魔法使いアルル

かのん

文字の大きさ
上 下
12 / 76

第百八十話

しおりを挟む

 アルルの話を聞いたハルは腹を抱えて大爆笑をした。

 その横に腰かけているルルは、そんなハルの肩を叩いて苦笑を浮かべている。

 アルルは二人の反応に首をかしげながら言った。

「何が可笑しいの?私、なんだかとっても怖くなったんだよ?」

 ハルは瞳に浮かぶ涙を拭うと、未だに笑いが込み上げてくるようで、笑みをどうにか噛み殺しながら言った。

「いやぁ、まさかアルルをナンパする少年がいるとはなぁ。」

「まぁ、アルルは可愛らしいものね。でもその男の子はおませさんねぇ。」

 アルルは唇を尖らせると不貞腐れたかのようにいった。

「ナンパって何?」

 その言葉にハルはにやりと笑みを浮かべた。

「初めて会う相手に、好意をもって声をかけることさ。」

「え?じゃあ私はレオに初めてあった時に声をかけたからナンパってこと?」 

「え?いや、違う。なんて説明すればいいんだ?」

 それにはルルも困ったように苦笑を浮かべる。

「そうねぇ、、男の子が、可愛いと思った相手に恋愛感情をもって声をかけること、かしら?」

「そうそう。町なんかでな、初対面の相手に、あ、この子と遊びたい。デートしたいって思って声をかけるんだよ。」

 アルルは首を傾げると尋ねた。

「それって皆するの?ハルもしたことあるの?」

 ハルは視線を泳がせると首を横に振った。

「私はしないよ?その、皆がするってわけじゃないんだ。」

「なんでハルはしないの?」 

 アルルの追撃に、ハルは視線を泳がせながら言った。

「そりゃあ、、、私には、、、、ルルがいるから。」

 次第に耳まで赤くなり始め、ハルの事をルルはにやにやとした笑みを浮かべて見ている。

「なんでルルがいたらしないの?」

「いや、それは、、、ルルが、、その、、好きだから、、、他には興味がない、、から、、。」

 ハルはそこまで言うと顔を真っ赤に染めてアルルに言った。

「と、とにかく、相手の少年は、アルルに好意をもって声をかけたってことだ。けどね、アルル。男は狼なのさ。だから、声をかけられても、着いていってはダメだよ?」

 アルルは意味がわからないと言うように首を傾げた。

「男は狼なのさ?男の人は人狼なの?」

 ハルは言葉をつまらせ、ぽりぽりと頭をかいた。

 ルルはふわりと微笑むと、優しい声で言った。

「とにかく、知らない人には着いていってはダメよと言うことよ。あと、あんまり一人でアルルは外を歩かないほうがいいかもしれないわね。」

 アルルはよく意味は分からなかったけれど、取り敢えずこくりとうなずいた。

 
しおりを挟む
感想 116

あなたにおすすめの小説

お姫様の願い事

月詠世理
児童書・童話
赤子が生まれた時に母親は亡くなってしまった。赤子は実の父親から嫌われてしまう。そのため、赤子は血の繋がらない女に育てられた。 決められた期限は十年。十歳になった女の子は母親代わりに連れられて城に行くことになった。女の子の実の父親のもとへ——。女の子はさいごに何を願うのだろうか。

生贄姫の末路 【完結】

松林ナオ
児童書・童話
水の豊かな国の王様と魔物は、はるか昔にある契約を交わしました。 それは、姫を生贄に捧げる代わりに国へ繁栄をもたらすというものです。 水の豊かな国には双子のお姫様がいます。 ひとりは金色の髪をもつ、活発で愛らしい金のお姫様。 もうひとりは銀色の髪をもつ、表情が乏しく物静かな銀のお姫様。 王様が生贄に選んだのは、銀のお姫様でした。

王女様は美しくわらいました

トネリコ
児童書・童話
   無様であろうと出来る全てはやったと満足を抱き、王女様は美しくわらいました。  それはそれは美しい笑みでした。  「お前程の悪女はおるまいよ」  王子様は最後まで嘲笑う悪女を一刀で断罪しました。  きたいの悪女は処刑されました 解説版

悪女の死んだ国

神々廻
児童書・童話
ある日、民から恨まれていた悪女が死んだ。しかし、悪女がいなくなってからすぐに国は植民地になってしまった。実は悪女は民を1番に考えていた。 悪女は何を思い生きたのか。悪女は後世に何を残したのか......... 2話完結 1/14に2話の内容を増やしました

ローズお姉さまのドレス

有沢真尋
児童書・童話
最近のルイーゼは少しおかしい。 いつも丈の合わない、ローズお姉さまのドレスを着ている。 話し方もお姉さまそっくり。 わたしと同じ年なのに、ずいぶん年上のように振舞う。 表紙はかんたん表紙メーカーさまで作成

生まれたばかりですが、早速赤ちゃんセラピー?始めます!

mabu
児童書・童話
超ラッキーな環境での転生と思っていたのにママさんの体調が危ないんじゃぁないの? ママさんが大好きそうなパパさんを闇落ちさせない様に赤ちゃんセラピーで頑張ります。 力を使って魔力を増やして大きくなったらチートになる! ちょっと赤ちゃん系に挑戦してみたくてチャレンジしてみました。 読みにくいかもしれませんが宜しくお願いします。 誤字や意味がわからない時は皆様の感性で受け捉えてもらえると助かります。 流れでどうなるかは未定なので一応R15にしております。 現在投稿中の作品と共に地道にマイペースで進めていきますので宜しくお願いします🙇 此方でも感想やご指摘等への返答は致しませんので宜しくお願いします。

ぼくの家族は…内緒だよ!!

まりぃべる
児童書・童話
うちの家族は、ふつうとちょっと違うんだって。ぼくには良く分からないけど、友だちや知らない人がいるところでは力を隠さなきゃならないんだ。本気で走ってはダメとか、ジャンプも手を抜け、とかいろいろ守らないといけない約束がある。面倒だけど、約束破ったら引っ越さないといけないって言われてるから面倒だけど仕方なく守ってる。 それでね、十二月なんて一年で一番忙しくなるからぼく、いやなんだけど。 そんなぼくの話、聞いてくれる? ☆まりぃべるの世界観です。楽しんでもらえたら嬉しいです。

理想の王妃様

青空一夏
児童書・童話
公爵令嬢イライザはフィリップ第一王子とうまれたときから婚約している。 王子は幼いときから、面倒なことはイザベルにやらせていた。 王になっても、それは変わらず‥‥側妃とわがまま遊び放題! で、そんな二人がどーなったか? ざまぁ?ありです。 お気楽にお読みください。

処理中です...