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九話
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男性達は狩りを終えると、今日一番の活躍者であったギデオンを褒め称えていた。
だが、本来はテントにいるはずの女性らが何故か屋敷から歩いてくる姿が見えた。しかも異様な盛り上がりの雰囲気を感じる。
侯爵家のオレル侯爵はいち早く馬から降りると、女性達へと歩み寄り、そして、その先頭にいる女性を見た途端に目を丸くした。
「・・・ティ・・・ティアナ?!か!?そ・・それに、アイビス?!タリー?!」
男性達は従者へと馬を預けオレル侯爵に続き、そして皆が一様に目を丸くしていく。
ティアナはけばけばしい化粧から、気品のある化粧に様変わりしており、その服装もどぎつい色合いのドレスからすっきりとした若草色のワンピースとなり、まるで少女のような若々しさを感じさせた。
二人の娘達も、まるで別人のように変化しており、男性達から息を飲む声が聞こえてくる。
ティアナはそれに満足げに微笑むと、あえて化粧の事には触れずに言った。
「おかえりなさいませ。皆様ご無事そうでなによりでございます。今日の狩りはどうでしたか?」
オレルは驚きながらも、活躍者であるギデオンの背中を押し前へと出すと言った。
「我が息子ギデオンが、それは、見事な姿を見せた。」
「ち、父上。ありがとうございます。」
ティアナは嬉しそうに微笑みを向けると言った。
「さすがですね。」
だが男性達はそれどころではない。
はっきり言えば、今日の主役であったはずのギデオンよりもティアナらの変貌の方がよっぽど気になる。
ティアナは微笑を携え、近くにいたシルビアンヌに視線を向けると言った。
「こちらはシルビアンヌ様のご厚意で、楽しい時間を過ごさせていただきましたの。どうです?いつもとは違うでしょう?」
ティアナのその視線にオレルはごくりと喉を鳴らし、頷いた。
「あぁ・・とても美しいよ。」
「まぁ、お上手ね。娘二人もどうかしら?」
「いやはや・・・我が娘達はいつも可愛いが、今日はまた、特別可愛いなぁ。」
ギデオンも驚いた様子で言った。
「本当に。別人のようです。」
本来は皆の人気を独り占めにしていた今回の活躍者であるギデオンに、姉二人は嫉妬し、心にもない事を言ってしまうのだが、化粧を施し、皆の視線が自分達に集まったことによりアイビスもタリーもギデオンに嫌味を言う姿はなかった。
シルビアンヌはふふんっと満足そうに微笑むと、オレルの視線を受けて令嬢らしく可愛らしく微笑み直した。
「シルビアンヌ嬢。今日はありがとう。我が妻も、娘達も、とても嬉しそうだ。」
「いいえ。出過ぎた真似をしてしまったかと不安でしたのでそう言っていただけて良かったです。」
「ははは!いや、本当に驚いた。」
シルビアンヌは微笑、そして言った。
「皆様方のご活躍についてもお話を聞きたいですわ。」
「あぁもちろんだ。テントで軽食を食べながら皆で話をしようか。」
皆がその声によってテントへと移動をはじめた。
アイビスやタリーをエスコートしようと言う男性もおり、二人は顔を赤らめ可愛らしく微笑みを浮かべている。
「シルビアンヌ嬢。君には驚いた。」
ギデオンに声を掛けられ、シルビアンヌは肩をすくめると言った。
「あら、全てアリアのおかげでしてよ?ね?アリア?」
横に控えていたアリアはその言葉にきょとんと首を傾げると言った。
「私はシルビアンヌ様の命に従ったまでです。」
「まぁ、謙虚なのね、アリアは。」
私のアリアは優秀なのよと、進めるような視線をギデオンに向けると、ギデオンは楽しそうにシルビアンヌとアリアに視線を向けて言った。
「シルビアンヌ嬢も、アリア嬢もすごいな。ははは!」
ギデオンは笑い、そして三人もテントへと移動し軽食を食べながら会話に花を咲かせた。
シルビアンヌは途中ティアナに呼ばれて席を外し、ギデオンはアリアににやりと笑みを向けると言った。
「あれだけ素晴らしい令嬢だと、アリア嬢は大変だな?」
「えぇ。毎度、突拍子もない事を思いつく方なので、大変ですが楽しいですよ。」
「はは!そう言う意味じゃない。・・いつ誰にとられてもおかしくないから、大変だな、と言っているんだよ。」
アリアが少し驚いたようにギデオンに視線を向けると、にやりとした笑みのままギデオンは言った。
「俺はけっこうお前の事も気に入ったよ。男友達としていつでも相談のってやるから、言えよ?」
にやにやとした顔でそう言われたアリアは呆気にとられた。
「な・・何を。」
「そりゃあ近くにずっといれば惚れずにはいられないよなぁ?」
少し顔を近くにされそう呟かれ、ぶわっとアリアの顔は赤くなる。
「ははは!図星か!」
「か、からかわないで下さい!」
その時、アリアは視線を感じてはっと顔を上げると、ティアナの横でこちらに視線を向けて、よからぬ妄想をしているシルビアンヌをキッと睨みつけた。
あの顔は、絶対に、何かよからぬことを考えている。
シルビアンヌはすっと素知らぬ顔でティアナとの会話に戻る。
アリアはため息をつき、ギデオンはそんな様子を見て言った。
「お前も大変だな。」
「・・・・はい。」
ギデオンは笑い、アリアはもう一度大きなため息をついた。
だが、本来はテントにいるはずの女性らが何故か屋敷から歩いてくる姿が見えた。しかも異様な盛り上がりの雰囲気を感じる。
侯爵家のオレル侯爵はいち早く馬から降りると、女性達へと歩み寄り、そして、その先頭にいる女性を見た途端に目を丸くした。
「・・・ティ・・・ティアナ?!か!?そ・・それに、アイビス?!タリー?!」
男性達は従者へと馬を預けオレル侯爵に続き、そして皆が一様に目を丸くしていく。
ティアナはけばけばしい化粧から、気品のある化粧に様変わりしており、その服装もどぎつい色合いのドレスからすっきりとした若草色のワンピースとなり、まるで少女のような若々しさを感じさせた。
二人の娘達も、まるで別人のように変化しており、男性達から息を飲む声が聞こえてくる。
ティアナはそれに満足げに微笑むと、あえて化粧の事には触れずに言った。
「おかえりなさいませ。皆様ご無事そうでなによりでございます。今日の狩りはどうでしたか?」
オレルは驚きながらも、活躍者であるギデオンの背中を押し前へと出すと言った。
「我が息子ギデオンが、それは、見事な姿を見せた。」
「ち、父上。ありがとうございます。」
ティアナは嬉しそうに微笑みを向けると言った。
「さすがですね。」
だが男性達はそれどころではない。
はっきり言えば、今日の主役であったはずのギデオンよりもティアナらの変貌の方がよっぽど気になる。
ティアナは微笑を携え、近くにいたシルビアンヌに視線を向けると言った。
「こちらはシルビアンヌ様のご厚意で、楽しい時間を過ごさせていただきましたの。どうです?いつもとは違うでしょう?」
ティアナのその視線にオレルはごくりと喉を鳴らし、頷いた。
「あぁ・・とても美しいよ。」
「まぁ、お上手ね。娘二人もどうかしら?」
「いやはや・・・我が娘達はいつも可愛いが、今日はまた、特別可愛いなぁ。」
ギデオンも驚いた様子で言った。
「本当に。別人のようです。」
本来は皆の人気を独り占めにしていた今回の活躍者であるギデオンに、姉二人は嫉妬し、心にもない事を言ってしまうのだが、化粧を施し、皆の視線が自分達に集まったことによりアイビスもタリーもギデオンに嫌味を言う姿はなかった。
シルビアンヌはふふんっと満足そうに微笑むと、オレルの視線を受けて令嬢らしく可愛らしく微笑み直した。
「シルビアンヌ嬢。今日はありがとう。我が妻も、娘達も、とても嬉しそうだ。」
「いいえ。出過ぎた真似をしてしまったかと不安でしたのでそう言っていただけて良かったです。」
「ははは!いや、本当に驚いた。」
シルビアンヌは微笑、そして言った。
「皆様方のご活躍についてもお話を聞きたいですわ。」
「あぁもちろんだ。テントで軽食を食べながら皆で話をしようか。」
皆がその声によってテントへと移動をはじめた。
アイビスやタリーをエスコートしようと言う男性もおり、二人は顔を赤らめ可愛らしく微笑みを浮かべている。
「シルビアンヌ嬢。君には驚いた。」
ギデオンに声を掛けられ、シルビアンヌは肩をすくめると言った。
「あら、全てアリアのおかげでしてよ?ね?アリア?」
横に控えていたアリアはその言葉にきょとんと首を傾げると言った。
「私はシルビアンヌ様の命に従ったまでです。」
「まぁ、謙虚なのね、アリアは。」
私のアリアは優秀なのよと、進めるような視線をギデオンに向けると、ギデオンは楽しそうにシルビアンヌとアリアに視線を向けて言った。
「シルビアンヌ嬢も、アリア嬢もすごいな。ははは!」
ギデオンは笑い、そして三人もテントへと移動し軽食を食べながら会話に花を咲かせた。
シルビアンヌは途中ティアナに呼ばれて席を外し、ギデオンはアリアににやりと笑みを向けると言った。
「あれだけ素晴らしい令嬢だと、アリア嬢は大変だな?」
「えぇ。毎度、突拍子もない事を思いつく方なので、大変ですが楽しいですよ。」
「はは!そう言う意味じゃない。・・いつ誰にとられてもおかしくないから、大変だな、と言っているんだよ。」
アリアが少し驚いたようにギデオンに視線を向けると、にやりとした笑みのままギデオンは言った。
「俺はけっこうお前の事も気に入ったよ。男友達としていつでも相談のってやるから、言えよ?」
にやにやとした顔でそう言われたアリアは呆気にとられた。
「な・・何を。」
「そりゃあ近くにずっといれば惚れずにはいられないよなぁ?」
少し顔を近くにされそう呟かれ、ぶわっとアリアの顔は赤くなる。
「ははは!図星か!」
「か、からかわないで下さい!」
その時、アリアは視線を感じてはっと顔を上げると、ティアナの横でこちらに視線を向けて、よからぬ妄想をしているシルビアンヌをキッと睨みつけた。
あの顔は、絶対に、何かよからぬことを考えている。
シルビアンヌはすっと素知らぬ顔でティアナとの会話に戻る。
アリアはため息をつき、ギデオンはそんな様子を見て言った。
「お前も大変だな。」
「・・・・はい。」
ギデオンは笑い、アリアはもう一度大きなため息をついた。
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