魔法使いアルル

かのん

文字の大きさ
上 下
47 / 76

第二百十五話

しおりを挟む

 アルルが男と対峙している時、アロン、キース、ヴィンセント、レオもまた別々の男と対峙していた。

 各々違いはあれど、男達の力は悪魔を無理やり従えているという物であり、四人の敵ではなかった。

 だからこそ、集合場所にはほぼ同時に五人が集まる事となったのだが、問題はここからであった。

 明らかに男達は弱く、あれほどまでに巧妙な魔法陣を考えられる力があるようには思えなかった。

 集合場所は、この巨大な魔法陣の中心部であり、そこでしかおそらくこの魔法陣の解除は出来ないだろうと五人は落ち合う場所に決めたのだが、そこで五人が集まった時、異変が起こった。

 空気が震え、地面に青白い魔法陣が浮かび上がり始める。

「どういう事?!お父さん!」

 アロンはその様子に目を丸くすると、封じていた五人を捕縛した状態で起き上がらせると、その男達に言った。

「これはどういう事じゃ。」

 五人は、全員が捕まってしまったことに落胆した様子であり、大きく項垂れていた。

 こうも簡単に五人が全員捕まるとは思っていなかった様子であり、悔しそうに顔を歪ませている。

 そのうちの一人が口を開いた。

「っは!俺達は間違ってなどいない!この国はおかしいのだ!」

 すると次々に男達は口を開き始める。

「そうだそうだ!何が魔術師の国だ。ただの悪魔に憑りつかれた国じゃないか。」

「この国は間違っている。俺達は救世主なんだ。」

「間違いを正さないのなら、無理やりにでも正してやろうとしただけだ!」

「俺達は間違ってなどいない!」

 その言葉に、キースは声を荒げた。

「何を自分勝手な事を言っている!もし、キミたちが言う事が正しいのならば、何故このように卑怯な事をした?陰でこそこそと。自信をもって間違っていないと言えるならば堂々と国王に直訴すべきだったんだ!」

「王子様が甘い事を!俺達は間違ってなどいない!」

 ヴィンセントはその言葉に、男達の前へと進み出ると言った。

「間違っていない。そう、思うか?」

 その言葉に男達はせせら笑いながらうなずいた。

「あぁ。俺達は間違ってなどいない。」

 ヴィンセントは、懐からま男達がこの国に描いた魔法陣を取り出すとそれを指差しながら言った。

「これは、誰が描いた?」

 五人はその言葉に顔を見合わせるとわずかにだが視線を泳がせた。

 それを見た国王は、大きく息を吐くと、男達に分からせるようにゆっくりと言った。

「お前達もまた、騙されたのだろうな。戦ってみれば分かる。お前達にこれを描くほどの力はない。」

「なっ?!」

「ならば自分達がこれを描いたと言うか?言えば、死刑は逃れられないだろう。」

 その言葉に、男達の顔色が変わる。

 ヴィンセントは、言葉を続けた。

「この魔法陣は、決定的に間違えている。巧妙に間違いには気づかせないようにしてあるが、私には分かる。お前達はこの間違いにも気づかず、踊らされているのだろう。」

 その言葉に男達は動揺し、視線を泳がせる。

 ヴィンセントは畳み掛けるように言った。

「この魔法陣は、この国の人々全てを死に絶えさせるだろう。つまり、この国は終わりだ。」

「お、終わり?」

「ウソだ。これは、悪魔との契約を絶つもので、、、、」

「そうだ!悪魔を射なくならせる為に。」

「王よ、、、、ウソだと言ってくれ。」

 ヴィンセントは首を横に振った。

「お前達が、この国を滅ぼすのだ。」

 その重い言葉に、事の重大さにやっと気が付いた五人の表情は見る見る間に血の気を失い青ざめたのであった。


しおりを挟む
感想 116

あなたにおすすめの小説

王女様は美しくわらいました

トネリコ
児童書・童話
   無様であろうと出来る全てはやったと満足を抱き、王女様は美しくわらいました。  それはそれは美しい笑みでした。  「お前程の悪女はおるまいよ」  王子様は最後まで嘲笑う悪女を一刀で断罪しました。  きたいの悪女は処刑されました 解説版

ローズお姉さまのドレス

有沢真尋
児童書・童話
最近のルイーゼは少しおかしい。 いつも丈の合わない、ローズお姉さまのドレスを着ている。 話し方もお姉さまそっくり。 わたしと同じ年なのに、ずいぶん年上のように振舞う。 表紙はかんたん表紙メーカーさまで作成

生贄姫の末路 【完結】

松林ナオ
児童書・童話
水の豊かな国の王様と魔物は、はるか昔にある契約を交わしました。 それは、姫を生贄に捧げる代わりに国へ繁栄をもたらすというものです。 水の豊かな国には双子のお姫様がいます。 ひとりは金色の髪をもつ、活発で愛らしい金のお姫様。 もうひとりは銀色の髪をもつ、表情が乏しく物静かな銀のお姫様。 王様が生贄に選んだのは、銀のお姫様でした。

悪女の死んだ国

神々廻
児童書・童話
ある日、民から恨まれていた悪女が死んだ。しかし、悪女がいなくなってからすぐに国は植民地になってしまった。実は悪女は民を1番に考えていた。 悪女は何を思い生きたのか。悪女は後世に何を残したのか......... 2話完結 1/14に2話の内容を増やしました

お姫様の願い事

月詠世理
児童書・童話
赤子が生まれた時に母親は亡くなってしまった。赤子は実の父親から嫌われてしまう。そのため、赤子は血の繋がらない女に育てられた。 決められた期限は十年。十歳になった女の子は母親代わりに連れられて城に行くことになった。女の子の実の父親のもとへ——。女の子はさいごに何を願うのだろうか。

理想の王妃様

青空一夏
児童書・童話
公爵令嬢イライザはフィリップ第一王子とうまれたときから婚約している。 王子は幼いときから、面倒なことはイザベルにやらせていた。 王になっても、それは変わらず‥‥側妃とわがまま遊び放題! で、そんな二人がどーなったか? ざまぁ?ありです。 お気楽にお読みください。

稀代の悪女は死してなお

楪巴 (ゆずりは)
児童書・童話
「めでたく、また首をはねられてしまったわ」 稀代の悪女は処刑されました。 しかし、彼女には思惑があるようで……? 悪女聖女物語、第2弾♪ タイトルには2通りの意味を込めましたが、他にもあるかも……? ※ イラストは、親友の朝美智晴さまに描いていただきました。

かつて聖女は悪女と呼ばれていた

楪巴 (ゆずりは)
児童書・童話
「別に計算していたわけではないのよ」 この聖女、悪女よりもタチが悪い!? 悪魔の力で聖女に成り代わった悪女は、思い知ることになる。聖女がいかに優秀であったのかを――!! 聖女が華麗にざまぁします♪ ※ エブリスタさんの妄コン『変身』にて、大賞をいただきました……!!✨ ※ 悪女視点と聖女視点があります。 ※ 表紙絵は親友の朝美智晴さまに描いていただきました♪

処理中です...