15 / 76
第百八十三話
しおりを挟む
暗い一室にアルルは入れられると、少女はにこにことしながらアルルを鏡の前に立たせて洋服を当てて着飾っていく。
「あぁ、この髪の色がダメね。」
少女はアルルの髪の毛をグイッと引っ張ると、息をふっとかけた。
するとアルルの髪の色は真っ赤な深紅へと色を変える。
「瞳の色もダメ。」
瞳は紫色に変えられてしまい、鏡に映るのはまるでしらない少女のようであった。
「服はこれにしましょう。ふふ。ほら、この方が好い。」
少女は満足したようにうなずくと言った。
「これでいいわ。おい。お前、この人形を片付けておいてちょうだい。」
「畏まりました。」
少女の横に控えていた赤髪に桃色の瞳をした少年は、少女に命じられアルルの腕を取って歩かせると、暗い廊下をどんどんと進んでいく。
階段を下り、そして、檻の中に入れられた瞬間、アルルの体は先ほどまでの呪縛が解けて体に力が入るようになった。
「何、、、?これ。」
アルルは怖くて、体を震わせながら自分を檻に入れた少年を見た。
少年は自身も檻の中に入ると、大きく背伸びをし、ため息をついた。
「はじめまして。ようこそ。魔術の国へ。」
「魔術の国?」
アルルが目を丸くすると、少年は床に座って言った。
「そうだよ。キミは?買われてきたの?」
アルルは首を横に振り、少年の横にちょこんと座った。
「僕はご主人様に買われて、ずっとここで人形として生活しているんだ。何、悪くないよ?ほら、ベッドはあるし、身ぎれいにさせてもらえるし、ごはんだってちゃんともらえる。」
にこにこと楽しそうに話をする少年にアルルは目を丸くて首を横に振った。
「わ、私は、嫌。早く、、、お父さんの所に帰りたい。」
すっと少年は目を細めると言った。
「無理だよ。僕達は人形だもの。意思は持っちゃいけない。ほら、皆を見てごらんよ。」
「え?」
アルルが少年に言われ周りを見回してぞっとした。
そこには、少年、少女たちが壁にもたれて座っている。
ピクリとも動かず、ただ、そこにいる。
アルルは怖くなって立ち上がると、檻から出ようとしたが、入口には魔術が掛けられているらしく外に出ることが出来ない。
「こ、、怖いよ。お父さん、、、レオ、、、サリー、ルビー。」
いつもはレオが怖い時も、不安な時も手を繋いでいてくれたのに、今、レオはいない。
「レオ、、、怖いよ。」
瞳から大粒の涙が零れ落ち、少年はそれに首を傾げると眠ってしまった。
アルルはどうしたらいいのかが分からず、ただただその場に丸まって涙を流した。
「怖い。怖いよ。レオ。」
体が震える。
けれど、アルルの横には、隣には今は誰もいない。
やっと、温かな自分の居場所が出来たのに。
やっと、家族が出来たのに。
やっと、幸せを手に入れる事が出来たのに。
手から零れ落ちてしまった。
アルルは零れ落ちる涙を流し、静かに嗚咽を漏らした。
「あぁ、この髪の色がダメね。」
少女はアルルの髪の毛をグイッと引っ張ると、息をふっとかけた。
するとアルルの髪の色は真っ赤な深紅へと色を変える。
「瞳の色もダメ。」
瞳は紫色に変えられてしまい、鏡に映るのはまるでしらない少女のようであった。
「服はこれにしましょう。ふふ。ほら、この方が好い。」
少女は満足したようにうなずくと言った。
「これでいいわ。おい。お前、この人形を片付けておいてちょうだい。」
「畏まりました。」
少女の横に控えていた赤髪に桃色の瞳をした少年は、少女に命じられアルルの腕を取って歩かせると、暗い廊下をどんどんと進んでいく。
階段を下り、そして、檻の中に入れられた瞬間、アルルの体は先ほどまでの呪縛が解けて体に力が入るようになった。
「何、、、?これ。」
アルルは怖くて、体を震わせながら自分を檻に入れた少年を見た。
少年は自身も檻の中に入ると、大きく背伸びをし、ため息をついた。
「はじめまして。ようこそ。魔術の国へ。」
「魔術の国?」
アルルが目を丸くすると、少年は床に座って言った。
「そうだよ。キミは?買われてきたの?」
アルルは首を横に振り、少年の横にちょこんと座った。
「僕はご主人様に買われて、ずっとここで人形として生活しているんだ。何、悪くないよ?ほら、ベッドはあるし、身ぎれいにさせてもらえるし、ごはんだってちゃんともらえる。」
にこにこと楽しそうに話をする少年にアルルは目を丸くて首を横に振った。
「わ、私は、嫌。早く、、、お父さんの所に帰りたい。」
すっと少年は目を細めると言った。
「無理だよ。僕達は人形だもの。意思は持っちゃいけない。ほら、皆を見てごらんよ。」
「え?」
アルルが少年に言われ周りを見回してぞっとした。
そこには、少年、少女たちが壁にもたれて座っている。
ピクリとも動かず、ただ、そこにいる。
アルルは怖くなって立ち上がると、檻から出ようとしたが、入口には魔術が掛けられているらしく外に出ることが出来ない。
「こ、、怖いよ。お父さん、、、レオ、、、サリー、ルビー。」
いつもはレオが怖い時も、不安な時も手を繋いでいてくれたのに、今、レオはいない。
「レオ、、、怖いよ。」
瞳から大粒の涙が零れ落ち、少年はそれに首を傾げると眠ってしまった。
アルルはどうしたらいいのかが分からず、ただただその場に丸まって涙を流した。
「怖い。怖いよ。レオ。」
体が震える。
けれど、アルルの横には、隣には今は誰もいない。
やっと、温かな自分の居場所が出来たのに。
やっと、家族が出来たのに。
やっと、幸せを手に入れる事が出来たのに。
手から零れ落ちてしまった。
アルルは零れ落ちる涙を流し、静かに嗚咽を漏らした。
0
お気に入りに追加
2,639
あなたにおすすめの小説
お姫様の願い事
月詠世理
児童書・童話
赤子が生まれた時に母親は亡くなってしまった。赤子は実の父親から嫌われてしまう。そのため、赤子は血の繋がらない女に育てられた。 決められた期限は十年。十歳になった女の子は母親代わりに連れられて城に行くことになった。女の子の実の父親のもとへ——。女の子はさいごに何を願うのだろうか。
ローズお姉さまのドレス
有沢真尋
児童書・童話
最近のルイーゼは少しおかしい。
いつも丈の合わない、ローズお姉さまのドレスを着ている。
話し方もお姉さまそっくり。
わたしと同じ年なのに、ずいぶん年上のように振舞う。
表紙はかんたん表紙メーカーさまで作成
生贄姫の末路 【完結】
松林ナオ
児童書・童話
水の豊かな国の王様と魔物は、はるか昔にある契約を交わしました。
それは、姫を生贄に捧げる代わりに国へ繁栄をもたらすというものです。
水の豊かな国には双子のお姫様がいます。
ひとりは金色の髪をもつ、活発で愛らしい金のお姫様。
もうひとりは銀色の髪をもつ、表情が乏しく物静かな銀のお姫様。
王様が生贄に選んだのは、銀のお姫様でした。
王女様は美しくわらいました
トネリコ
児童書・童話
無様であろうと出来る全てはやったと満足を抱き、王女様は美しくわらいました。
それはそれは美しい笑みでした。
「お前程の悪女はおるまいよ」
王子様は最後まで嘲笑う悪女を一刀で断罪しました。
きたいの悪女は処刑されました 解説版
生まれたばかりですが、早速赤ちゃんセラピー?始めます!
mabu
児童書・童話
超ラッキーな環境での転生と思っていたのにママさんの体調が危ないんじゃぁないの?
ママさんが大好きそうなパパさんを闇落ちさせない様に赤ちゃんセラピーで頑張ります。
力を使って魔力を増やして大きくなったらチートになる!
ちょっと赤ちゃん系に挑戦してみたくてチャレンジしてみました。
読みにくいかもしれませんが宜しくお願いします。
誤字や意味がわからない時は皆様の感性で受け捉えてもらえると助かります。
流れでどうなるかは未定なので一応R15にしております。
現在投稿中の作品と共に地道にマイペースで進めていきますので宜しくお願いします🙇
此方でも感想やご指摘等への返答は致しませんので宜しくお願いします。
理想の王妃様
青空一夏
児童書・童話
公爵令嬢イライザはフィリップ第一王子とうまれたときから婚約している。
王子は幼いときから、面倒なことはイザベルにやらせていた。
王になっても、それは変わらず‥‥側妃とわがまま遊び放題!
で、そんな二人がどーなったか?
ざまぁ?ありです。
お気楽にお読みください。
悪女の死んだ国
神々廻
児童書・童話
ある日、民から恨まれていた悪女が死んだ。しかし、悪女がいなくなってからすぐに国は植民地になってしまった。実は悪女は民を1番に考えていた。
悪女は何を思い生きたのか。悪女は後世に何を残したのか.........
2話完結 1/14に2話の内容を増やしました
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる