魔法使いアルル

かのん

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第百八十五話

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 数日が立ち、アルルは来る日も来る日も少女にアロンもレオもお前の事など忘れていると言われ続け、目の下には深い隈が出来上がっていた。

 それを少女は面白そうに笑ってはお化粧をアルルに施して見えなく隠していた。

 この数日で分かったことは、少女の名前はシュリレ。魔術の国の魔術師であり、アルルに街で声をかけてきたキースの事が好きだという事。

 そんな少ない情報しか手に入っていない。

 後は、自分と同じように人形として働いている子どもが13名いて、全員がそれを良しとして生きていると言う現実であった。

 辛い数日間であった。だが、希望もある。

 明日、アロンとレオが魔術の国に来ることになっており、シュリレは進んで二人に滞在する場所として自分の屋敷を進めたと言う。

 もちろん、記憶を失った二人を見て、絶望するアルルが見たいからである。

 シュリレは事ある毎にアルルに絶望を刻むように呟く。

「お前は忘れられている。」

「その程度の子なの。」

「むしろお前が居ない方が皆が幸せ。」

 そう呟かれるたびに、そんな事はないと自分に言い聞かせるが心が黒く染まるような感情に包まれる。

 そんな夜の事であった。

 アルルが丸まり、大きく息を吐いた時であった。

 暗闇の中に入口が開きその中から黒い衣服に身を包んだノアとドリーが現れたのである。

 ドリーはアルルの顔を見た瞬間に、笑みを浮かべるとアルルをぎゅっと抱きしめてきた。

「あぁ、アルル様。」

 アルルは二人から逃げる気力もなく、されるがままになっているとノアが優しい声で呟いた。

「ここは姫君とは相性の悪い国ですねぇ。姫君、一緒に行きますか?」

 二人の周りの闇はアルルと会えたことを喜ぶように揺れている。

 だが、アルルはドリーを引き離すと、立ち上がり、二人から距離を取った。

「行かない。私は、、、家に帰るんだもの。」

 その様子にドリーは悲しげに言った。

「そのまま闇に心を許してしまえばいいのに。アルル様。闇に心を開いて。」

 アルルは首を何度も横に振った。

 その様子を見てノアは肩をすくめる。

「魔術師と魔法使いは相性が悪いんですよ。もう、ここに私達が居る事もばれている。」

「アルル様!」

 ノアはそう言うが、アルルは首をまた横に振ると、小さく息を吐いてから言った。

「ノアもドリーも早く逃げて。私の為にわざわざ来てくれたんでしょう?」

 入口の闇の入口が揺らいでいる。きっとこの国に道を繋ぐのは相当な苦労があったはずだ。

 アルルのその言葉に二人は目を丸くした。

 アルルはニコリと笑みを浮かべると言った。

「ほら、見つからないうちに行って。ふふ。私はそっちには行かないよ?」

 アルルの笑みは明らかに強がりだったのだが、その笑みのまま、アルルは二人に言った。

「私はそっちには行かない。二人がいつか、私の傍においでよ。」

 その言葉に二人は驚き、だが次の瞬間大きく入口が揺れたのを見てノアはドリーの腕を引っ張り闇の入口へと戻る。

「その元気があれば大丈夫ですね。ですが姫君、呼んでくださればいつでも迎えに来ますからね。」

「私もですよ!アルル様!」

 アルルが二人に手を振った時、闇の入口は消え、二人の姿は消えた。

 そしてその代わりにシュリレが現れ、怒りに燃える顔でアルルを睨みつけた。

「私の屋敷に闇を開いたのはお前か!」

 怒りを宿したシュリレの顔はまるで鬼のように歪んでいた。
 


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