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4 婚約破棄
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「私エドウィン・ロシフェはここにおられますコーデリア・ルディ・ロジリア第三王女殿下との婚約を破棄させていただきとうございます。」
冷たく、言い放たれた言葉に、会場からは息を飲む声が聞こえる。
それもそうであろう。
本来であれば、側妃の子とはいえ、第三王女を家臣であるはずの公爵家の長男から婚約破棄など普通ならば出来るわけがない。
だがしかし、ロシフェ家は宰相を勤め上げるほど力を持った家であり、その母は現在の国王の妹である。つまり、ロシフェとコーデリアの関係は微妙なところであった。
だからこそ誰も口をはさめない。
はさめるとするのならばそれこそ王族だけである。
第一王子であるダニエルは微かに堪えきれなかった笑みを携えると、口を開いた。
「エドウィン殿。一体どうしたというのだ?その理由を聞かせてもらおうか。」
エドウィンは頭を下げるとまるで台本を読み上げるようにして言葉を連ねて言った。
「これまで共に一緒に過ごさせてもらいましたが、その暴飲暴食をする姿はとても女とは思えません。また、婚約破棄を願う理由はご正妃様に対するコーデリア様のお言葉が過ぎるからでございます。」
「なんだと?」
楽しそうに、ダニエルと正妃がにやにやとし始めるのがコーデリアには分かった。
「私は忠実なる家臣。王子様、王妃様には逆らえぬ立場にあります。なのにもかかわらず、コーデリア様はそのご自身の立場を利用して言いたい放題。私はそれに耐えられないのです。」
忠実なる家臣は王家には逆らえない。それを強調して言われた言葉に、コーデリアは笑いそうになるのをぐっと堪える。
「我が妹は、見た目だけでなく心根までもが醜かったのか・・・はぁ。エドウィン殿。今まで婚約者という立場から耐えねばならないことが多かったのだろう。コーデリアがそこまで愚かだったとは。」
頭を下げるエドウィンを痛ましげに見たのちに、コーデリアを厳しい表情で見つめるダニエルは、静かに言った。
「コーデリアよ。我が妹。私はとても恥ずかしい。王族としての自覚を持ち合わせぬお前の行動が、今のこの現状を作り上げているのだぞ。」
コーデリアはどうにか体を起こした。
この愚兄は本当にこの会場で起こっている事の本当の意味が分かっていないのであろうか。
王族である第三王女が、家臣にバカにされているというのに、それを擁護する。
それは王族自体がバカにされているとも取られかねない。
コーデリアは会場に招待されている面々を事前に確認してあるが、成る程と理解する。
現在、会場に集まっている者達は誰一人として口を開かない。
いや、数名だけ、王子の側近らだけが口を開いているがそれは置いておこう。
つまり、王子の側近ら以外はこの会場で起こっていることの行く末によって自分が本当に使えるべき王を見定めようとしているのである。
コーデリアは静かに背筋を伸ばした。
いつもは背中を丸め、うつむき、必要なこと以外は口を開かないコーデリア。
身を守るために食べて醜く外見を変えた。
だが、今度は身を守るためではなく、この国のために醜い外見を捨て去らなければならない時が来たのだ。
母に、心の中で謝る。
だが、もう母の言いつけに守られているだけの子どもではないのだ。
呼吸を整えると、コーデリアは国王陛下に頭を下げて言った。
「国王陛下。発言を許可していただけるでしょうか。」
国王は静かに頷いた。
「許可する。」
コーデリアは真っ直ぐにダニエルを見つめると言った。
「お兄様。私はお母様である正妃様の悪口を言った事などございません。」
言い返されるとは思っても見なかったのだろう。
ダニエルの眉間にしわがより、明らかに動揺するように視線が泳ぐ。
「な、ならばお前はエドウィン殿が嘘をついているといいたいのか?なんという女だ。婚約者を陥れるつもりか!?」
コーデリアはあくまでも優雅に、顔には感情を出さずに答えた。
「先程のエドウィン様の言葉が全てを物語っております。」
さぁ、これからが本番である。
冷たく、言い放たれた言葉に、会場からは息を飲む声が聞こえる。
それもそうであろう。
本来であれば、側妃の子とはいえ、第三王女を家臣であるはずの公爵家の長男から婚約破棄など普通ならば出来るわけがない。
だがしかし、ロシフェ家は宰相を勤め上げるほど力を持った家であり、その母は現在の国王の妹である。つまり、ロシフェとコーデリアの関係は微妙なところであった。
だからこそ誰も口をはさめない。
はさめるとするのならばそれこそ王族だけである。
第一王子であるダニエルは微かに堪えきれなかった笑みを携えると、口を開いた。
「エドウィン殿。一体どうしたというのだ?その理由を聞かせてもらおうか。」
エドウィンは頭を下げるとまるで台本を読み上げるようにして言葉を連ねて言った。
「これまで共に一緒に過ごさせてもらいましたが、その暴飲暴食をする姿はとても女とは思えません。また、婚約破棄を願う理由はご正妃様に対するコーデリア様のお言葉が過ぎるからでございます。」
「なんだと?」
楽しそうに、ダニエルと正妃がにやにやとし始めるのがコーデリアには分かった。
「私は忠実なる家臣。王子様、王妃様には逆らえぬ立場にあります。なのにもかかわらず、コーデリア様はそのご自身の立場を利用して言いたい放題。私はそれに耐えられないのです。」
忠実なる家臣は王家には逆らえない。それを強調して言われた言葉に、コーデリアは笑いそうになるのをぐっと堪える。
「我が妹は、見た目だけでなく心根までもが醜かったのか・・・はぁ。エドウィン殿。今まで婚約者という立場から耐えねばならないことが多かったのだろう。コーデリアがそこまで愚かだったとは。」
頭を下げるエドウィンを痛ましげに見たのちに、コーデリアを厳しい表情で見つめるダニエルは、静かに言った。
「コーデリアよ。我が妹。私はとても恥ずかしい。王族としての自覚を持ち合わせぬお前の行動が、今のこの現状を作り上げているのだぞ。」
コーデリアはどうにか体を起こした。
この愚兄は本当にこの会場で起こっている事の本当の意味が分かっていないのであろうか。
王族である第三王女が、家臣にバカにされているというのに、それを擁護する。
それは王族自体がバカにされているとも取られかねない。
コーデリアは会場に招待されている面々を事前に確認してあるが、成る程と理解する。
現在、会場に集まっている者達は誰一人として口を開かない。
いや、数名だけ、王子の側近らだけが口を開いているがそれは置いておこう。
つまり、王子の側近ら以外はこの会場で起こっていることの行く末によって自分が本当に使えるべき王を見定めようとしているのである。
コーデリアは静かに背筋を伸ばした。
いつもは背中を丸め、うつむき、必要なこと以外は口を開かないコーデリア。
身を守るために食べて醜く外見を変えた。
だが、今度は身を守るためではなく、この国のために醜い外見を捨て去らなければならない時が来たのだ。
母に、心の中で謝る。
だが、もう母の言いつけに守られているだけの子どもではないのだ。
呼吸を整えると、コーデリアは国王陛下に頭を下げて言った。
「国王陛下。発言を許可していただけるでしょうか。」
国王は静かに頷いた。
「許可する。」
コーデリアは真っ直ぐにダニエルを見つめると言った。
「お兄様。私はお母様である正妃様の悪口を言った事などございません。」
言い返されるとは思っても見なかったのだろう。
ダニエルの眉間にしわがより、明らかに動揺するように視線が泳ぐ。
「な、ならばお前はエドウィン殿が嘘をついているといいたいのか?なんという女だ。婚約者を陥れるつもりか!?」
コーデリアはあくまでも優雅に、顔には感情を出さずに答えた。
「先程のエドウィン様の言葉が全てを物語っております。」
さぁ、これからが本番である。
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