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第二百十二話
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夜更け、アロンは監視用にかけた花の魔法を使い、境界線のほころびを見つめていた。
全部で五か所のほころびには今の所怪しげな動きはないが、おそらく、何かが起こるのではないかとアロンは踏んでいた。
魔法で入れたお茶を飲みながら、サリーのお茶が世界一だなと小さく息を吐いた時であった。
扉をノックする音が聞こえて、アロンは扉へと足を向けた。
「お父さん?、、、起きてる?」
「アルル?」
扉を開けると、そこには枕をぎゅっと抱きしめたアルルが居た。
アロンはアルルに視線を合わせてしゃがむと、首を傾げた。
「こんな夜更けにどうしたんじゃ?」
「うん。」
なかなか話しだそうとしないアルルを部屋に招き入れると、アロンはホットミルクを入れてアルルに差し出した。
アルルは椅子に座りそれを受け取ると、ふーふーと息を吐いて一口飲んでから、アロンを見た。
「どうしたんじゃ?」
「あのね、気になる事があってね、それで、、、。」
「気になる事?なんじゃ?」
アルルは少し言いにくそうにした後に、勇気を出して口を開いた。
「キースには、お父さんがいて、お母さんがいるでしょう?」
「ん?そうだな。」
「それでね、、、キースのお父さんは、お母さんが大好きで、それで、、、、」
「うん?」
「私の本当のお父さんとお母さんは。」
そこでアルルは言葉を止めると、首を横に振ってミルクを一気に飲み干した。
「アルル?」
「ごめんなさい。やっぱりいいや。ミルクご馳走様。」
「アルル。」
「こんな夜更けにごめんなさい。」
「アルル。おいで。」
アルルはあわてて部屋を出て行こうとしたのだが、アロンはそれを引き留めると、アルルを膝の上に乗せて頭を撫でた。
「自分の父親と母親の事が気になったのか?」
その言葉に、アルルは小さくうなずいた。
「私の、、、お父さんとお母さんは、キースの両親みたいに、愛し合っていたのかな?」
アルルの両親について、アロンは調べていないわけではなかった。
だが、今の所母親の素性しか分からず、しかも母親が今どこで何をしているのかも分からなかった。
「アルル。」
「そうだったら、いいのになって思ったの。」
「そうじゃなぁ。」
「私ね、アロンお父さんがいるのに、贅沢だよね。今、とっても幸せなのに、でもさ、、、キースがお父さんといたり、レオがお城に呼ばれたりした時とか、、、心の中がぐるぐるするの。嫌な子になっちゃう。」
アルルはぎゅっとアロンに抱き着くと言った。
「ずっと、ずーっと思ってること、言ってもいい?」
「なんじゃ?」
「私は何で捨てられたんだろう。」
アロンはその言葉に、息を飲んだ。
おそらく、アルルはずっとずっとその思いが胸の中にあったのだろう。
それを思うと、アロンの胸が痛くなる。
まだ幼いのにも関わらず、一人で何度もアルルは葛藤し、泣いてきたのだろう。
辛くないわけがない。
アロンはぎゅっとアルルを抱き締めた。
「アルル。」
アロンは静かに言った。
「アルルの家族については、まだ、何も分かってはいない。しかし、アルル。わしはお前が大好きじゃ。娘として愛しい。」
「お父さんは、、、、私を捨てないよね?」
疑っているのではない。
ただただ、不安なのだ。
その言葉に、アロンはよりいっそう腕の力を強めた。
「偉大なる大魔法使いの名に誓おう。わしがアルルを捨てることなど、ない。」
「ふふ。良かった。」
アルルはそれからすぐにうとうとし始めた。
アロンはそんなアルルをベッドに寝かしつけると大きく息を吐いた。
「わしも、良き父を目指さなければな。」
アルルの寝顔を見ながら、アロンは改めてそう心に誓うのであった。
全部で五か所のほころびには今の所怪しげな動きはないが、おそらく、何かが起こるのではないかとアロンは踏んでいた。
魔法で入れたお茶を飲みながら、サリーのお茶が世界一だなと小さく息を吐いた時であった。
扉をノックする音が聞こえて、アロンは扉へと足を向けた。
「お父さん?、、、起きてる?」
「アルル?」
扉を開けると、そこには枕をぎゅっと抱きしめたアルルが居た。
アロンはアルルに視線を合わせてしゃがむと、首を傾げた。
「こんな夜更けにどうしたんじゃ?」
「うん。」
なかなか話しだそうとしないアルルを部屋に招き入れると、アロンはホットミルクを入れてアルルに差し出した。
アルルは椅子に座りそれを受け取ると、ふーふーと息を吐いて一口飲んでから、アロンを見た。
「どうしたんじゃ?」
「あのね、気になる事があってね、それで、、、。」
「気になる事?なんじゃ?」
アルルは少し言いにくそうにした後に、勇気を出して口を開いた。
「キースには、お父さんがいて、お母さんがいるでしょう?」
「ん?そうだな。」
「それでね、、、キースのお父さんは、お母さんが大好きで、それで、、、、」
「うん?」
「私の本当のお父さんとお母さんは。」
そこでアルルは言葉を止めると、首を横に振ってミルクを一気に飲み干した。
「アルル?」
「ごめんなさい。やっぱりいいや。ミルクご馳走様。」
「アルル。」
「こんな夜更けにごめんなさい。」
「アルル。おいで。」
アルルはあわてて部屋を出て行こうとしたのだが、アロンはそれを引き留めると、アルルを膝の上に乗せて頭を撫でた。
「自分の父親と母親の事が気になったのか?」
その言葉に、アルルは小さくうなずいた。
「私の、、、お父さんとお母さんは、キースの両親みたいに、愛し合っていたのかな?」
アルルの両親について、アロンは調べていないわけではなかった。
だが、今の所母親の素性しか分からず、しかも母親が今どこで何をしているのかも分からなかった。
「アルル。」
「そうだったら、いいのになって思ったの。」
「そうじゃなぁ。」
「私ね、アロンお父さんがいるのに、贅沢だよね。今、とっても幸せなのに、でもさ、、、キースがお父さんといたり、レオがお城に呼ばれたりした時とか、、、心の中がぐるぐるするの。嫌な子になっちゃう。」
アルルはぎゅっとアロンに抱き着くと言った。
「ずっと、ずーっと思ってること、言ってもいい?」
「なんじゃ?」
「私は何で捨てられたんだろう。」
アロンはその言葉に、息を飲んだ。
おそらく、アルルはずっとずっとその思いが胸の中にあったのだろう。
それを思うと、アロンの胸が痛くなる。
まだ幼いのにも関わらず、一人で何度もアルルは葛藤し、泣いてきたのだろう。
辛くないわけがない。
アロンはぎゅっとアルルを抱き締めた。
「アルル。」
アロンは静かに言った。
「アルルの家族については、まだ、何も分かってはいない。しかし、アルル。わしはお前が大好きじゃ。娘として愛しい。」
「お父さんは、、、、私を捨てないよね?」
疑っているのではない。
ただただ、不安なのだ。
その言葉に、アロンはよりいっそう腕の力を強めた。
「偉大なる大魔法使いの名に誓おう。わしがアルルを捨てることなど、ない。」
「ふふ。良かった。」
アルルはそれからすぐにうとうとし始めた。
アロンはそんなアルルをベッドに寝かしつけると大きく息を吐いた。
「わしも、良き父を目指さなければな。」
アルルの寝顔を見ながら、アロンは改めてそう心に誓うのであった。
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