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十一話
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ジルルートは一番の問題ルートであると、シルビアンヌは思う。
ジルのトラウマは十歳の時に行方をくらました母親である。十歳のジルは母を探すためにエリア商会に協力を頼み、様々な場所へと足を踏みいれる。
時には危険な目にあいながらも必死に母を探すが母は見つからない。そればかりか、ジルの母は浮気者で様々な男の元を練り歩き、そして自由奔放に子どもを捨てて生きているという、根も葉もない噂ばかりが入ってくるのである。
結局母を見つけられなかったジルは女性自体が信じられなくなり、女性に嫌悪感を抱く。だが母を求める気持ちからかジル自身は女装癖が身に付いてしまうのだ。
ただし、別に女装癖があるから問題ルートなのではない。
ジルはヤンデレな雰囲気が強く、ヒロインちゃんとハッピーエンドに進んだのにもかかわらず、最後のスチルでこうセリフが入るのだ。
『やっと捕まえた・・・飛んで行かないように・・・君にぴったりの部屋を準備したからね。』
せっかくクリアしたのに、ハッピーエンドなのに!と、シルビアンヌは戦慄したのを覚えている。
何故だ。他の攻略対象者はそこまで酷くないトラウマなのに、何故、彼だけこんなにねっとりとしたトラウマになるのだと思った。
アリアが軟禁ルートになり、会えなくなるのはさびしすぎるので、出来れば、切に、ジルではない男を選んでほしいとシルビアンヌは思う。
なので今回は積極的にアリアとは絡ませない。
本当は絡んでいる姿を見たい気もする。だが、アリアを永遠に失うのはごめんである。
「アメリ様は、とある村にいらっしゃいます。」
「なっ・・・村?・・何故そこに?」
シルビアンヌは視線をロトへと向けると、ロトは頷き、すっと立ち上がる。
「ジル様。私は別室にて待たせていただきます。」
「あ・・あぁ。わかったよ。」
ロトが部屋から出て行くと、シルビアンヌは小さく息を吐いてから言った。
「ここからは国家機密です。覚悟はよろしいですか?」
「それを何故貴方が知っているかという質問は後でさせてもらうよ。」
あぁそれを後で聞かれるのかと思うと胃が痛い。けれども話さないわけにもいかないだろう。
「えぇ。では、覚悟はよろしいですか?」
「いい。話して。」
「・・・アメリ様は、ダルーシャにて熱病の研究をされているのです。」
「何?え?熱病?」
「はい。ダルーシャ全体で今は流行はしていませんが、以前村にて出現した熱病です。アメリ様が天才であり医療に強く興味を持ち、学生時代は有名なお医者様に師事していたことはご存知ですか?」
「・・いや。」
「リスターシェ公爵と兄である国王陛下はご存じであり、そしてダルーシャで一度流行しそうになった時に、アメリ様はご自身でダルーシャに行き、研究をしたいと申し出たそうです。公爵家の者、ましてや王家の血筋のアメリ様ですから、その事については機密扱いとなったそうです。」
「なんだって?父上も・・・国王陛下もご存じだったと・・いうの?」
ぎゅっと手を握り締めるジルに、シルビアンヌは頷くと言った。
「公爵様も国王陛下も当時アメリ様を止めたと聞いております。ですが、彼女の医師としての志は高く、お二人はそれを止める事は出来なかった。」
「そんな・・・何故、どうして私に教えてくれなかったんだ。そしたら・・」
「会いに行ったでしょう?そして、化粧品の開発も出来てしまう、天才の血を引いている貴方ならば母を手伝うと言うに決まっている。だからアメリ様も貴方には伝えないでほしいと願った。貴方は公爵家の跡取りだから。」
シルビアンヌの言葉に、ジルは悲しげに顔を上げると、ゆっくりと息を吐き出した。
そしてしばらくの間沈黙が流れ、ジルはやっと納得がいったのか、ゆっくりと首を縦に振った。
「そうか。ありがとう。母様の気持ちは・・・分かる。父様の気持ちも。」
「はい。お二人とも貴方の事を思っての行動です。」
「あぁ。・・・はぁ。ダルーシャか・・・確かにあの小さな村までは私は調べようともしなかったなぁ。エリア商会が相手にできる顧客もいない。だから父上はあっさりとロトと一緒に行動することを許したわけだ。」
シルビアンヌの瞳をじっとジルは見つめると言った。
「教えてくれてありがとう。それで、何故君は私さえ知りえない国家機密を知っているの?」
やはり聞いてくるよなとシルビアンヌは思いながらも、少し考えて言った。
「・・・ダルーシャはどこの領地だかご存知ですか?」
「ん?あそこは・・・確か・・・どこかの男爵家だったと思うけど・・・」
そう。とある男爵家。
男爵の名をエルバー・シルト。アリアの実の父親である。
実の所、シルビアンヌがアメリの事を知ったのは偶然であった。ゲームの情報には詳細は載っていなかったのでジルのトラウマを取り除くためにも調べはしていたが、一向に手がかりはつかめなかった。
そんな時、偶然アリアの父親について調べている時に、おかしな点にいくつも気が付いた。
異様なお金の流れ、騎士の配置、そして熱病の噂。
どれも最初は曖昧であったが、調べれば調べるほどに核心に迫って行き、そしてシルビアンヌは確実な情報を手にいれる。
ダルーシャの村には美しい聖女がいる。そしてその聖女の容姿は、アメリと一致した。
「ええ。実は男爵家については私個人で気になる事があり調べていたのです。その副産物として、手に入れた情報にございます。」
ジルの瞳がじっとシルビアンヌを見つめる。
シルビアンヌは心の中で、ジルがヤンデレでなければアリアと一緒に並んで立ってほしいと願う。きっと二人でお花畑でお花摘みなどをしてる姿はきっと可愛いだろう。
不埒な事を考えるとすぐにアリアの視線が厳しくなる。
何故わかるのか、シルビアンヌはそっと空になりつつあるお茶に口をつけた。
ジルのトラウマは十歳の時に行方をくらました母親である。十歳のジルは母を探すためにエリア商会に協力を頼み、様々な場所へと足を踏みいれる。
時には危険な目にあいながらも必死に母を探すが母は見つからない。そればかりか、ジルの母は浮気者で様々な男の元を練り歩き、そして自由奔放に子どもを捨てて生きているという、根も葉もない噂ばかりが入ってくるのである。
結局母を見つけられなかったジルは女性自体が信じられなくなり、女性に嫌悪感を抱く。だが母を求める気持ちからかジル自身は女装癖が身に付いてしまうのだ。
ただし、別に女装癖があるから問題ルートなのではない。
ジルはヤンデレな雰囲気が強く、ヒロインちゃんとハッピーエンドに進んだのにもかかわらず、最後のスチルでこうセリフが入るのだ。
『やっと捕まえた・・・飛んで行かないように・・・君にぴったりの部屋を準備したからね。』
せっかくクリアしたのに、ハッピーエンドなのに!と、シルビアンヌは戦慄したのを覚えている。
何故だ。他の攻略対象者はそこまで酷くないトラウマなのに、何故、彼だけこんなにねっとりとしたトラウマになるのだと思った。
アリアが軟禁ルートになり、会えなくなるのはさびしすぎるので、出来れば、切に、ジルではない男を選んでほしいとシルビアンヌは思う。
なので今回は積極的にアリアとは絡ませない。
本当は絡んでいる姿を見たい気もする。だが、アリアを永遠に失うのはごめんである。
「アメリ様は、とある村にいらっしゃいます。」
「なっ・・・村?・・何故そこに?」
シルビアンヌは視線をロトへと向けると、ロトは頷き、すっと立ち上がる。
「ジル様。私は別室にて待たせていただきます。」
「あ・・あぁ。わかったよ。」
ロトが部屋から出て行くと、シルビアンヌは小さく息を吐いてから言った。
「ここからは国家機密です。覚悟はよろしいですか?」
「それを何故貴方が知っているかという質問は後でさせてもらうよ。」
あぁそれを後で聞かれるのかと思うと胃が痛い。けれども話さないわけにもいかないだろう。
「えぇ。では、覚悟はよろしいですか?」
「いい。話して。」
「・・・アメリ様は、ダルーシャにて熱病の研究をされているのです。」
「何?え?熱病?」
「はい。ダルーシャ全体で今は流行はしていませんが、以前村にて出現した熱病です。アメリ様が天才であり医療に強く興味を持ち、学生時代は有名なお医者様に師事していたことはご存知ですか?」
「・・いや。」
「リスターシェ公爵と兄である国王陛下はご存じであり、そしてダルーシャで一度流行しそうになった時に、アメリ様はご自身でダルーシャに行き、研究をしたいと申し出たそうです。公爵家の者、ましてや王家の血筋のアメリ様ですから、その事については機密扱いとなったそうです。」
「なんだって?父上も・・・国王陛下もご存じだったと・・いうの?」
ぎゅっと手を握り締めるジルに、シルビアンヌは頷くと言った。
「公爵様も国王陛下も当時アメリ様を止めたと聞いております。ですが、彼女の医師としての志は高く、お二人はそれを止める事は出来なかった。」
「そんな・・・何故、どうして私に教えてくれなかったんだ。そしたら・・」
「会いに行ったでしょう?そして、化粧品の開発も出来てしまう、天才の血を引いている貴方ならば母を手伝うと言うに決まっている。だからアメリ様も貴方には伝えないでほしいと願った。貴方は公爵家の跡取りだから。」
シルビアンヌの言葉に、ジルは悲しげに顔を上げると、ゆっくりと息を吐き出した。
そしてしばらくの間沈黙が流れ、ジルはやっと納得がいったのか、ゆっくりと首を縦に振った。
「そうか。ありがとう。母様の気持ちは・・・分かる。父様の気持ちも。」
「はい。お二人とも貴方の事を思っての行動です。」
「あぁ。・・・はぁ。ダルーシャか・・・確かにあの小さな村までは私は調べようともしなかったなぁ。エリア商会が相手にできる顧客もいない。だから父上はあっさりとロトと一緒に行動することを許したわけだ。」
シルビアンヌの瞳をじっとジルは見つめると言った。
「教えてくれてありがとう。それで、何故君は私さえ知りえない国家機密を知っているの?」
やはり聞いてくるよなとシルビアンヌは思いながらも、少し考えて言った。
「・・・ダルーシャはどこの領地だかご存知ですか?」
「ん?あそこは・・・確か・・・どこかの男爵家だったと思うけど・・・」
そう。とある男爵家。
男爵の名をエルバー・シルト。アリアの実の父親である。
実の所、シルビアンヌがアメリの事を知ったのは偶然であった。ゲームの情報には詳細は載っていなかったのでジルのトラウマを取り除くためにも調べはしていたが、一向に手がかりはつかめなかった。
そんな時、偶然アリアの父親について調べている時に、おかしな点にいくつも気が付いた。
異様なお金の流れ、騎士の配置、そして熱病の噂。
どれも最初は曖昧であったが、調べれば調べるほどに核心に迫って行き、そしてシルビアンヌは確実な情報を手にいれる。
ダルーシャの村には美しい聖女がいる。そしてその聖女の容姿は、アメリと一致した。
「ええ。実は男爵家については私個人で気になる事があり調べていたのです。その副産物として、手に入れた情報にございます。」
ジルの瞳がじっとシルビアンヌを見つめる。
シルビアンヌは心の中で、ジルがヤンデレでなければアリアと一緒に並んで立ってほしいと願う。きっと二人でお花畑でお花摘みなどをしてる姿はきっと可愛いだろう。
不埒な事を考えるとすぐにアリアの視線が厳しくなる。
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