、自由な未来を手に入れられるか?
「私の未来は、私が決めます!」
皇女の誇りをかけた逆転劇、ここに開幕!

婚約破棄されなかった者たち
ましゅぺちーの
恋愛
とある学園にて、高位貴族の令息五人を虜にした一人の男爵令嬢がいた。
令息たちは全員が男爵令嬢に本気だったが、結局彼女が選んだのはその中で最も地位の高い第一王子だった。
第一王子は許嫁であった公爵令嬢との婚約を破棄し、男爵令嬢と結婚。
公爵令嬢は嫌がらせの罪を追及され修道院送りとなった。
一方、選ばれなかった四人は当然それぞれの婚約者と結婚することとなった。
その中の一人、侯爵令嬢のシェリルは早々に夫であるアーノルドから「愛することは無い」と宣言されてしまい……。
ヒロインがハッピーエンドを迎えたその後の話。
許婚と親友は両片思いだったので2人の仲を取り持つことにしました
結城芙由奈@2/28コミカライズ発売
恋愛
<2人の仲を応援するので、どうか私を嫌わないでください>
私には子供のころから決められた許嫁がいた。ある日、久しぶりに再会した親友を紹介した私は次第に2人がお互いを好きになっていく様子に気が付いた。どちらも私にとっては大切な存在。2人から邪魔者と思われ、嫌われたくはないので、私は全力で許嫁と親友の仲を取り持つ事を心に決めた。すると彼の評判が悪くなっていき、それまで冷たかった彼の態度が軟化してきて話は意外な展開に・・・?
※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
悪役断罪?そもそも何かしましたか?
SHIN
恋愛
明日から王城に最終王妃教育のために登城する、懇談会パーティーに参加中の私の目の前では多人数の男性に囲まれてちやほやされている少女がいた。
男性はたしか婚約者がいたり妻がいたりするのだけど、良いのかしら。
あら、あそこに居ますのは第二王子では、ないですか。
えっ、婚約破棄?別に構いませんが、怒られますよ。
勘違い王子と企み少女に巻き込まれたある少女の話し。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる