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十八話 悪い女

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 ルチアーナは純白の衣装を身に纏い、まるで絵本から出てきた妖精のように可憐であった。その様子に涙するのは、ジークの親類であるシュタイン侯爵夫妻であり、今日は、父、母、として結婚式に参列してくれている。

 名前だけの両親かと思いきや、シュタイン侯爵夫妻は、ルチアーナの事を実の娘のようにかわいがった。

 ジークは嫌がったが、シュタイン夫妻は正式に夫婦になる前は別々に暮らすべきだとして、ルチアーナを自分の屋敷で引き取り一緒に時間を過ごした。

 ジークは毎日欠かさずルチアーナに手紙と花束を届け、二人は結婚式までの間、恋人同士のやり取りを楽しみ、そして、今日、ついに、結婚式を挙げる。

「綺麗だよ。ルチアーナ。」

「本当に。あぁ、もっと長い時間貴方と一緒に暮らしたかったわ。」

 シュタイン夫妻と一緒に過ごした時間は、ルチアーナにとって幸福な時間であった。

 本当の両親のように優しくしてもらい、愛情を感じ、ルチアーナは何と素晴らしい夫婦なのだろうかと思った。

「お父様、お母様、本当にありがとうございます。」

 こうした夫婦になれたらいいなと、ルチアーナはヴァージンロードを歩きながら思った。

 白いタキシードに身を包んだジークは、戦場の悪魔と呼ばれていたのがウソのように、優しい笑顔をルチアーナに向けていた。

「ルチアーナ。」

 名前を呼ばれ、手を取る。

 心臓が煩いくらいに鳴る中、式は進み、そして、誓いを述べる。

 これから一生涯、共に歩み、慈しんでいくこと。

 ルチアーナにとってジークは自分を救ってくれた人であり、そして、愛おしく、愛する人となった。

 毎日ジークから愛を囁かれ、ルチアーナの心は幸福に満たされていく。

 ルチアーナとジークは皆の前でキスを交わし、そしてルチアーナは、ジークを見上げて言った。

「愛しています。ジーク様。これから、一生涯、よろしくお願いいたします。」

 初めて、面と向かってささやかれた愛の言葉。

 ジークは顔を真っ赤にすると、両手で顔を覆って言った。

「本当に君は、悪い女だ。こんなに俺の事を動揺させることが出来るのは、君くらいだよ。」

 ルチアーナはその言葉に驚き、そして笑みを浮かべた。

(天国のお母様。私、たった一人限定の悪女になれたようです。でも、ちゃんと私の事を愛し、大切にしてくれる男性を見つけたので、安心して下さい。)

 大っ嫌いだと思った男という生き物。

 けれど、目の前にいるたった一人のジークという男だけならば、ルチアーナは大嫌いではない。今では心から愛していると言える。

 母は男を信じるなと言った。

 けれど、思う。

 ジークの事だけは信じようと。

 ルチアーナとジークはたくさんの人に祝福され、そして社交界では戦場の悪魔が妖精のように美しい令嬢と結婚したと噂になった。

「ルチアーナ。悪い女だな君は。」

「あら、そうかしら?」

 今日も今日とて、二人はそんなやりとりをしながら、抱きしめあい、幸せな時間を刻んでいく。




 おしまい

 ★★★★

 最後まで読んでくだっさった皆様、本当にありがとうございました。
 いつもコメントを下さる皆さん、コメントなかなか返せなくて申し訳ないです、でも、いつも読ませていただいて元気をもらっています。ありがとうございます。
 この物語はここで終わりとなりますが、今後も、 作者 かのん の小説を読んで下さると嬉しいです。
 読んで下さった皆様に、心から感謝申し上げます。


 作者 かのん

 ↓
 最後に一話、おまけとして、その後のロドリコ侯爵家について書いています。ちょっとホラーテイストですので、読むか、読まれないかは自己判断でお願いします。(笑)


 
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