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二話 訪れた魔法使い
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シャルロッテ・ルーベリウスは、四台公爵家の一つルーベリウス公爵家の十歳の令嬢である。
黒い瞳と黒い髪から、ルーベリウス家の黒薔薇姫として幼い頃からもてはやされていた。
そんなシャルロッテは、大変勉学に優れており、魔力量も十分あることから、専属の師となる魔法使いが選ばれ、シャルロッテの元へと訪れていた。
その魔法使いの名前をリラト・スフェンという。
シャルロッテは目の前で優雅に紅茶を飲む、自分と同じ年頃に見える、リラトに向かって口を開いた。
「まぁ。リラト様。ずいぶんと小さくなられましたね」
思わずそう呟いたシャルロッテに、リラトは眉間にしわを寄せると腕を組みなおしてから言った。
「言っておくけれど僕は君に合わせて、この姿にしているだけだからね? どこの国でもそうだけれど、魔法使いとは年齢不詳なのが基本なんだ」
その言葉にシャルロッテはくすくすと笑い声をあげながら、大きく背伸びをすると立ち上がり、ぴょんぴょんとその場で飛び跳ねた。
「ふふっ! 体が軽いわ!」
「まぁね、六年前に戻ったわけだし、僕たちは子どもの姿だしね」
「そうよねぇ。あー。本当はのんびり過ごしたいところだけれど、そうもいかないわよね」
シャルロッテはそういうと、席に座り直し、紅茶を一口また飲むと、ため息を大きくついた。
リラトも同意するようにうなずくと、指を宙に向かってくるくると回し、空中に文字を浮かび上がらせる。
そこには、シャルロッテ達が住まう王国、エラ王国の王子や騎士の名前が浮かび上がる。
「エラ王国の地下には大量の魔力が埋まっている。もし国が滅びたり、戦争になったりして、その魔力が地中から分散されると世界の均衡が崩れるからね。だから、エラ王国は平和でいてもらわないと困るんだよ。けれど君が断頭台で首が落とされた時にはすでに、バカ王子がやらかして隣国との関係は悪化してたし、最悪だった」
空中でエラ王国の絵がくるくると飛びまわる。
それをシャルロッテは指で小突きながら大きくため息をついた。
「それなのに、国に魔法使いが介入してはならないっていう、その法則やめたらいいのに」
シャルロッテの言葉に、リラトは肩をすくめた。
「僕だってそのほうが楽だよ。ほら、ちょいちょいちょいって、こう王族を洗脳してさ操るほうが。でもそれやっちゃうと、魔法使いは魔力を失うんだよ。だから運命を一番変える力を持つ、王家以外の人間が選ばれるんだ」
「ならせめて、一度目の人生の時に、もう少し手助けをしてくれたらよかったじゃない。あなたが私にこの国を救えるのは君しかいないって言ったの、私が断頭台に立つ一週間前よ?」
「それも魔法使い法で決まっているんだよ。一度目の人生の流れは必ず見守らないといけないって。だから、本当にさ、僕だって君が断頭台に立つのを見たかったわけじゃないよ?……だから何度も一緒に逃げようって言ったじゃないか。君は冗談だと思っていたようだけど?」
「そんなこと言って……処刑って、いくらあなたが痛くないって言ったって、石ころとかも当たらないようにするとか言ったって怖いものは怖いのよ?」
その言葉にシャルロッテが自身の首をなでながらいうものだから、つられてリラトも自身の首をなでながら言葉を返す。
「本当に、本当にそれに関しては申し訳ない。けれど、あの結果を招いたのは君自身だろう?」
「だって公爵令嬢の首を落とそうだなんて、誰も思わないじゃない!?」
「君の婚約者と兄と騎士とかもろもろは思ってたけど……」
「頭おかしいのよ! 」
シャルロッテはそう叫び、一度目の人生のことを思い出した。
黒い瞳と黒い髪から、ルーベリウス家の黒薔薇姫として幼い頃からもてはやされていた。
そんなシャルロッテは、大変勉学に優れており、魔力量も十分あることから、専属の師となる魔法使いが選ばれ、シャルロッテの元へと訪れていた。
その魔法使いの名前をリラト・スフェンという。
シャルロッテは目の前で優雅に紅茶を飲む、自分と同じ年頃に見える、リラトに向かって口を開いた。
「まぁ。リラト様。ずいぶんと小さくなられましたね」
思わずそう呟いたシャルロッテに、リラトは眉間にしわを寄せると腕を組みなおしてから言った。
「言っておくけれど僕は君に合わせて、この姿にしているだけだからね? どこの国でもそうだけれど、魔法使いとは年齢不詳なのが基本なんだ」
その言葉にシャルロッテはくすくすと笑い声をあげながら、大きく背伸びをすると立ち上がり、ぴょんぴょんとその場で飛び跳ねた。
「ふふっ! 体が軽いわ!」
「まぁね、六年前に戻ったわけだし、僕たちは子どもの姿だしね」
「そうよねぇ。あー。本当はのんびり過ごしたいところだけれど、そうもいかないわよね」
シャルロッテはそういうと、席に座り直し、紅茶を一口また飲むと、ため息を大きくついた。
リラトも同意するようにうなずくと、指を宙に向かってくるくると回し、空中に文字を浮かび上がらせる。
そこには、シャルロッテ達が住まう王国、エラ王国の王子や騎士の名前が浮かび上がる。
「エラ王国の地下には大量の魔力が埋まっている。もし国が滅びたり、戦争になったりして、その魔力が地中から分散されると世界の均衡が崩れるからね。だから、エラ王国は平和でいてもらわないと困るんだよ。けれど君が断頭台で首が落とされた時にはすでに、バカ王子がやらかして隣国との関係は悪化してたし、最悪だった」
空中でエラ王国の絵がくるくると飛びまわる。
それをシャルロッテは指で小突きながら大きくため息をついた。
「それなのに、国に魔法使いが介入してはならないっていう、その法則やめたらいいのに」
シャルロッテの言葉に、リラトは肩をすくめた。
「僕だってそのほうが楽だよ。ほら、ちょいちょいちょいって、こう王族を洗脳してさ操るほうが。でもそれやっちゃうと、魔法使いは魔力を失うんだよ。だから運命を一番変える力を持つ、王家以外の人間が選ばれるんだ」
「ならせめて、一度目の人生の時に、もう少し手助けをしてくれたらよかったじゃない。あなたが私にこの国を救えるのは君しかいないって言ったの、私が断頭台に立つ一週間前よ?」
「それも魔法使い法で決まっているんだよ。一度目の人生の流れは必ず見守らないといけないって。だから、本当にさ、僕だって君が断頭台に立つのを見たかったわけじゃないよ?……だから何度も一緒に逃げようって言ったじゃないか。君は冗談だと思っていたようだけど?」
「そんなこと言って……処刑って、いくらあなたが痛くないって言ったって、石ころとかも当たらないようにするとか言ったって怖いものは怖いのよ?」
その言葉にシャルロッテが自身の首をなでながらいうものだから、つられてリラトも自身の首をなでながら言葉を返す。
「本当に、本当にそれに関しては申し訳ない。けれど、あの結果を招いたのは君自身だろう?」
「だって公爵令嬢の首を落とそうだなんて、誰も思わないじゃない!?」
「君の婚約者と兄と騎士とかもろもろは思ってたけど……」
「頭おかしいのよ! 」
シャルロッテはそう叫び、一度目の人生のことを思い出した。
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