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第二百四十四話
しおりを挟むアロンとアルル、レオは王城へと向かうが、そこはいつもとかわらず、守護魔法なども正常に働いている様子であった。
アロンはその様子に眉間にしわを寄せ、首をひねった。
「予想と違うの。」
「お父さんは、どうなっていると思っていたの?」
「いやはや、城が占拠でもされているかと思っていたのだが・・・」
「占拠は、されていませんね。」
三人は念のために城の中を隅々まで見て回ったが、おかしなところはない。
「どういうことかのぉ。」
そして最後に各国の要人と話をした王城にある自らの執務室に入った。
国王は無事であり、異変もないと報告を受けている。
ということは、この執務室から各国へと帰った後に何かがあったことになる。
「ふむ。いつもと変わりはない・・・が。」
アルルとレオはたくさんの本や魔法で使う瓶などが飾られている執務室を興味深げに見つめながら、少しだけわくわくとした気持ちになっていた。
「レオ、見て。あれ何かな。」
「ん?あー。あれは一日草だよ。毎日違う花が咲くんだって。」
「へぇ。不思議だけど、可愛い花だね。」
アロンはアルルの言葉に一日草へと視線を向けて眉間にしわを寄せた。
一日草には氷に包まれた小さな黒い花が咲いており、周りを雪が舞っている。
「何じゃ・・・この花は。」
アロンは近づくと、一日草の花弁にゆっくりと指を触れ、そして慌てて手を引いた。
「封じ込めよ!」
アロンが杖を振った瞬間に、一日草はガラスによって封じ込められた。
「どうしたの?お父さん。」
「一日草がどうかしましたか?」
驚く二人に、アロンは先ほど触れた指先が真っ黒に染まっているのを見せた。
「お父さん!」
「先生!」
「大丈夫じゃ。だが、何という力じゃ。これが、原因か。だが、一体いつの間に。」
この部屋にはいくつもの守護魔法が掛けられている。それなのにもかかわらず、アロンは一日草の変化に気づかなかった。
「癒しを。」
アロンは染まった指先を元に戻すと、頭を掻きながら大きくため息をついた。
「はぁ・・つまり要人が攫われたのはわしの責任じゃな。この一日草の仕掛けに気づかなんだ。おそらくこの花を使って、要人らの帰国場所を塗り替えたのじゃろう。」
アロンの言葉にアルルはにっこりと笑うと言った。
「原因が分かって良かった。これで助けに行けるね!」
「先生!急ぎましょう。この一日草を拠点にして、魔法で追跡すればきっと居場所が分かるはずです!」
そんな頼もしい二人の弟子の言葉に、アロンは顔を上げると、にっこりと笑みを返した。
「もちろんじゃ。わしをダシに使った事、後悔させてやるわい!」
三人は一日草の上で魔法の杖を重ね合わせる。
「さぁ、反撃開始じゃ!」
魔法の光が飛び、三人は追跡の魔法を唱えるのであった。
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