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第百九十話
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火花は勢いを増すと手当たり次第に宙に飛び、子ども達やアルルに襲い掛かった。
しかし、キースがそれを睨みつけ一言「消えろ。」と、発しただけでそれらは何もなかったかのように姿を消した。
シュリレは目を丸くして、声を荒げて悪魔に命じる。
「ええい!この部屋にいる者達に稲妻を落とせ!」
「やめておけ。」
「落ちろぉぉ!」
次の瞬間、稲光が起こると、シュリレの体めがけて稲妻が落ち、シュリレは体に電流が走り煙を吐いた。
その光景にアルルやレオが息を飲んでいると、横で落ち着いた口調でアロンが言った。
「良いか。ちゃんと見ておきなさい。魔術の国では、最も王族が強い。」
「なんで?」
アルルの言葉に、アロンはキースの後ろに浮かび上がる悪魔を指差した。
「王族は悪魔の中でも恐ろしく強い悪魔と契約を結んでおる。それは魔術の国を守る為でもあり、魔術師の中で敵対する者らが出た時に戒める為でもある。」
シュリレはそれでもなお諦めずにキースに言った。
「我が王子。どうか、私を助けて下さい。私は貴方の忠実なる僕。」
キースはにっこりと笑みを浮かべると、次の瞬間にはそれを消して言った。
「ならば、罪は罪と認めろ。それまでの間、謹慎とする。」
「キース様!」
「貴様に名を呼ばれるいわれはない。魔術師の恥さらしが。」
そう言ってキースはランプを取り出すとそのふたを開け、シュリレへと向けた。
「閉じ込めよ。」
「いや!やめてくださいませ!いや!」
シュリレは叫んだが、体はどんどんとランプの中へと吸い込まれ、そして消えてしまった。
キースはランプのふたを閉じると、それを懐へと仕舞った。
「さてっと、今日は仕事が多いな。」
ニコリと笑ったキースがアルルには恐ろしく感じられて思わずレオとつなぐ手をぎゅっと握ると、レオも握り返してくれた。
アロンは一歩進み出るとキースに頭を下げた。
「我が娘を取り返して下さり、ありがとうございます。」
「いや。魔術の国を代表して謝罪する。偉大なる大魔法使いの弟子をこのようなことに巻き込んで本当に申し訳なかった。シュリレへの処罰はこちらにまかせてもらえるか?」
その言葉にアロンは頷くと、子ども達へと視線を移した。
「この子達は?」
「こちらで預かる。親が居れば親に返す。」
「居なかった場合は?」
「心配するな。ちゃんと面倒は見る。」
その言葉にアロンは頷くと、アルルの方に視線を移すと、アルルを抱き上げてぎゅっと抱きしめた。
「無事で良かった。」
アルルもアロンを抱きしめ返した。
温かさが伝わって心が穏やかになる。
「お父さん。私ね、信じてたよ?」
「ん?」
「お父さんもレオもちゃんと私の事を忘れないって、信じてた!」
アロンはにっこりと笑い、そして言った。
「もちろんじゃ。わしとレオは偉大なる大魔法使いとその弟子じゃぞ?」
レオも笑った。
「アルルを忘れるなんて、絶対にないよ!」
アルルはその言葉に満面の笑みを浮かべると、またぎゅっと抱き着いた。
良かった。
ほら、やっぱりここは暖かい。
お父さんもレオも、私の事を覚えていてくれた。
それだけで自分がここにいていいのだと言われているようで、アルルはにこりと笑みを浮かべた。
私はここにいていいんだ。
そう思うだけで幸せな気持ちになった。
しかし、キースがそれを睨みつけ一言「消えろ。」と、発しただけでそれらは何もなかったかのように姿を消した。
シュリレは目を丸くして、声を荒げて悪魔に命じる。
「ええい!この部屋にいる者達に稲妻を落とせ!」
「やめておけ。」
「落ちろぉぉ!」
次の瞬間、稲光が起こると、シュリレの体めがけて稲妻が落ち、シュリレは体に電流が走り煙を吐いた。
その光景にアルルやレオが息を飲んでいると、横で落ち着いた口調でアロンが言った。
「良いか。ちゃんと見ておきなさい。魔術の国では、最も王族が強い。」
「なんで?」
アルルの言葉に、アロンはキースの後ろに浮かび上がる悪魔を指差した。
「王族は悪魔の中でも恐ろしく強い悪魔と契約を結んでおる。それは魔術の国を守る為でもあり、魔術師の中で敵対する者らが出た時に戒める為でもある。」
シュリレはそれでもなお諦めずにキースに言った。
「我が王子。どうか、私を助けて下さい。私は貴方の忠実なる僕。」
キースはにっこりと笑みを浮かべると、次の瞬間にはそれを消して言った。
「ならば、罪は罪と認めろ。それまでの間、謹慎とする。」
「キース様!」
「貴様に名を呼ばれるいわれはない。魔術師の恥さらしが。」
そう言ってキースはランプを取り出すとそのふたを開け、シュリレへと向けた。
「閉じ込めよ。」
「いや!やめてくださいませ!いや!」
シュリレは叫んだが、体はどんどんとランプの中へと吸い込まれ、そして消えてしまった。
キースはランプのふたを閉じると、それを懐へと仕舞った。
「さてっと、今日は仕事が多いな。」
ニコリと笑ったキースがアルルには恐ろしく感じられて思わずレオとつなぐ手をぎゅっと握ると、レオも握り返してくれた。
アロンは一歩進み出るとキースに頭を下げた。
「我が娘を取り返して下さり、ありがとうございます。」
「いや。魔術の国を代表して謝罪する。偉大なる大魔法使いの弟子をこのようなことに巻き込んで本当に申し訳なかった。シュリレへの処罰はこちらにまかせてもらえるか?」
その言葉にアロンは頷くと、子ども達へと視線を移した。
「この子達は?」
「こちらで預かる。親が居れば親に返す。」
「居なかった場合は?」
「心配するな。ちゃんと面倒は見る。」
その言葉にアロンは頷くと、アルルの方に視線を移すと、アルルを抱き上げてぎゅっと抱きしめた。
「無事で良かった。」
アルルもアロンを抱きしめ返した。
温かさが伝わって心が穏やかになる。
「お父さん。私ね、信じてたよ?」
「ん?」
「お父さんもレオもちゃんと私の事を忘れないって、信じてた!」
アロンはにっこりと笑い、そして言った。
「もちろんじゃ。わしとレオは偉大なる大魔法使いとその弟子じゃぞ?」
レオも笑った。
「アルルを忘れるなんて、絶対にないよ!」
アルルはその言葉に満面の笑みを浮かべると、またぎゅっと抱き着いた。
良かった。
ほら、やっぱりここは暖かい。
お父さんもレオも、私の事を覚えていてくれた。
それだけで自分がここにいていいのだと言われているようで、アルルはにこりと笑みを浮かべた。
私はここにいていいんだ。
そう思うだけで幸せな気持ちになった。
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