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第二百十九話 闇と繋がる男
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たくさんの本に囲まれた部屋の中に立つのは一人の老年の男性。
棚の中に飾られていたガラスケースに入れられた一つの魔法陣がパンと弾けて消えたのを見つめると、小さくため息をついた。
「何だ。失敗か。」
その声には、失望はなく、ただ単に、失敗したことを残念がっているようであった。
男性は棚のへと向かって杖を振るうと、砕けたガラスを消し去り、そして綺麗に片づけを済ませると床に散らばっていた本を本棚へと返して部屋を片付けると、机の上に紅茶を用意した。
用意されているのは、自分の分ともう一つ。
「いるのだろう?でてきてはどうかね?」
暗い影から現れたのは、ノアであり、その仄暗い瞳で男性を見つめると言った。
「あれは貴方の仕業だろう?」
「はっは。何の事だか。さぁ、紅茶が冷めるぞ?」
ノアは勧められた紅茶を一瞥すると、男に視線を移した。
「われわれ黒い魔法使いは魔術の国とは相性が悪い。だが、あの国もいずれ闇に染めるつもりでいる。貴方は何のつもりで、今回の事件を起こしたんです?」
ノアの言葉に男性は笑みを浮かべると、少し考えながら答えた。
「何のつもり、そうだねぇ。何のつもりと聞かれれば、おもしろそうだったからと答える。」
その男性の面白くてたまらないと言った表情に、ノアは笑みを浮かべた。
「貴方もこちら側に来たらいいのに。」
「悪いが私の心は闇に落ちるほど純粋な色はしていなくてね。だが、協力はしているだろう?」
「ええ。貴方のおかげで入りやすい国も、場所も、たくさんある。だから、このまま協力関係は続けていきたいけれど。」
「ん?なんだい?」
「我らが王には、あまり手出しはしてほしくないですね。」
その言葉に男性は面白そうに笑みを深めた。
「何故?」
「あれは我らがいずれ王にと望む存在。壊されたらたまらないんですよ。」
「ふふふ。面白いのぉ。闇に染まった者の執着、か。まぁいい。時は金なり。ここでおしゃべり虫に憑かれては時間を無駄にするぞ?」
その男の口癖にノアは大きく、わざとらしくため息をつくと肩をすくめて見せた。
「まあ貴方とこれ以上おしゃべりをする気はないですよ。では、忠告はしましたよ。もし、貴方がこちらの邪魔をするようならば、分かっていますよね?」
ノアの闇に染まった瞳が揺らめき、男性はそれから視線をそらすと机の上の紅茶を一口飲んだ。
「あぁあぁ。分かった分かった。」
男性が用が済んだならば帰れと言わんばかりに手をひらひらと振ると、ノアは苦笑を浮かべて一礼した。
「では、失礼。」
ノアは一瞬で姿を消し、出されていたティーカップの中の紅茶もなくなっている。
「可愛げのない。まあ、今回は面白かったから、よしとするかの。ふふふ。」
男性は机の上の紅茶を一気に飲み干すと、また机の上に本を積み重ねていくのであった。
棚の中に飾られていたガラスケースに入れられた一つの魔法陣がパンと弾けて消えたのを見つめると、小さくため息をついた。
「何だ。失敗か。」
その声には、失望はなく、ただ単に、失敗したことを残念がっているようであった。
男性は棚のへと向かって杖を振るうと、砕けたガラスを消し去り、そして綺麗に片づけを済ませると床に散らばっていた本を本棚へと返して部屋を片付けると、机の上に紅茶を用意した。
用意されているのは、自分の分ともう一つ。
「いるのだろう?でてきてはどうかね?」
暗い影から現れたのは、ノアであり、その仄暗い瞳で男性を見つめると言った。
「あれは貴方の仕業だろう?」
「はっは。何の事だか。さぁ、紅茶が冷めるぞ?」
ノアは勧められた紅茶を一瞥すると、男に視線を移した。
「われわれ黒い魔法使いは魔術の国とは相性が悪い。だが、あの国もいずれ闇に染めるつもりでいる。貴方は何のつもりで、今回の事件を起こしたんです?」
ノアの言葉に男性は笑みを浮かべると、少し考えながら答えた。
「何のつもり、そうだねぇ。何のつもりと聞かれれば、おもしろそうだったからと答える。」
その男性の面白くてたまらないと言った表情に、ノアは笑みを浮かべた。
「貴方もこちら側に来たらいいのに。」
「悪いが私の心は闇に落ちるほど純粋な色はしていなくてね。だが、協力はしているだろう?」
「ええ。貴方のおかげで入りやすい国も、場所も、たくさんある。だから、このまま協力関係は続けていきたいけれど。」
「ん?なんだい?」
「我らが王には、あまり手出しはしてほしくないですね。」
その言葉に男性は面白そうに笑みを深めた。
「何故?」
「あれは我らがいずれ王にと望む存在。壊されたらたまらないんですよ。」
「ふふふ。面白いのぉ。闇に染まった者の執着、か。まぁいい。時は金なり。ここでおしゃべり虫に憑かれては時間を無駄にするぞ?」
その男の口癖にノアは大きく、わざとらしくため息をつくと肩をすくめて見せた。
「まあ貴方とこれ以上おしゃべりをする気はないですよ。では、忠告はしましたよ。もし、貴方がこちらの邪魔をするようならば、分かっていますよね?」
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「あぁあぁ。分かった分かった。」
男性が用が済んだならば帰れと言わんばかりに手をひらひらと振ると、ノアは苦笑を浮かべて一礼した。
「では、失礼。」
ノアは一瞬で姿を消し、出されていたティーカップの中の紅茶もなくなっている。
「可愛げのない。まあ、今回は面白かったから、よしとするかの。ふふふ。」
男性は机の上の紅茶を一気に飲み干すと、また机の上に本を積み重ねていくのであった。
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