魔法使いアルル

かのん

文字の大きさ
上 下
3 / 76

第百七十一話

しおりを挟む
 ノアが消え、アルルとレオとルビーはその場に大きく安堵の息をつきながら座り込んだ。

 アロンとハルは三人に駆け寄ると、周りに残っている炎を消した。

「大丈夫かい?」

「無事でよかったわい。」

 アルルはルルを指差して言った。

「ハル!ルルが!」

 ハルは指の刺された方を見て、身を固くした。

「る、、、ルル?」

 ハルは目を見開くと、ルルの方へと向かって走り出した。

 鳥籠の檻を掴み、その隙間からハルは必死にルルに向かって手を伸ばした。

「ルル!ルル!」

 ルルはゆっくりとハルを見つめ、そして手を伸ばす。

「ハ、、、、ル。」

 苦しそうな声に、ハルは瞳いっぱいに涙をため、流れ落ちるのを堪えながら手を伸ばし続ける。

「ルル!こっちへ来い!ルル!」

 しかし、ルルは伸ばした手を降ろし、大きな瞳から涙をぽたぽたと零しながら言った。

「ダメ。行けない。」

「くそっ!アロン!この鳥籠を壊すぞ!」

 駆け寄ってきたアロンは、鳥籠の周りを見て、それに触れ、眉間にしわを寄せた。

「ハル。待て。この鳥籠は、、、なんじゃ?」

「私も、壊そうとしたけれど、ダメだったわ。それに。」

 ルルが視線を落とし、それにつられるように皆がルルの視線の先へと目を向ける。

「え?」

 ルルの下半身は、まるで水晶のように固まり、輝いていた。

「それは、、、?」

 ハルはルルを呆然とした瞳で見つめた。

「もう、感覚もないの。」

 その場にゆっくりとハルは泣き崩れ、地面をたたくと嗚咽を漏らした。

「ぅ、、ごめ、、、助けに来るのが、、、遅かったから、、、。」

 ルルは泣きながら笑みを浮かべた。

「ふふ。泣かないで。私、嬉しいの。もう一度会えて、嬉しいのよ。」

「これこれ、諦めるでないよ。何かしらの方法はあるはずだ。」

 アルルも涙をこらえながら言った。

「そうだよ!きっと、方法はある!」

 レオもルビーもその言葉に賛同するように頷いた。

「ハル。今はまだへたり込んでいる時ではない。さあ立ち上がれ。ルルを助けるのであろう?」

 アロンの言葉に、ハルは袖で涙をぬぐい、ゆっくりと立ち上がった。

「ああ。すまない。」

 涙はなかなか止まらず、何度も何度もハルは袖で涙をぬぐいながらも考える。

 アルルも鳥籠を見上げながら、必死で頭を働かせて考えた。 
しおりを挟む
感想 116

あなたにおすすめの小説

お姫様の願い事

月詠世理
児童書・童話
赤子が生まれた時に母親は亡くなってしまった。赤子は実の父親から嫌われてしまう。そのため、赤子は血の繋がらない女に育てられた。 決められた期限は十年。十歳になった女の子は母親代わりに連れられて城に行くことになった。女の子の実の父親のもとへ——。女の子はさいごに何を願うのだろうか。

王女様は美しくわらいました

トネリコ
児童書・童話
   無様であろうと出来る全てはやったと満足を抱き、王女様は美しくわらいました。  それはそれは美しい笑みでした。  「お前程の悪女はおるまいよ」  王子様は最後まで嘲笑う悪女を一刀で断罪しました。  きたいの悪女は処刑されました 解説版

生贄姫の末路 【完結】

松林ナオ
児童書・童話
水の豊かな国の王様と魔物は、はるか昔にある契約を交わしました。 それは、姫を生贄に捧げる代わりに国へ繁栄をもたらすというものです。 水の豊かな国には双子のお姫様がいます。 ひとりは金色の髪をもつ、活発で愛らしい金のお姫様。 もうひとりは銀色の髪をもつ、表情が乏しく物静かな銀のお姫様。 王様が生贄に選んだのは、銀のお姫様でした。

きたいの悪女は処刑されました

トネリコ
児童書・童話
 悪女は処刑されました。  国は益々栄えました。  おめでとう。おめでとう。  おしまい。

ローズお姉さまのドレス

有沢真尋
児童書・童話
最近のルイーゼは少しおかしい。 いつも丈の合わない、ローズお姉さまのドレスを着ている。 話し方もお姉さまそっくり。 わたしと同じ年なのに、ずいぶん年上のように振舞う。 表紙はかんたん表紙メーカーさまで作成

悪女の死んだ国

神々廻
児童書・童話
ある日、民から恨まれていた悪女が死んだ。しかし、悪女がいなくなってからすぐに国は植民地になってしまった。実は悪女は民を1番に考えていた。 悪女は何を思い生きたのか。悪女は後世に何を残したのか......... 2話完結 1/14に2話の内容を増やしました

昨日の敵は今日のパパ!

波湖 真
児童書・童話
アンジュは、途方に暮れていた。 画家のママは行方不明で、慣れない街に一人になってしまったのだ。 迷子になって助けてくれたのは騎士団のおじさんだった。 親切なおじさんに面倒を見てもらっているうちに、何故かこの国の公爵様の娘にされてしまった。 私、そんなの困ります!! アンジュの気持ちを取り残したまま、公爵家に引き取られ、そこで会ったのは超不機嫌で冷たく、意地悪な人だったのだ。 家にも帰れず、公爵様には嫌われて、泣きたいのをグッと我慢する。 そう、画家のママが戻って来るまでは、ここで頑張るしかない! アンジュは、なんとか公爵家で生きていけるのか? どうせなら楽しく過ごしたい! そんな元気でちゃっかりした女の子の物語が始まります。

生まれたばかりですが、早速赤ちゃんセラピー?始めます!

mabu
児童書・童話
超ラッキーな環境での転生と思っていたのにママさんの体調が危ないんじゃぁないの? ママさんが大好きそうなパパさんを闇落ちさせない様に赤ちゃんセラピーで頑張ります。 力を使って魔力を増やして大きくなったらチートになる! ちょっと赤ちゃん系に挑戦してみたくてチャレンジしてみました。 読みにくいかもしれませんが宜しくお願いします。 誤字や意味がわからない時は皆様の感性で受け捉えてもらえると助かります。 流れでどうなるかは未定なので一応R15にしております。 現在投稿中の作品と共に地道にマイペースで進めていきますので宜しくお願いします🙇 此方でも感想やご指摘等への返答は致しませんので宜しくお願いします。

処理中です...