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第二十九話
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「・・・・・・・トイ?」
やっとのことで、フェイナはそう呟く事が出来た。
何故ここにトイがいるのか理解できず、また、隣の男は一体誰なのかが気になった。
アーロは静かに、腰に携えていた剣を抜くとフェイナを庇うように立ち、声を上げた。
「何をしにここに来た?」
敵を見るかのような視線に、トイは苦笑を浮かべた。
「息子に対して、その言いようはないんじゃないかな?お父さん?」
嫌味を含んだその言葉に、アーロの表情は硬くなる。
フェイナはアーロが怯えているように感じた。口では息子でないといいながらも、息子に剣を向けながらも、それでも人間、心がどう感じているかは誰にも、時には本人にすらわからないのだ。
「アーロ。剣をしまいなさい。わたくしがトイと話をします。」
毅然とした態度で、フェイナはアーロの前に進みでた。
その姿には迷いがなく、危険などないと本気でおもっている様子であった。
それを、トイは悲しげに見つめていた。
「トイ。どうしてここに?」
「空を自由に飛ぶ技術を取り戻しに来たんだ。」
「どういうこと?」
「フライ兄弟を、キミの元に置いて置いては、これからのことに支障が出るかもしれないから。だから二人のことを迎えに来たんだ。」
意味がわからなかった。
フェイナは首をかしげ、表情が引き攣らないようにゆっくりと尋ねた。
「それはどういう意味なの?」
「アーロから聞いたんじゃないの?・・・・・僕はね・・この国を変えるんだ。」
「・・・・トイ?」
「フェイナ。キミはこの国の王にはふさわしくない。空は、王だけのモノじゃない。」
「そんな・・・・」
「キミだって、自分の事を王にふさわしいとは思っていないんじゃないの?」
「何故・・」
「片翼の王なんて・・・・国民は認めない。」
手が、足が、体が、震える。
涙が流れそうになるのを必死で堪え、“ふさわしくない”という最も聞きたくない言葉をどうにか聞き間違いであるように祈りながら、フェイナは震える声で言った。
「わたくしは・・・・あなたを・・・・・・・信じて・・・る・・」
ジッと、フェイナはトイを見つめた。
トイは悲しげに微笑みを浮かべ、そして一度瞼を閉じた。
フェイナは目を見開き、動けなくなった。
地面に大きな影が広がった。
片翼の翼がそこにはあった。だが、フェイナの翼とは違い、鳥のような柔らかな翼ではなく蝙蝠のような青く澄んだ色の翼であった。
「僕の名はトイ=ブルーバード。竜と人との始めての子であり、この国を変える使命を背負っている。・・・・・・・・・僕はキミの・・・・敵だ。」
「うそ。」
フェイナはそういうと一度唇を硬く結び、そして、また開いた。
「うそよ。トイは・・・・・・わたくしの敵じゃない。」
言い切るように、フェイナはそう述べた。
表情は強張り、見開いた目は瞬き一つしない。
だが、その眼は、偽りなく信実を見ていた。
トイは、言った。
「敵だよ。フェイナ・・・・こっちにいるのが、僕の本当の父親。フィックっていうんだ。僕は彼と共に、竜とそして・・・おもちゃの国の国民を率いて、この国に宣戦布告する。」
「ば・・・バカな!」
そういったのはアーロであった。
信じられないといった表情に偽りはなく、驚きのあまり口が開いたままになっている。
フェイナはその表情を見て、アーロの動揺をみて、アーロが嘘をついていないということを感じた。
それは、それと同時にトイが真実を語っていることを意味している。
フェイナは胸を押さえ、煩いくらいに心臓がなるのを押さえようとしている。
「おもちゃの国は、貴方の国じゃない。もう僕の国だ。」
見る見るうちにアーロの顔が蒼白へと変わる。
「アーロ。うちの息子が世話になった。だが、もう返してもらうぞ。こいつは、こいつこそが未来を担うこの国の新王となるのだ。」
「バカを言うな!」
唇をわなわなと震わせながら、アーロはそう声を荒げた。だが、その言葉を打ち消すかのようにトイは言った。
「うるさい。」
重みのある声だった。
今までに聴いたことのないトイのその声に、フェイナの胸は痛んだ。なんという声を出すのであろうか。
フェイナは自分の瞳から涙が流れ落ちるのに気付かず、トイを見つめていた。
トイは悲しげな笑みを浮かべたまま、言った。
「この国は、僕がもらうよ。」
「トイ・・・・」
その時であった。
爆発音が響き渡り、警報の鐘が耳を劈いた。
「ここに宣戦布告を宣言する。・・・・だが、この国をいくら炎に包んだところで、神との契約がなされなければ、本当の意味でこの国が手に入らないことは明白。よって、キミに一騎打ちを申し込む。」
「・・・・始まりの塔で・・わたくしと一騎打ちを?」
「ああ。どうする?・・言っておくけど、今エデンの全域をほぼ僕らは掌握している。どちらかといえば、塔での一騎打ちのほうがここで殺されるよりましだと思うよ。」
トイはフェイナが断れないと知っていて、はっきりとそういった。
「・・トイ。」
悲しげにフェイナはそう呟いた。今目の前にある現実が信じられない。けれど、今決断を下さなければこの国の歴史は幕を閉じるかもしれない。
「いいでしょう。その勝負受けて立ちます。」
「明日の正午が決戦の時。・・アーロ。お前にも立ち会う権限を与えてやるよ。」
不躾な言いように、アーロの眉間にしわがよった。だが、トイはそれを無視するかのように背を向けた。
「逃げ場はないよ。本気で・・・きてね。」
そういうと、トイは静かにその場を後にした。
誰もいなくなると、まるで嘘のようであった。
フェイナは声もなく、静かに涙を流した。
その日、静かに青き一筋の光が空へと上がった。それは、決闘を国民に知らせるものであった。
誰もがその一筋の光を見つめ、国の行く末を思った。
やっとのことで、フェイナはそう呟く事が出来た。
何故ここにトイがいるのか理解できず、また、隣の男は一体誰なのかが気になった。
アーロは静かに、腰に携えていた剣を抜くとフェイナを庇うように立ち、声を上げた。
「何をしにここに来た?」
敵を見るかのような視線に、トイは苦笑を浮かべた。
「息子に対して、その言いようはないんじゃないかな?お父さん?」
嫌味を含んだその言葉に、アーロの表情は硬くなる。
フェイナはアーロが怯えているように感じた。口では息子でないといいながらも、息子に剣を向けながらも、それでも人間、心がどう感じているかは誰にも、時には本人にすらわからないのだ。
「アーロ。剣をしまいなさい。わたくしがトイと話をします。」
毅然とした態度で、フェイナはアーロの前に進みでた。
その姿には迷いがなく、危険などないと本気でおもっている様子であった。
それを、トイは悲しげに見つめていた。
「トイ。どうしてここに?」
「空を自由に飛ぶ技術を取り戻しに来たんだ。」
「どういうこと?」
「フライ兄弟を、キミの元に置いて置いては、これからのことに支障が出るかもしれないから。だから二人のことを迎えに来たんだ。」
意味がわからなかった。
フェイナは首をかしげ、表情が引き攣らないようにゆっくりと尋ねた。
「それはどういう意味なの?」
「アーロから聞いたんじゃないの?・・・・・僕はね・・この国を変えるんだ。」
「・・・・トイ?」
「フェイナ。キミはこの国の王にはふさわしくない。空は、王だけのモノじゃない。」
「そんな・・・・」
「キミだって、自分の事を王にふさわしいとは思っていないんじゃないの?」
「何故・・」
「片翼の王なんて・・・・国民は認めない。」
手が、足が、体が、震える。
涙が流れそうになるのを必死で堪え、“ふさわしくない”という最も聞きたくない言葉をどうにか聞き間違いであるように祈りながら、フェイナは震える声で言った。
「わたくしは・・・・あなたを・・・・・・・信じて・・・る・・」
ジッと、フェイナはトイを見つめた。
トイは悲しげに微笑みを浮かべ、そして一度瞼を閉じた。
フェイナは目を見開き、動けなくなった。
地面に大きな影が広がった。
片翼の翼がそこにはあった。だが、フェイナの翼とは違い、鳥のような柔らかな翼ではなく蝙蝠のような青く澄んだ色の翼であった。
「僕の名はトイ=ブルーバード。竜と人との始めての子であり、この国を変える使命を背負っている。・・・・・・・・・僕はキミの・・・・敵だ。」
「うそ。」
フェイナはそういうと一度唇を硬く結び、そして、また開いた。
「うそよ。トイは・・・・・・わたくしの敵じゃない。」
言い切るように、フェイナはそう述べた。
表情は強張り、見開いた目は瞬き一つしない。
だが、その眼は、偽りなく信実を見ていた。
トイは、言った。
「敵だよ。フェイナ・・・・こっちにいるのが、僕の本当の父親。フィックっていうんだ。僕は彼と共に、竜とそして・・・おもちゃの国の国民を率いて、この国に宣戦布告する。」
「ば・・・バカな!」
そういったのはアーロであった。
信じられないといった表情に偽りはなく、驚きのあまり口が開いたままになっている。
フェイナはその表情を見て、アーロの動揺をみて、アーロが嘘をついていないということを感じた。
それは、それと同時にトイが真実を語っていることを意味している。
フェイナは胸を押さえ、煩いくらいに心臓がなるのを押さえようとしている。
「おもちゃの国は、貴方の国じゃない。もう僕の国だ。」
見る見るうちにアーロの顔が蒼白へと変わる。
「アーロ。うちの息子が世話になった。だが、もう返してもらうぞ。こいつは、こいつこそが未来を担うこの国の新王となるのだ。」
「バカを言うな!」
唇をわなわなと震わせながら、アーロはそう声を荒げた。だが、その言葉を打ち消すかのようにトイは言った。
「うるさい。」
重みのある声だった。
今までに聴いたことのないトイのその声に、フェイナの胸は痛んだ。なんという声を出すのであろうか。
フェイナは自分の瞳から涙が流れ落ちるのに気付かず、トイを見つめていた。
トイは悲しげな笑みを浮かべたまま、言った。
「この国は、僕がもらうよ。」
「トイ・・・・」
その時であった。
爆発音が響き渡り、警報の鐘が耳を劈いた。
「ここに宣戦布告を宣言する。・・・・だが、この国をいくら炎に包んだところで、神との契約がなされなければ、本当の意味でこの国が手に入らないことは明白。よって、キミに一騎打ちを申し込む。」
「・・・・始まりの塔で・・わたくしと一騎打ちを?」
「ああ。どうする?・・言っておくけど、今エデンの全域をほぼ僕らは掌握している。どちらかといえば、塔での一騎打ちのほうがここで殺されるよりましだと思うよ。」
トイはフェイナが断れないと知っていて、はっきりとそういった。
「・・トイ。」
悲しげにフェイナはそう呟いた。今目の前にある現実が信じられない。けれど、今決断を下さなければこの国の歴史は幕を閉じるかもしれない。
「いいでしょう。その勝負受けて立ちます。」
「明日の正午が決戦の時。・・アーロ。お前にも立ち会う権限を与えてやるよ。」
不躾な言いように、アーロの眉間にしわがよった。だが、トイはそれを無視するかのように背を向けた。
「逃げ場はないよ。本気で・・・きてね。」
そういうと、トイは静かにその場を後にした。
誰もいなくなると、まるで嘘のようであった。
フェイナは声もなく、静かに涙を流した。
その日、静かに青き一筋の光が空へと上がった。それは、決闘を国民に知らせるものであった。
誰もがその一筋の光を見つめ、国の行く末を思った。
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