58 / 76
第二百二十六話
しおりを挟む
バシバシとロッテンベイマーを机をたたき、声を荒げた。
「生徒は教師のいう事を聞いていればいいのです!学校とは、そういう場でしょう!」
「そう。ですが、学校とは勉学だけが全てではありません。学校とは、人と人の関わりを学ぶ場でもあるのです。それが分からないロッテンベイマー先生ではないでしょう。」
「ふん!確かに学校にいる人たちは人的環境として大いに生徒達に影響をもたらすでしょう!だからこそ、厳しく生徒に接しなければなりません。」
「はぁ。ロッテンベイマー先生。貴方には今ここで話をしても難しいようだ。学園長がお呼びです。学園長室へと行ってください。」
「学園長が?」
学園長の名前が出た途端、ロッテンベイマーは少し焦った様子で頷くと、きっと生徒らを睨みつけてからバタバタと部屋を出て行ってしまった。
ニーンは大きくため息をつくと、魔法を使って床に散らばった鏡を片付け、部屋を元通りに戻すと、生徒らに席に着くように言った。
ニーンが返ってきたことで皆笑顔が戻り、席に戻ると安堵の表情を浮かべている。
ミーガンも笑顔でニーンを見ており、アルルもほっと胸をなでおろした。
「皆には、僕が居ない間に苦労をかけたみたいだね。」
ニーンがそう言うと、生徒達は一斉にしゃべり始めた。
「本当だよ!」
「ロッテンベイマー先生はとっても怖かった!」
「あんなに話を聞かない人は初めてだよ!」
「ニーン先生が返ってきて良かった。」
さまざまな声が飛び交い、それらはニーンが杖で文字を広い、黒板に描かれていく。
それをまじまじと見ながら、ニーンは真剣な表情で言った。
「それで、キミたちはロッテンベイマー先生に勝負を挑んだということかい?」
「そう。皆で作戦を考えたんです。」
自身をもって生徒らはそう答えたのだが、ニーンの言葉は予想外のものであった。
「まずは、勇気を出して行動を起こしたこと、それは、僕は素晴らしい事だと思う。けれどね、方法はどうだっただろうか。考えてみて。」
ニーンが返ってきた言葉にお祭りムードだった教室が、一瞬にしてシンと静まり返る。
一人一人が、ニーンの言葉に頭の中で思案する。
そして、ミーガンが最初に手を上げて言った。
「作戦は・・・少し軽率だったかもしれません。」
その言葉に、実のところほとんどの者が同意していた。
ニーンが来てくれたから良かったものの、もしロッテンベイマーが本気で魔法を使って自分達を傷つけようとした場合、自分達がどうなったかは分からない。
ニーンはミーガンの言葉に満足そうにうなずくと言った。
「その通りだ。格上の魔法使いを相手にする場合、真正面から行動するのは馬鹿のすることだ。」
はっきりとそう言ったニーンは言葉を続けた。
「何故、他の先生を頼らなかったんだい?」
「え・・・だって。」
皆が口をつぐんだのを見て、ニーンは言った。
「いいかい。キミ達はまだ子どもだ。だから、いくらでも大人を頼ってもいいんだ。」
その言葉に、皆が息を飲んだ。
何となくだが、他の先生には頼ってはいけない気がしたのだ。
けれど、それをニーンは違うと言う。
「いいかい。教師という存在は、キミ達子どもから見てみれば、絶対正義のように感じるかもしれない。だけどね、違うんだよ。先生達だって皆のお手本であろうとはするけれど、失敗もする。同じ人だからね。」
そう言うと、ニーンは黒板の文字を消して映像を映し出し始めた。
そこには、少しでも子ども達が理解できるようにと教材を作ったり、模擬授業を誰もいない部屋で行うロッテンベイマーの姿が映っていた。窓の外は真っ暗なのに、仕事をする姿に、子ども達は驚いた。
「教師という仕事は、時間がいくらあっても足りない。君達にどうやったら分かりやすく伝わるか、教師自身も悩み、思案し、試しながら授業を行うんだ。まぁ、行事の仕事や保護者への案内とか、その他の方も大変なんだけどね。」
ニーンは笑みを浮かべると言った。
「先程のはロッテンベイマー先生の魔法について気づいた事がある人はいる?」
その言葉にアルルは手をあげて答えた。
「魔法を調整して、私達が怪我をしないようにしているように思ったよ。」
その言葉に生徒らは驚いているようだった。
ニーンはうなずいた。
「その通り。我々教師は、魔法の未熟な君達を教えるという立場から、様々な制約はあるけれど、傷つけなければ魔法は使用許可が出ている。ロッテンベイマー先生は確かにくせのある先生だ。けれどね、良いところもある。」
その言葉に嘘だと言わんばかりの表情を生徒らは浮かべる。
「けれど、今回は君達には辛い思いをさせた責任はとってもらう。威圧的な態度や、暴言は見逃せないからね。けれど、出来れば今後の為に、ロッテンベイマー先生の良いところも見つけてごらん。」
「僕達、ロッテンベイマー先生は嫌いだよ。」
「ははっ!はっきり言うね。嫌いなら嫌いでいいんだ。けれど、嫌いだと思う人と君達はこれからもたくさん出会うかもしれない。その度にその人を排除していくのかい?」
その言葉に、クラスはシンとなった。
ニーンは言った。
「たくさん考えてごらん。それじゃあ、授業を始めるよ?」
「えっ!授業するの?!」
「当たり前だろう。さぁさぁ、教科書を出して!」
悶々とした心のまま、皆は机から教科書を取り出した。
「生徒は教師のいう事を聞いていればいいのです!学校とは、そういう場でしょう!」
「そう。ですが、学校とは勉学だけが全てではありません。学校とは、人と人の関わりを学ぶ場でもあるのです。それが分からないロッテンベイマー先生ではないでしょう。」
「ふん!確かに学校にいる人たちは人的環境として大いに生徒達に影響をもたらすでしょう!だからこそ、厳しく生徒に接しなければなりません。」
「はぁ。ロッテンベイマー先生。貴方には今ここで話をしても難しいようだ。学園長がお呼びです。学園長室へと行ってください。」
「学園長が?」
学園長の名前が出た途端、ロッテンベイマーは少し焦った様子で頷くと、きっと生徒らを睨みつけてからバタバタと部屋を出て行ってしまった。
ニーンは大きくため息をつくと、魔法を使って床に散らばった鏡を片付け、部屋を元通りに戻すと、生徒らに席に着くように言った。
ニーンが返ってきたことで皆笑顔が戻り、席に戻ると安堵の表情を浮かべている。
ミーガンも笑顔でニーンを見ており、アルルもほっと胸をなでおろした。
「皆には、僕が居ない間に苦労をかけたみたいだね。」
ニーンがそう言うと、生徒達は一斉にしゃべり始めた。
「本当だよ!」
「ロッテンベイマー先生はとっても怖かった!」
「あんなに話を聞かない人は初めてだよ!」
「ニーン先生が返ってきて良かった。」
さまざまな声が飛び交い、それらはニーンが杖で文字を広い、黒板に描かれていく。
それをまじまじと見ながら、ニーンは真剣な表情で言った。
「それで、キミたちはロッテンベイマー先生に勝負を挑んだということかい?」
「そう。皆で作戦を考えたんです。」
自身をもって生徒らはそう答えたのだが、ニーンの言葉は予想外のものであった。
「まずは、勇気を出して行動を起こしたこと、それは、僕は素晴らしい事だと思う。けれどね、方法はどうだっただろうか。考えてみて。」
ニーンが返ってきた言葉にお祭りムードだった教室が、一瞬にしてシンと静まり返る。
一人一人が、ニーンの言葉に頭の中で思案する。
そして、ミーガンが最初に手を上げて言った。
「作戦は・・・少し軽率だったかもしれません。」
その言葉に、実のところほとんどの者が同意していた。
ニーンが来てくれたから良かったものの、もしロッテンベイマーが本気で魔法を使って自分達を傷つけようとした場合、自分達がどうなったかは分からない。
ニーンはミーガンの言葉に満足そうにうなずくと言った。
「その通りだ。格上の魔法使いを相手にする場合、真正面から行動するのは馬鹿のすることだ。」
はっきりとそう言ったニーンは言葉を続けた。
「何故、他の先生を頼らなかったんだい?」
「え・・・だって。」
皆が口をつぐんだのを見て、ニーンは言った。
「いいかい。キミ達はまだ子どもだ。だから、いくらでも大人を頼ってもいいんだ。」
その言葉に、皆が息を飲んだ。
何となくだが、他の先生には頼ってはいけない気がしたのだ。
けれど、それをニーンは違うと言う。
「いいかい。教師という存在は、キミ達子どもから見てみれば、絶対正義のように感じるかもしれない。だけどね、違うんだよ。先生達だって皆のお手本であろうとはするけれど、失敗もする。同じ人だからね。」
そう言うと、ニーンは黒板の文字を消して映像を映し出し始めた。
そこには、少しでも子ども達が理解できるようにと教材を作ったり、模擬授業を誰もいない部屋で行うロッテンベイマーの姿が映っていた。窓の外は真っ暗なのに、仕事をする姿に、子ども達は驚いた。
「教師という仕事は、時間がいくらあっても足りない。君達にどうやったら分かりやすく伝わるか、教師自身も悩み、思案し、試しながら授業を行うんだ。まぁ、行事の仕事や保護者への案内とか、その他の方も大変なんだけどね。」
ニーンは笑みを浮かべると言った。
「先程のはロッテンベイマー先生の魔法について気づいた事がある人はいる?」
その言葉にアルルは手をあげて答えた。
「魔法を調整して、私達が怪我をしないようにしているように思ったよ。」
その言葉に生徒らは驚いているようだった。
ニーンはうなずいた。
「その通り。我々教師は、魔法の未熟な君達を教えるという立場から、様々な制約はあるけれど、傷つけなければ魔法は使用許可が出ている。ロッテンベイマー先生は確かにくせのある先生だ。けれどね、良いところもある。」
その言葉に嘘だと言わんばかりの表情を生徒らは浮かべる。
「けれど、今回は君達には辛い思いをさせた責任はとってもらう。威圧的な態度や、暴言は見逃せないからね。けれど、出来れば今後の為に、ロッテンベイマー先生の良いところも見つけてごらん。」
「僕達、ロッテンベイマー先生は嫌いだよ。」
「ははっ!はっきり言うね。嫌いなら嫌いでいいんだ。けれど、嫌いだと思う人と君達はこれからもたくさん出会うかもしれない。その度にその人を排除していくのかい?」
その言葉に、クラスはシンとなった。
ニーンは言った。
「たくさん考えてごらん。それじゃあ、授業を始めるよ?」
「えっ!授業するの?!」
「当たり前だろう。さぁさぁ、教科書を出して!」
悶々とした心のまま、皆は机から教科書を取り出した。
0
お気に入りに追加
2,637
あなたにおすすめの小説
ローズお姉さまのドレス
有沢真尋
児童書・童話
最近のルイーゼは少しおかしい。
いつも丈の合わない、ローズお姉さまのドレスを着ている。
話し方もお姉さまそっくり。
わたしと同じ年なのに、ずいぶん年上のように振舞う。
表紙はかんたん表紙メーカーさまで作成
王女様は美しくわらいました
トネリコ
児童書・童話
無様であろうと出来る全てはやったと満足を抱き、王女様は美しくわらいました。
それはそれは美しい笑みでした。
「お前程の悪女はおるまいよ」
王子様は最後まで嘲笑う悪女を一刀で断罪しました。
きたいの悪女は処刑されました 解説版
生贄姫の末路 【完結】
松林ナオ
児童書・童話
水の豊かな国の王様と魔物は、はるか昔にある契約を交わしました。
それは、姫を生贄に捧げる代わりに国へ繁栄をもたらすというものです。
水の豊かな国には双子のお姫様がいます。
ひとりは金色の髪をもつ、活発で愛らしい金のお姫様。
もうひとりは銀色の髪をもつ、表情が乏しく物静かな銀のお姫様。
王様が生贄に選んだのは、銀のお姫様でした。

お姫様の願い事
月詠世理
児童書・童話
赤子が生まれた時に母親は亡くなってしまった。赤子は実の父親から嫌われてしまう。そのため、赤子は血の繋がらない女に育てられた。 決められた期限は十年。十歳になった女の子は母親代わりに連れられて城に行くことになった。女の子の実の父親のもとへ——。女の子はさいごに何を願うのだろうか。

悪女の死んだ国
神々廻
児童書・童話
ある日、民から恨まれていた悪女が死んだ。しかし、悪女がいなくなってからすぐに国は植民地になってしまった。実は悪女は民を1番に考えていた。
悪女は何を思い生きたのか。悪女は後世に何を残したのか.........
2話完結 1/14に2話の内容を増やしました
生まれたばかりですが、早速赤ちゃんセラピー?始めます!
mabu
児童書・童話
超ラッキーな環境での転生と思っていたのにママさんの体調が危ないんじゃぁないの?
ママさんが大好きそうなパパさんを闇落ちさせない様に赤ちゃんセラピーで頑張ります。
力を使って魔力を増やして大きくなったらチートになる!
ちょっと赤ちゃん系に挑戦してみたくてチャレンジしてみました。
読みにくいかもしれませんが宜しくお願いします。
誤字や意味がわからない時は皆様の感性で受け捉えてもらえると助かります。
流れでどうなるかは未定なので一応R15にしております。
現在投稿中の作品と共に地道にマイペースで進めていきますので宜しくお願いします🙇
此方でも感想やご指摘等への返答は致しませんので宜しくお願いします。

理想の王妃様
青空一夏
児童書・童話
公爵令嬢イライザはフィリップ第一王子とうまれたときから婚約している。
王子は幼いときから、面倒なことはイザベルにやらせていた。
王になっても、それは変わらず‥‥側妃とわがまま遊び放題!
で、そんな二人がどーなったか?
ざまぁ?ありです。
お気楽にお読みください。
稀代の悪女は死してなお
楪巴 (ゆずりは)
児童書・童話
「めでたく、また首をはねられてしまったわ」
稀代の悪女は処刑されました。
しかし、彼女には思惑があるようで……?
悪女聖女物語、第2弾♪
タイトルには2通りの意味を込めましたが、他にもあるかも……?
※ イラストは、親友の朝美智晴さまに描いていただきました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる