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第百九十六話
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深い青色の瞳を持った、とても美しいお姫様がおりました。
お姫様の美しさは人々を魅了し、皆がお姫様をもてはやします。
「なんと美しい。」
「まるで宝石のようだ。」
「どうか私の后になってください。」
大国の王様や、王子様らはこぞってお姫様に愛をささやきます。
美しい美しいと外見を褒め称えました。
ですがお姫様は外見ばかりを見る人々が恐ろしくなり、次第に他人に会うこと自体に恐怖を抱くようになりました。
すると姫に恋をする者達はさらにエスカレートしていくのです。
頼んでもいない貢ぎ物を、たくさん送りつけてきます。
ですが、どんな宝をプレゼントしても姫は結婚を突っぱねました。
そして姫は願うのです。
私も人を好きになってみたい。
けれど外見に惹かれても姫は嬉しくありません。
ですから、みすぼらしい格好をして顔を隠して姫は恋を探したのです。
町で会う人々は、その外見に姫を避けました。
あぁ、やはり外見が美しくなければだれも自分などに目もくれないのだと、姫が森のなかで寂しく泣いていると、一人の青年が姫に声をかけました。
「大丈夫ですか?」
姫には、その暖かな一言がどんな宝物よりも尊く感じました。
姫と青年はそれかれ町の外れの森でよく会っては話をするようになります。
姫の心はだんだんと青年に奪われていきましたが、次第に姿を明らかにするのが恐ろしくなりました。
もし姫だと明かしたらどうなるのだろうか。
彼も外見に惑わされるのだろうか。
そんな日の事です。
城の中が騒がしく、姫はなんだろうかと人の集まる場所へと足を向けて声を失いました。
「姫をたぶらかす男をつれてきました。」
「姫の心をきっと操っていたのです。」
「恐ろしい男だ!」
青年は男達に囲まれ、手酷い傷をおっています。そして、次の瞬間、一人の男の剣が振り上げられました。
姫は、驚きながらも、勝手にその身は動き、青年を庇って剣で貫かれてしまいます。
一瞬、青年と目が合います。
あぁ、姫だと知られてしまった。
けれど、それでも、この人が無事で良かった。
これが恋。
愛しさが胸に広がり、悲しみに歪む青年の顔すらもいとおしい。
青年は突然のことに驚きながらも汚れるのも厭わずに地面に横たわる姫を抱き起こしました。
青年は涙を流して姫の目覚めを乞いました。
ですが、姫は目を開けず、体に触れればそこに姫の心はもういないのだと気づきました。
あぁ、心が砕けます。
これが恋か、これが愛か。
人など愛したことのなかった青年は、みすぼらしい格好をして姿を隠していた姫のその心の優しさに惹かれ、そしていつしか心を奪われていたのです。
胸を貫くような痛みに、青年が声をあげた時でした。
絶望の臭いに引き寄せられて目の前に悪夢が現れたのです。
悪魔は言いました。
「この女を助けたいか?」
「助けてくれ。」
「対価を聞かぬのか?」
「どんなものでも差し出そう。その代わり、助けて。」
唯一の愛に心を打たれた悪魔は姫を蘇らせ、青年と契約を結ぶとそれから善き隣人となったのです。
絵本はそう締め括られている。
けれど、キースは言った。
「この物語の真実は少し違う。」
悪魔は何でも差し出すと言った言葉ににやりと笑みを浮かべると姫を生き返らせた。
姫は目を覚まし、二人は抱きしめ合った。
次の瞬間に、悪夢が始まるとこの時の二人は知らなかったのだ。
青年を剣で貫いた男も、その他の男も次の瞬間に、倒れた。
「え?」
空を闇が包み込む。
青年も姫も顔を青ざめさせて悪魔を見た。
「対価はこの国の人間の命だ。」
「命?え?、、、何故、、こんなに、、、。」
次の瞬間悪魔が笑う。
「人の命とは重さが違う。その女は宝石の瞳を持ち、人を惑わす力を持つ。」
「そんな、、、、。」
だが、二人は大通りを見た瞬間に地獄が始まった。
人々の悲鳴が国に響き渡る。
人々が次々に倒れていく。
声をあげて悪魔にやめてくれと懇願すると、悪魔は姫に目をやった。
青い瞳に見言った瞬間に、悪魔は姫に膝をついた。
悪魔すらも、その瞳に惑わされたのだ。
「お願いします。やめて。」
「命をとることはやめられない。それが対価だ。」
「命の代わりに対価を変えられないのですか?」
その言葉に悪魔は悩むと、ふむとうなずいた。
「いいだろう。何と変える?」
姫は少し考えると言った。
「貴方達も、、、長い時間をかけて、対価をもらえる方がいいのではない?」
「ほう。」
「この国の人は全員が悪魔と契約をしましょう。」
「ほう!それはいいな。」
「その代わり命をとるのはやめて。」
悪魔はにやりとうなずいた。
悪魔と契約をする人は少ない。それをたくさん確保出来るのであればなんと喜ばしいことであろうか。
「ならば、契約をした人の願いは叶えてやろう。その代わりに死した後の死体を対価としていただこう。」
「死体を?」
「あぁ。」
「死体をどうするの?」
「さてね?それで、どうする?」
悪魔の言葉に姫はうなずいた。
「ならば、この国に住まうものは目印としてお前と同じ瞳の色を持つように変えてやろう。」
こうして、国の人々の瞳は青に変わり、国は魔術の国と名前を変え、姫と青年が国を悪魔と共に栄えさせた。
お姫様の美しさは人々を魅了し、皆がお姫様をもてはやします。
「なんと美しい。」
「まるで宝石のようだ。」
「どうか私の后になってください。」
大国の王様や、王子様らはこぞってお姫様に愛をささやきます。
美しい美しいと外見を褒め称えました。
ですがお姫様は外見ばかりを見る人々が恐ろしくなり、次第に他人に会うこと自体に恐怖を抱くようになりました。
すると姫に恋をする者達はさらにエスカレートしていくのです。
頼んでもいない貢ぎ物を、たくさん送りつけてきます。
ですが、どんな宝をプレゼントしても姫は結婚を突っぱねました。
そして姫は願うのです。
私も人を好きになってみたい。
けれど外見に惹かれても姫は嬉しくありません。
ですから、みすぼらしい格好をして顔を隠して姫は恋を探したのです。
町で会う人々は、その外見に姫を避けました。
あぁ、やはり外見が美しくなければだれも自分などに目もくれないのだと、姫が森のなかで寂しく泣いていると、一人の青年が姫に声をかけました。
「大丈夫ですか?」
姫には、その暖かな一言がどんな宝物よりも尊く感じました。
姫と青年はそれかれ町の外れの森でよく会っては話をするようになります。
姫の心はだんだんと青年に奪われていきましたが、次第に姿を明らかにするのが恐ろしくなりました。
もし姫だと明かしたらどうなるのだろうか。
彼も外見に惑わされるのだろうか。
そんな日の事です。
城の中が騒がしく、姫はなんだろうかと人の集まる場所へと足を向けて声を失いました。
「姫をたぶらかす男をつれてきました。」
「姫の心をきっと操っていたのです。」
「恐ろしい男だ!」
青年は男達に囲まれ、手酷い傷をおっています。そして、次の瞬間、一人の男の剣が振り上げられました。
姫は、驚きながらも、勝手にその身は動き、青年を庇って剣で貫かれてしまいます。
一瞬、青年と目が合います。
あぁ、姫だと知られてしまった。
けれど、それでも、この人が無事で良かった。
これが恋。
愛しさが胸に広がり、悲しみに歪む青年の顔すらもいとおしい。
青年は突然のことに驚きながらも汚れるのも厭わずに地面に横たわる姫を抱き起こしました。
青年は涙を流して姫の目覚めを乞いました。
ですが、姫は目を開けず、体に触れればそこに姫の心はもういないのだと気づきました。
あぁ、心が砕けます。
これが恋か、これが愛か。
人など愛したことのなかった青年は、みすぼらしい格好をして姿を隠していた姫のその心の優しさに惹かれ、そしていつしか心を奪われていたのです。
胸を貫くような痛みに、青年が声をあげた時でした。
絶望の臭いに引き寄せられて目の前に悪夢が現れたのです。
悪魔は言いました。
「この女を助けたいか?」
「助けてくれ。」
「対価を聞かぬのか?」
「どんなものでも差し出そう。その代わり、助けて。」
唯一の愛に心を打たれた悪魔は姫を蘇らせ、青年と契約を結ぶとそれから善き隣人となったのです。
絵本はそう締め括られている。
けれど、キースは言った。
「この物語の真実は少し違う。」
悪魔は何でも差し出すと言った言葉ににやりと笑みを浮かべると姫を生き返らせた。
姫は目を覚まし、二人は抱きしめ合った。
次の瞬間に、悪夢が始まるとこの時の二人は知らなかったのだ。
青年を剣で貫いた男も、その他の男も次の瞬間に、倒れた。
「え?」
空を闇が包み込む。
青年も姫も顔を青ざめさせて悪魔を見た。
「対価はこの国の人間の命だ。」
「命?え?、、、何故、、こんなに、、、。」
次の瞬間悪魔が笑う。
「人の命とは重さが違う。その女は宝石の瞳を持ち、人を惑わす力を持つ。」
「そんな、、、、。」
だが、二人は大通りを見た瞬間に地獄が始まった。
人々の悲鳴が国に響き渡る。
人々が次々に倒れていく。
声をあげて悪魔にやめてくれと懇願すると、悪魔は姫に目をやった。
青い瞳に見言った瞬間に、悪魔は姫に膝をついた。
悪魔すらも、その瞳に惑わされたのだ。
「お願いします。やめて。」
「命をとることはやめられない。それが対価だ。」
「命の代わりに対価を変えられないのですか?」
その言葉に悪魔は悩むと、ふむとうなずいた。
「いいだろう。何と変える?」
姫は少し考えると言った。
「貴方達も、、、長い時間をかけて、対価をもらえる方がいいのではない?」
「ほう。」
「この国の人は全員が悪魔と契約をしましょう。」
「ほう!それはいいな。」
「その代わり命をとるのはやめて。」
悪魔はにやりとうなずいた。
悪魔と契約をする人は少ない。それをたくさん確保出来るのであればなんと喜ばしいことであろうか。
「ならば、契約をした人の願いは叶えてやろう。その代わりに死した後の死体を対価としていただこう。」
「死体を?」
「あぁ。」
「死体をどうするの?」
「さてね?それで、どうする?」
悪魔の言葉に姫はうなずいた。
「ならば、この国に住まうものは目印としてお前と同じ瞳の色を持つように変えてやろう。」
こうして、国の人々の瞳は青に変わり、国は魔術の国と名前を変え、姫と青年が国を悪魔と共に栄えさせた。
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