10 / 36
十話
しおりを挟む
ギデオンの一件からしばらくの間、シルビアンヌはダニエルに自分も狩りで頑張ったのにシルビアンヌは全く褒めてくれなかったと付きまとわれ、げっそりとしていた。
「シルビアンヌ様。大丈夫ですか?」
息も絶え絶えで、やっと解放されたシルビアンヌはアリアのお茶を一口飲んで大きくため息をついた。
「大丈夫よ。それに・・・そろそろやらなくちゃいけない事もあるし。」
「やらなくちゃいけないこと?ですか?」
一番厄介な相手と会わなければならない。
シルビアンヌがさらに大きなため息をついた時であった。
エリア商会の会長であるロトが到着したと他の侍女から知らせを受け、シルビアンヌは気合を入れると立ち上がった。
「アリア。ついに最後の相手とご対面よ。」
「最後の相手?ですか?」
「ええ!」
貴方のもしかしたら未来の伴侶となるかもしれない、最後の相手よ!とはシルビアンヌは言わなかった。
ただし、この最後の相手はあまりシルビアンヌ的にはお勧めできない。
客室へと移動したシルビアンヌはエリア商会の会長ロトと傍に控えている一人の小柄な少女に挨拶をすると、先日のオレル侯爵家のお化粧大会での皆の評判を伝えた。
「本当にありがとうございます。お嬢様が紹介して下さった次の日から飛ぶように品物が売れ、好調でございます。」
嬉しそうなロトに、シルビアンヌは笑顔で頷き返し、そして楽しそうに口を開いた。
「エリア商会の品々は本当に素晴らしいわ。それでぜひ、この商品の開発者の方にもお会いしてみたいのだけれど、ダメかしら?」
ロトはその言葉に表情を変えることなく当たり障りのない言葉を述べる。
「それはそれはありがたいお話なのですが、実の所開発者のやつはとても気難しい人間でしてね、なので、お嬢様にお会いして粗相があるといけませんので。」
「あら、私そんな事は気にしないわ。」
子どもらしく無邪気にそう言ったシルビアンヌは、視線を少女に向けると言った。
「こんなに可愛らしい男の子が開発者なんて、素晴らしい事じゃない。お名前を教えていただけないかしら?」
ロトと少女、いや少年の瞳が大きく見開かれ、警戒する視線に変わる。
「お嬢様。何を言っているのです。この子は、私の姪っ子でしてね。」
「あら、会長は天涯孤独の身で、親戚はいらっしゃらないのではないの?別に嘘をつかなくても大丈夫よ。全て調べてあることですから。」
ロトの瞳が険しくなり、シルビアンヌをじっと見つめる。
「・・お嬢様。何がおっしゃりたいのですか?」
シルビアンヌは可愛らしく微笑みを浮かべると、小首を傾げて言った。
「あら、そんな怖いお顔をしないでくださいな。悪いお話ではなくってよ?」
先ほどまでの和やかな雰囲気は一転し、静かな、沈黙が訪れる。
シルビアンヌはあえてゆっくりとアリアの入れたお茶を一口飲むと、ふぅっと息を吐いて言った。
「リスターシェ公爵が妻、アメリ・リスターシェ様。あぁ、元々はアメリ姫様ですわね。現王の妹君であらせられますから。彼女を探していらっしゃるのでしょう?ジル・リスターシェ様。」
名前を呼ばれた事に驚いたのか、ジルは目を丸くして立ちあがると、シルビアンヌをじっと見つめている。
ロトは険しい表情のままシルビアンヌの動向を見つめているようであった。
シルビアンヌは、もう一口紅茶を飲むと、ジルに言った。
「私、彼女がどこにいるのか存じておりますわよ。」
「なっ!?ほ、本当にでございますか!?」
「本当に!?」
ロトとジルは驚いたように声を上げ、シルビアンヌはティーカップを机にコトリと置いた。
「ええ。とりあえず、どうか落ち着いてお座りくださいませ。」
ジルは頷くと椅子に座り直し、ロトはじっとシルビアンヌの口が開くのを待っている。
シルビアンヌは、笑みを消すと、静かに口を開いた。
「シルビアンヌ様。大丈夫ですか?」
息も絶え絶えで、やっと解放されたシルビアンヌはアリアのお茶を一口飲んで大きくため息をついた。
「大丈夫よ。それに・・・そろそろやらなくちゃいけない事もあるし。」
「やらなくちゃいけないこと?ですか?」
一番厄介な相手と会わなければならない。
シルビアンヌがさらに大きなため息をついた時であった。
エリア商会の会長であるロトが到着したと他の侍女から知らせを受け、シルビアンヌは気合を入れると立ち上がった。
「アリア。ついに最後の相手とご対面よ。」
「最後の相手?ですか?」
「ええ!」
貴方のもしかしたら未来の伴侶となるかもしれない、最後の相手よ!とはシルビアンヌは言わなかった。
ただし、この最後の相手はあまりシルビアンヌ的にはお勧めできない。
客室へと移動したシルビアンヌはエリア商会の会長ロトと傍に控えている一人の小柄な少女に挨拶をすると、先日のオレル侯爵家のお化粧大会での皆の評判を伝えた。
「本当にありがとうございます。お嬢様が紹介して下さった次の日から飛ぶように品物が売れ、好調でございます。」
嬉しそうなロトに、シルビアンヌは笑顔で頷き返し、そして楽しそうに口を開いた。
「エリア商会の品々は本当に素晴らしいわ。それでぜひ、この商品の開発者の方にもお会いしてみたいのだけれど、ダメかしら?」
ロトはその言葉に表情を変えることなく当たり障りのない言葉を述べる。
「それはそれはありがたいお話なのですが、実の所開発者のやつはとても気難しい人間でしてね、なので、お嬢様にお会いして粗相があるといけませんので。」
「あら、私そんな事は気にしないわ。」
子どもらしく無邪気にそう言ったシルビアンヌは、視線を少女に向けると言った。
「こんなに可愛らしい男の子が開発者なんて、素晴らしい事じゃない。お名前を教えていただけないかしら?」
ロトと少女、いや少年の瞳が大きく見開かれ、警戒する視線に変わる。
「お嬢様。何を言っているのです。この子は、私の姪っ子でしてね。」
「あら、会長は天涯孤独の身で、親戚はいらっしゃらないのではないの?別に嘘をつかなくても大丈夫よ。全て調べてあることですから。」
ロトの瞳が険しくなり、シルビアンヌをじっと見つめる。
「・・お嬢様。何がおっしゃりたいのですか?」
シルビアンヌは可愛らしく微笑みを浮かべると、小首を傾げて言った。
「あら、そんな怖いお顔をしないでくださいな。悪いお話ではなくってよ?」
先ほどまでの和やかな雰囲気は一転し、静かな、沈黙が訪れる。
シルビアンヌはあえてゆっくりとアリアの入れたお茶を一口飲むと、ふぅっと息を吐いて言った。
「リスターシェ公爵が妻、アメリ・リスターシェ様。あぁ、元々はアメリ姫様ですわね。現王の妹君であらせられますから。彼女を探していらっしゃるのでしょう?ジル・リスターシェ様。」
名前を呼ばれた事に驚いたのか、ジルは目を丸くして立ちあがると、シルビアンヌをじっと見つめている。
ロトは険しい表情のままシルビアンヌの動向を見つめているようであった。
シルビアンヌは、もう一口紅茶を飲むと、ジルに言った。
「私、彼女がどこにいるのか存じておりますわよ。」
「なっ!?ほ、本当にでございますか!?」
「本当に!?」
ロトとジルは驚いたように声を上げ、シルビアンヌはティーカップを机にコトリと置いた。
「ええ。とりあえず、どうか落ち着いてお座りくださいませ。」
ジルは頷くと椅子に座り直し、ロトはじっとシルビアンヌの口が開くのを待っている。
シルビアンヌは、笑みを消すと、静かに口を開いた。
11
お気に入りに追加
1,821
あなたにおすすめの小説
【完結】攻略を諦めたら騎士様に溺愛されました。悪役でも幸せになれますか?
うり北 うりこ
恋愛
メイリーンは、大好きな乙女ゲームに転生をした。しかも、ヒロインだ。これは、推しの王子様との恋愛も夢じゃない! そう意気込んで学園に入学してみれば、王子様は悪役令嬢のローズリンゼットに夢中。しかも、悪役令嬢はおかめのお面をつけている。
これは、巷で流行りの悪役令嬢が主人公、ヒロインが悪役展開なのでは?
命一番なので、攻略を諦めたら騎士様の溺愛が待っていた。
私がいなくなった部屋を見て、あなた様はその心に何を思われるのでしょうね…?
新野乃花(大舟)
恋愛
貴族であるファーラ伯爵との婚約を結んでいたセイラ。しかし伯爵はセイラの事をほったらかしにして、幼馴染であるレリアの方にばかり愛情をかけていた。それは溺愛と呼んでもいいほどのもので、そんな行動の果てにファーラ伯爵は婚約破棄まで持ち出してしまう。しかしそれと時を同じくして、セイラはその姿を伯爵の前からこつぜんと消してしまう。弱気なセイラが自分に逆らう事など絶対に無いと思い上がっていた伯爵は、誰もいなくなってしまったセイラの部屋を見て…。
※カクヨム、小説家になろうにも投稿しています!
悪役令嬢予定でしたが、無言でいたら、ヒロインがいつの間にか居なくなっていました
toyjoy11
恋愛
題名通りの内容。
一応、TSですが、主人公は元から性的思考がありませんので、問題無いと思います。
主人公、リース・マグノイア公爵令嬢は前世から寡黙な人物だった。その為、初っぱなの王子との喧嘩イベントをスルー。たった、それだけしか彼女はしていないのだが、自他共に関連する乙女ゲームや18禁ゲームのフラグがボキボキ折れまくった話。
完結済。ハッピーエンドです。
8/2からは閑話を書けたときに追加します。
ランクインさせて頂き、本当にありがとうございます(*- -)(*_ _)ペコリ
お読み頂き本当にありがとうございます(*- -)(*_ _)ペコリ
応援、アドバイス、感想、お気に入り、しおり登録等とても有り難いです。
12/9の9時の投稿で一応完結と致します。
更新、お待たせして申し訳ありません。後は、落ち着いたら投稿します。
ありがとうございました!
小説主人公の悪役令嬢の姉に転生しました
みかん桜(蜜柑桜)
恋愛
第一王子と妹が並んでいる姿を見て前世を思い出したリリーナ。
ここは小説の世界だ。
乙女ゲームの悪役令嬢が主役で、悪役にならず幸せを掴む、そんな内容の話で私はその主人公の姉。しかもゲーム内で妹が悪役令嬢になってしまう原因の1つが姉である私だったはず。
とはいえ私は所謂モブ。
この世界のルールから逸脱しないように無難に生きていこうと決意するも、なぜか第一王子に執着されている。
そういえば、元々姉の婚約者を奪っていたとか設定されていたような…?
【完結】私ですか?ただの令嬢です。
凛 伊緒
恋愛
死んで転生したら、大好きな乙女ゲーの世界の悪役令嬢だった!?
バッドエンドだらけの悪役令嬢。
しかし、
「悪さをしなければ、最悪な結末は回避出来るのでは!?」
そう考え、ただの令嬢として生きていくことを決意する。
運命を変えたい主人公の、バッドエンド回避の物語!
※完結済です。
※作者がシステムに不慣れな時に書いたものなので、温かく見守っていだければ幸いです……(。_。///)
転生悪役令嬢は冒険者になればいいと気が付いた
よーこ
恋愛
物心ついた頃から前世の記憶持ちの悪役令嬢ベルティーア。
国の第一王子との婚約式の時、ここが乙女ゲームの世界だと気が付いた。
自分はメイン攻略対象にくっつく悪役令嬢キャラだった。
はい、詰んだ。
将来は貴族籍を剥奪されて国外追放決定です。
よし、だったら魔法があるこのファンタジーな世界を満喫しよう。
国外に追放されたら冒険者になって生きるぞヒャッホー!
どうして私が我慢しなきゃいけないの?!~悪役令嬢のとりまきの母でした~
涼暮 月
恋愛
目を覚ますと別人になっていたわたし。なんだか冴えない異国の女の子ね。あれ、これってもしかして異世界転生?と思ったら、乙女ゲームの悪役令嬢のとりまきのうちの一人の母…かもしれないです。とりあえず婚約者が最悪なので、婚約回避のために頑張ります!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる