魔法使いアルル

かのん

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第百七十五話

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 電流の嵐は二人に襲い掛かるが、それらから守るようにアロン、アルル、レオの守護魔法が二人を覆う。

 そして、二人が外へと飛び出た瞬間、ハルとドザザク、そしてドルフは力が弾け、その場にしりもちをついた。

 アロン、アルル、レオの三人はハルとドザザク、ドルフの力が消えたのを最後まで見届けてから魔法を解いた。

 ルビーは大きく息を吐くと、その場に大の字に寝転がってしまった。

 鳥籠は依然そこにあるが、ルルとユンゲルは鳥籠の外にへたり込むようにして座っている。

「ルル、、、ルル!」

 ハルはそんなルルに駆け寄ると、その手を優しくとり、そしてぎゅっとルルを抱きしめた。

 ルルもハルを抱きしめ返す。

「ルル、、、ルル!」

「ハル。」

 二人はお互いに涙を流しながら抱きしめあい、そして鼻をすすりながら笑顔を浮かべた。

「ルル。お帰り。」

「ハル。ただいま。」

 そんな二人の様子に周りにいた者たちは笑みを浮かべ見守るが、皆が満身創痍であり、ルルに駆け寄りたくても駆け寄れないほどに疲れていた。

 なので必然的に皆がルビーのように大の字になって大きく息を吐いた。

 アルルも体を動かすのが億劫に思うほどに疲れており、ぼうっと天井を見つめた。

 そして、一点を見つめ、そして気づく。

「あれ?崩れ始めてる?」

 レオも気づいたようで体を起き上がらせると天井を見上げる。

「穴が、、、。」

 ルビーはけらけらと笑いながら言った。

「朝が来た。夢から覚める時間だねぇ。」

 アロンは飛び上がり、魔法を展開させると皆に向かって叫んだ。

「こっちへと集まれ!」

 皆が大慌てでアロンの所へと駆け寄った瞬間であった。

 まるで花弁が散るかのようにその場の空間がはじけ飛び、鳥籠も夢のように消えていく。

 アロンは船を魔法出だしその上に自身を含め皆を乗せると、自分達の周りに守護魔法と結界を張った。

 ルビーは背伸びをすると、船の周りに雲を広げていく。

「じゃあ、皆で起きようか。おはようございまーす!」

 にこにこと元気よくそう声を上げるルビーに、アルルもレオも笑うと同じように”おはようございまーす!”と声を上げたのだが、その様子にアロンは苦笑を浮かべた。

「子どもは元気だのぉ。年寄りには堪える夢じゃわい!」

 船は光へと進み、そして皆が夢から覚める。

 ゆっくりゆっくりと皆が重たい瞼を開いていく。

 アルルは大きく背伸びをするとあくびをしてから起き上がった。

「あれ?ドルフやユンゲルは?」

 辺りを見回してアルルがそう言うと、ルビーが言った。

「ここは現実だからねぇ。」

「そっかぁ。じゃあ、またお礼を言いにいかないとね。」

 ハルとルルは抱きしめあっており、アルルはにっこりと笑うとレオとルビーと手を繋いだ。

 アロンがルルを指差してアルルに言った。

「行かなくていいのか?」

 アルルは肩をすくめて見せると少し生意気そうに呟いた。

「お父さん。久しぶりに会えた恋人同士を邪魔するものじゃないわよ。」

 娘の呟きに、アロンは盛大に噴き出して笑うのであった。





 
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