魔法使いアルル

かのん

文字の大きさ
上 下
8 / 76

第百七十六話

しおりを挟む
 その後はかなりどたばたとする事になった。

 ドワーフ達は混乱はしたものの、ドワーフの王ドザザクとドロロのおかげでどうにか落ち着いた。

 だが、落ち着いてはいても住まいへの不安はある。

 なので、アルル達は皆で再会を喜び会いたいところをグッと我慢してドワーフ達の住みかを直す事に力を貸した。

 それが全て終わるまでには5日間もかかり、その頃にはアルルもレオもルビーもくたくたに疲れきっていた。

 その為、助けてくれたお礼にとドザザクが開いてくれるという宴会の話を聞いた時、はっきり言ってゆっくりしたいと内心思ったが、アルルはある事を思い付くと、この宴会に呼んで欲しい人がいると伝えた。

「ドルフおじいさんと、ユンゲルを呼んで欲しいの。お願いします。」

 その名を聞いた時、ドワーフの中でどよめきが起こった。

「ドルフって、あの?」

「はぐれドワーフの?」

 ざわざわと聞こえる声に、アルルは言った。

「ドルフおじいさんが居なかったら、ルルを助けられなかったもの。」

 そもそもの事の発端はドワーフと黒い魔法使いであるノアとが取引をしてしまった事が原因だ。

 知らなかったにしろ、悪気はなかったにしろ、ルルは十年もの間、閉じ込められ、ドワーフに使われてきた。

 ドワーフ達はそれを聞き動揺した。

 ドワーフの王は皆を代表してルルに頭を下げたが、ルルは何も言えずにいた。

 許すと、簡単に言えるほどその年月は短くない。

「分かった。こちらで手紙をだそう。」

 ドザザクの言葉に皆が内心驚いたものの、王の決定に異を唱える者はいなかった。

 アルルは喜び、ドザザクの側に歩み寄ると小さな声で言った。

「王様。現実の世界でも仲直り頑張ってね。」

 ドザザクは決まり悪そうに頭をポリポリと掻くと小さくうなずいた。

「あぁ。今回の事で、ドワーフの在り方も見直さなければならないと思いしった。」

 それにアルルが首をかしげると、ドザザクはアルルの頭をわしわしと撫でながら言った。

「無知で在る故に罪をおかした。好きなことばかりでは駄目なのではないかと思えたのはお前達のおかげだ。」

 その言葉にアルルは笑い声をあげた。

「ふふ。私も苦手な勉強あるから、好きなものばかりしたい気持ちは分かるけどね。」

「あぁ。たが今回の事でそれでは知識が片寄りすぎて騙されたり、過ちをおかす要因になると分かった。だからこそ、まずははじめの一歩としてドルフに謝りたいと思う。」

「そっかぁ。良かった。」

「あぁ。」

 楽しく好きな事だけをしてきた日々は、確かに楽しいものであった。だが、その中で、自分達とは違う物を排除してきた。

 それが間違いであったと、今回学んだ。

「ありがとう。」

 ドワーフの王ドザザクは噛み締めるようにそう呟いた。

 



しおりを挟む
感想 116

あなたにおすすめの小説

お姫様の願い事

月詠世理
児童書・童話
赤子が生まれた時に母親は亡くなってしまった。赤子は実の父親から嫌われてしまう。そのため、赤子は血の繋がらない女に育てられた。 決められた期限は十年。十歳になった女の子は母親代わりに連れられて城に行くことになった。女の子の実の父親のもとへ——。女の子はさいごに何を願うのだろうか。

王女様は美しくわらいました

トネリコ
児童書・童話
   無様であろうと出来る全てはやったと満足を抱き、王女様は美しくわらいました。  それはそれは美しい笑みでした。  「お前程の悪女はおるまいよ」  王子様は最後まで嘲笑う悪女を一刀で断罪しました。  きたいの悪女は処刑されました 解説版

生贄姫の末路 【完結】

松林ナオ
児童書・童話
水の豊かな国の王様と魔物は、はるか昔にある契約を交わしました。 それは、姫を生贄に捧げる代わりに国へ繁栄をもたらすというものです。 水の豊かな国には双子のお姫様がいます。 ひとりは金色の髪をもつ、活発で愛らしい金のお姫様。 もうひとりは銀色の髪をもつ、表情が乏しく物静かな銀のお姫様。 王様が生贄に選んだのは、銀のお姫様でした。

きたいの悪女は処刑されました

トネリコ
児童書・童話
 悪女は処刑されました。  国は益々栄えました。  おめでとう。おめでとう。  おしまい。

ローズお姉さまのドレス

有沢真尋
児童書・童話
最近のルイーゼは少しおかしい。 いつも丈の合わない、ローズお姉さまのドレスを着ている。 話し方もお姉さまそっくり。 わたしと同じ年なのに、ずいぶん年上のように振舞う。 表紙はかんたん表紙メーカーさまで作成

悪女の死んだ国

神々廻
児童書・童話
ある日、民から恨まれていた悪女が死んだ。しかし、悪女がいなくなってからすぐに国は植民地になってしまった。実は悪女は民を1番に考えていた。 悪女は何を思い生きたのか。悪女は後世に何を残したのか......... 2話完結 1/14に2話の内容を増やしました

昨日の敵は今日のパパ!

波湖 真
児童書・童話
アンジュは、途方に暮れていた。 画家のママは行方不明で、慣れない街に一人になってしまったのだ。 迷子になって助けてくれたのは騎士団のおじさんだった。 親切なおじさんに面倒を見てもらっているうちに、何故かこの国の公爵様の娘にされてしまった。 私、そんなの困ります!! アンジュの気持ちを取り残したまま、公爵家に引き取られ、そこで会ったのは超不機嫌で冷たく、意地悪な人だったのだ。 家にも帰れず、公爵様には嫌われて、泣きたいのをグッと我慢する。 そう、画家のママが戻って来るまでは、ここで頑張るしかない! アンジュは、なんとか公爵家で生きていけるのか? どうせなら楽しく過ごしたい! そんな元気でちゃっかりした女の子の物語が始まります。

生まれたばかりですが、早速赤ちゃんセラピー?始めます!

mabu
児童書・童話
超ラッキーな環境での転生と思っていたのにママさんの体調が危ないんじゃぁないの? ママさんが大好きそうなパパさんを闇落ちさせない様に赤ちゃんセラピーで頑張ります。 力を使って魔力を増やして大きくなったらチートになる! ちょっと赤ちゃん系に挑戦してみたくてチャレンジしてみました。 読みにくいかもしれませんが宜しくお願いします。 誤字や意味がわからない時は皆様の感性で受け捉えてもらえると助かります。 流れでどうなるかは未定なので一応R15にしております。 現在投稿中の作品と共に地道にマイペースで進めていきますので宜しくお願いします🙇 此方でも感想やご指摘等への返答は致しませんので宜しくお願いします。

処理中です...