魔法使いアルル

第二百二十八話

　アルルとミーガンは学園の敷地内にある寮へと向かっていた。

　休みが続いているカリーが心配になったのと、ミーガンはずっとカリーに謝りたいと思っていたとアルルに打ち明け、二人で会いに行くことにしたのである。

　カリーの部屋の前に来たミーガンは、意を決したように大きく深呼吸をすると、扉をノックした。

　中かが物音がしばらく続いたのちに、扉がゆっくりと開かれた。

「カリー？」

　ミーガンが開いた扉から部屋を覗き込むと、ほっとした様子のカリーが目に映った。

「よかったぁ。先生かと思った。」

　カリーの言葉にアルルとミーガンは苦笑を浮かべると、カリーは二人を笑顔で部屋に招き入れた｡

「良かった。思ったよりも元気そうで。」

　ミーガンがそう言うと、カリーは少しばつが悪そうに頭をポリポリと掻くと言った。

「ごめんなさい。実はズル休みなの。」

　その言葉にミーガンは表情を少し暗くすると、カリーに頭を下げた。

「やっぱり、ロッテンベイマー先生に叱られてショックだったのね。ごめんなさい。私、あの時カリーを助けられなかった。」

「ええ？ちょっとミーガン。頭を上げて。ふふふ。別に気にしていないわ。それにロッテンベイマー先生に怒られたのは怖かったけれど、別にそれで休んだわけじゃないの。」

　予想もしなかったカリーの言葉に、アルルとミーガンは目を丸くした。

「え？違うの？」

「確かに怖かったけれど、私、ロッテンベイマー先生苦手ではないもの。」

　その言葉にアルルもミーガンもさらに驚いてしまう。

「うっそぉ。」

「すごく怖いじゃない！」

「確かに怖いわねぇ。でも、ロッテンベイマー先生は分かりやすいもの。何考えているかわからない人の方が私は怖いわ。でも来てくれてありがとう。」

「それで、何で休んでいたの？」

　ミーガンがそう言うと、カリーはにこにことしながら一冊の魔法の本を取り出した。

「これを買いに言っていたの！」

「それは？」

「今人気の闇魔法の研究者であるジミニー先生の初版本よ！　すっごく並んで手に入れたのよ！」

　カリーのその大興奮ぶりにしばらくの間アルルもミーガンも押されるのであった。