70 / 76
第二百三十八話
しおりを挟む
頭に痛みが走り、アルルは目を開いて首を傾げた。
何があったのか一瞬思い出せなかったが、記憶が一つ一つとはまり、思い出す。
「そうか。音楽の民に追われて、それで・・魔法がおかしくなって・・・」
アルルは辺りを見回すと、そこにはただ岩だらけの場所であり、その先を見つめると大きな壁が遠くにあるのが見えた。
レオとアロンの姿はなく、アルルは小さく呼吸を整えると立ち上がった。
洋服についていた誇りを払い、立ち上がって大きく背伸びをした。
「お父さんとレオを探そう。」
きっと遠くにはいないとそう信じて、アルルは岩場を歩き始めたのだが、不意に視線を感じて辺りを見回す。
けれど、そこには岩しかない。
「・・・・誰か、いるの?」
アルルは魔法の杖を構えると、ゆっくりと岩場を見つめ、そして魔法を唱えた。
「姿を隠している者よ、その姿を現せ!」
すると魔法にひっぱられるように、岩場の影や、穴の中からたくさんの音楽の民がぞろぞろと現れたのである。
アルルは身を固くして目を丸くした。
まかさ捕まるのかと思ったが、その音楽の民は皆がこちらにおびえるように蹲り、顔を隠すように震えている。
何故だろうとアルルは怖がらせないようにゆっくりと声をかけた。
「あの、貴方達は、音楽の民だよね?」
すると、震えるアルルに一番近い音楽の民は顔を上げると、プルプルと首を横に振った。
「違う。私達は・・・見捨てられた民。」
しゃがれた声のその子は、瞳を潤ませると言った。
「ここは、音楽の民に成れなかった者達の・・・・見捨てられた民の住まう場所。あの・・・貴方は何者なの?」
その言葉の意味が分からず、アルルは首を傾げながらも返事を返した。
「ええっと、私はアルル。え? あの、音楽の民に成れないって・・・どういう事?」
見捨てられた民らは顔を上げると、アルルをじっと見つめてこそこそと話し始める。
目の前にいた子はその声にうなずくと言った。
「音楽の才能がないの。それに一番好きな物が音楽じゃないの。」
「え?」
その言葉に同意するように数名の民がうなずいたのが見えた。
「音楽は自由。音楽は楽しい。けれど・・・私は音楽よりも絵を描くことが好き。」
「俺は勉強するのが楽しかった。」
「私は物を作るのが好き。」
きらきらと瞳は輝くが次の瞬間には色を失う。
「でも、それは音楽の民には許されない事。そして、異端な私達は、ここに捨てられたの。」
アルルは言われている事の意味が分からず、しばらくの間、何も言えなかった。
ただ、一つだけ分かる事があった。
「自分の好きな事を見つけられたのは・・・素敵なことだね。」
その言葉に、皆が目を丸くする。
アルルはゆっくりと自分なりの言葉で言った。
「私ね。音楽も好きだし、絵をかくのも好き。勉強はちょっと苦手だけどいろんなことがわかるのは面白い。あと、お菓子も好きだし体を動かすのも好き。だけど・・・どれが一番っていうのは、良く分からないの。だから、一番好きな物が見つかっているのは、素敵なことだね。」
「素敵な・・・こと。」
「そう・・・だな。」
「うん。そうねぇ。」
ざわざわと明るい声が広がって言った時であった。
「アルル!」
レオとアロンが慌てた様子で駆け寄ってくるのがアルルには見えた。
何があったのか一瞬思い出せなかったが、記憶が一つ一つとはまり、思い出す。
「そうか。音楽の民に追われて、それで・・魔法がおかしくなって・・・」
アルルは辺りを見回すと、そこにはただ岩だらけの場所であり、その先を見つめると大きな壁が遠くにあるのが見えた。
レオとアロンの姿はなく、アルルは小さく呼吸を整えると立ち上がった。
洋服についていた誇りを払い、立ち上がって大きく背伸びをした。
「お父さんとレオを探そう。」
きっと遠くにはいないとそう信じて、アルルは岩場を歩き始めたのだが、不意に視線を感じて辺りを見回す。
けれど、そこには岩しかない。
「・・・・誰か、いるの?」
アルルは魔法の杖を構えると、ゆっくりと岩場を見つめ、そして魔法を唱えた。
「姿を隠している者よ、その姿を現せ!」
すると魔法にひっぱられるように、岩場の影や、穴の中からたくさんの音楽の民がぞろぞろと現れたのである。
アルルは身を固くして目を丸くした。
まかさ捕まるのかと思ったが、その音楽の民は皆がこちらにおびえるように蹲り、顔を隠すように震えている。
何故だろうとアルルは怖がらせないようにゆっくりと声をかけた。
「あの、貴方達は、音楽の民だよね?」
すると、震えるアルルに一番近い音楽の民は顔を上げると、プルプルと首を横に振った。
「違う。私達は・・・見捨てられた民。」
しゃがれた声のその子は、瞳を潤ませると言った。
「ここは、音楽の民に成れなかった者達の・・・・見捨てられた民の住まう場所。あの・・・貴方は何者なの?」
その言葉の意味が分からず、アルルは首を傾げながらも返事を返した。
「ええっと、私はアルル。え? あの、音楽の民に成れないって・・・どういう事?」
見捨てられた民らは顔を上げると、アルルをじっと見つめてこそこそと話し始める。
目の前にいた子はその声にうなずくと言った。
「音楽の才能がないの。それに一番好きな物が音楽じゃないの。」
「え?」
その言葉に同意するように数名の民がうなずいたのが見えた。
「音楽は自由。音楽は楽しい。けれど・・・私は音楽よりも絵を描くことが好き。」
「俺は勉強するのが楽しかった。」
「私は物を作るのが好き。」
きらきらと瞳は輝くが次の瞬間には色を失う。
「でも、それは音楽の民には許されない事。そして、異端な私達は、ここに捨てられたの。」
アルルは言われている事の意味が分からず、しばらくの間、何も言えなかった。
ただ、一つだけ分かる事があった。
「自分の好きな事を見つけられたのは・・・素敵なことだね。」
その言葉に、皆が目を丸くする。
アルルはゆっくりと自分なりの言葉で言った。
「私ね。音楽も好きだし、絵をかくのも好き。勉強はちょっと苦手だけどいろんなことがわかるのは面白い。あと、お菓子も好きだし体を動かすのも好き。だけど・・・どれが一番っていうのは、良く分からないの。だから、一番好きな物が見つかっているのは、素敵なことだね。」
「素敵な・・・こと。」
「そう・・・だな。」
「うん。そうねぇ。」
ざわざわと明るい声が広がって言った時であった。
「アルル!」
レオとアロンが慌てた様子で駆け寄ってくるのがアルルには見えた。
0
お気に入りに追加
2,637
あなたにおすすめの小説

お姫様の願い事
月詠世理
児童書・童話
赤子が生まれた時に母親は亡くなってしまった。赤子は実の父親から嫌われてしまう。そのため、赤子は血の繋がらない女に育てられた。 決められた期限は十年。十歳になった女の子は母親代わりに連れられて城に行くことになった。女の子の実の父親のもとへ——。女の子はさいごに何を願うのだろうか。
ローズお姉さまのドレス
有沢真尋
児童書・童話
最近のルイーゼは少しおかしい。
いつも丈の合わない、ローズお姉さまのドレスを着ている。
話し方もお姉さまそっくり。
わたしと同じ年なのに、ずいぶん年上のように振舞う。
表紙はかんたん表紙メーカーさまで作成
王女様は美しくわらいました
トネリコ
児童書・童話
無様であろうと出来る全てはやったと満足を抱き、王女様は美しくわらいました。
それはそれは美しい笑みでした。
「お前程の悪女はおるまいよ」
王子様は最後まで嘲笑う悪女を一刀で断罪しました。
きたいの悪女は処刑されました 解説版
生贄姫の末路 【完結】
松林ナオ
児童書・童話
水の豊かな国の王様と魔物は、はるか昔にある契約を交わしました。
それは、姫を生贄に捧げる代わりに国へ繁栄をもたらすというものです。
水の豊かな国には双子のお姫様がいます。
ひとりは金色の髪をもつ、活発で愛らしい金のお姫様。
もうひとりは銀色の髪をもつ、表情が乏しく物静かな銀のお姫様。
王様が生贄に選んだのは、銀のお姫様でした。

悪女の死んだ国
神々廻
児童書・童話
ある日、民から恨まれていた悪女が死んだ。しかし、悪女がいなくなってからすぐに国は植民地になってしまった。実は悪女は民を1番に考えていた。
悪女は何を思い生きたのか。悪女は後世に何を残したのか.........
2話完結 1/14に2話の内容を増やしました

理想の王妃様
青空一夏
児童書・童話
公爵令嬢イライザはフィリップ第一王子とうまれたときから婚約している。
王子は幼いときから、面倒なことはイザベルにやらせていた。
王になっても、それは変わらず‥‥側妃とわがまま遊び放題!
で、そんな二人がどーなったか?
ざまぁ?ありです。
お気楽にお読みください。
生まれたばかりですが、早速赤ちゃんセラピー?始めます!
mabu
児童書・童話
超ラッキーな環境での転生と思っていたのにママさんの体調が危ないんじゃぁないの?
ママさんが大好きそうなパパさんを闇落ちさせない様に赤ちゃんセラピーで頑張ります。
力を使って魔力を増やして大きくなったらチートになる!
ちょっと赤ちゃん系に挑戦してみたくてチャレンジしてみました。
読みにくいかもしれませんが宜しくお願いします。
誤字や意味がわからない時は皆様の感性で受け捉えてもらえると助かります。
流れでどうなるかは未定なので一応R15にしております。
現在投稿中の作品と共に地道にマイペースで進めていきますので宜しくお願いします🙇
此方でも感想やご指摘等への返答は致しませんので宜しくお願いします。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる