魔法使いアルル

かのん

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第百七十三話

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 ルビーは雲をこねると、赤い目をきらりと光らせた。

「ドルフをまずは眠らせないといけないから、夢を渡ってくるよ。ふふ。二人から話を聞いてて僕も会ってみたかったからやったね!」

「どこにいるのか分かるの?」

「夢は全部つながっているから大丈夫。少し待っていてね。」

 ルビーの体は雲で包まれ、そして一瞬消えてしまうと、もくもくと雲が広がり始めた。

 雲はゆっくりと扉を形作り、そしてまるで本のような扉が現れると、それがゆっくりと開き始めた。

 ドワーフの王ドザザクはその扉をじっと見つめ、拳をぎゅっと握っている。

「ここは、どこじゃ?」

 ゆっくりと現れたドルフは目をぱちくりと瞬かせ、そしてルビーに背中を押されて扉の中へと入ると首を傾げ名がら辺りを見回し、ドザザクを見て表情を硬くした。

「はぁ、久しぶりに兄の事を夢に見るわい。」

 その言葉に、ドザザクは眉間にしわを寄せ、そしてじっとドルフを見つめた。

 アルルとレオはドルフに駆け寄ると、ルルの前へとドルフを引っ張っていった。

「急に呼んでごめんね。あのね、ルルが大変なの。」

「おじいさんなら分かるかもってドワーフの王様が言うから、ルビーに連れてきてもらったんだ。」

 ドルフはその言葉に目を丸くすると、ドザザクを見た。

「これは、夢では、ないのか?」

 ルビーはドルフの背中を押しながら言った。

「夢でもあるし夢でもないところだよ。とにかくお願い!」

 何か言いたげなドルフではあったが、三人にお願いをされてルルの方へと連れて行かれると鳥籠を見てすぐに表情を変えた。

「これは、、、。」

 アロンはそんなドルフの横に立つと言った。

「ルルは魔法石の民だ。この鳥籠は、魔法では壊せないらしいのじゃ。」

「ふむ。」

 ドルフは顎に手を当てて目を閉じて考えると、ぽりぽりと頭をかいた。

「はぐれドワーフの歴史書に、似たようなことが書いておった。かなり昔の時代だ。その昔、ドワーフと魔法石の民は争うことがあり、そこではぐれドワーフがその知識を使い魔法石の民を閉じ込める方法を編み出そうとしたそうだ。だが、、住処を分けることで平和が訪れ、未完成に終わったと書いてあったが、、、これは。」

 ドルフは鳥籠に触れ、そしてルルの様子を見ながら何かをぶつぶつと言って考え込んでいる。

 皆がドルフを見つめ、そしてドルフが”ふむ”と言って顔を上げた。

「ここに魔法石の民はいるか?」

 ハルがすかさず手を上げ前に出た。

「ほう。一つ、条件が満たされた。では次に、ドワーフの王はいるか?これは聞くまでもないな。」

 ドワーフの王が一歩前に歩み出た。

「この鳥籠を考え付いたはぐれドワーフは、平和を願っておった。だからこそ、ちゃんと開ける方法も考えておった。それがうまくいくといいが。あと一人、ここに呼んでほしい人物がいるが、、、連れてこれるかのぉ。」

「誰なの?」

 ルビーが尋ねると、ドルフは言った。

「怪物だ。魔法石や鉄鉱石、水晶のある所にはそれを見守るように住むという怪物。わしも見たことはないんじゃが。」

 ハルは顔を上げると言った。

「ユンゲルを!なら、ユンゲルを呼んでくれ!」

 ルビーはポポロもいると言おうかと思ったが、ハルがそう言うならユンゲルを呼んだ方が良いのだろうなと思った。

「もう。僕ばっかり働いている気がする。ちょっと待ってて!」

 ルビーはそういうとまた雲に包まれて消え、そして魔法石のきらめく扉からユンゲルが現れた。

 ユンゲルはびくびくとしながらも皆を見つけると嬉しそうに駆け寄ってきた。

「皆!どうしたの?」

 ドルフはいとも簡単に怪物までも現れて少し驚いていた。

 そして思う。

 これは何かの導きなのではないかと。

 はぐれドワーフの歴史書には、これまではぐれドワーフと呼ばれ、ドワーフからおかしいと言われながらも自らの道を進んできた者達の歴史が詰まっていた。

 悪用されてはならないと、それらは秘匿されていた。

 それが悪用されてしまい、だからこそそれを正そうと、何かに導かれているような感覚にドルフはなった。

「おじいさん?大丈夫?」

 アルルとレオが顔を覗き込み、心配そうに見上げてくる。

 この子達だ。

 ドルフはそう思った。

 この子達が、人を繋げ、そして今、未来を変えようとしているのだと。


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