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第二百十五話
しおりを挟むアルルが男と対峙している時、アロン、キース、ヴィンセント、レオもまた別々の男と対峙していた。
各々違いはあれど、男達の力は悪魔を無理やり従えているという物であり、四人の敵ではなかった。
だからこそ、集合場所にはほぼ同時に五人が集まる事となったのだが、問題はここからであった。
明らかに男達は弱く、あれほどまでに巧妙な魔法陣を考えられる力があるようには思えなかった。
集合場所は、この巨大な魔法陣の中心部であり、そこでしかおそらくこの魔法陣の解除は出来ないだろうと五人は落ち合う場所に決めたのだが、そこで五人が集まった時、異変が起こった。
空気が震え、地面に青白い魔法陣が浮かび上がり始める。
「どういう事?!お父さん!」
アロンはその様子に目を丸くすると、封じていた五人を捕縛した状態で起き上がらせると、その男達に言った。
「これはどういう事じゃ。」
五人は、全員が捕まってしまったことに落胆した様子であり、大きく項垂れていた。
こうも簡単に五人が全員捕まるとは思っていなかった様子であり、悔しそうに顔を歪ませている。
そのうちの一人が口を開いた。
「っは!俺達は間違ってなどいない!この国はおかしいのだ!」
すると次々に男達は口を開き始める。
「そうだそうだ!何が魔術師の国だ。ただの悪魔に憑りつかれた国じゃないか。」
「この国は間違っている。俺達は救世主なんだ。」
「間違いを正さないのなら、無理やりにでも正してやろうとしただけだ!」
「俺達は間違ってなどいない!」
その言葉に、キースは声を荒げた。
「何を自分勝手な事を言っている!もし、キミたちが言う事が正しいのならば、何故このように卑怯な事をした?陰でこそこそと。自信をもって間違っていないと言えるならば堂々と国王に直訴すべきだったんだ!」
「王子様が甘い事を!俺達は間違ってなどいない!」
ヴィンセントはその言葉に、男達の前へと進み出ると言った。
「間違っていない。そう、思うか?」
その言葉に男達はせせら笑いながらうなずいた。
「あぁ。俺達は間違ってなどいない。」
ヴィンセントは、懐からま男達がこの国に描いた魔法陣を取り出すとそれを指差しながら言った。
「これは、誰が描いた?」
五人はその言葉に顔を見合わせるとわずかにだが視線を泳がせた。
それを見た国王は、大きく息を吐くと、男達に分からせるようにゆっくりと言った。
「お前達もまた、騙されたのだろうな。戦ってみれば分かる。お前達にこれを描くほどの力はない。」
「なっ?!」
「ならば自分達がこれを描いたと言うか?言えば、死刑は逃れられないだろう。」
その言葉に、男達の顔色が変わる。
ヴィンセントは、言葉を続けた。
「この魔法陣は、決定的に間違えている。巧妙に間違いには気づかせないようにしてあるが、私には分かる。お前達はこの間違いにも気づかず、踊らされているのだろう。」
その言葉に男達は動揺し、視線を泳がせる。
ヴィンセントは畳み掛けるように言った。
「この魔法陣は、この国の人々全てを死に絶えさせるだろう。つまり、この国は終わりだ。」
「お、終わり?」
「ウソだ。これは、悪魔との契約を絶つもので、、、、」
「そうだ!悪魔を射なくならせる為に。」
「王よ、、、、ウソだと言ってくれ。」
ヴィンセントは首を横に振った。
「お前達が、この国を滅ぼすのだ。」
その重い言葉に、事の重大さにやっと気が付いた五人の表情は見る見る間に血の気を失い青ざめたのであった。
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