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十二話 新たな道

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 その後、弁護士を通して話し合いは進められることとなった。

 リックからもミリアーナからも慰謝料はもちろん支払われることとなり、子爵家へと支援金も全額返済される形となった。

 リックは子爵家を勘当され平民に地位を落とされた。ミリアーナはリックから一緒に来てほしいと願われたがそれをあっさりと断ると、男爵家へと戻ったらしい。ただ、男爵家でもミリアーナは厄介者として扱われ、ほどなく、修道院に行くか、年齢の離れた商人の後妻になるか迫られることになるだろう。

 お腹の子はリックの両親が引き取ることとなり、リックの両親は正式にラナに謝罪をした後に、今後の跡取りの教育はしっかりと行うと約束した。

 金銭的に余裕はないようだったが、自業自得である。

 ラナはというと、実家には帰ることなくユージーンの建てた屋敷へと移り住み、ユージーンの仕事の手伝いをしていた。

「ユージーン?この書類は、あちらの棚へと片付けてもいい?」

「あぁいいよ。ラナ、東のリベラ王国の資料はどこだったかな?」

「それなら、ここにあるわ。」

「ありがとう。ラナが来てくれてから、本当に仕事が捗るよ。」

 ニコニコと楽しげな様子のユージーンに、ラナは苦笑を浮かべた。

「でも、私ここにいて本当に良かったの?ユージーンだってそろそろ結婚を考えなきゃいけないでしょう?」

 ラナがそう言うと、ユージーンは指をパチンと鳴らして部屋いっぱいにバラの花で溢れさせ、ラナの目の前に美しい指輪を差し出しながら言った。

「そうだね。なら、結婚していただけませんか?世界で一番愛しいラナ。」

「は?」

 ラナは突然のことに目を点にして、呆然とユージーンを見た。

「結局、僕が自分の本当の気持ちに気づいたのは君が結婚した後だった。今度は後悔したくないから、もし君が嫌だっていっても、諦めるつもりはないよ?」

 楽しげなユージーンの言葉に、ラナは次第に言われていることを理解し、顔を真っ赤染め上げていく。

「愛してる。僕と愛し、愛される家庭を築いてくれませんか?」

「え?え?え?」

「あぁ、ちゃんと君のご両親にはもう了解は得ているから、心配しないで。」

「え?え?」

「外堀はもう埋めたよ?諦めてね。」

「そ、そんな。」

「僕が嫌い?」

 しゅんと項垂れるその様子を見て、ラナは慌てて言った。

「そんなことないにきまっているわ!」

「うん。知ってる。だから、焦らなくていいよ。君の気持ちが固まったら結婚しようね?」

 余裕の笑みを浮かべるユージーンの手のひらで転がされているようで、ラナはなんとなく素直になれずに頬を膨らませると言った。

「それは、貴方次第だわ。」

「もちろん。これからたくさん口説かせていただきますよ?」

 これは勝てないなと、ラナは苦笑を浮かべた。



 平民に落ちたリックが、ラナを逆恨みして狙っているなど、この時の二人は知る由もなかった。
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