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第一章
クラス分け試験 27
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フィリアの元をグリードが飲み物を取りに離れた時であった。
ファンファーレと共に第二王子であるハロルドが現れ、堂々と挨拶を行った。
攻略キャラ達は成長する姿をゲームをして知っていたのであまり感じなかったが、ハロルドを見ると大きくなったなぁと感慨深く感じてしまう。
そうして見つめていると、ふいにハロルドと目があった気がした。
嫌な予感がして、フィリアは優雅にそれでいて内心慌ててバルコニーに移動した。
まさかとは思うが、こちらにこられては迷惑である。
空を見上げると星星が美しくまたたき、そして夜風が心地よく吹いていく。
「フィリア嬢。」
昔聞いた声より、だいぶ低くなった声が聞こえ、フィリアは驚き、振り返った。
そこには、先程きらびやかな会場の中心にいた人物がおり、なぜここにいるのか疑問でならなかった。
「ハロルド殿下、、、お久しぶりでございます。」
ハロルドはにっこりと微笑むと、フィリアに歩み寄り顔を覗き込んできた。
「これはいらないな。」
瓶底眼鏡をさっととられ、フィリアは金色の大きな瞳をさらに大きく見開いた。
そういえばあの日、池から飛び出た瞬間に瓶底眼鏡が飛んでしまいハロルドには素顔を見られていたなとのんきに思い出してしまう。
頭一つ分身長の高くなったハロルドは、フィリアを見つめ、笑みを深めた。
「よかった。あの日の妖精は本当にいた。本当に君は妖精のように美しいな。」
いきなり何を言い出すのかと思っていると、腰をホールドされ、頬に手が優しく添えられる。
「何度も、あの日の事は夢だったのではないかと思ったんだ。でも君はここにいる。」
するりと頬を撫でられ、ハロルドの距離がとても近い。
グリード以外の者から触れられた事のないフィリアは驚きでどうしたらいいのか分からず、視線を泳がせてしまう。
「殿下。離してくださいませ。」
初々しいフィリアの反応に、ハロルドは今度はフィリアの金色の髪に指を通した。
「あの後、池の人と会話は出来なかったけれどお礼にお菓子を持っていくととても喜んでくれてね、今でも仲良くしているんだ。」
その言葉にフィリアは思わず笑みを浮かべ、ハロルドを見た。
「そうなのですか?グリード曰く、悪さしないし、水質を守ってくれる精霊のようなものと言ってましたから、よかったですわ。」
きらきらとした瞳で見つめられ、ハロルドは眩しいものを見るように目を細めた。
「うん。でも、あの日の事を皆が覚えていないから、私は君と連絡を取ることすら叶わなかった。こうして君に会えたことが本当に嬉しい。」
頬をまた撫でられ、フィリアはくすぐったくてふふっと笑い声を漏らした。
「くすぐったいですわ。それに近いです。そろそろ離してくださいませ。」
「つれないな。思っていたのは僕ばかりか。」
「ご冗談を。」
「さぁ、どうかな。」
ハロルドがそう言ってフィリアの腰にある手に力を込めようとした時、フィリアの体がふわりと違う方向へと引かれた。
そこにはグリードがおり、フィリアを自分の腕の中へと収めた。
「おや、番犬殿のお出ましだ!」
楽しそうに言うハロルドに、グリードは笑顔で答えた。
「殿下。お戯れはおよしください。さぁ、会場に婚約者候補様方がお待ちですよ。」
「ははっ。私が婚約者にしたい相手は妖精だけなのだけれどね。だが、番犬が恐ろしいな。」
「番犬か恐ろしくて手が出せない程度のお心なら、諦めるほうが懸命でしょう。」
ハロルドは両手を上げて降参のポーズをとると笑い声を上げた。
「わかった。わかった。夢でなかったことが嬉しかっただけさ。そう怒らないでくれ。フィリア嬢も大変だな。」
「あら、グリードは優しいですよ。」
「おっと。のろけられてしまった。それではお邪魔虫は退散するとしよう。会えて嬉しかったよ。それではまたな。」
ハロルドは笑いながらそう言うと、その場を後にした。
何だったのだろうかとフィリアはため息を履くと、グリードが怒っているような瞳でフィリアと向かい合い見つめてきた。
「何か言われなかったか?」
「いいえ。でも、グリードが来てくれてよかったわ。」
すると、グリードが、先程のハロルドが撫でた頬をハンカチーフでバイ菌を拭うように拭いた。
「お化粧がとれちゃうわ。」
「後はどこを触られた?」
「そんな触られてなんてないわ。髪を指ですくわれたくらいよ。」
その言葉にグリードはため息を付き、そしてフィリアを抱き寄せると髪をすくい、そこに唇を押し当てた。
その動作にフィリアは固まる。
唇を付けたまま、フィリアを射抜くような視線でグリードは見つめたまま言った。
「俺以外の男と二人きりになるな。」
熱の籠もったその瞳から逃れるように、フィリアは俯いた。
「わ、、わかったわ。」
体が熱い。
フィリアはドキドキとなる心臓を抑え、早くおさまれと思うのであった。
ファンファーレと共に第二王子であるハロルドが現れ、堂々と挨拶を行った。
攻略キャラ達は成長する姿をゲームをして知っていたのであまり感じなかったが、ハロルドを見ると大きくなったなぁと感慨深く感じてしまう。
そうして見つめていると、ふいにハロルドと目があった気がした。
嫌な予感がして、フィリアは優雅にそれでいて内心慌ててバルコニーに移動した。
まさかとは思うが、こちらにこられては迷惑である。
空を見上げると星星が美しくまたたき、そして夜風が心地よく吹いていく。
「フィリア嬢。」
昔聞いた声より、だいぶ低くなった声が聞こえ、フィリアは驚き、振り返った。
そこには、先程きらびやかな会場の中心にいた人物がおり、なぜここにいるのか疑問でならなかった。
「ハロルド殿下、、、お久しぶりでございます。」
ハロルドはにっこりと微笑むと、フィリアに歩み寄り顔を覗き込んできた。
「これはいらないな。」
瓶底眼鏡をさっととられ、フィリアは金色の大きな瞳をさらに大きく見開いた。
そういえばあの日、池から飛び出た瞬間に瓶底眼鏡が飛んでしまいハロルドには素顔を見られていたなとのんきに思い出してしまう。
頭一つ分身長の高くなったハロルドは、フィリアを見つめ、笑みを深めた。
「よかった。あの日の妖精は本当にいた。本当に君は妖精のように美しいな。」
いきなり何を言い出すのかと思っていると、腰をホールドされ、頬に手が優しく添えられる。
「何度も、あの日の事は夢だったのではないかと思ったんだ。でも君はここにいる。」
するりと頬を撫でられ、ハロルドの距離がとても近い。
グリード以外の者から触れられた事のないフィリアは驚きでどうしたらいいのか分からず、視線を泳がせてしまう。
「殿下。離してくださいませ。」
初々しいフィリアの反応に、ハロルドは今度はフィリアの金色の髪に指を通した。
「あの後、池の人と会話は出来なかったけれどお礼にお菓子を持っていくととても喜んでくれてね、今でも仲良くしているんだ。」
その言葉にフィリアは思わず笑みを浮かべ、ハロルドを見た。
「そうなのですか?グリード曰く、悪さしないし、水質を守ってくれる精霊のようなものと言ってましたから、よかったですわ。」
きらきらとした瞳で見つめられ、ハロルドは眩しいものを見るように目を細めた。
「うん。でも、あの日の事を皆が覚えていないから、私は君と連絡を取ることすら叶わなかった。こうして君に会えたことが本当に嬉しい。」
頬をまた撫でられ、フィリアはくすぐったくてふふっと笑い声を漏らした。
「くすぐったいですわ。それに近いです。そろそろ離してくださいませ。」
「つれないな。思っていたのは僕ばかりか。」
「ご冗談を。」
「さぁ、どうかな。」
ハロルドがそう言ってフィリアの腰にある手に力を込めようとした時、フィリアの体がふわりと違う方向へと引かれた。
そこにはグリードがおり、フィリアを自分の腕の中へと収めた。
「おや、番犬殿のお出ましだ!」
楽しそうに言うハロルドに、グリードは笑顔で答えた。
「殿下。お戯れはおよしください。さぁ、会場に婚約者候補様方がお待ちですよ。」
「ははっ。私が婚約者にしたい相手は妖精だけなのだけれどね。だが、番犬が恐ろしいな。」
「番犬か恐ろしくて手が出せない程度のお心なら、諦めるほうが懸命でしょう。」
ハロルドは両手を上げて降参のポーズをとると笑い声を上げた。
「わかった。わかった。夢でなかったことが嬉しかっただけさ。そう怒らないでくれ。フィリア嬢も大変だな。」
「あら、グリードは優しいですよ。」
「おっと。のろけられてしまった。それではお邪魔虫は退散するとしよう。会えて嬉しかったよ。それではまたな。」
ハロルドは笑いながらそう言うと、その場を後にした。
何だったのだろうかとフィリアはため息を履くと、グリードが怒っているような瞳でフィリアと向かい合い見つめてきた。
「何か言われなかったか?」
「いいえ。でも、グリードが来てくれてよかったわ。」
すると、グリードが、先程のハロルドが撫でた頬をハンカチーフでバイ菌を拭うように拭いた。
「お化粧がとれちゃうわ。」
「後はどこを触られた?」
「そんな触られてなんてないわ。髪を指ですくわれたくらいよ。」
その言葉にグリードはため息を付き、そしてフィリアを抱き寄せると髪をすくい、そこに唇を押し当てた。
その動作にフィリアは固まる。
唇を付けたまま、フィリアを射抜くような視線でグリードは見つめたまま言った。
「俺以外の男と二人きりになるな。」
熱の籠もったその瞳から逃れるように、フィリアは俯いた。
「わ、、わかったわ。」
体が熱い。
フィリアはドキドキとなる心臓を抑え、早くおさまれと思うのであった。
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