【完結】婚約破棄…さぁ、これからが本番です。

かのん

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5 さぁ、これからが本番です

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 コーデリアは静かにエドウィンの横に立つと言った。

「エドウィン様はおっしゃいました。王子であるお兄様と王妃であるお母様には逆らえないと。そうでございましょう?エドウィン様。」

 エドウィンは頭を下げたまま何も言わずに無言を貫いている。

 その様子を見れば、明白なことだ。

 王家の命令に家臣は逆らえない。

「な!?・・・お前、まさか私が命じたとでも思っているのか?」

 こてんと首を傾げて、コーデリアは尋ねる。

「違うのですか?」

「ふふ。違う。はぁ、コーデリア、現実を受け入れられないんだな。お前はそこにいるエドウィンに捨てられるのだ。先ほどの言葉を聞いたであろう。暴飲暴食をするお前など女として見れないと。」

 にやにやとした笑みを浮かべるダニエルに、コーデリアは静かに言った。

「エドウィン様は、そのような事を本来おっしゃる方ではございません。それは、会場にいる皆様の方がよくわかっていることと思います。」

「なっ!?」

「それでも、あくまでもエドウィン様に命じてはいないとおっしゃるのですね?」

「あ、あぁ。証拠などないであろう?」

 楽しそうなダニエルの様子を見てコーデリアはこの男はダメだなと内心で大きくため息をついた。

 ダニエルが先ほどの時点で会話をやめていたならばまだ王太子としての道が残っていたかもしれないが、現時点ではどうだろうかと会場を見渡す。

 視線を意識してみれば、ダニエルにではなく自分に視線が集まっているのが分かる。

 なるほどと感じる。

 すでに数名は覚悟を決めたようだが、まだ見定め中というところだろう。

「お兄様…これ以上の問答はここで行うべきではございません。国王陛下、下がる許可をいただいてもよろしいでしょうか。」

 その言葉にダニエルは怒りでカッと顔を赤らめると言った。

「根も葉もない事を言って、ここを立ち去ろうと言うのか!」

「ここで問答する必要のない事だと言っております。」

「父上!この場で決着をつけさせていただきたい!」

 拳を握りしめてそう言うダニエルに、国王は冷たい眼差しを向けると、息を吐き、そして言った。

「黙れ。この騒動の中心であるダニエル、コーデリア、エドウィンの三名は下がる事を命じる。」

「なっ!?何故ですか父上!私は今回の進行役です!この場を離れるわけにはいきません!」

「ダニエル。下がれ。」

 威圧的な言葉に、ダニエルは唇を噛むと、無作法にもカツカツと足音を音を立ててその場を後にした。

 コーデリアは、会場に向き直ると言った。

「舞踏会を楽しんでいらっしゃる皆様には大変見苦しい場をお見せしてしまいました。先に下がらせていただきますが、どうか、舞踏会を最後まで楽しんでくださいませ。進行役は、そちらに控えておりますものが滞りなく行いますのでご心配なく。では、失礼いたします。」

 その言葉は、こうなる事を予想し代理の進行役は事前に準備をしてあったと言うことにもつながり、会場にいた数名がほうっと息をついた。

 コーデリアは美しく礼をしその場に背を向け、エドウィンもその後に続く。

 その様子からエドウィンがどちら側についているのか、見ている者は分かるであろう。

 国王はその背を見送りながら、息をつき、これからの事を思案した。

 事の発端はエドウィンの婚約破棄による行動だが、あの様子だとコーデリアと結託した上でのことであろう。恐らくはダニエルと王妃によって仕掛けられたコーデリアを貶めるための罠。それを逆手に取ったという事か。

 会場を見れば、有力な貴族らの顔に今回の件についての驚きはなく、恐らくこれもエドウィンによって仕掛けられている。

 ダニエルの指示によって逆らえず婚約破棄粗動を行った哀れなエドウィン。そう何も知らない令嬢らは噂をすることになるであろう。

 だが、だからといって今回の一件を起こしたのはエドウィン。婚約破棄を宣言した以上、コーデリアとの婚約は今後の展開次第では難しいだろう。

 それでも、コーデリアとエドウィンはこの道を選んだか。

 国王は額を指でこつこつと叩きながら、にやりと笑った。



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