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第十九話 光の正体とは

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 ユグドラシルは内心ガジェラルが自身の仲間になってくれたことに心からほっとしていた。

 敵になったならば、これほど恐ろしい存在はいないと物語を思い出して思う。

 主人公らを物語至上一番追い詰めたのは恐らくガジェラルだろう。

 そんな事を思いながら、ユグドラシルはルシフェルを肩に乗せてガジェラルに森を案内してもらっていた。

 森の中はほとんど光の届かない暗闇であり、そこかしこからガサガサと何かが蠢めいている音が聞こえてくる。

「それで、ユグドラシルよ。あの光は一体何なのだ?我々も森の中はくまなく調べたのだ。だが、その正体も、どこから生まれ出のかもわからなかった。お前にはそれが分かるのか?」

 その言葉にユグドラシルは苦笑を浮かべた。

 この森にいては、あの光の正体には気づけないだろう。

 何せ、あの森の本当の正体はこの森の中にはないのだから。

 そしてユグドラシルは目的地であった、森の中を通る川へも通じている小さな泉へとたどり着くとガジェラルに言った。

「ねぇ、貴方にはこの泉がどう見えるの?」

「ん?俺の事はガジェラルと呼べ。貴方とかと呼ばれると、むずがゆいわ。あと、色は、黒だな。聖女と昔川も泉も黒色に決めた。その方が人間は入りずらいだろう?」

 にやりと笑っていうガジェラルにユグドラシルは頷いた。

 その様子にルシフェルは内心、ユグドラシルは全く黒い川にもひるむことなく泳いでいたがな!と内心突っ込みを入れていた。

「そう。黒い。だから、底が見えなくなったのよ。」

「ん?まさか。」

 ユグドラシルはにっこりと笑うと泉を指差して言った。

「この泉の中にあの光の根源が居座っているの。ガジェラル、水の色を少しの間元に戻せる?」

「あぁ。俺達だけに普通に見えるようにしよう。」

 そう言ってガジェラルが川の水に手を入れて魔力を流した。

 その一瞬にして水の色は透明で美しい川へと姿を変えた。

 そしてそれを見た瞬間にガジェラルもルシフェルも目を丸くした。

「こ、こいつは。」

「まさか。」

 泉の中には、丸い卵のようなものに入った一匹の竜が居た。

 ユグドラシルは眠る竜を見つめると言った。

「あの光は、この子の夢。水と一緒に流れ、土の中を通って森の中へと広がって言っていたの。そして、この子が大きくなればなるほどに、夢も増えていく。」

 その言葉にルシフェルは驚いたように言った。

「夢竜か。まさか・・・まだ存在していたのか。」

 竜と言う生き物はその数を年々減らしており、今ではほとんど目にすることのなかった生き物だ。

 夢竜は特にその生態が分かっておらず、その個体をほとんど見なくなったことから絶滅したのではないかと言われていた。

 ユグドラシルは言った。

「この子は最後の生き残りでしょうね。」

 ガジェラルは頭を押さえると、驚きを隠せない声で言った。

「夢竜か・・・・本物を初めて見た。なるほど、こりゃあ分からないはずだ。だが、こいつは困ったな。」

「そうだな。夢竜はうかつには動かせない。」

 夢竜の放つ光の夢は、人には害があるものではないが、魔物にとっては聖なる光に似たものである。数が少なければまだ害はないかもしれないが、光の数が増えれば増えるほどにその力は増し、魔物にとっては凶器となっていく。

 だからこそ、ここには置いておけないのだが、夢竜は厄介な生き物でもあった。

 寝ている時にそれを邪魔されると、大暴れするのである。

 これはどうしたものかとガジェラルとルシフェルが眉間にしわを寄せていると、ユグドラシルはにっこりとした笑顔で言った。

「大丈夫。私、どうやって起こせばいいか知っているから。」

 その言葉に、ガジェラルもルシフェルも目を丸くするのであった。


 
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