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第百八十八話
しおりを挟むアルルは人形として操られている子ども達に、シュリレの事について尋ねた。
魔術師は契約する悪魔を身に着けたアクセサリーに宿すことが多く、子ども達の話からいつも身に着けている腕輪であろうと予想がついた。
そして中には、腕輪の悪魔に向かってシュリレが話しかける様子を見ていた子どももいた事から、腕輪に悪魔が憑いている事は確実であった。
あと一つアルルが把握したかったこと。
それは、自分達を操っている魔術の魔法陣がどこかに描かれているはずであるという事である。
本来人を操るほどの魔術は長くても数時間しか効かないはずだ。だが、この屋敷にいる子ども達は日中はずっと操られ続けている。
それは魔術師本人にもかなりの労力を強いるはずだ。
だが、シュリレは全くそうした様子が見られない。
その事からアルルは、シュリレの人を操る魔術の魔法陣がどこかに仕組まれており、それ故に自分達は操られ続けているのではないかと考えた。
体は操られていても五感は操る事は出来ない。
自由に動き回る事は出来なくても、屋敷の中をずっと見てきた子ども達ならば魔法陣をどこかで目にしているのではないかとアルルは考えて尋ねたのだ。
すると子ども達は少し考えてからすぐにアルルに言った。
「屋敷の中には、至る所にシュリレ様の肖像画が飾られているの。」
「それの右下に必ず、紋様があるよ。」
それを聞いたアルルは、それを浅めにして確信した。
あれは魔術の魔法陣である。
そして、それをアロンが放った魔法が貫き焼き払った瞬間に子ども達は自由になり悲鳴を上げた。
突然体が自由になったことで子ども達は驚いて悲鳴を上げたのだが、もしも体が自由になったらどうするかはアルルから聞いていた。
「皆!集まるんだ!」
一人の少年がそう声を上げ、子ども達を集める。
アルルはレオから魔法の杖を受け取ると、魔法を放った。
「子ども達を守れ!」
一か所に集まった子ども達の周りにアルルは守護魔法と防護壁の魔法を掛けた。
シュリレは、その瞳に憎しみを宿して立ち上がると、自身に向かって放たれたアロンの魔法に向かって腕輪のつけた手をかざした。
鬼のように恐ろしい顔の悪魔が現れると、アロンの魔法をその牙の並ぶ口の中へと吸い込んだ。
「突然、私の屋敷で、暴れるなんて、どういう事かしら?」
その言葉にアロンは鼻で笑うと、アルルを背に隠しながらはっきりとした口調で言った。
「わしの可愛い娘を誘拐しておいて、何を言うか!」
アルルはその言葉に、瞳に涙が浮かんだ。
大きなその背中が自分の事を守ってくれている。
横を見れば、レオもシュリレを睨みつけ、アルルの手をぎゅっと握っている。
温かな手のぬくもり。
アルルは涙を流しながら笑った。
ほらね。
ほら、やっぱりお父さんもレオも、私の事を忘れていなんていなかった。
私はちゃんと、ここにいる。
私の家族も、ここにいる。
私は忘れられてなんていない。
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