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二十七話
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その後すぐにシルビアンヌは四人によって医務室へと運ばれた。
怪我はなく、頭を打った様子もない。
ただ、昨日側に控えていた侍女の証言から、昨日突然悲鳴をあげ、意識を失ってから雰囲気が少し変わったと言っていた。
アリーは大きく溜め息をつくと、困ったようにこちらを見つめるシルビアンヌに言った。
「シルビアンヌ様は・・他に何か異常はありませんか?」
「あの、元々異常はないのだけれど。」
そう言ったシルビアンヌに、ラルフは静かにこれまでシルビアンヌがセインと関わりなどなかったことを伝えた。
おそらくは何らかの方法によってシルビアンヌの記憶は書き換えられていることも伝えたのだが、それにシルビアンヌはクスクスと笑い声をたてた。
「何を言っているのですか。そんな分けないでしょう?」
「シルビアンヌ様!本当なんです。昨日のこと、覚えてはいないのですか?」
アリーはシルビアンヌの手を握りそう言ったのだが、さっとシルビアンヌは手を引っ込めると言った。
「何の事?昨日はセイン様に婚約を申し込まれてお受けしたはずよ。それにアリー。いくら貴方でも、女性の手にそんなに軽々しく触れるものではないわ。」
「シルビアンヌ様・・・」
悲しげなアリーの背をラルフは叩き、その後、シルビアンヌに覚えている限りの事を話してほしい伝えた。シルビアンヌはため息交じりに話し始めた。
十歳の時のラルフの婚約者検討のお茶会にて運命的に出会い、お互いにこれまでずっと思い会ってきたこと。そして昨日ついにセインから婚約を申し込まれたという事。
四人の眉間のシワがどんどん深くなっていくのを見つめながら、シルビアンヌは言った。
「もう!いい加減冗談はやめてくださいな。」
これが冗談であったならばどんなに良かっただろうかと四人はため息をついた。
そしてジルが口を開いた。
「シルビアンヌ嬢。その手袋をはずしてくれない?」
「え?これは・・セイン様にプレゼントされて・・・それでつけていてくれってお願いされているの。」
「そっか。余計に怪しいね。取って?」
シルビアンヌは戸惑ったものの、早々にこの茶番を終わらせようと仕方なく手袋を取った。
そして、自分の手の高に浮かび上がる不思議な紋様を見つけて首をひねった。
「これ・・・は・・」
ジルはその紋様をじっくりとみると、手で頭を押さえ、そして大きくため息をついた。
「すごいな。これは、魔術だ。」
「魔術?」
「ねぇ、シルビアンヌ嬢。愛しのセイン様に、いつ、この紋様をつけられたのかな?」
ジルの言葉に、シルビアンヌの表情はどんどんと曇り、そしてシルビアンヌは頭を押さえると青ざめた顔を浮かべて言った。
「あ・・あ・あ・あ・・・頭が痛い・・・痛い・・痛い!」
「シルビアンヌ様!?」
「いやぁぁっぁぁ!」
シルビアンヌは悲鳴を上げてその場に倒れてしまい、医師の診察の後に、シルビアンヌの体は王城の医務室へと移された。
ベッドに横たわる青ざめたシルビアンヌを見つめていた四人は、立ち上がると怒りに燃える瞳でにやりと笑みを浮かべた。
「私たちの姫君を、苦しめる男をどう成敗しましようかねぇ。」
ジルの言葉に、ギデオンが拳を掌にぶつけて鳴らし、にやりと笑った。
「そりゃあ、問答無用で殴り倒す。」
物騒なその言葉にラルフは苦笑を浮かべた。
「そんな身体的なことだけじゃ、足りないだろう?」
アリーはにっこりと笑顔を可愛らしく浮かべると、今までに見た事のないほどぞっとする瞳で言った。
「後悔、させてあげましょう?」
苦しげに眠るシルビアンヌは、夢うつつにぼそりと呟いた。
「・・・見れなくて・・・・無念・・・」
どこまで行ってもシルビアンヌはシルビアンヌであった。
怪我はなく、頭を打った様子もない。
ただ、昨日側に控えていた侍女の証言から、昨日突然悲鳴をあげ、意識を失ってから雰囲気が少し変わったと言っていた。
アリーは大きく溜め息をつくと、困ったようにこちらを見つめるシルビアンヌに言った。
「シルビアンヌ様は・・他に何か異常はありませんか?」
「あの、元々異常はないのだけれど。」
そう言ったシルビアンヌに、ラルフは静かにこれまでシルビアンヌがセインと関わりなどなかったことを伝えた。
おそらくは何らかの方法によってシルビアンヌの記憶は書き換えられていることも伝えたのだが、それにシルビアンヌはクスクスと笑い声をたてた。
「何を言っているのですか。そんな分けないでしょう?」
「シルビアンヌ様!本当なんです。昨日のこと、覚えてはいないのですか?」
アリーはシルビアンヌの手を握りそう言ったのだが、さっとシルビアンヌは手を引っ込めると言った。
「何の事?昨日はセイン様に婚約を申し込まれてお受けしたはずよ。それにアリー。いくら貴方でも、女性の手にそんなに軽々しく触れるものではないわ。」
「シルビアンヌ様・・・」
悲しげなアリーの背をラルフは叩き、その後、シルビアンヌに覚えている限りの事を話してほしい伝えた。シルビアンヌはため息交じりに話し始めた。
十歳の時のラルフの婚約者検討のお茶会にて運命的に出会い、お互いにこれまでずっと思い会ってきたこと。そして昨日ついにセインから婚約を申し込まれたという事。
四人の眉間のシワがどんどん深くなっていくのを見つめながら、シルビアンヌは言った。
「もう!いい加減冗談はやめてくださいな。」
これが冗談であったならばどんなに良かっただろうかと四人はため息をついた。
そしてジルが口を開いた。
「シルビアンヌ嬢。その手袋をはずしてくれない?」
「え?これは・・セイン様にプレゼントされて・・・それでつけていてくれってお願いされているの。」
「そっか。余計に怪しいね。取って?」
シルビアンヌは戸惑ったものの、早々にこの茶番を終わらせようと仕方なく手袋を取った。
そして、自分の手の高に浮かび上がる不思議な紋様を見つけて首をひねった。
「これ・・・は・・」
ジルはその紋様をじっくりとみると、手で頭を押さえ、そして大きくため息をついた。
「すごいな。これは、魔術だ。」
「魔術?」
「ねぇ、シルビアンヌ嬢。愛しのセイン様に、いつ、この紋様をつけられたのかな?」
ジルの言葉に、シルビアンヌの表情はどんどんと曇り、そしてシルビアンヌは頭を押さえると青ざめた顔を浮かべて言った。
「あ・・あ・あ・あ・・・頭が痛い・・・痛い・・痛い!」
「シルビアンヌ様!?」
「いやぁぁっぁぁ!」
シルビアンヌは悲鳴を上げてその場に倒れてしまい、医師の診察の後に、シルビアンヌの体は王城の医務室へと移された。
ベッドに横たわる青ざめたシルビアンヌを見つめていた四人は、立ち上がると怒りに燃える瞳でにやりと笑みを浮かべた。
「私たちの姫君を、苦しめる男をどう成敗しましようかねぇ。」
ジルの言葉に、ギデオンが拳を掌にぶつけて鳴らし、にやりと笑った。
「そりゃあ、問答無用で殴り倒す。」
物騒なその言葉にラルフは苦笑を浮かべた。
「そんな身体的なことだけじゃ、足りないだろう?」
アリーはにっこりと笑顔を可愛らしく浮かべると、今までに見た事のないほどぞっとする瞳で言った。
「後悔、させてあげましょう?」
苦しげに眠るシルビアンヌは、夢うつつにぼそりと呟いた。
「・・・見れなくて・・・・無念・・・」
どこまで行ってもシルビアンヌはシルビアンヌであった。
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